29 / 41
27
しおりを挟む
だんだんと森の深くまで入りこんでしまったようだ。
木々の茂みが厚く、太陽の光が届かないためか、昼間なのに薄暗い道が続いている。
薄暗い道はアーレイをだんだんと心細くさせる。
なのに、ムーパを見失ったままだ。
「む、ムーパ、ちょっと、待って。どこ?」
アーレイの声が森にこだまする。
しばらく進むと、聞きなれた唸り声が微かに聞こえてきた。
(ムーパ!)
暗闇に目が慣れてきたのか、次第に前方で激しく揺れている尻尾が目に入った。
駆け寄った先には、かなり大きな物体が横たわっていた。
(魔獣?これは……?)
大きな翼。するどい爪。顔は暗くて良く見えないが、推測するに龍ではないか。
かなり弱っているようだ。やはりお腹が空いているのか?
(ウエイ、リュウイ。森の奥で龍の魔獣を見つけたんだけど、弱っているみたい。今、一緒にいるんだけど、ウエイ。捕捉具をお願いできない?)
アーレイは恐る恐る龍に近づき、お腹のあたりを撫でてみた。
微かに呼吸をしているようで、お腹が小さく上下している。
どうもこの龍はアーレイに何かをしてほしいようで、苦しそうに懇願しているように思える。
「……どうしてほしいの?」
物資移動で届いた捕捉具をとりあえず脇に置き、龍の目線の高さまで屈む。
その瞬間、龍の口が開き、アーレイの腕をなめ始めた。
(……ひゃっ!!)
ザラザラとした少しごわついた感じの舌の感触が、アーレイの腕を行ったり来たりしている。
(も、もしかして……!)
アーレイは、その龍に舐められている箇所を見てみると、やはり血の跡があった。
どこか森の中で知らない間に切ってしまったのだろう。
擦り傷から多少の出血が見られた。
(やっぱり……。)
恐らく魔獣はお腹が空いている。
そして、天界では霊力が満ちていてなかなか空腹が満たされない。
魔力を持つウエイがいたのに近寄ることをせず、私に近寄ってきた。
魔力よりも彼らにとって美味しいものがもっとあったから――。
それが、自分の血ではないか、と。
まだまだ推測の域だが、イルスに盛られた毒は魔界樹と関係のあるものなのではないかと。
それが体内にあるアーレイの血は魔界樹の気が大好きな魔獣にとっては何よりのご馳走なはずだ。
(私の霊力でも効果があるかな?)
いきなりまた暴れたら厄介なため龍に拘束具を足に取り付け、アーレイは龍のお腹のあたりに自分の霊力を送ってみた。
(お願い……。元気になって)
願うように気を注ぐ。
辺りが一瞬で光に包まれる。
自分にはジーエンのような治癒霊力はないが、もし今体内にその魔界樹と関係する血が残っているとするならば自分の霊力を通して届く可能性があるのではないか、と。
ムーパが何やら気が付いたのか、アーレイの足にすり寄ってきた。
「どうしたの?ムーパ。龍がどうかした?」
アーレイ一旦霊力を送るのをやめて龍全体に視線を移した。
すると、龍全体が光輝き始めているのが分かった。
(――これは、もしかして――!)
更に力をこめて霊力を送ると、みるみるうちに龍の体から黒い靄が現われ、上空に渦となった。
(もしかしたら、もともと霊獣だったものが、何らかの行為で魔獣に見せかけられていたのかも!)
だんだんと仮説が断定に変わってくる。
アーレイはいったん龍の補足具をはずしてみようと試みるが外し方が分からないため、とりあえずは霊力を送ることに集中した。
(頑張って!もう少し!)
龍の体全体から黒い靄が全てなくなるまで……。
しばらくすると、龍の体が更に光を帯びると私は霊力を注ぐのをやめ、暗闇に向けて叫んだ。
「大地浄化!」
一斉に黒い靄が消滅する。
(ふぅ。結構な大仕事………)
龍は、とても安らかな表情ですやすや眠っていた。暗闇ではっきりしないが、毛並みも戻ったように思う。
(ウエイの魔力に反応しずらかったのも、霊獣だったからかもね……)
残りの魔獣もどき、もしっかり自分が対応する必要がありそうだ。
その後、合流したウエイとリュウイに事情を説明し、ウエイが保護した狼もやはり私の霊力で霊獣に復活してくれた。
捕捉具を外し、しばらく容態観察のために東の国で預かることにした。
おそらく、疫病の原因と、霊獣の魔獣化もつながりがある。
ふと、思う。
魔獣化した霊獣でアーレイを襲うつもりだったのでは?と。まだ原因が特定できていない以上、
油断は禁物だ。
残りの3頭の魔獣化した霊獣もムーパのお手柄で何とか保護することに成功した。
「悪いんだけど、今から天界樹行かない?」
今回のことは魔界樹に関係がありそうだし。だとしたら、天界樹にもヒントがあるかもしれない。
その上、天界樹は魔獣化した霊獣を休ませる場所としては最高の場所でもある。
「私もちょっと霊力を補充したくて……」
霊獣二頭に結構な霊力が失われた。
アーレイクラスの神仙ならこれくらいではそこまで問題はないが、出来れば霊力を満たしていきたい。
「俺も天界樹行ったことないしな。アーレイ、案内頼む」
「じゃあ、霊獣たちも一緒に。リュウイ、悪いけど後から霊獣たち、転移よろしくね」
ウエイが霊獣に取り付けた拘束具を外すと、アーレイと共に先に光に消えた。
木々の茂みが厚く、太陽の光が届かないためか、昼間なのに薄暗い道が続いている。
薄暗い道はアーレイをだんだんと心細くさせる。
なのに、ムーパを見失ったままだ。
「む、ムーパ、ちょっと、待って。どこ?」
アーレイの声が森にこだまする。
しばらく進むと、聞きなれた唸り声が微かに聞こえてきた。
(ムーパ!)
