それは、恋でした。

むう

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恋?

3-8

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「さっきの話になるんだけどさ、何で辞めちゃったの?」

「え・・・?」


「サッカー部のマネージャー。楽しそうにやってたから辞めないと思ってたのに。何か嫌なことでもされた?」


「されては、ない」



亜衣は動かしていた手を止めてあたしの顔を見た。

あたしはシャープペンを触りながら亜衣に言うか悩んでいた。



悼矢さんと渡邊先輩が仲よくしているのを見たくなかったという事を。


自分でも馬鹿みたいな話だって事は分かってる。



分かってるんだけど・・・




「悩むくらいならあたしに言った方がいいよ。どんな話でも受け止める。笑わないから」




「亜衣、」


「沙奈にとって、誰にも言えなかったくらい考えてた事なんでしょ?」




「ーうん、」



「だったら絶対笑わない!何年一緒にいると思ってるのっ」




1人で悩んでもしょうがない事。


あたしは誰かに言ってもらいたかった。



“何でも話を聞くから”って。




「あの、ね・・・?」


「うん」




あたしは夏合宿の話を全て話した。


悼矢さんと渡邊先輩の事。




2人を見る度に、胸が苦しくなってしまうという事。




「それってさ、三浦先輩の事が好きなんじゃないの?」

「ーーほぇ!?」

「そーだよ、絶対!沙奈の話聞いてる限り、嫉妬してるようにしか聴こえないよ?」





嫉妬?




好き?


好きってあれだよね、恋してるってやつ?




あたしの頭の中は混乱してて、今にもパンクしそうなくらいだった。



それを見ていた亜衣は大きくため息を付く。





「ま、沙奈は恋なんて知らないよねぇ。したことないんだから」


「そ、そんな事は…」



「じゃぁ、恋した事あるの?」


「うっ・・・」




確かに、あたしは今まで生きていて1度も恋をしたことがない。




巡り逢わなかったというか、考えてみるといつもあたしの傍にいたのはお兄ちゃんだった。




何度か男の子に一緒に遊ぼうと言われていたけど、お兄ちゃんに止められて、結局遊ぶ事すら出来なかったようなー





「三浦先輩の事どう思ってるの?」


「悼矢さん?う~ん…優しくて、かっこよくて…なにより、周りの事をよく気付く人だよ?」




笑った顔とか、


呆れた顔とか、


仕草とか。




悼矢さんの全てがあたしにとって何故か大切なもので。



考えただけで顔が赤くなる。




「恋だよ。そんだけあんたの心の中に、頭の中に三浦先輩がいるってことは、恋なんだよ。」


「恋・・・」


「それで、あんたはまだその事に気づいてない。」




亜衣に指を指される。



彼氏持ちの人に言われたら何も言いかえさないけどー



恋というものに、あたしはまだ実感が湧かない。





「・・・沙奈、ちょっと見に行こう!」



「え、何を見に行くの?」


「三浦先輩だよ!夏合宿終わった後から会ってないんでしょ?あったら沙奈も好きだって気持ちに気づくかもしれない!」




亜衣はあたしの腕を引っ張って外に出る。




あたしはされるがまま、サッカー部のグラウンドに向かうのであった。



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