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第一章
第4話 フジイ家領ハゼール
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パーティーから2週間後、北部王国直轄領改め、フジイ家領ハゼールに領主として訪れた。
ハゼール地方、人口1000万人、南以外を山に囲まれた地域。ニタ川が作る狭い扇状地———と言っても関東平野よりも遥かに広いが———の上に都市や畑があり、領地の大半を占める山からは豊かな鉱物資源が採れる。
そしてハゼール地方中心都市、そのままハゼールは、思ったよりも遥かに大きい都市だった。
向かってくる途中では豆粒に見えたのは、遠くから見たためだったらしい。
相変わらず、この世界のスケール感はおかしい。
役所に入り、王族直属からフジイ家の文官となった哀れな役人たちとの挨拶とこの領地についての説明を一通り受けると、がっかりした様子のエリザベートか話しかけてきた。
「それにしても、小さい街ね。王都ともエステル侯爵領とも比べ物にならない」
「あんな化け物みたいな都市たち比べるな。十数年前に新しくできた都市だぞ」
「それにしたって小さいわよ。あんた本当にハズレくじね。こんな危険な田舎に飛ばされて、本当に可哀想ねぇ」
田舎に来ても人を小馬鹿にする癖は治らんようだ。
「うるせぇな。だいたいなんでお前は来たんだよ。義父上の所に帰れば良かっただろ」
「私は貴方の副官よ?ついて行かない理由がないじゃ無い。そ・れ・に、次、また腰抜け君が戦場で倒れたら誰が指揮するのかしらね」
「…」
憎たらしい女吸血鬼を睨んでいるとドアをノックする音が聞こえた。
「二人とも、入るよ。…レン。そんな殺意剥き出しの顔しないで。新しい上司がそんなんじゃ文官たちも怯えるでしょ」
「アラン、この吸血女にも何か言ってやってくれ」
「吸血女じゃなくて、エリザベートって素敵な名前があるのよ?」
「そうですか、エリザベート・ツェペシュ副官殿?」
「そうなのよ、腰抜け子爵」
「おま…!!何か不満があったのかよ、名前で呼んだのに」
「嫌味ったらしい言い方が気に食わないのよ」
いつものように言い合っていると、アランが大きな溜息を吐いていた。
「二人とも?いい加減にしてね。…全く、僕が付いて来て正解だったね。で、本題だけど、レン準備ができたよ」
吸血女との言い合いを即時にやめてアランと向き合う。
エリザベートが何か言い続けているが知ったことでは無い。
「よし、じゃあ、早速出るか。機械科歩兵装備を頼む。移動に便利だ」
「わかったよ」
「着任早々、一体どこに行くのよ」
「どこにも行かねぇよ。領内視察をするだけだ。———お前は来るな」
その後、俺の部屋に機械科歩兵装備と共に、バッチリと準備をしたアランと…エリザベートがいらっしゃった。
小言とからかいを受ける日々からの脱却は随分遠くにあるらしい。
✴︎
市内の様子を見て歩く。
さすがは200万人以上が住む都市。王都ほどではないが、市場が賑わい、それなりの活気にあふれている。
小麦屋、八百屋、飲食店様々な店が立ち並んでいるが、最も目に付くのはやはり金属だ。
鉱物の多いこの世界では、庶民が使うあらゆるものが金属製だ。家具、食器、建築資材、貧しいものは服まで粗悪な金属でできている。
そんな世界だ、鍛冶屋に寄らない手はない。
市井で評判の鍛冶屋を見つけて中へと入ると、小さいながらも立派な内装だった。
鉄製の食器、青銅の服、銀の家具が所狭しと並んでおり、カウンターの奥には武器や機械科歩兵スーツとその隣にロボットのような見た目をしたものが置いてある。モビ○スーツか?
