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2人の聖女編 〜ガリレア聖教会と2人目の聖女〜
312.おっさん、決意を固める
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ひたすら考えた。
ウィルと2人で昼食を食べる間も、黙々と口を動かしながら眉間に皺を寄せて考える。
午後になってから、再びウィルに質問をしてリアムとカーターの人となり、そして互いに主張しているだろう教会経営について教えてもらった。
リアムは過度な寄付を受け付けず、施設維持に必要であったり、信者の信仰生活に必要最低限なことにしか寄付金を使わない。
一度に多額な金が必要な場合は、その都度寄付を募るが、特定の誰かに対して多くの寄付金を募るのではなく、寄付金に上限を設け、多くの信者に平等な寄付を求めた。
いわゆる質素な経営方針である。
方やカーターは各国の富裕層と密接な関係にあり、寄せられる寄付は全て受け取る。
集められた寄付金を私欲のために使っているわけではなく、古くなった教会の建て替えや、新たな地域への教会建設などに使われている。
だが、各司教区の大聖堂や教会を華美にする装飾品や美術品にも寄付金を注いでおり、カーター主導で建てられたり、改築、修繕された教会や聖堂は煌びやかで過度に立派であった。
話を聞く限り、創造神に対する信仰の深さには差がない。
あくまでも方向性の違いだと思った。
リアムのように実直で、信仰心だけを求めるようなやり方も理解出来る。
あくまでも信仰が大前提であり、いわゆる箱物は最低限あればいいというのがリアムの考えなのだろう。
だが、聖教会という大規模組織を経営するにあたっては、カーターのような行動も容認出来るところもある。
世界各地にいる信者の祈りの場を整えるのは正解であり、新たな信者を獲得するために箱物を用意し飾りつけることも大切だと思う。
末端の信者達全てが強い信仰心を持っているわけではないだろう。
流石にあまりにもボロボロだったり質素過ぎると、信者の心が離れてしまう可能性もある。
だが、華美にし過ぎてもまた信者の心は離れてしまうだろう。
俺は無神論者で、教会の人間ではないから言えるのだが、どちらの言い分も正しく、どちらの言い分も極端で、2人を足して2で割ればちょうど良いのに、と思ってしまった。
「以上が教皇選抜におけるお二人の建前上の主張です」
ウィルが散々話した後にニコリと笑い、俺は一瞬キョトンとしてすぐに笑った。
「建前かよw」
「実は、教会内部にも我々は潜入していまして」
「ですよねーww」
実際に不干渉という原則はあるがそこは不問にする。
国に匹敵するほどの大組織である以上、無視することは到底出来ないだろう、と俺も思った。
建前の主張は参考にならないとして、黒騎士から見た実際の2人を聞いた。
リアムは真面目で実直だが信仰心が厚すぎて周りが見えていない傾向にある。倹約家であり頑固者。
そしてカーターは所謂強欲。立場を利用して私利私欲に走っている。教会への献金の一部を着服している疑いがある。
「そう考えると、やっぱりカーターの方がヤバい奴だな」
「だと思います。数年前、聖王国で新たな教会建設の際、土地を開け渡さなかった所有者を手酷いやり方で追い込んだという噂もあります」
「追い込まれて、その人はどうなったわけ?」
まるで元いた世界にもいた地上げ屋だなと思いつつ尋ねた。
「今となってはもうはっきりした経緯は調べようもないんですが…」
ウィルが苦笑し、さらに言い淀む。うっかり余計なことを言ってしまったという表情をした。
その表情に俺はある程度の酷い結果を予測した。
「聖王国の外れ、公国との国境近くにある漁村からほど近い、とても小さな集落だったんですが…」
話し始めたウィルがだんだんと険しい表情になった。
「その集落の者達が抵抗したため一度は諦めたようです。
ですがその数ヶ月後、集落自体が無くなりました」
「……は?」
無くなるとはどういう意味か。まさか消えたわけでもないだろうに、と首をかしげる。
「住んでいたのは数家族で30人程度だったようですが、戦場から逃げ出した兵士が集落を襲ったんです」
「戦場…?まさか、それって聖王国との?」
「ええ。時期的に言うと終戦間際です。
襲われ抵抗したのでしょう。集落の人の他にも聖王国兵士の死体もあったようで、戦場を離脱し野盗化したのだろうと報告されました」
ウィルがやりきれないという表情を浮かべ、続きを話す。
「そして、その場所に教会が建てられたのです。名目は集落で亡くなった人を弔うためということでしたが、教会建設と同時にそこに多くの家も建てられ、たった1年で村が出来ました」
「……」
