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ローズガーデン姉妹
盗賊 ルナロッサ・ローズガーデン(2)
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ギルドに入ることを決めたアジムは、リリィに連れられてのギルドメンバーへのあいさつ回りをして戻ってきた。
「いやー、思いっきりもみくちゃにされたねぇ、アジムくん」
ギルドメンバーを前に自己紹介をしたら「イイ身体してるねぇ」と全身まさぐられて、アジムはぐったりだ。腕や腹くらいまでならともかく、さりげなく腰だの尻だの太ももだのまで撫で回してくるので、不本意ながら背筋が伸びたりしてしまう。そうなると身体を撫で回す手がいっそう無遠慮になってくるので慌てて手を掴むのだが、別の手がアジムの身体に触れてくるのできりがない。
セクハラを通り越して集団痴漢されているような状態だったので、近くに居た五人ほどをまとめて抱え上げて投げ飛ばし、逃げてきた。
さすがに投げ飛ばしたのはやりすぎだったかな、とアジムが肩越しに振り返ってみたら、鎧を身に付けた五人をまとめて投げ飛ばせるパワーにご満悦だったようで、ギルドメンバーの評価はむしろ上がっていた。
「……ギルドに入る判断、早まった気がします」
アジムの言葉にリリィは曖昧に笑う。
「さて、それじゃ、あらためてよろしく!
オンライン率が高い男が僕一人だったから、すごく嬉しいよ!」
戻ってきたアジムにクラウスが満面の笑みを浮かべて手を差し出した。
アジムは腰をかがめてクラウスの手を握りながら、
「ギルドの男は俺とクラウスさんだけなんですか?」
「一応、もう一人いるんだけどね。
リアルが忙しいらしくて滅多にゲームにログインしないから。
面白い人ではあるんだけど」
クラウスは握手した手を引っ込めようとしたアジムの手を引っ張り……いや、引っ張ろうとしたのにアジムがまったく動かなかったので、結局手招きしてアジムを屈ませ、クラウスはアジムの耳元に口を寄せた。
「ウチはみんな、ああいう性癖じゃない?」
クラウスが視線をちらりとリリィに向ける。
アジムもそれを追ってリリィに目を向けた。リリィはクラウスの言葉が聞こえなかったものの、二人に視線を向けられて訝しそうにしつつも笑顔を返した。
「男の人がギルドに所属してくれても、
本気で戦闘やってる女性陣にボッコボコにされて出て行っちゃうんだよね。
なんせ全力で戦闘して負けたら陵辱されたいわけだから」
「巨根」だの「強制発情」だの「絶倫」だの「媚薬精液」だのといった、ベッドの上でしか使えないスキルをたくさん身に付けている男が楽に勝てるような、ぬるい女性はいないのである。
「逆に、男の人がちゃんと戦闘スキル高くて
ギルドメンバーに勝てても、やっぱり好みってあるからね。
こっちからお断りすることもあるんだよ」
特に、勝って陵辱したらその女は自分の奴隷だ、と考えているタイプはギルドメンバーに嫌われる。別にその考え方が悪いとは言わないが、ギルド所属の女性たちは、戦闘と敗北の先にある陵辱を楽しみたいのであって、誰かの奴隷になりたいわけではない。女性をそういう風に扱いたいのであれば、常時奴隷扱いされたい女性が集まっているギルドに所属してくれればいいのだ。
「アジムさんはリリィさんやメルフィナさんに気に入られてるようだから、
普段と決闘後を分けて考えてくれるタイプっぽいし、
一緒に冒険もできそうだから、長く仲良くしてほしいな」
クラウスはそう言葉をしめくくって、アジムの耳元から顔を離した。
「僕のことはクラウスと呼び捨てにしてね。
さん付けされると、なんかくすぐったくて。
できればもっとくだけて話してくれると嬉しいな」
「じゃあ、俺も呼び捨てで。
クラウスも、話しやすい話し方してくれると嬉しい」
「わかった」
クラウスはにっと笑って、拳を突き出す。アジムも笑みを返して、クラウスの小さくて真っ白な拳と、自分の馬鹿でかい岩のような拳をぶつけ合った。
「それで? ギルドに所属すんのはいいけどさ。
ソフィアに支払う金はどーすんのさ?」
「あ」
あきれたようなルナロッサの言葉で現状の問題を思い出す。
「オークションで見つけてくれた鎧なんだっけ?