機械科歩兵なんてものがあるんだ、ガ○ダムがあっても不思議じゃ無い。
「らっしゃい、騎士様。機械科歩兵の装備の注文ですかい?」
奥から突然、男のドワーフが出で来た。もじゃもじゃの髭と逞しい肉体がいかにも鍛冶屋
らしい。
機械科歩兵装備を着る者は爵位がある兵士…様は騎士であることが多い。
領主であることがバレると面倒だ、騎士で通そう。
「いや、警ら中の気まぐれで寄っただけだ。最近の景気はどうだ?」
「そうですかい。景気はボチボチと言った所でさぁ。新しく来たと言う領主様が無茶をしなけりゃいいですがねぇ」
それは俺のことなんですがねぇ。素知らぬ顔を決め込もう。
「そうれはどうだかわからんな、何せまだ22の若造だそうだ」
「ガハハ、騎士様も同じくらいの年頃だってのに『若造』ってのは手厳しい」
店主の豪快な笑い声が店内に響く。
後ろで二人が何とも言えない表情を浮かべているが、知ったことでは無い
「ところで、これらの品は全部店主が作ったのか」
「そうでさぁ。わしが作りました。一つ一つ丁寧に仕上げている自信作達でさぁ」
確かに丁寧に作っているのだろう。金属製品の良し悪しなど分からない俺でさえ他との違いがわかる。
形もしっかりと整っており、不純物の混ざりが少ないのだろうか、金属の光沢が他の店より美しい。
店の隅に置いてある薙刀を手に取り店主に声をかける。通常武器は機械科歩兵対策のために刃の部分が真紅の石でできている。しかし、この薙刀は金を思わせる光沢を持った金属でできている。これでは戦場で武器として意味をなさない。
「この薙刀は?先端が真紅の石でできていないようだが?」
「さては騎士様、新米だな。市内警備用の武器でさぁ。真紅の石でできた武器だと小悪党までバラしちまうので、先端が金属でできた武器を使うんでさぁ。この武器はオリハルコン製のものでさぁ」
しまったな、ボロを出してしまった。おい女吸血鬼、ニヤニヤするな。
「そんなものなのか、ならばコイツをもらって行こう」
「毎度あり、貝硬貨12枚でさぁ」
貝硬貨は物価が違いすぎるので比べらればいが大体1万円程度だ。
ちなみに硬貨の順は、白金、ダイヤ、貝、真珠、琥珀の順だ。
交換レートは白金→ダイヤは十枚、それ以外は百枚必要になる。
琥珀なんて王族や貴族の予算じゃない限りそうそう見ない。
財布からお金を取り出しながら先ほどから気になっていた事を問う。ガン○ムの事だ。
「あのスーツの横にあるゴツゴツした塊は何だ?」
「ありゃ、機械科歩兵スーツの試作品でさぁ。用をたし難いって要望がありやしてねぇ。作ってみたは良いが歩くとガチャガチャ音がなるし、動き難いしの失敗作でさぁ。」
「なるほど…。店主、邪魔をしたな」
武器を取るとさっさと店を後にした。
次なる目的地は西にある鉱山。国境にある山脈の一部だ。
そこの複数の鉱山から多くの金属が採れる。金銀銅、白金に鉄、亜鉛にアメジスト、そして馬鹿みたいにエネルギーを持った鉱石である真紅の石も。
もしかしたらお目当ての鉱石もあるかもしれない。
「ところで、蓮。何のために薙刀なんて買ったんだい?無駄使いは関心しないよ?」
突然アランが口を開いた。爽やかな笑顔に凄まじい圧を感じる。
この守銭奴め。
「稽古のためだよ。師匠もこっちに来るらしい。武器の一つでも用意してないと殺されるだろ」
「ああ、それでか。確かに必要な物だね。しかし、何でダニエール様がわざわざこちらに?」
「指揮官として義父上から送られてきた。あとは騎士団の練兵。我が家の騎士団を、元王家直轄の温室育ちから、最前線で戦える精鋭に変えてくれるそうだ。そして、多分本当の理由は、俺が武芸をサボらない様に」
「なるほど、僕らに取っては良いこと尽くめだ。優秀な指揮官が来ることも、軍が強くなることも。」
「俺の命の心配は?」
