それは、恋でした。

むう

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恋?

3-1

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「・・・奈・・・沙奈!!」



体を揺さぶられてあたしは重い目をゆっくり開ける。


・・・??




「早くしろよ!遅刻すんぞ!?」

「遅、刻・・・?」


目を擦りながら起き上ると、部活着のお兄ちゃんの姿があった。



「もう出ねぇと間に合わねぇよ!着替えろ!」

「着替えろって…あたしもう、マネージャーの仕事終わったよ?」

「、は?」



きょとんとするお兄ちゃん。



あ、れ?


あたし変なこと言ってないよね?


うん、だってマネージャーの仕事は夏合宿までって言ってたし。





「…何で!?何で、何で!?」

「え、え…!?」




お兄ちゃんはあたしの肩をがっしり掴む。


痛いんですけど・・・!!




「だってお兄ちゃんっ、夏合宿までって・・・!!」


「ーあ、」

「臨時マネージャーはもう終わったの!だからあたし、行けない!」

「、でもさ!俺すっかり忘れてたから、辞めんの無し!いいじゃんそれで!!」

「・・・お兄ちゃん・・・」

「な!だから俺と早く部活行こーぜ!?」




お兄ちゃんはあたしの腕を引っ張る。

お兄ちゃんがそう言うならと一度は行こうとも考えた。

その時、合宿の時の渡邊先輩と、悼矢さんの事を思い出した。




何でこんなに苦しくなるんだろう。



渡邊先輩が、悼矢さんに話しかけたり、一緒に笑ってたりしてる姿が脳裏に焼き付いていて、頭から離れる事が出来ない。




「沙奈…?」

「いけ、ない」

「なんで?」

「もう、疲れちゃったの!だから…行かない」





ー嘘。



本当は行きたい。


また皆と話したりしたい。


けど、2人で仲よくしている渡邊先輩と悼矢さんの姿を見たくない。





お兄ちゃんを見ると、とても悲しい顔をしていた。



「そっ・・・か・・・分かった。じゃ、俺行くな?」


「う、ん。気をつけて行って、ね?」


「おー…」





ゆっくり部屋のドアを閉めて部活に行ったお兄ちゃん。




あたしはそのドアを何時間も見続けていた。





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