浮気しまくってるのに婚約破棄されないんですが

小鳥遊 沙織

文字の大きさ
4 / 4

4

しおりを挟む
「あっ、やだぁ、だめ、」


悲しみ、苦しみ、虚しさ、寂しさ、羞恥、後悔。そんな感情で心がぐちゃぐちゃになるのに、暴虐とも言える快楽がそれを食い潰す。ルイスの熱いそれが私の中を這いずりまわる。目の前の男が嫌いでたまらないのに、身体から溢れる蜜は今までのどんなセックスよりも多い。「やだ、やだ」と口だけの否定を譫言のように繰り返す。私はもしかしてマゾヒストだったのだろうか、そう思うほど心と身体の乖離は激しい。
ルイスは何も言わず、じっと私の目を見続ける。特に塗れた目。いつもの冷たい目。
やがて「、うっ」と短くこぼし私の中で果てたときには、私はぼろぼろと涙をこぼしていた。
粘性のある液体が股を伝う感覚が気持ち悪い。胎に溜まったものが熱くって、力の入らない体を胎児みたいに丸めてお腹を抱え込んだ。

「エミリア」

名前を呼ばれた。迷子みたいな、孤独な子どものような、寂しさと不安でいっぱいに揺れる声だった。ゆっくりと伸びてきた冷たい手のひらが頬を包んで、凪いだ瞳が私の顔を覗き込んでいる。

ああ、この人も戸惑っていたのかもしれない。お互いが初めての婚約だった。自分の中の特殊すぎる性癖と、私への情と、立場と、いろんなものがせめぎあって。
私も歩み寄らなかった。知ろうともせず避けていた。

「……俺はおまえを手放したいわけじゃない」

触れるだけのキスをされる。最中には一度も交わされなかったそれは、勢い余って歯と歯がぶつかって少し痛い。さっきまでの強引さとのギャップにおかしくなって声を出して笑った。

少しずつ。これから少しずつ夫婦になっていこう、と思った。私たちはお互いのことを知らなさすぎる。

夫婦。私にこんな目を向けてくるこの男となら、もしかしたらなれるのかもしれない。

「ふふ、まずはキスから始めましょうか、

ルイスは一瞬きょとりと目を瞬かせ、すぐに目を細めて

「さて、式はいつ挙げようか」

と言った。


しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

5年経っても軽率に故郷に戻っては駄目!

158
恋愛
伯爵令嬢であるオリビアは、この世界が前世でやった乙女ゲームの世界であることに気づく。このまま学園に入学してしまうと、死亡エンドの可能性があるため学園に入学する前に家出することにした。婚約者もさらっとスルーして、早や5年。結局誰ルートを主人公は選んだのかしらと軽率にも故郷に舞い戻ってしまい・・・ 2話完結を目指してます!

やり直しの王太子、全力で逃げる

雨野千潤
恋愛
婚約者が男爵令嬢を酷く苛めたという理由で婚約破棄宣言の途中だった。 僕は、気が付けば十歳に戻っていた。 婚約前に全力で逃げるアルフレッドと全力で追いかけるグレン嬢。 果たしてその結末は…

私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?

きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。 しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

疎遠だった幼馴染が彼女と別れて私に会いに来るようになったのだけど

くじら
恋愛
図書館の定位置には、いつも黒縁メガネの女生徒がいる。 貴族同士の見栄の張り合いや出世争いから距離を置いて穏やかに過ごしていたのに、女生徒の幼馴染が絡んでくるようになって…。

悪意には悪意で

12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。 私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。 ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。

ざまぁはハッピーエンドのエンディング後に

ララ
恋愛
私は由緒正しい公爵家に生まれたシルビア。 幼い頃に結ばれた婚約により時期王妃になることが確定している。 だからこそ王妃教育も精一杯受け、王妃にふさわしい振る舞いと能力を身につけた。 特に婚約者である王太子は少し?いやかなり頭が足りないのだ。 余計に私が頑張らなければならない。 王妃となり国を支える。 そんな確定した未来であったはずなのにある日突然破られた。 学園にピンク色の髪を持つ少女が現れたからだ。 なんとその子は自身をヒロイン?だとか言って婚約者のいるしかも王族である王太子に馴れ馴れしく接してきた。 何度かそれを諌めるも聞く耳を持たず挙句の果てには私がいじめてくるだなんだ言って王太子に泣きついた。 なんと王太子は彼女の言葉を全て鵜呑みにして私を悪女に仕立て上げ国外追放をいい渡す。 はぁ〜、一体誰の悪知恵なんだか? まぁいいわ。 国外追放喜んでお受けいたします。 けれどどうかお忘れにならないでくださいな? 全ての責はあなたにあると言うことを。 後悔しても知りませんわよ。 そう言い残して私は毅然とした態度で、内心ルンルンとこの国を去る。 ふふっ、これからが楽しみだわ。

冷たかった夫が別人のように豹変した

京佳
恋愛
常に無表情で表情を崩さない事で有名な公爵子息ジョゼフと政略結婚で結ばれた妻ケイティ。義務的に初夜を終わらせたジョゼフはその後ケイティに触れる事は無くなった。自分に無関心なジョゼフとの結婚生活に寂しさと不満を感じながらも簡単に離縁出来ないしがらみにケイティは全てを諦めていた。そんなある時、公爵家の裏庭に弱った雄猫が迷い込みケイティはその猫を保護して飼うことにした。 ざまぁ。ゆるゆる設定

処理中です...