「腕の二、三本折られったて死にはしないから大丈夫」
「俺はバケモノじゃないから、腕は二本しかないけどな。…あぁ、あと、レイも一緒に来るぞ」
アランの頬がリンゴ色に染まる。それをエリザベートが放っておくわけがない。
「あら、アラン?そんなに顔を赤くしてどうしたの。ひょっとして恋人が来てくれ嬉しいのかしら」
「やだな、エリザベート。僕らはそんな関係じゃないよ」
「そうなの?あ、そうか。誰かさんが告白する勇気を持ってないからね。レイはアランの大好きなのに」
「エ、エリザベート、からかわないでくれ」
そんな調子でエリザベートがアランの事をからかう事30分地帯が鉱山が見えていきた。
いちいち、誰かについて回られるの鬱陶しいので、ここら一体の鉱山の責任者に勝手に見て回る様に伝えた。崩落しても最悪、機械科歩兵装備でどうにかなる。
そんな甘い考えの結果、見たくも無いものをみる羽目になった。
どの鉱山の中でも大量の痩せ細った獣人、つまりは奴隷が酷使されていた。
武器を持った人間に監視され、どんな理不尽な命令も、行為も逆らうことが許されない。
危険な鉱山で武器を持った飼い主に働かされ、気まぐれに犯され、殺される。
休憩がある様子が無く、彼らの瞳には光が宿っていなかった。
死体はゴミ同様に箱に捨てられて、消耗品として使い潰される。
彼らは、厳密に言えば奴隷ですら無い。
市民権があるものは人族、つまり人間、吸血鬼、エルフ(ダークエルフ含む)、ドワーフ及びこれらの雑種のみだ。
それ以外の者は市民権が無い、つまりは動物と同じだ。ここで働く獣人達はペットのポチと同じ扱いであるわけだ。
いや、愛玩動物であるだけ犬猫の方がましだ。彼らに求められるのは労働力と憂さ晴らし、ただそれだけ。『物』と同等の扱い。
これなら人間以外を見つけ次第、問答無用で殺す神聖同盟の方が幾分ましじゃないか?
一応領主な訳だから、闇の部分にも目をやるべきじゃないだろうか?
徳川綱吉が生類憐みの令を出したみたいな事は出来ないのか?
暗澹たる思考の中をさらにかき乱す、絶望的な光景が強烈な臭気と共に目の前に現れた。
それは、山だった。そう形容するしかない程に積み上げられて居た。
死体が
必要以上に嬲られた傷、骨と皮ばかりの身体、一糸纏わぬ死体。全ての死体が残酷な運命を物語って居た。
まるで生ゴミの様に放置された亡骸たち。
腹から込み上げる様々な何かを飲みこみ問う。
「アラン、エリザベート。アレは、普通の事なのか?」
「鉱山には普通にあるわね。」
「もっと、根本的な…奴隷…ですらなかったな。生き物をものの様に扱うことはよくあることなのかと聞いているんだが?」
「そうね、当たり前よ。この国だけじゃ無くて、支配種族以外をゴミ同然に扱うことは神聖帝国以外では当然に行われているわ。まぁ、あいつらの場合は殺すけどね」
「レン、どうしたんだい。柄でもない正義感を感じたのかい?いつもみたいに『最高だな』とは言わないだね」
余程酷い顔をして居たのだろう。いつもの様に振る舞えと、アランらしい気遣いを感じる。
「正義感?別にそんなもの感じちゃいない。」
「なら、何でそんな顔してるのよ。酷使される奴隷って前の世界のは無かったのかしら?」
いや、前の世界でも目に見えないだけで、アレに近しいことはあった。
チョコを作るために搾取されるカカオ農家も知ってるし、ブラックに働くコンビニも普通に利用していた。ゴミの山を漁る少女の話も知っている。
違いなんてほとんど無い。いずれも、命を消耗品扱いしている。奴隷か、そうじゃ無いか何て法律だけの問題だ。死ぬまでこき使われるなんて普通にある話だ。
目の前に出されただけだ。ただ残酷に、凌辱的に目の前に提示されただけだ。
それなのにどうしてだ?なぜ、こんなに心がざわつく?