俺は唖然とした。
「海を望める教会として観光地化され、信者のみならず街道を通る旅人も立ち寄るようになって。
5年経った今では、漁村も含めたちょっとした街になっています」
「それって…」
「ええ。カーターが土地を手に入れるために襲わせたともっぱらの噂です。
兵士も本物だったのか怪しいんですよ」
「敗戦が迫る状況を利用したってことか…」
「他国のことなので状況からの推察や、噂によるものなので真実はわかりません」
「でも、もし事実だとしたら、利益のために人を殺すことも厭わない人物ってことになるよな」
「はい。他にも黒い噂が多々ある人です」
そこまでヤバい人物だとは思わなかった。
おそらくその新たに作った街からカーターに寄付という形で献金されているのだろう。
立地的に、その場所に教会を建て街を作れば儲かると判断したのだろうが、そのために先住者を追い出すのではなく、殺すなんてあり得ない話だ。
そのカーターが聖女を連れてカレーリアに向かっている。
噂が事実ならその目的は教皇になって聖教会を私物化するためだ。
現状はリアムの方が有利なのだろうが、聖女という切札を用意したことで、形成逆転を狙っている。
もしカーターが教皇になったら聖教会はどうなるのか。
それについては俺がどうこう言うことはないのだが、教皇としてカレーリアに住むことになるのはかなり問題だと思った。
聖教会だけではなく、カレーリアの街にも、公国にも何かしらの影響を及ぼすのではないか。
しかもそれは小さなことではなく、きっと大きな問題へと繋がっていくはず。
カーターの教皇就任は、絶対に阻止するべきだ。
ロマのためにも、カレーリアのためにも、ゆくゆくは国のためにも。
そう考え、俺は決意を固めた。
夕食の前にロイとディーが今日の仕事を終えて瑠璃宮に帰ってきた。
今朝は幾分顔色が良くなったと思ったロイが、またげっそりしている。
どれだけ頭をフル回転させて頑張っているのか、その疲れようを見て気の毒になった。
「おかえり」
リヴィングで2人を出迎えるとハグをしてやる。
「ただいま~」
ロイは疲れた声を出しながら俺に抱きついてスンスンと匂いを嗅いでいる。
ウィルは2人と入れ違いに帰ることになり、俺は改めて教えてくれたことに対して礼を言った。
「何かあったんですか?」
「ウィルにたくさん教えてもらってさ。後で話すよ」
3人で食堂に向かいながら、夕食後に話があると言った。
夕食後、共有リヴィングにあるダイニングに座って食後のお茶を飲みながら寛ぐ。
ロイはテーブルに突っ伏してぼんやりしていた。
「まじで疲れてんのな」
「まあな…。1週間分の仕事を全部前倒しでやらにゃならんから…」
カレーリアに行っている間の仕事を一気に進めているらしく、手続き、申請、計画書、報告書、書類、書類、書類に追われているとボヤいた。
「目が痛い、頭が痛い、腰が痛い、もう書類は嫌だ…。動きたい、暴れたい、訓練したい…」
ブツブツと小さい声でボヤいているロイの頭を、くすくすと笑いながら慰めるように撫でてやる。
「もっと撫でて…」
撫でられるのが気持ち良いのか、目を閉じてうっとりしていた。
そんなロイを見てまんま犬だな、と犬属獣人の習性なのかと考えながら、慰めるように頭を撫でた。
「ショーヘイ、魔力はどうですか?」
「ああ、もうだいぶ回復したよ。9割以上元通り」
「回復も随分と早くなりましたよね」
「…確かにそうだな」
ディーに言われて気付いた。
今回使った魔力量なら以前なら丸1日以上寝込んで、ベッドから起きられなかっただろう。だが、今は一晩寝れば日常に差し支えないほどには回復する。
体力がついたのか、大量消費に慣れたのか、と俺は自分でも不思議に思った。
だが今はそれをゆっくり考えている暇はない。優先事項は他にある。
一杯目のお茶を飲み終わったところで俺は話を切り出した。
席を立って新たにお茶を用意しながら、ウィルから教わった聖教会の話をする。
「カレーリアに移転した理由知ってる?」
「ええ。知ってますよ」
ディーが答え、ロイはただ頷く。
流石王族。ロイも子供の頃にディーと一緒に勉強したと聞いたから、きっと公国側の歴史の一つとして移転の経緯を知っているのだろうと思った。
「今回の教皇候補の2人についてはどこまで知ってる?」
「あまり詳しくは…。リアム大司教には何度も会ったことがありますが、とても物腰柔らかで穏やかな人という印象です。
カーター大司教は…あまりいい噂は聞きませんね」
ディーが答えている最中に、ロイがムクリと起き上がり俺を見た。
「ショーへー、何を考えてる」
何かを察したロイが僅かに眉間に皺を寄せる。
「ロマ様が気になってさ…」
俺が苦笑しながら答えると、ロイは椅子にきちんと座り直し、体を俺に向けた。
「話してくれ」