手付金を支払っておけば、流れるのを止めておいてもらえたりするの?」
「金額がたいしたことがないので、即時購入のみですねぇ」
「ああ、まあ、そうだよね……」
ソフィアの言葉を聞いてリリィが思わず頷く。
たいしたことのない金額すら払えないアジムはがっくりと肩を落としたが、すぐに気を取り直して、
「お金はいつまでに支払えばいいんでしょうか?」
「うーん。遅くとも今日中にはオークションハウスに支払わないといけないです」
「とりあえず僕が貸しておこうか?
金貨1000枚くらいなら、遊んでる間に稼げる金額だし」
「いや、さすがにギルドに所属してすぐにお金を借りたりするのは
申し訳ないですよ」
「でも、この鎧が流れちゃうと、
アジムが装備できるサイズの鎧を探すの、面倒なんじゃないの?」
「今までこんな大きなサイズの鎧を商品として確認したことがなかったので、
なんとも言えませんね……ただ、価格からするとすごく性能がいいので、
落とせるなら落としておくのをオススメしますよ」
「ほら」
「いや、でも……」
ルナロッサは少し離れてアジムとクラウスのやり取りを聞いていたが、結論が出なさそうなのを感じて、にやりと笑う。
「なら、メルフィナと同じように身体で払ってもらうのが良さそうだな!」
ルナロッサは自分に集中した視線の中から妹の視線に目を合わせて、
「アジム、気に入ったんだろ?
なら、やることは一つだろ」
「姉さん!」
顔を真っ赤にしたソフィアがルナロッサの背中を引っ叩くが、ルナロッサはへらへら笑っている。
「俺はそうしてもらえるとありがたいですけど……」
アジムがソフィアに目を向けると、赤い顔をしたままソフィアが何度も頷いた。
「そ、それでよかったら、お願いします」
「よーし! それじゃ、オンの都市決闘だな!
アタシら姉妹の怖さを教えてやるぜ!」
「え? あ、はい」
ルナロッサの言葉にアジムが頷いたのを見て、リリィが頭を抱え、クラウスが笑い出す。
「アジムくん、そこは止めないと。
さらっとルナも参加することになっちゃってるよ」
「いや、まあ、気づいてはいたんですけど、
商人のソフィアさん一人だと、一方的な展開になりそうでしたし、
ルナがソフィアさんの支援にはいるくらいなら、まあいいかなと」
アジムがリリィに返した言葉を聞いて、ソフィアがむっと視線を険しくし、ルナが好戦的に唇を吊り上げた。
「普通の決闘ならともかく、
オンの都市決闘で商人と盗賊を敵にまわして
その自信はすごいですね?」
「期待させてくれんじゃねーか」
戦意を燃やす姉妹に困惑して、アジムは首をかしげる。
「二人とも。
アジムくんが初心者だってこと、すっかり頭から抜けてるでしょ。
アジムくんは都市決闘の意味がわかってないんだよ」
リリィの言葉に、姉妹はそろって「あ」と声を洩らした。
「そうか。リリィとだけやってたってんなら、
基本の決闘だけしかやってないか」
「ええと、都市決闘っていうのは、
決闘用に自動生成される都市で戦うことを言うんです。
オンとかオフとかいうのは、その都市にNPCが存在するかどうかを指します。
オンならNPC(ノンプレイヤーキャラクター)が存在する都市での決闘。
オフならNPCが存在しない無人都市での決闘になります」
「……普通の決闘と、何が違うんでしょう?」
納得してルナロッサが頷く横でソフィアが都市決闘の説明をしてくれるが、アジムには通常の決闘との差がいまひとつピンとこない。
「決闘者は都市の中にランダムに配置されて決闘を行うことになります。
索敵や罠を仕掛けたりという、
お互いが見えていない間の動きが重要になるんです」
「ああ、なるほど。
実戦に近い決闘ができるんですね」
「NPCオフならそれだけですが、
NPCオンの場合はもっと違ってきます。
決闘を行う都市の規模にもよりますが、
社会性スキルが大きく意味を持つようになるんです」
アジムは言葉の意味がわからず、首をかしげる。
「NPCを決闘相手にけしかけたりできるんですよ。
一番わかりやすいのは雇うことですが、
決闘相手の犯罪をでっち上げて自治組織を味方につける、
犯罪組織に決闘相手の暗殺を依頼する、
街の有力者を性的に篭絡して味方にする、なんていう方法も取れます」
過去、決闘は戦闘力のあるプレイヤーだけのものだった。世界の富の数%を所有する大商人であっても、戦闘スキルがなければ駆け出し戦士になすすべもなく叩きのめされるのが決闘のルールだった。
だが、大商人は本当に弱いのか? 駆け出し戦士のほうが本当に強いのか?