グチャグチャした思考より先に口が動いた。それも、最大の嫌味を乗せて。
「別に、ただ不愉快だった。それだけだ。見てて愉快なものじゃ無いだろ。それとも、なんだ?お前らは不愉快ですらなかったのか?」
口にした途端、ストンと何かが落ちる音がした気がした。
そうだ、単純に不愉快だったんだ。
「アレを愉快だと思う奴は頭がおかしいわよ」
「それは…そうだね」
それを最後にしばらく誰も口を開くことはなかった。
暗い沈黙と共に鉱山視察を再開した。
その途中、とある鉱山から移動する途中に、俺は宝の山を見つけた。
いきなり止まったことに驚いたのであろう、アランが驚いた様子で声をかけてきた。
「…どうしたの。ここは不要な石の捨て場だけど」
「素晴らしいものを見つけた。この石と、そしてこの大量の砂だ!ハハハ」
ここはアメジストの採掘場。そこであるものが不要物として大量に捨てられていた。
手に持った石はアメジストと物質的にはほとんど同じ。
違いといえば、この石は紫色には輝かない事だけだ。
興奮し、キラキラと目を輝かせている俺に対して二人は冷ややかだ。…いや、これは引かれているだけだな。
呆れる様な口調でエリザベートが口を開く。
「…素晴らしいって、ただの水晶じゃない。それとそっちの砂は珪砂ね。そんなものの何が良いのよ。そんな物で喜ぶのは、おませな女の子と砂遊びが好きな子供だけよ」
「何でだよ、綺麗だろ。いろいろ便利だし」
「そうかな?ダイヤモンドには劣るし、金属みたいに汎用性もないと思うよ」
アランのセリフに思わず頬が緩む。つまりはこの世界にアレはない。
あったとしてもメジャーな物ではないのだろう。素晴らしい、一財産築けるかもしれない。
「なるほどね、この世界は恵まれすぎている訳だ。おかげでもっと便利なものに気が付いていない」
ハゼール地方、人口1000万人、南以外を山に囲まれた地域。ニタ川が作る狭い扇状地———と言っても関東平野よりも遥かに広いが———の上に都市や畑があり、領地の大半を占める山からは豊かな鉱物資源が採れる。
そしてハゼール地方中心都市、そのままハゼールは、思ったよりも遥かに大きい都市だった。
向かってくる途中では豆粒に見えたのは、遠くから見たためだったらしい。
相変わらず、この世界のスケール感はおかしい。
役所に入り、王族直属からフジイ家の文官となった哀れな役人たちとの挨拶とこの領地についての説明を一通り受けると、がっかりした様子のエリザベートか話しかけてきた。
「それにしても、小さい街ね。王都ともエステル侯爵領とも比べ物にならない」
「あんな化け物みたいな都市たち比べるな。十数年前に新しくできた都市だぞ」
「それにしたって小さいわよ。あんた本当にハズレくじね。こんな危険な田舎に飛ばされて、本当に可哀想ねぇ」
田舎に来ても人を小馬鹿にする癖は治らんようだ。
「うるせぇな。だいたいなんでお前は来たんだよ。義父上の所に帰れば良かっただろ」
「私は貴方の副官よ?ついて行かない理由がないじゃ無い。そ・れ・に、次、また腰抜け君が戦場で倒れたら誰が指揮するのかしらね」
「…」
憎たらしい女吸血鬼を睨んでいるとドアをノックする音が聞こえた。
「二人とも、入るよ。…レン。そんな殺意剥き出しの顔しないで。新しい上司がそんなんじゃ文官たちも怯えるでしょ」
「アラン、この吸血女にも何か言ってやってくれ」
「吸血女じゃなくて、エリザベートって素敵な名前があるのよ?」
「そうですか、エリザベート・ツェペシュ副官殿?」
「そうなのよ、腰抜け子爵」
「おま…!!何か不満があったのかよ、名前で呼んだのに」
