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 「魔獣が出たの?どっちに行った?」

 私は子供たちに向かって叫んだ。

 「あっちー」

 子供たちは森の中を指差すと、そのまま駆けて行った。

 (後ろの森で魔獣が出たみたい。私とウエイで先にいくから、応援お願い)

 リュウイに霊伝しながら、私とウエイは魔獣を追い始める。

 「ねぇ、ウエイ?魔獣って何食べるの?」

 「そうだな。霊獣と一緒で、魔力が好物。特に魔界樹の気が好きみたいだぜ」

 「なるほど。じゃあ、霊力は食べない?」

 「それは知らないなあ。」

 つまり、霊力が必要なければ、魔力のない天界では生きられないはずだ。でも、魔獣は生きている、とするならば、魔力があるか、魔力以外の食べ物があるから、だろう。

 「私の仮説が正しいとすれば、疫病にかかった人が魔力の替わりになる?」

 ウエイがそうかもな、とアーレイの一歩前に飛び出した。

 「アーレイ、後に下がれ。」

 ウエイの視線の先にある茂みで赤い眼が光っていた。

 気配から一頭しか感じないが、まだ潜んでいるかも知れない。

 この森の奥は天界樹とも繋がる神聖な区域もある。なるべく早く魔獣を保護したかった。

 「アーレイ、魔獣に話しかけてみたが、反応がない。捕捉具はあるから、捕らえたら魔界に持ち帰る」

 「了解、と言いたいけど、少し調べたいから何匹か預けてもらえない?」

 分かったと言うと、ウエイが身構える。

 「アーレイ、もっと後に下がれ!」

 その瞬間、魔獣が茂みから飛びかかってきた。

 (狼?)

 ウエイが何とか捕捉しようと魔獣の横に回り魔獣を押さえようとする。

 すると、魔獣はなぜだか私に向かって飛びかかってくる。

 「アーレイ!逃げろ!」

 な、何?

 私?

 私は逃げようとして、走り始めると、魔獣が上から先回りしてくる。

 私は後退りしながら、魔獣と向き合う。後ずさりしながらもどんどん心臓の鼓動が速くなる。

 魔獣は息をきらし、ギラギラした瞳で私を見ていた。

 (――お腹が空いてる?)

 まるでアーレイに引き寄せられるように、魔獣がまた飛びかかる。アーレイの背丈よりも大きな狼が牙を剥き出し、アーレイを食いちぎらんばかりの勢いだ。

 (押し倒される………!)

 恐怖で目を閉じると、ウエイがアーレイの前に出て魔獣を制止した。

 「アーレイ、足に捕捉具!」

 ウエイから捕捉具を受けとると、震える手で足に取り付ける。

 多少手間取りながらも取り付けると、魔獣が大人しく項垂れた。ウエイが狼の魔獣を地面に横たえる。

 ……ふぅ。

 冷や汗を拭いながら、魔獣を見つめる。

 一般的には、霊獣は白から銀の毛並みが多く、魔獣は黒系統の毛並みが多い。

 この魔獣も毛並みは黒だった。

 (魔獣は間違いなく私に向かって飛びかかってきた……!)

 そのことの意味を考えていた。

 すると、ムーパがいきなり飛び出し、勢いよく駆け出した。

 「む、ムーパ?」

 ムーパが何かを見つけたのかも知れない。

 「ウエイ、ちょっと追いかけてくる!」

 魔獣を放置するわけにもいかず、ウエイは迷いながらも留守番を決めたようだ。

 「すぐ戻れよー。何かあったら霊伝しろよー」

 ウエイの声を背中にアーレイはムーパを追った。
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