確かに肉体レベルで見れば恰幅のいい大商人よりも、身体を鍛えている若い駆け出し戦士のほうが強いだろう。しかし、経験は? 経済力は? 人脈は? 発想力は? 肉体以外のあらゆる面で、大商人のほうが優れているだろうに、大商人が勝てないルールだけしか存在しない決闘は、おかしいのではないのか?
それに運営が応えたのがNPCが存在する架空都市での決闘だ。
決闘が成立した時点で、決闘者たちはNPCが普通に生活している架空の都市に転送される。大商人であれば駆け出し戦士に襲われる前に自分の経済力で兵士を雇い、人海戦術で圧殺することも可能だ。揉み手ひとつで貴族に取り入り、駆け出し戦士の犯罪をでっち上げて謀殺することもできる。武器や毒の提供を条件に、マフィアに駆け出し戦士を暗殺を依頼することだってできるだろう。
これらの方法は大商人だけができるわけではない。
職人や技師なら、自分の技術や製品を売って兵士を雇うことができる。
僧侶や道化なら、自分の教義や芸事で貴族に取り入ることができる。
娼婦や男娼なら、自分の身体を好きにさせることでマフィアを動かすことができる。
何をしてもいい。
それが、NPCの存在する架空都市での決闘だ。
「な、なるほど……?」
「いや、わかってねーのにわかったフリすんなよ」
「……姉さんも、都市決闘を理解するまでに結構かかったくせに」
「とりあえず、やってみようぜ?
決闘する都市はある程度設定できるから、
人口を少なくしてNPCの影響が少ない都市決闘にするからさ」
ぼそりとつぶやいた妹を睨みつつ、ルナロッサがアジムに声をかける。
「了解です。
すぐに始めますか?」
「都市決闘は普通の決闘と違って、
決着がつくまでかなり時間がかかりますよ?
アジムさん、お時間は大丈夫ですか?」
アジムがソフィアの言葉に頷くと、姉妹は笑みを浮かべた。
「都市で商人と盗賊を敵に回す怖さ、
思い知らせてあげます!」
「アタシら姉妹にそう簡単に勝てると思うなよ!」
「いやー、思いっきりもみくちゃにされたねぇ、アジムくん」
ギルドメンバーを前に自己紹介をしたら「イイ身体してるねぇ」と全身まさぐられて、アジムはぐったりだ。腕や腹くらいまでならともかく、さりげなく腰だの尻だの太ももだのまで撫で回してくるので、不本意ながら背筋が伸びたりしてしまう。そうなると身体を撫で回す手がいっそう無遠慮になってくるので慌てて手を掴むのだが、別の手がアジムの身体に触れてくるのできりがない。
セクハラを通り越して集団痴漢されているような状態だったので、近くに居た五人ほどをまとめて抱え上げて投げ飛ばし、逃げてきた。
さすがに投げ飛ばしたのはやりすぎだったかな、とアジムが肩越しに振り返ってみたら、鎧を身に付けた五人をまとめて投げ飛ばせるパワーにご満悦だったようで、ギルドメンバーの評価はむしろ上がっていた。
「……ギルドに入る判断、早まった気がします」
アジムの言葉にリリィは曖昧に笑う。
「さて、それじゃ、あらためてよろしく!