「嫌味ったらしい言い方が気に食わないのよ」
いつものように言い合っていると、アランが大きな溜息を吐いていた。
「二人とも?いい加減にしてね。…全く、僕が付いて来て正解だったね。で、本題だけど、レン準備ができたよ」
吸血女との言い合いを即時にやめてアランと向き合う。
エリザベートが何か言い続けているが知ったことでは無い。
「よし、じゃあ、早速出るか。機械科歩兵装備を頼む。移動に便利だ」
「わかったよ」
「着任早々、一体どこに行くのよ」
「どこにも行かねぇよ。領内視察をするだけだ。———お前は来るな」
その後、俺の部屋に機械科歩兵装備と共に、バッチリと準備をしたアランと…エリザベートがいらっしゃった。
小言とからかいを受ける日々からの脱却は随分遠くにあるらしい。
✴︎
市内の様子を見て歩く。
さすがは200万人以上が住む都市。王都ほどではないが、市場が賑わい、それなりの活気にあふれている。
小麦屋、八百屋、飲食店様々な店が立ち並んでいるが、最も目に付くのはやはり金属だ。
鉱物の多いこの世界では、庶民が使うあらゆるものが金属製だ。家具、食器、建築資材、貧しいものは服まで粗悪な金属でできている。
そんな世界だ、鍛冶屋に寄らない手はない。
市井で評判の鍛冶屋を見つけて中へと入ると、小さいながらも立派な内装だった。
鉄製の食器、青銅の服、銀の家具が所狭しと並んでおり、カウンターの奥には武器や機械科歩兵スーツとその隣にロボットのような見た目をしたものが置いてある。モビ○スーツか?
機械科歩兵なんてものがあるんだ、ガ○ダムがあっても不思議じゃ無い。
「らっしゃい、騎士様。機械科歩兵の装備の注文ですかい?」
奥から突然、男のドワーフが出で来た。もじゃもじゃの髭と逞しい肉体がいかにも鍛冶屋
らしい。
機械科歩兵装備を着る者は爵位がある兵士…様は騎士であることが多い。
領主であることがバレると面倒だ、騎士で通そう。
「いや、警ら中の気まぐれで寄っただけだ。最近の景気はどうだ?」
「そうですかい。景気はボチボチと言った所でさぁ。新しく来たと言う領主様が無茶をしなけりゃいいですがねぇ」
それは俺のことなんですがねぇ。素知らぬ顔を決め込もう。
「そうれはどうだかわからんな、何せまだ22の若造だそうだ」
「ガハハ、騎士様も同じくらいの年頃だってのに『若造』ってのは手厳しい」
店主の豪快な笑い声が店内に響く。
後ろで二人が何とも言えない表情を浮かべているが、知ったことでは無い
「ところで、これらの品は全部店主が作ったのか」
「そうでさぁ。わしが作りました。一つ一つ丁寧に仕上げている自信作達でさぁ」
確かに丁寧に作っているのだろう。金属製品の良し悪しなど分からない俺でさえ他との違いがわかる。
形もしっかりと整っており、不純物の混ざりが少ないのだろうか、金属の光沢が他の店より美しい。
店の隅に置いてある薙刀を手に取り店主に声をかける。通常武器は機械科歩兵対策のために刃の部分が真紅の石でできている。しかし、この薙刀は金を思わせる光沢を持った金属でできている。これでは戦場で武器として意味をなさない。
「この薙刀は?先端が真紅の石でできていないようだが?」
「さては騎士様、新米だな。市内警備用の武器でさぁ。真紅の石でできた武器だと小悪党までバラしちまうので、先端が金属でできた武器を使うんでさぁ。この武器はオリハルコン製のものでさぁ」
しまったな、ボロを出してしまった。おい女吸血鬼、ニヤニヤするな。
「そんなものなのか、ならばコイツをもらって行こう」
「毎度あり、貝硬貨12枚でさぁ」