暗闇に目が慣れてきたのか、次第に前方で激しく揺れている尻尾が目に入った。
駆け寄った先には、かなり大きな物体が横たわっていた。
(魔獣?これは……?)
大きな翼。するどい爪。顔は暗くて良く見えないが、推測するに龍ではないか。
かなり弱っているようだ。やはりお腹が空いているのか?
(ウエイ、リュウイ。森の奥で龍の魔獣を見つけたんだけど、弱っているみたい。今、一緒にいるんだけど、ウエイ。捕捉具をお願いできない?)
アーレイは恐る恐る龍に近づき、お腹のあたりを撫でてみた。
微かに呼吸をしているようで、お腹が小さく上下している。
どうもこの龍はアーレイに何かをしてほしいようで、苦しそうに懇願しているように思える。
「……どうしてほしいの?」
物資移動で届いた捕捉具をとりあえず脇に置き、龍の目線の高さまで屈む。
その瞬間、龍の口が開き、アーレイの腕をなめ始めた。
(……ひゃっ!!)
ザラザラとした少しごわついた感じの舌の感触が、アーレイの腕を行ったり来たりしている。
(も、もしかして……!)
アーレイは、その龍に舐められている箇所を見てみると、やはり血の跡があった。
どこか森の中で知らない間に切ってしまったのだろう。
擦り傷から多少の出血が見られた。
(やっぱり……。)
恐らく魔獣はお腹が空いている。
そして、天界では霊力が満ちていてなかなか空腹が満たされない。
魔力を持つウエイがいたのに近寄ることをせず、私に近寄ってきた。
魔力よりも彼らにとって美味しいものがもっとあったから――。
それが、自分の血ではないか、と。
まだまだ推測の域だが、イルスに盛られた毒は魔界樹と関係のあるものなのではないかと。
それが体内にあるアーレイの血は魔界樹の気が大好きな魔獣にとっては何よりのご馳走なはずだ。
(私の霊力でも効果があるかな?)
いきなりまた暴れたら厄介なため龍に拘束具を足に取り付け、アーレイは龍のお腹のあたりに自分の霊力を送ってみた。
(お願い……。元気になって)
願うように気を注ぐ。
辺りが一瞬で光に包まれる。
自分にはジーエンのような治癒霊力はないが、もし今体内にその魔界樹と関係する血が残っているとするならば自分の霊力を通して届く可能性があるのではないか、と。
ムーパが何やら気が付いたのか、アーレイの足にすり寄ってきた。
「どうしたの?ムーパ。龍がどうかした?」
アーレイ一旦霊力を送るのをやめて龍全体に視線を移した。
すると、龍全体が光輝き始めているのが分かった。
(――これは、もしかして――!)
更に力をこめて霊力を送ると、みるみるうちに龍の体から黒い靄が現われ、上空に渦となった。
(もしかしたら、もともと霊獣だったものが、何らかの行為で魔獣に見せかけられていたのかも!)
だんだんと仮説が断定に変わってくる。
アーレイはいったん龍の補足具をはずしてみようと試みるが外し方が分からないため、とりあえずは霊力を送ることに集中した。
(頑張って!もう少し!)
龍の体全体から黒い靄が全てなくなるまで……。
しばらくすると、龍の体が更に光を帯びると私は霊力を注ぐのをやめ、暗闇に向けて叫んだ。
「大地浄化!」
一斉に黒い靄が消滅する。
(ふぅ。結構な大仕事………)
龍は、とても安らかな表情ですやすや眠っていた。暗闇ではっきりしないが、毛並みも戻ったように思う。
(ウエイの魔力に反応しずらかったのも、霊獣だったからかもね……)
残りの魔獣もどき、もしっかり自分が対応する必要がありそうだ。
その後、合流したウエイとリュウイに事情を説明し、ウエイが保護した狼もやはり私の霊力で霊獣に復活してくれた。
捕捉具を外し、しばらく容態観察のために東の国で預かることにした。
おそらく、疫病の原因と、霊獣の魔獣化もつながりがある。
ふと、思う。
魔獣化した霊獣でアーレイを襲うつもりだったのでは?と。まだ原因が特定できていない以上、
油断は禁物だ。
残りの3頭の魔獣化した霊獣もムーパのお手柄で何とか保護することに成功した。
「悪いんだけど、今から天界樹行かない?」
今回のことは魔界樹に関係がありそうだし。だとしたら、天界樹にもヒントがあるかもしれない。
その上、天界樹は魔獣化した霊獣を休ませる場所としては最高の場所でもある。
「私もちょっと霊力を補充したくて……」
霊獣二頭に結構な霊力が失われた。
アーレイクラスの神仙ならこれくらいではそこまで問題はないが、出来れば霊力を満たしていきたい。
「俺も天界樹行ったことないしな。アーレイ、案内頼む」
「じゃあ、霊獣たちも一緒に。リュウイ、悪いけど後から霊獣たち、転移よろしくね」
ウエイが霊獣に取り付けた拘束具を外すと、アーレイと共に先に光に消えた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
118
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる