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臨時マネージャー?
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しおりを挟むside悼矢
「今日も疲れたぁぁぁ」
「明日から夏合宿始まるから早く切り上げてくれたけど、あんま練習量は変わらなかったなぁ。いつもより疲れたし」
俺たちは練習着から制服に着替えながら、話をしていた。
夏場だから部室の中はかなり蒸し暑く、早く外に出たいという感じだ。
その暑さに1番耐えられないのがやっぱり裕大。
「いーや!ワイシャツ外で着よー!!!」
裕大はワイシャツを肩にかけて外に出ようとする。
「いやいや、駄目だろ」
「外にはあの、美人と呼ばれている渡邊がいるんだぜ!?もうちっと恥じらいを…」
「別によくね?俺、あいつに興味ねぇし、向こうも興味ねぇんだから」
渡邊は女だって分かってんのかな…
ワイシャツを着ながら呆れた顔で裕大の顔を見る。
周りからてんやわんや言われ、裕大はしぶしぶワイシャツを着て外に出て行く。
俺もその後を追うように外へ出る。
外に渡邊はいたけど、沙奈ちゃんの姿はなかった。
「あれ、沙奈は?」
裕大が渡邊に聞く。
「沙奈ちゃんなら、まだ合宿所の中にいると思うけど…?」
「は、何で?」
「やり残してる所があるとかなんとかってー」
その言葉を聞いて裕大の顔が険しくなる。
「なぁ、それってまだ掃除が終わってないってことだよな?」
「う、うん?多、分」
裕大は渡邊の肩を掴む。
俺には裕大が怒っているのがすぐに分かった。
「じゃ、何でお前が制服に着替えてここにいるんだよ?普通手伝うだろ?」
「おい、裕大」
部室からは制服姿の皆が出てくる。
「ちょ、裕大なにやってんだよ!?」
中学から裕大と一緒にいる山本准(やまもとじゅん)が渡邊の肩を掴んでいる裕大を止める。
「うっせーな、俺はこいつと喋ってんだよ」
「止めろって」
俺は渡邊と裕大を引き離す。
いつもならこんなになって怒らねぇのに…
「なぁ、言えって。黙られても俺が困る。」
「裕大、渡邊は何か事情があって手伝えなかったかも知んねぇんだから、そんなに怒らなくてもいいだろ?」
「事情?ここにいんのに?事情なんてないだろ」
「それは分かんねぇだろ?お前が急に怒るから言い出しにくくなってるかもしれないだろ?」
俺は渡邊の顔を見る。
「う、うん・・・」
「用があるのなら、俺が手伝いに行くし。あんま怒んなよ。」
その言葉を聞いて、裕大はふぅんという顔をして、それ以上渡邊に突っかかることはなかった。
一安心した俺たちはホッと一息を付く。
「悪い、怒鳴って、 」
「へ、平気だよ!?ちょっと用事があって、それで…あたしも言わなくて、ごめん」
とにかく、大事にならなくて良かった。
こいつが怒ると落ち着くまでに、なかり時間がかかるんだよな。
准は俺にひとまず安心だなとポツリと言って笑いかけてきた。
俺より長い間、裕大と一緒にいるから、裕大の事はよく知っている。
「つか、用事あんなら早く帰った方がいいんじゃねぇの?」
「う、ん」
「俺が沙奈ちゃん所行くし。じゃ、気をつけて帰れな」
俺は渡邊にそう言って駆け足で合宿所に向かう。
「あ、悼矢・・・!!」
渡邊の声は俺の耳には届かなかった。
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