貝硬貨は物価が違いすぎるので比べらればいが大体1万円程度だ。
ちなみに硬貨の順は、白金、ダイヤ、貝、真珠、琥珀の順だ。
交換レートは白金→ダイヤは十枚、それ以外は百枚必要になる。
琥珀なんて王族や貴族の予算じゃない限りそうそう見ない。
財布からお金を取り出しながら先ほどから気になっていた事を問う。ガン○ムの事だ。
「あのスーツの横にあるゴツゴツした塊は何だ?」
「ありゃ、機械科歩兵スーツの試作品でさぁ。用をたし難いって要望がありやしてねぇ。作ってみたは良いが歩くとガチャガチャ音がなるし、動き難いしの失敗作でさぁ。」
「なるほど…。店主、邪魔をしたな」
武器を取るとさっさと店を後にした。
次なる目的地は西にある鉱山。国境にある山脈の一部だ。
そこの複数の鉱山から多くの金属が採れる。金銀銅、白金に鉄、亜鉛にアメジスト、そして馬鹿みたいにエネルギーを持った鉱石である真紅の石も。
もしかしたらお目当ての鉱石もあるかもしれない。
「ところで、蓮。何のために薙刀なんて買ったんだい?無駄使いは関心しないよ?」
突然アランが口を開いた。爽やかな笑顔に凄まじい圧を感じる。
この守銭奴め。
「稽古のためだよ。師匠もこっちに来るらしい。武器の一つでも用意してないと殺されるだろ」
「ああ、それでか。確かに必要な物だね。しかし、何でダニエール様がわざわざこちらに?」
「指揮官として義父上から送られてきた。あとは騎士団の練兵。我が家の騎士団を、元王家直轄の温室育ちから、最前線で戦える精鋭に変えてくれるそうだ。そして、多分本当の理由は、俺が武芸をサボらない様に」
「なるほど、僕らに取っては良いこと尽くめだ。優秀な指揮官が来ることも、軍が強くなることも。」
「俺の命の心配は?」
「腕の二、三本折られったて死にはしないから大丈夫」
「俺はバケモノじゃないから、腕は二本しかないけどな。…あぁ、あと、レイも一緒に来るぞ」
アランの頬がリンゴ色に染まる。それをエリザベートが放っておくわけがない。
「あら、アラン?そんなに顔を赤くしてどうしたの。ひょっとして恋人が来てくれ嬉しいのかしら」
「やだな、エリザベート。僕らはそんな関係じゃないよ」
「そうなの?あ、そうか。誰かさんが告白する勇気を持ってないからね。レイはアランの大好きなのに」
「エ、エリザベート、からかわないでくれ」
そんな調子でエリザベートがアランの事をからかう事30分地帯が鉱山が見えていきた。
いちいち、誰かについて回られるの鬱陶しいので、ここら一体の鉱山の責任者に勝手に見て回る様に伝えた。崩落しても最悪、機械科歩兵装備でどうにかなる。
そんな甘い考えの結果、見たくも無いものをみる羽目になった。
どの鉱山の中でも大量の痩せ細った獣人、つまりは奴隷が酷使されていた。
武器を持った人間に監視され、どんな理不尽な命令も、行為も逆らうことが許されない。
危険な鉱山で武器を持った飼い主に働かされ、気まぐれに犯され、殺される。
休憩がある様子が無く、彼らの瞳には光が宿っていなかった。
死体はゴミ同様に箱に捨てられて、消耗品として使い潰される。
彼らは、厳密に言えば奴隷ですら無い。
市民権があるものは人族、つまり人間、吸血鬼、エルフ(ダークエルフ含む)、ドワーフ及びこれらの雑種のみだ。
それ以外の者は市民権が無い、つまりは動物と同じだ。ここで働く獣人達はペットのポチと同じ扱いであるわけだ。
いや、愛玩動物であるだけ犬猫の方がましだ。彼らに求められるのは労働力と憂さ晴らし、ただそれだけ。『物』と同等の扱い。
これなら人間以外を見つけ次第、問答無用で殺す神聖同盟の方が幾分ましじゃないか?