ロマの名前が出てロイはますます真剣な表情になった。
それはディーも同じで、テーブルに身を乗り出してくる。
そんな2人の食い気味の姿勢に、2人も俺と同じように、昨日のロマの表情を見て心配なんだと思った。
「ウィルに教えてもらったんだけど…」
新たなお茶を淹れたティーカップをそれぞれの前に置き口を開いたが、そこでリヴィングのドアがノックされた。
ディーがどうぞ言いながら立ち上がり、誰だろうと出迎える。
「こんばんは」
ドアを開けて入ってきたのはギルバートだった。
ギルバートにもお茶を用意してテーブルに置くと、ありがとうと言いながら香りを楽しんだ後に口に含む。
「夜分遅くにすみません」
一口飲んだ後に謝罪から始まった。
時刻は8時半を過ぎ、遊びに来るには遅い時間だ。
「いえ、大丈夫です。何かあったんですか?」
薄々とギルバートの目的がなんなのか、きっと俺と同じだと思った。
「ショーヘイ君にお願いがありまして」
「ロマのことだろ」
「今ちょうどその話をショーヘイから聞くところだったんです」
ロイが言いディーが続けると、ギルバートが驚いたような表情をしたがすぐに笑顔を浮かべた。
「ロマ様はリアム大司教に教皇になってもらいたいんですよね?」
「ええ。今回の選抜で負ければ、恐らくは彼は…」
「破門されてしまう」
ギルバートが言い淀んだので続きを俺が言うと、彼は苦笑いを浮かべ、そして頷いた。
ロイとディーはその話を知らないのだろう。目を丸くして驚いた表情をしている。
「つまり、カーターにとってリアム様は邪魔者でしかないと」
ディーが言葉で確認する。
カーターにとっては、リアムは組織から排除したい相手ということだ。
「選抜候補がカーターでなければ負けても問題ないのですが…今回は相手が悪い…」
ギルバートもカーターの黒い噂やリアムとの関係も聞き及んでいるのだろう。
「当然ロマも知ってるわけだよな」
ロイが確認するように聞いた。
「ええ。だから1人で何とかしようと思っているようですが…」
ギルバートは彼女の意固地っぷりに苦笑いを浮かべた。
「今回は明らかに分が悪い。
カーターが聖女を見い出したという功績はかなり大きいのです。
選抜投票直前に公表されれば、カーターに票が傾く可能性が高い」
「だからショーヘイにリアム側につけってことか」
ロイが早急に結論を出す。
「そうです。聖女に対抗するために聖女を……。ですが…」
ギルバートが苦笑いを浮かべる。
「そう簡単な話ではありませんね」
ディーが眉間に皺を寄せて腕を組んだ。
「立場の問題か」
ロイもすぐに気付き、ディーと同じように腕を組んだ。
考え込む2人を見て、ロイもディーも公国の聖女である俺が宗教問題に介入することは出来ないと理解していると思った。
俺は2人もギルバートも、ロマのためにと考えていることが嬉しかった。
俺も同じ気持ちだから、2人に話そうとしていたのだ。
ギルバートがいるならなお心強い。
「政教分離の原則を破らないでリアム大司教を助ける方法が一つだけある」
そう言うと、3人の視線が俺に集まる。
「……ショーヘイ。原則を知ってるんですか?」
ディーが驚いて俺に尋ねた。
「知ってる。俺が居た国でも同じ憲法があったからな。きっとシュウ様が作った憲法でしょう?」
ニコリと笑うと、ギルバートは驚いた表情をした後に、とても嬉しそうに笑った。
「そうです。公国憲法において、いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
そう定められています。
なるほど。シュウと同じ国の出身ならショーヘイ君もよく理解していますね」
心なしかギルバートの頬が赤みを帯びて興奮しているような表情を見せる。
「さっきお前が話そうとしていたことか?」
「ああ。そうなんだ。
昼間、ウィルから色々聞いてさ」
俺はウィルから聞いた情報を全て話して聞かせた。
特に集落の話はロイとディーは知らなかったようで、思い切り眉間に皺を寄せて僅かに怒りを滲ませていた。
「カーターみたいなヤバい奴がカレーリアに住むなんて、絶対に阻止すべきだ。
1番はロマ様のためだけど」
「確かに、そんな奴が公国になんて、国にも影響が出ますね」
ディーも俺の意見に同意し、うんうんと頷く。
「で?その方法ってなんだ」
ロイが早くとせっつくように聞いてくる。
「単純な話だよ。王国聖女が偽物であると証明するんだ」
俺の言葉に、ロイとディーはポカンと口を半開きにし、ギルバートはさらに嬉しそうに笑った。
どうやら。ギルバートも同じことを考えていたようで、だから俺にお願いがあると言ったのだと察した。
ダイニングテーブルに4人で顔を突き合わせて話を進める。
新たにお茶を淹れ、お茶菓子も用意して、ディーは紙とペンを持ってきた。
「偽物なのか?」
ロイがまずそこを突いてくる。
「多分ね。確証はないけど、聖女だと偽っている可能性は高い」
「その根拠は?」
「聖女認定だよ。
王国聖女は、聖教会から聖女だと認められたい。だからカーターに加担してるんだ。リアム大司教が教皇になったら、きっと認定されないってわかってるんだよ」
「何故そう言い切れるんだ?」
「それはおそらくこれからわかるでしょう。今ユリア様が情報を集めて精査していますが、彼女が行使したとされる奇跡はかなり曖昧で誇張も含まれているようです」
ギルバートはもうすでにユリアと話をしたのだろう。
ユリアは得た情報から、王国聖女の力が聖女とは呼べないものであると疑い、確信に迫りつつあると予測した。
「おそらく彼女自身もある程度の力はあると、俺は考えてる。
一般的な治癒師以上の力は確実に持ってるんだろうけど、それが聖女の奇跡と呼べる代物じゃないんだろうな」
「つまり、魔力はそこそこあるということですか」
「多分ね。彼女自身の魔力総量が多いのか、それとも何かトリックがあるのかはわからないけど」
俺はここでロイとギルバートにも俺の使うヒールが奇跡と呼ばれるのは、単純に使う魔力量が桁違いなだけだと説明した。
「聖女だから特別なヒールじゃないのか」
ロイも特別だと思っていたと言い、俺は笑う。
「特別でもなんでもないんだ」
話せば長くなるから後で、と先に進む。
「話を元に戻すと、王国聖女とカーターは相互利益な関係ってことだ。
カーターは教皇になって聖教会を私物化したい。
王国聖女は…、何故聖女になりたいのかは…目的はわかならい」
「目的はこの際どうでもよいでしょう。2人を阻む行動が重要ですから」
ギルバートがニコニコと俺に微笑みかける。
「きっとギル様も俺と同じ考えだったんですよね?」
「その通りです。原則があるので表立ってリアムに協力は出来ませんし、させられません。
ですが、偽聖女に本物の聖女の力を見せつけることは、何も問題はありませんからね」
「……つまり……」
ディーがニヤリと笑い俺と目を合わせた。
「魔力測定の日を教皇選抜にぶつける」
俺も同じようにニヤリと笑う。
「正確にはカーターと王国聖女が到着する日ですね。
おそらく1月30日あたりにカレーリアに到着するはずです」
「その日に合わせて俺達もカレーリアに行く。
おそらく王国聖女は何かしらのパフォーマンスをするつもりだろうよ。口でいくら聖女だって言っても信じてもらえないしな」
「偶然その場に居合わせるってかww」
「そ、偶然なw」
「ただ、時間もありません。それまでに王国聖女の素性やその力、そしてパフォーマンスとして何をしようとしているのかを探る必要があります」
ギルバートが真剣に言い、俺達は頷く。
それが1番問題なのだ。
出会っていきなり「偽物」呼ばわりを出来るわけもない。こちらとしても立場がある。あくまでも偶然居合わせたということにしなければならないし、パフォーマンス次第では何かしらの対応を決めておかなければならない。
1番良いのは、カーターが居合わせた公国の聖女がリアム側についたと勘違いして、俺たちに喧嘩を売ってくればいい。
俺たちはそれを買えばいいのだ。
そう仕向けようとするにしても、王国聖女の実際の力を知る必要があると思った。
「そこは黒騎士に頑張ってもらうしかありませんね」
ディーが呟き苦笑する。
「ユリア様にはもうお願いしてきました」
ギルバートがすでに先手を打っているとわかり、流石だと感心した。
「よし。それで行こう。それなら式典にも影響しねえな」
ロイがフンと鼻を鳴らした。
式典は1月25日だ。式典が終わってからカレーリアに出発しても充分間に合うだろう。
それ以前に向かう予定だったため、ロイは前倒しでキツキツの状態で準備を進めていたが、その必要はなくなることになり、余裕が出来て嬉しそうだった。
「全員で一度話をしましょう。まだ父上にも話していませんよね?」
「ええ、それはまだ。まずはショーヘイ君にと思っていましたので」
「サイファー達も何とかしたいって思ってるだろうしな。話を通して進めよう」
ロイがニヤニヤしながら言うが、ふと真顔になるとギルバートを見た。
「ロマには?」
「まだ何も言ってません。きっと事前に話せば絶対に止められますからね」
「だろうな。こっちで外堀を埋めて了承せざるを得ない状況まで持ってこう」
ロイとギルバートが同じような表情で笑う。彼女の性格を熟知しているから言えることなのだろうと、俺はくすっと笑う。
そして俺はふと肝心なことを思い出した。
「あの…ギル様。ロマ様はどうしてそこまでリアム大司教を…?」
そう尋ねると、ギルバートは優しく微笑んだ。
「それは私の口から言うことは出来ません。もしかするとこれからもロマは誰にも話さないかもしれませんが、リアムを助けたいと思っていることだけは事実だと伝えておきますね」
やはりギルバートは理由を知っているのがわかった。
そしてそれを他人の口から言えないということは、よっぽどの事情があるのだろうと思い、ただ微笑んで頷いた。
その後、すぐに関係者全員に、明日の9時に王宮の会議室に招集をかけるべく隠密と隠蔽を重ねがけした伝達魔鳥を飛ばした。
それから4人で夜遅くまで話し合い、あらかたの計画を作り上げた。
ウィルと2人で昼食を食べる間も、黙々と口を動かしながら眉間に皺を寄せて考える。
午後になってから、再びウィルに質問をしてリアムとカーターの人となり、そして互いに主張しているだろう教会経営について教えてもらった。
リアムは過度な寄付を受け付けず、施設維持に必要であったり、信者の信仰生活に必要最低限なことにしか寄付金を使わない。
一度に多額な金が必要な場合は、その都度寄付を募るが、特定の誰かに対して多くの寄付金を募るのではなく、寄付金に上限を設け、多くの信者に平等な寄付を求めた。
いわゆる質素な経営方針である。
方やカーターは各国の富裕層と密接な関係にあり、寄せられる寄付は全て受け取る。
集められた寄付金を私欲のために使っているわけではなく、古くなった教会の建て替えや、新たな地域への教会建設などに使われている。
だが、各司教区の大聖堂や教会を華美にする装飾品や美術品にも寄付金を注いでおり、カーター主導で建てられたり、改築、修繕された教会や聖堂は煌びやかで過度に立派であった。
話を聞く限り、創造神に対する信仰の深さには差がない。
あくまでも方向性の違いだと思った。
リアムのように実直で、信仰心だけを求めるようなやり方も理解出来る。
あくまでも信仰が大前提であり、いわゆる箱物は最低限あればいいというのがリアムの考えなのだろう。
だが、聖教会という大規模組織を経営するにあたっては、カーターのような行動も容認出来るところもある。
世界各地にいる信者の祈りの場を整えるのは正解であり、新たな信者を獲得するために箱物を用意し飾りつけることも大切だと思う。
末端の信者達全てが強い信仰心を持っているわけではないだろう。
流石にあまりにもボロボロだったり質素過ぎると、信者の心が離れてしまう可能性もある。
だが、華美にし過ぎてもまた信者の心は離れてしまうだろう。
俺は無神論者で、教会の人間ではないから言えるのだが、どちらの言い分も正しく、どちらの言い分も極端で、2人を足して2で割ればちょうど良いのに、と思ってしまった。
「以上が教皇選抜におけるお二人の建前上の主張です」
ウィルが散々話した後にニコリと笑い、俺は一瞬キョトンとしてすぐに笑った。
「建前かよw」
「実は、教会内部にも我々は潜入していまして」
「ですよねーww」
実際に不干渉という原則はあるがそこは不問にする。
国に匹敵するほどの大組織である以上、無視することは到底出来ないだろう、と俺も思った。
建前の主張は参考にならないとして、黒騎士から見た実際の2人を聞いた。
リアムは真面目で実直だが信仰心が厚すぎて周りが見えていない傾向にある。倹約家であり頑固者。
そしてカーターは所謂強欲。立場を利用して私利私欲に走っている。教会への献金の一部を着服している疑いがある。
「そう考えると、やっぱりカーターの方がヤバい奴だな」
「だと思います。数年前、聖王国で新たな教会建設の際、土地を開け渡さなかった所有者を手酷いやり方で追い込んだという噂もあります」
「追い込まれて、その人はどうなったわけ?」
まるで元いた世界にもいた地上げ屋だなと思いつつ尋ねた。
「今となってはもうはっきりした経緯は調べようもないんですが…」
ウィルが苦笑し、さらに言い淀む。うっかり余計なことを言ってしまったという表情をした。
その表情に俺はある程度の酷い結果を予測した。
「聖王国の外れ、公国との国境近くにある漁村からほど近い、とても小さな集落だったんですが…」
話し始めたウィルがだんだんと険しい表情になった。
「その集落の者達が抵抗したため一度は諦めたようです。
ですがその数ヶ月後、集落自体が無くなりました」
「……は?」
無くなるとはどういう意味か。まさか消えたわけでもないだろうに、と首をかしげる。
「住んでいたのは数家族で30人程度だったようですが、戦場から逃げ出した兵士が集落を襲ったんです」
「戦場…?まさか、それって聖王国との?」
「ええ。時期的に言うと終戦間際です。
襲われ抵抗したのでしょう。集落の人の他にも聖王国兵士の死体もあったようで、戦場を離脱し野盗化したのだろうと報告されました」
ウィルがやりきれないという表情を浮かべ、続きを話す。
「そして、その場所に教会が建てられたのです。名目は集落で亡くなった人を弔うためということでしたが、教会建設と同時にそこに多くの家も建てられ、たった1年で村が出来ました」
「……」
俺は唖然とした。
「海を望める教会として観光地化され、信者のみならず街道を通る旅人も立ち寄るようになって。
5年経った今では、漁村も含めたちょっとした街になっています」
「それって…」
「ええ。カーターが土地を手に入れるために襲わせたともっぱらの噂です。
兵士も本物だったのか怪しいんですよ」
「敗戦が迫る状況を利用したってことか…」
「他国のことなので状況からの推察や、噂によるものなので真実はわかりません」
「でも、もし事実だとしたら、利益のために人を殺すことも厭わない人物ってことになるよな」
「はい。他にも黒い噂が多々ある人です」
そこまでヤバい人物だとは思わなかった。
おそらくその新たに作った街からカーターに寄付という形で献金されているのだろう。
立地的に、その場所に教会を建て街を作れば儲かると判断したのだろうが、そのために先住者を追い出すのではなく、殺すなんてあり得ない話だ。
そのカーターが聖女を連れてカレーリアに向かっている。
噂が事実ならその目的は教皇になって聖教会を私物化するためだ。
現状はリアムの方が有利なのだろうが、聖女という切札を用意したことで、形成逆転を狙っている。
もしカーターが教皇になったら聖教会はどうなるのか。
それについては俺がどうこう言うことはないのだが、教皇としてカレーリアに住むことになるのはかなり問題だと思った。
聖教会だけではなく、カレーリアの街にも、公国にも何かしらの影響を及ぼすのではないか。
しかもそれは小さなことではなく、きっと大きな問題へと繋がっていくはず。
カーターの教皇就任は、絶対に阻止するべきだ。
ロマのためにも、カレーリアのためにも、ゆくゆくは国のためにも。
そう考え、俺は決意を固めた。
夕食の前にロイとディーが今日の仕事を終えて瑠璃宮に帰ってきた。
今朝は幾分顔色が良くなったと思ったロイが、またげっそりしている。
どれだけ頭をフル回転させて頑張っているのか、その疲れようを見て気の毒になった。
「おかえり」
リヴィングで2人を出迎えるとハグをしてやる。
「ただいま~」
ロイは疲れた声を出しながら俺に抱きついてスンスンと匂いを嗅いでいる。
ウィルは2人と入れ違いに帰ることになり、俺は改めて教えてくれたことに対して礼を言った。
「何かあったんですか?」
「ウィルにたくさん教えてもらってさ。後で話すよ」
3人で食堂に向かいながら、夕食後に話があると言った。
夕食後、共有リヴィングにあるダイニングに座って食後のお茶を飲みながら寛ぐ。
ロイはテーブルに突っ伏してぼんやりしていた。
「まじで疲れてんのな」
「まあな…。1週間分の仕事を全部前倒しでやらにゃならんから…」
カレーリアに行っている間の仕事を一気に進めているらしく、手続き、申請、計画書、報告書、書類、書類、書類に追われているとボヤいた。
「目が痛い、頭が痛い、腰が痛い、もう書類は嫌だ…。動きたい、暴れたい、訓練したい…」
ブツブツと小さい声でボヤいているロイの頭を、くすくすと笑いながら慰めるように撫でてやる。
「もっと撫でて…」
撫でられるのが気持ち良いのか、目を閉じてうっとりしていた。
そんなロイを見てまんま犬だな、と犬属獣人の習性なのかと考えながら、慰めるように頭を撫でた。
「ショーヘイ、魔力はどうですか?」
「ああ、もうだいぶ回復したよ。9割以上元通り」
「回復も随分と早くなりましたよね」
「…確かにそうだな」
ディーに言われて気付いた。
今回使った魔力量なら以前なら丸1日以上寝込んで、ベッドから起きられなかっただろう。だが、今は一晩寝れば日常に差し支えないほどには回復する。
体力がついたのか、大量消費に慣れたのか、と俺は自分でも不思議に思った。
だが今はそれをゆっくり考えている暇はない。優先事項は他にある。
一杯目のお茶を飲み終わったところで俺は話を切り出した。
席を立って新たにお茶を用意しながら、ウィルから教わった聖教会の話をする。
「カレーリアに移転した理由知ってる?」
「ええ。知ってますよ」
ディーが答え、ロイはただ頷く。
流石王族。ロイも子供の頃にディーと一緒に勉強したと聞いたから、きっと公国側の歴史の一つとして移転の経緯を知っているのだろうと思った。
「今回の教皇候補の2人についてはどこまで知ってる?」
「あまり詳しくは…。リアム大司教には何度も会ったことがありますが、とても物腰柔らかで穏やかな人という印象です。
カーター大司教は…あまりいい噂は聞きませんね」
ディーが答えている最中に、ロイがムクリと起き上がり俺を見た。
「ショーへー、何を考えてる」
何かを察したロイが僅かに眉間に皺を寄せる。
「ロマ様が気になってさ…」