オンライン率が高い男が僕一人だったから、すごく嬉しいよ!」
戻ってきたアジムにクラウスが満面の笑みを浮かべて手を差し出した。
アジムは腰をかがめてクラウスの手を握りながら、
「ギルドの男は俺とクラウスさんだけなんですか?」
「一応、もう一人いるんだけどね。
リアルが忙しいらしくて滅多にゲームにログインしないから。
面白い人ではあるんだけど」
クラウスは握手した手を引っ込めようとしたアジムの手を引っ張り……いや、引っ張ろうとしたのにアジムがまったく動かなかったので、結局手招きしてアジムを屈ませ、クラウスはアジムの耳元に口を寄せた。
「ウチはみんな、ああいう性癖じゃない?」
クラウスが視線をちらりとリリィに向ける。
アジムもそれを追ってリリィに目を向けた。リリィはクラウスの言葉が聞こえなかったものの、二人に視線を向けられて訝しそうにしつつも笑顔を返した。
「男の人がギルドに所属してくれても、
本気で戦闘やってる女性陣にボッコボコにされて出て行っちゃうんだよね。
なんせ全力で戦闘して負けたら陵辱されたいわけだから」
「巨根」だの「強制発情」だの「絶倫」だの「媚薬精液」だのといった、ベッドの上でしか使えないスキルをたくさん身に付けている男が楽に勝てるような、ぬるい女性はいないのである。
「逆に、男の人がちゃんと戦闘スキル高くて
ギルドメンバーに勝てても、やっぱり好みってあるからね。
こっちからお断りすることもあるんだよ」
特に、勝って陵辱したらその女は自分の奴隷だ、と考えているタイプはギルドメンバーに嫌われる。別にその考え方が悪いとは言わないが、ギルド所属の女性たちは、戦闘と敗北の先にある陵辱を楽しみたいのであって、誰かの奴隷になりたいわけではない。女性をそういう風に扱いたいのであれば、常時奴隷扱いされたい女性が集まっているギルドに所属してくれればいいのだ。
「アジムさんはリリィさんやメルフィナさんに気に入られてるようだから、
普段と決闘後を分けて考えてくれるタイプっぽいし、
一緒に冒険もできそうだから、長く仲良くしてほしいな」
クラウスはそう言葉をしめくくって、アジムの耳元から顔を離した。
「僕のことはクラウスと呼び捨てにしてね。
さん付けされると、なんかくすぐったくて。
できればもっとくだけて話してくれると嬉しいな」
「じゃあ、俺も呼び捨てで。
クラウスも、話しやすい話し方してくれると嬉しい」
「わかった」
クラウスはにっと笑って、拳を突き出す。アジムも笑みを返して、クラウスの小さくて真っ白な拳と、自分の馬鹿でかい岩のような拳をぶつけ合った。
「それで? ギルドに所属すんのはいいけどさ。
ソフィアに支払う金はどーすんのさ?」
「あ」
あきれたようなルナロッサの言葉で現状の問題を思い出す。
「オークションで見つけてくれた鎧なんだっけ?
手付金を支払っておけば、流れるのを止めておいてもらえたりするの?」
「金額がたいしたことがないので、即時購入のみですねぇ」
「ああ、まあ、そうだよね……」
ソフィアの言葉を聞いてリリィが思わず頷く。
たいしたことのない金額すら払えないアジムはがっくりと肩を落としたが、すぐに気を取り直して、
「お金はいつまでに支払えばいいんでしょうか?」
「うーん。遅くとも今日中にはオークションハウスに支払わないといけないです」
「とりあえず僕が貸しておこうか?
金貨1000枚くらいなら、遊んでる間に稼げる金額だし」
「いや、さすがにギルドに所属してすぐにお金を借りたりするのは
申し訳ないですよ」
「でも、この鎧が流れちゃうと、
アジムが装備できるサイズの鎧を探すの、面倒なんじゃないの?」
「今までこんな大きなサイズの鎧を商品として確認したことがなかったので、
なんとも言えませんね……ただ、価格からするとすごく性能がいいので、
落とせるなら落としておくのをオススメしますよ」
「ほら」
「いや、でも……」
ルナロッサは少し離れてアジムとクラウスのやり取りを聞いていたが、結論が出なさそうなのを感じて、にやりと笑う。
「なら、メルフィナと同じように身体で払ってもらうのが良さそうだな!」
ルナロッサは自分に集中した視線の中から妹の視線に目を合わせて、
「アジム、気に入ったんだろ?
なら、やることは一つだろ」
「姉さん!」
顔を真っ赤にしたソフィアがルナロッサの背中を引っ叩くが、ルナロッサはへらへら笑っている。
「俺はそうしてもらえるとありがたいですけど……」
アジムがソフィアに目を向けると、赤い顔をしたままソフィアが何度も頷いた。
「そ、それでよかったら、お願いします」
「よーし! それじゃ、オンの都市決闘だな!