一応領主な訳だから、闇の部分にも目をやるべきじゃないだろうか?
徳川綱吉が生類憐みの令を出したみたいな事は出来ないのか?
暗澹たる思考の中をさらにかき乱す、絶望的な光景が強烈な臭気と共に目の前に現れた。
それは、山だった。そう形容するしかない程に積み上げられて居た。
死体が
必要以上に嬲られた傷、骨と皮ばかりの身体、一糸纏わぬ死体。全ての死体が残酷な運命を物語って居た。
まるで生ゴミの様に放置された亡骸たち。
腹から込み上げる様々な何かを飲みこみ問う。
「アラン、エリザベート。アレは、普通の事なのか?」
「鉱山には普通にあるわね。」
「もっと、根本的な…奴隷…ですらなかったな。生き物をものの様に扱うことはよくあることなのかと聞いているんだが?」
「そうね、当たり前よ。この国だけじゃ無くて、支配種族以外をゴミ同然に扱うことは神聖帝国以外では当然に行われているわ。まぁ、あいつらの場合は殺すけどね」
「レン、どうしたんだい。柄でもない正義感を感じたのかい?いつもみたいに『最高だな』とは言わないだね」
余程酷い顔をして居たのだろう。いつもの様に振る舞えと、アランらしい気遣いを感じる。
「正義感?別にそんなもの感じちゃいない。」
「なら、何でそんな顔してるのよ。酷使される奴隷って前の世界のは無かったのかしら?」
いや、前の世界でも目に見えないだけで、アレに近しいことはあった。
チョコを作るために搾取されるカカオ農家も知ってるし、ブラックに働くコンビニも普通に利用していた。ゴミの山を漁る少女の話も知っている。
違いなんてほとんど無い。いずれも、命を消耗品扱いしている。奴隷か、そうじゃ無いか何て法律だけの問題だ。死ぬまでこき使われるなんて普通にある話だ。
目の前に出されただけだ。ただ残酷に、凌辱的に目の前に提示されただけだ。
それなのにどうしてだ?なぜ、こんなに心がざわつく?
グチャグチャした思考より先に口が動いた。それも、最大の嫌味を乗せて。
「別に、ただ不愉快だった。それだけだ。見てて愉快なものじゃ無いだろ。それとも、なんだ?お前らは不愉快ですらなかったのか?」
口にした途端、ストンと何かが落ちる音がした気がした。
そうだ、単純に不愉快だったんだ。
「アレを愉快だと思う奴は頭がおかしいわよ」
「それは…そうだね」
それを最後にしばらく誰も口を開くことはなかった。
暗い沈黙と共に鉱山視察を再開した。
その途中、とある鉱山から移動する途中に、俺は宝の山を見つけた。
いきなり止まったことに驚いたのであろう、アランが驚いた様子で声をかけてきた。
「…どうしたの。ここは不要な石の捨て場だけど」
「素晴らしいものを見つけた。この石と、そしてこの大量の砂だ!ハハハ」
ここはアメジストの採掘場。そこであるものが不要物として大量に捨てられていた。
手に持った石はアメジストと物質的にはほとんど同じ。
違いといえば、この石は紫色には輝かない事だけだ。
興奮し、キラキラと目を輝かせている俺に対して二人は冷ややかだ。…いや、これは引かれているだけだな。
呆れる様な口調でエリザベートが口を開く。
「…素晴らしいって、ただの水晶じゃない。それとそっちの砂は珪砂ね。そんなものの何が良いのよ。そんな物で喜ぶのは、おませな女の子と砂遊びが好きな子供だけよ」
「何でだよ、綺麗だろ。いろいろ便利だし」
「そうかな?ダイヤモンドには劣るし、金属みたいに汎用性もないと思うよ」
アランのセリフに思わず頬が緩む。つまりはこの世界にアレはない。
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ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
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これは、世界で唯一「対価」を支払う必要がない登が、呪われた武具を次々と使いこなし、その副作用に苦しむ女騎士やエルフ、聖女を救い出し、無自覚に溺愛されていく物語。
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