【R18】VRMMO 最強を目指す鍛錬記

市村 いっち

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ローズガーデン姉妹

ローズガーデン姉妹(1)

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 姉のルナロッサがその男を見つけたのは、ソフィアの隊商で扱う新しい商品を探すための旅の途中で立ち寄った、小さな村でのことだった。村に一軒だけあった宿屋兼酒場で、移動旅程を確認しながら昼食を食べていると、ルナロッサが表情を変えないまま目だけを鋭くして、視線をソフィアの後ろに視線を投げかけた。
 姉がこういう顔をするときは、たいてい何か危険なものを見つけたときだ。ソフィアは注文のために店員を探すフリをして姉の視線を追って振り返った。
 姉の視線の先では、浅黒い肌の大きな男が食事をしていた。規格外に大きな男で、4人がけのテーブルに一人で座っているのに、一人用の席だと錯覚してしまいそうだ。腰に佩いている短剣も、男の大きさから見れば爪楊枝のようだ。背が高いだけでなく分厚い身体をしている男の、袖のない綿のシャツから覗く肩口の筋肉がすさまじい盛り上がりを見せている。丸太のような腕は、ソフィアの腰よりも太いかもしれない。筋肉が見えているのは腕だけだが、胸や腹もシャツの張り詰め方を見れば、どれほどの筋肉がそこに蓄えられているかは想像できた。
 ソフィアが男をひとしきり観察して、姉に目を戻すと、眉間にしわを寄せた姉が呟く。

「あいつ、リリィをヤった奴じゃねぇ?」

 姉の言葉を聞いて、ソフィアはもう一度男に視線を向けた。
 規格外にでかい身体と筋肉。浅黒い肌とアジア系の顔立ち。細い目と角刈りの黒い髪。

「……間違いないと、思う」

 ソフィアが頷くと、ルナロッサはその目に敵意を燃え上がらせた。

「アジム、とか言ったよな。
 ……どうするか」

 襲うか襲わないかを相談する問いではなかった。
 どう襲うかを、相談する問いかけだった。

「村が小さいから、あまり戦力になりそうな人はいないと思う。
 もう少し大きい街に行くまで、待ったほうがよくない?」

 ルナロッサは戦う気になっているが、ソフィアはあまり気が進まない。
 そもそも、ソフィアは商人だ。荒事に向いた技術はないし、荒事を好む性格でもない。荒事にかかわるときにはそれに向いた人間を雇うことにしているが、こんな小さな村では雇うことができる人間がいるか疑わしい。

「あれも人間なんだ。顔面にアタシのボウガンぶち込んだら死ぬだろ。
 鏃に毒を塗ればかすり傷をつけるだけで十分だし」
「私は壁がいないほうを心配してるの」

 ソフィアの言葉に、ルナロッサは視線をアジムとは別の方向にずらす。
 またソフィアが姉の視線を追うと、アジムとは別の男たちが食事をしていた。
 ソフィアやルナロッサとそう年齢が変わらなさそうな若い男が二人と、中年から壮年に差し掛かりそうな年齢の男が一人だ。三人とも剣と鎧を身に付けているので、傭兵か冒険者だろう。ベテランと指導される若手二人といったところか。よく手入れされている中年の男の鎧はところどころに傷が見えるが、若手二人の鎧は真新しく、傷一つない。

「おっさんは戦力だろう。
 若いのも、弾除けにはなるんじゃねぇの?」

 ルナロッサは完全にやる気だ。
 ソフィアはため息をついて、頭を切り替える。

「できれば、確実に姉さんの矢が当たる状況にしたいわ。
 あと、すぐに逃げられるようにしておきたい」
「なら、狙撃だな。
 何とかして外に連れ出して、足止めしてボウガンをぶち込む。
 距離が近ければベストだな」
「可能なら鎧を身に付けずに、外に出て欲しいわね。
 そうすると、部屋を訪ねて理由をつけて外に連れ出したほうがいいかしら」

 ソフィアは少し考え込む。

「この村にも、自警組織はあるでしょう。
 そこにあの男が山賊の引き込み役だ、と伝えて詰め所に連行してもらいましょう。
 あの男が抵抗して戦闘になってもいい。
 外に出てきたところを姉さんが狙撃してくれればいいわ」
「ソフィアが釣り出し役をやるのか?
 傭兵だけに任せてケンカでも売らせたらいいんじゃねぇの?」
「自警組織を巻き込むなら、証言者の私がいないと説得力に欠けると思う。
 傭兵3人と自警組織からも1人くらいはついてくるでしょうし、
 壁役が4人もいれば逃げるには十分よ」
「山賊だなんて話、信じるか?」
「賄賂を渡せば、話を聞きに行く程度のことはするでしょう。
 話を聞きに行ったときに雇った傭兵に抜剣させればなし崩しに戦闘に巻き込んでしまえると思う」
「まあ、その辺はアタシよりソフィアのほうが上手いだろうし、任せるさ。
 アタシは宿の出入り口を狙撃できる場所を探して、隠れてるよ」

 そこまでは気楽に言葉を口にしていたルナロッサだったが、急に気配を真剣なものに変えると、

「わかってると思うけど……
 間違っても、一人でなんとかしようなんて思うなよ」
「わかってるわよ。
 私は荒事は向いていないんだから」
「アタシが近くにいるから、マズイと思ったら叫ぶんだぞ
 絶対に助けてやるから」

 ソフィアは姉の言葉に苦笑とともに頷きを返した。
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