俺が苦笑しながら答えると、ロイは椅子にきちんと座り直し、体を俺に向けた。
「話してくれ」
ロマの名前が出てロイはますます真剣な表情になった。
それはディーも同じで、テーブルに身を乗り出してくる。
そんな2人の食い気味の姿勢に、2人も俺と同じように、昨日のロマの表情を見て心配なんだと思った。
「ウィルに教えてもらったんだけど…」
新たなお茶を淹れたティーカップをそれぞれの前に置き口を開いたが、そこでリヴィングのドアがノックされた。
ディーがどうぞ言いながら立ち上がり、誰だろうと出迎える。
「こんばんは」
ドアを開けて入ってきたのはギルバートだった。
ギルバートにもお茶を用意してテーブルに置くと、ありがとうと言いながら香りを楽しんだ後に口に含む。
「夜分遅くにすみません」
一口飲んだ後に謝罪から始まった。
時刻は8時半を過ぎ、遊びに来るには遅い時間だ。
「いえ、大丈夫です。何かあったんですか?」
薄々とギルバートの目的がなんなのか、きっと俺と同じだと思った。
「ショーヘイ君にお願いがありまして」
「ロマのことだろ」
「今ちょうどその話をショーヘイから聞くところだったんです」
ロイが言いディーが続けると、ギルバートが驚いたような表情をしたがすぐに笑顔を浮かべた。
「ロマ様はリアム大司教に教皇になってもらいたいんですよね?」
「ええ。今回の選抜で負ければ、恐らくは彼は…」
「破門されてしまう」
ギルバートが言い淀んだので続きを俺が言うと、彼は苦笑いを浮かべ、そして頷いた。
ロイとディーはその話を知らないのだろう。目を丸くして驚いた表情をしている。
「つまり、カーターにとってリアム様は邪魔者でしかないと」
ディーが言葉で確認する。
カーターにとっては、リアムは組織から排除したい相手ということだ。
「選抜候補がカーターでなければ負けても問題ないのですが…今回は相手が悪い…」
ギルバートもカーターの黒い噂やリアムとの関係も聞き及んでいるのだろう。
「当然ロマも知ってるわけだよな」
ロイが確認するように聞いた。
「ええ。だから1人で何とかしようと思っているようですが…」
ギルバートは彼女の意固地っぷりに苦笑いを浮かべた。
「今回は明らかに分が悪い。
カーターが聖女を見い出したという功績はかなり大きいのです。
選抜投票直前に公表されれば、カーターに票が傾く可能性が高い」
「だからショーヘイにリアム側につけってことか」
ロイが早急に結論を出す。
「そうです。聖女に対抗するために聖女を……。ですが…」
ギルバートが苦笑いを浮かべる。
「そう簡単な話ではありませんね」
ディーが眉間に皺を寄せて腕を組んだ。
「立場の問題か」
ロイもすぐに気付き、ディーと同じように腕を組んだ。
考え込む2人を見て、ロイもディーも公国の聖女である俺が宗教問題に介入することは出来ないと理解していると思った。
俺は2人もギルバートも、ロマのためにと考えていることが嬉しかった。
俺も同じ気持ちだから、2人に話そうとしていたのだ。
ギルバートがいるならなお心強い。
「政教分離の原則を破らないでリアム大司教を助ける方法が一つだけある」
そう言うと、3人の視線が俺に集まる。
「……ショーヘイ。原則を知ってるんですか?」
ディーが驚いて俺に尋ねた。
「知ってる。俺が居た国でも同じ憲法があったからな。きっとシュウ様が作った憲法でしょう?」
ニコリと笑うと、ギルバートは驚いた表情をした後に、とても嬉しそうに笑った。
「そうです。公国憲法において、いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
そう定められています。
なるほど。シュウと同じ国の出身ならショーヘイ君もよく理解していますね」
心なしかギルバートの頬が赤みを帯びて興奮しているような表情を見せる。
「さっきお前が話そうとしていたことか?」
「ああ。そうなんだ。
昼間、ウィルから色々聞いてさ」
俺はウィルから聞いた情報を全て話して聞かせた。
特に集落の話はロイとディーは知らなかったようで、思い切り眉間に皺を寄せて僅かに怒りを滲ませていた。
「カーターみたいなヤバい奴がカレーリアに住むなんて、絶対に阻止すべきだ。
1番はロマ様のためだけど」
「確かに、そんな奴が公国になんて、国にも影響が出ますね」
ディーも俺の意見に同意し、うんうんと頷く。
「で?その方法ってなんだ」
ロイが早くとせっつくように聞いてくる。
「単純な話だよ。王国聖女が偽物であると証明するんだ」
俺の言葉に、ロイとディーはポカンと口を半開きにし、ギルバートはさらに嬉しそうに笑った。
どうやら。ギルバートも同じことを考えていたようで、だから俺にお願いがあると言ったのだと察した。
ダイニングテーブルに4人で顔を突き合わせて話を進める。