アタシら姉妹の怖さを教えてやるぜ!」
「え? あ、はい」
ルナロッサの言葉にアジムが頷いたのを見て、リリィが頭を抱え、クラウスが笑い出す。
「アジムくん、そこは止めないと。
さらっとルナも参加することになっちゃってるよ」
「いや、まあ、気づいてはいたんですけど、
商人のソフィアさん一人だと、一方的な展開になりそうでしたし、
ルナがソフィアさんの支援にはいるくらいなら、まあいいかなと」
アジムがリリィに返した言葉を聞いて、ソフィアがむっと視線を険しくし、ルナが好戦的に唇を吊り上げた。
「普通の決闘ならともかく、
オンの都市決闘で商人と盗賊を敵にまわして
その自信はすごいですね?」
「期待させてくれんじゃねーか」
戦意を燃やす姉妹に困惑して、アジムは首をかしげる。
「二人とも。
アジムくんが初心者だってこと、すっかり頭から抜けてるでしょ。
アジムくんは都市決闘の意味がわかってないんだよ」
リリィの言葉に、姉妹はそろって「あ」と声を洩らした。
「そうか。リリィとだけやってたってんなら、
基本の決闘だけしかやってないか」
「ええと、都市決闘っていうのは、
決闘用に自動生成される都市で戦うことを言うんです。
オンとかオフとかいうのは、その都市にNPCが存在するかどうかを指します。
オンならNPC(ノンプレイヤーキャラクター)が存在する都市での決闘。
オフならNPCが存在しない無人都市での決闘になります」
「……普通の決闘と、何が違うんでしょう?」
納得してルナロッサが頷く横でソフィアが都市決闘の説明をしてくれるが、アジムには通常の決闘との差がいまひとつピンとこない。
「決闘者は都市の中にランダムに配置されて決闘を行うことになります。
索敵や罠を仕掛けたりという、
お互いが見えていない間の動きが重要になるんです」
「ああ、なるほど。
実戦に近い決闘ができるんですね」
「NPCオフならそれだけですが、
NPCオンの場合はもっと違ってきます。
決闘を行う都市の規模にもよりますが、
社会性スキルが大きく意味を持つようになるんです」
アジムは言葉の意味がわからず、首をかしげる。
「NPCを決闘相手にけしかけたりできるんですよ。
一番わかりやすいのは雇うことですが、
決闘相手の犯罪をでっち上げて自治組織を味方につける、
犯罪組織に決闘相手の暗殺を依頼する、
街の有力者を性的に篭絡して味方にする、なんていう方法も取れます」
過去、決闘は戦闘力のあるプレイヤーだけのものだった。世界の富の数%を所有する大商人であっても、戦闘スキルがなければ駆け出し戦士になすすべもなく叩きのめされるのが決闘のルールだった。
だが、大商人は本当に弱いのか? 駆け出し戦士のほうが本当に強いのか?
確かに肉体レベルで見れば恰幅のいい大商人よりも、身体を鍛えている若い駆け出し戦士のほうが強いだろう。しかし、経験は? 経済力は? 人脈は? 発想力は? 肉体以外のあらゆる面で、大商人のほうが優れているだろうに、大商人が勝てないルールだけしか存在しない決闘は、おかしいのではないのか?
それに運営が応えたのがNPCが存在する架空都市での決闘だ。
決闘が成立した時点で、決闘者たちはNPCが普通に生活している架空の都市に転送される。大商人であれば駆け出し戦士に襲われる前に自分の経済力で兵士を雇い、人海戦術で圧殺することも可能だ。揉み手ひとつで貴族に取り入り、駆け出し戦士の犯罪をでっち上げて謀殺することもできる。武器や毒の提供を条件に、マフィアに駆け出し戦士を暗殺を依頼することだってできるだろう。
これらの方法は大商人だけができるわけではない。
職人や技師なら、自分の技術や製品を売って兵士を雇うことができる。
僧侶や道化なら、自分の教義や芸事で貴族に取り入ることができる。
娼婦や男娼なら、自分の身体を好きにさせることでマフィアを動かすことができる。
何をしてもいい。
それが、NPCの存在する架空都市での決闘だ。
「な、なるほど……?」
「いや、わかってねーのにわかったフリすんなよ」
「……姉さんも、都市決闘を理解するまでに結構かかったくせに」
「とりあえず、やってみようぜ?
決闘する都市はある程度設定できるから、
人口を少なくしてNPCの影響が少ない都市決闘にするからさ」
ぼそりとつぶやいた妹を睨みつつ、ルナロッサがアジムに声をかける。
「了解です。
すぐに始めますか?」
「都市決闘は普通の決闘と違って、
決着がつくまでかなり時間がかかりますよ?
アジムさん、お時間は大丈夫ですか?」
アジムがソフィアの言葉に頷くと、姉妹は笑みを浮かべた。
「都市で商人と盗賊を敵に回す怖さ、
思い知らせてあげます!」
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