婚約破棄されたい悪役令嬢は、今日も愛人の子を愛でる

紅位碧子 kurenaiaoko

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6 正攻法が通じない

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領地から両親が戻る知らせが入りカイトとロデムに連絡を入れた。

ロデムからは口頭で両親(国王夫妻!)に経緯を説明し、仮承諾をもらったとのこと。

(隣国のしがない伯爵家の娘なのに……。ロデムはどんな風に話たのかな?)

ロデムからは三男で比較的自由にしているし、元々結婚したら公爵位をもらうか、どこかに婿に入るかと相談していたそうだ。

幸い婚約者もおらず、商会の仕事もしてる関係でボールドワルドに婿入りするも問題ないようだ。

気になるオリーブの婚約者候補としては、領地が近い侯爵家が最近資金繰りが苦しいらしく、援助と引換なら、と仮合意を取り付けたらしい。

(まぁ、領地が拡大すれば売上も上がるし、援助しても問題ないかな。オリーブもになれるしね)

歴史ある侯爵家の家柄
年齢的に釣り合う嫡男との婚約

(侯爵夫妻も考えの持ち主だし……)

あの不良債権なエリオット様とは比較出来ないほどの有料物件だ。

(いよいよ今からファーストラウンド開始!)

私は気合を入れてロデムことランドールを出迎えた。

◇◇◇

「ロデム、わざわざありがとう。本当に感謝してる。警備も手薄だけど、大丈夫かな?」

護衛を数名連れ立ち現れたロデムを客間に案内した。

「どのみちも何人か付いているから大丈夫だ」

ロデムに耳元で囁かれると、心臓がキョンと高鳴った。

私は両親を呼びに向かうと、何と今はあまり会いたくないオリーブとエリオット様に鉢合わせしてしまった。

「お姉様?今、男性がお見えになったようだけど……」

(なんて目ざとい…。タイミングが悪すぎるっ!)

客間に乱入されると面倒なので、商会関係者とだけ伝えた。

(嘘でもないしね……)

ヒヤヒヤしたがとりあえず二人はイチャイチャするためにオリーブの部屋の方向に消えて行った。

(ふぅ……)

「お父様、お母様。お話させて頂いた方がお見えです。対応、よろしくお願いいたします」

私は両親を客間に促した。
正直、事前にロデムのことを話したがびっくりするくらいに反応が悪かった。

隣国のそれも王族と縁続きになれるのに、全く関心がない。おまけに、何かにつけてエリオット様を持ち上げる。

(どこをどう見たらエリオット様が婚約者としてふさわしいんだか……)

贔屓目に見ても、幼馴染以外に出てこない。

容姿も家柄も普通。
財産があるわけでも、能力があるわけでもなく、単なるお金をせびる寄生虫……。伯爵家には最も不要な人物。

両親からは、隣国の王族だから仕方なく対応するとまで言われた。

(本当に、まるでエリオット様に洗脳されてるみたい……)

が、婚約者の私は正常な思考をしているつもりだった。

「ジョセフィーヌ?顔合わせしたら、すぐに帰って頂くわよ?だって、エリオットに失礼でしょう?」

お母様!
それを言うならば、領民に失礼ですっ!
あんな紐男……!

本来ならば、未婚の淑女であるオリーブを傷物にしただけでも十分に婚約破棄できる事由だ。

なのに両親と来たら、

『オリーブちゃんだけでも、エリオットと仲良く出来て良かったわ』

なんて言ってる始末……。

信じらないほどの脳内お花畑なのか?

が、両親の領地経営の手腕も素晴らしいし、領民からの信頼も厚い。

もうお手上げである。

一応、ロデムには忌憚なくそれらは伝えてあった。

客間に到着し、ロデムと簡単に挨拶した両親は開口一番とんでもない発言をした。

「ランドール殿下、いくら王族だからといって、婚約者のいる女性の婚約者に名乗りでるとは不謹慎ではないか」

「確かに、ジョセフィーヌ嬢には名ばかりの婚約者がいる。しかし、ジョセフィーヌ嬢はその婚約者からは邪険にされ、妹のオリーブ嬢と関係があるそうだ。夫妻も周知と聞いている」

それが何か問題になるのかと言わんばかりに、両親は耳を貸さなかった。

「殿下、伯爵家の問題をそれも隣国の王子が干渉するのはあまり感心しない。とにかく、伯爵領はジョセフィーヌが経営すれば何の問題もない。おまけに、幼馴染のエリオット君と結婚するのだ。姉妹で彼と仲良くすれば私たちは何の問題もない」

またしてもお父様からは信じられない発言が飛び出す。

「ちょっ……お、お父様?本気ですか?本気で実の娘を不幸にするつもりですか?」

「不幸とは何だっ!エリオット君に失礼じゃないか!」

「……それほどまでにエリオット様と結婚させたいのであれば、オリーブでお願いいたします。二人は愛しあっているそうですよ?今日だって二人は……」

堂々と身体の関係を持っているの、だ。

「…では、オリーブに他に婚約者が出来たら考えて頂けますか?オリーブをよい家柄に嫁がせたいのです」

「……ほぅ?そんな相手がいるのか?」

ロデムが持参した書類をお父様に差し出した。

「オリーブちゃんのお相手?」

お母様も釣り書を見る。

「あら、隣の侯爵家の!あのコ良い子よね~」

お母様が珍しく?肯定的な意見を述べてくれる。

「……どのみち、最近あちらの領地が金銭的に厳しいから援助を期待してだろう。政略的としてもそこまで旨味はない」

「だそうよ?ジョセフィーヌ?残念だったわね」

一体この両親は何なのだろ?
本当に頭にくるっ……!

「……では殿下、もう用事は済んだだろうか。お帰り願いたい」

正攻法では全く通じない……。

お父様は立ち上がると、殿をドアの方へと促す。

「最後に、伯爵。伯爵はこの紅茶が好みなのだろうか?とても香り高いが、いまだかつて飲んだことのない味わいだ。もし良ければ少し分けてもらえないだろうか」

ロデムの申し出に分かった、とばかりに茶葉の用意を家令にさせた。

「この茶葉は、エリオット君の領地の品でね。かなり珍しい品種で希少価値の高いものを毎月もらってるのだよ。確か……名前が……」 

「……モーイエですわ、お父様」

早く帰れと言わんばかりに家令から茶葉を受取、殿下に渡す。

殿下は私を一瞥し少し頷くと護衛と共に馬車に乗り込んでいった。

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