新たにお茶を淹れ、お茶菓子も用意して、ディーは紙とペンを持ってきた。
「偽物なのか?」
ロイがまずそこを突いてくる。
「多分ね。確証はないけど、聖女だと偽っている可能性は高い」
「その根拠は?」
「聖女認定だよ。
王国聖女は、聖教会から聖女だと認められたい。だからカーターに加担してるんだ。リアム大司教が教皇になったら、きっと認定されないってわかってるんだよ」
「何故そう言い切れるんだ?」
「それはおそらくこれからわかるでしょう。今ユリア様が情報を集めて精査していますが、彼女が行使したとされる奇跡はかなり曖昧で誇張も含まれているようです」
ギルバートはもうすでにユリアと話をしたのだろう。
ユリアは得た情報から、王国聖女の力が聖女とは呼べないものであると疑い、確信に迫りつつあると予測した。
「おそらく彼女自身もある程度の力はあると、俺は考えてる。
一般的な治癒師以上の力は確実に持ってるんだろうけど、それが聖女の奇跡と呼べる代物じゃないんだろうな」
「つまり、魔力はそこそこあるということですか」
「多分ね。彼女自身の魔力総量が多いのか、それとも何かトリックがあるのかはわからないけど」
俺はここでロイとギルバートにも俺の使うヒールが奇跡と呼ばれるのは、単純に使う魔力量が桁違いなだけだと説明した。
「聖女だから特別なヒールじゃないのか」
ロイも特別だと思っていたと言い、俺は笑う。
「特別でもなんでもないんだ」
話せば長くなるから後で、と先に進む。
「話を元に戻すと、王国聖女とカーターは相互利益な関係ってことだ。
カーターは教皇になって聖教会を私物化したい。
王国聖女は…、何故聖女になりたいのかは…目的はわかならい」
「目的はこの際どうでもよいでしょう。2人を阻む行動が重要ですから」
ギルバートがニコニコと俺に微笑みかける。
「きっとギル様も俺と同じ考えだったんですよね?」
「その通りです。原則があるので表立ってリアムに協力は出来ませんし、させられません。
ですが、偽聖女に本物の聖女の力を見せつけることは、何も問題はありませんからね」
「……つまり……」
ディーがニヤリと笑い俺と目を合わせた。
「魔力測定の日を教皇選抜にぶつける」
俺も同じようにニヤリと笑う。
「正確にはカーターと王国聖女が到着する日ですね。
おそらく1月30日あたりにカレーリアに到着するはずです」
「その日に合わせて俺達もカレーリアに行く。
おそらく王国聖女は何かしらのパフォーマンスをするつもりだろうよ。口でいくら聖女だって言っても信じてもらえないしな」
「偶然その場に居合わせるってかww」
「そ、偶然なw」
「ただ、時間もありません。それまでに王国聖女の素性やその力、そしてパフォーマンスとして何をしようとしているのかを探る必要があります」
ギルバートが真剣に言い、俺達は頷く。
それが1番問題なのだ。
出会っていきなり「偽物」呼ばわりを出来るわけもない。こちらとしても立場がある。あくまでも偶然居合わせたということにしなければならないし、パフォーマンス次第では何かしらの対応を決めておかなければならない。
1番良いのは、カーターが居合わせた公国の聖女がリアム側についたと勘違いして、俺たちに喧嘩を売ってくればいい。
俺たちはそれを買えばいいのだ。
そう仕向けようとするにしても、王国聖女の実際の力を知る必要があると思った。
「そこは黒騎士に頑張ってもらうしかありませんね」
ディーが呟き苦笑する。
「ユリア様にはもうお願いしてきました」
ギルバートがすでに先手を打っているとわかり、流石だと感心した。
「よし。それで行こう。それなら式典にも影響しねえな」
ロイがフンと鼻を鳴らした。
式典は1月25日だ。式典が終わってからカレーリアに出発しても充分間に合うだろう。
それ以前に向かう予定だったため、ロイは前倒しでキツキツの状態で準備を進めていたが、その必要はなくなることになり、余裕が出来て嬉しそうだった。
「全員で一度話をしましょう。まだ父上にも話していませんよね?」
「ええ、それはまだ。まずはショーヘイ君にと思っていましたので」
「サイファー達も何とかしたいって思ってるだろうしな。話を通して進めよう」
ロイがニヤニヤしながら言うが、ふと真顔になるとギルバートを見た。
「ロマには?」
「まだ何も言ってません。きっと事前に話せば絶対に止められますからね」
「だろうな。こっちで外堀を埋めて了承せざるを得ない状況まで持ってこう」
ロイとギルバートが同じような表情で笑う。彼女の性格を熟知しているから言えることなのだろうと、俺はくすっと笑う。
そして俺はふと肝心なことを思い出した。
「あの…ギル様。ロマ様はどうしてそこまでリアム大司教を…?」
そう尋ねると、ギルバートは優しく微笑んだ。
「それは私の口から言うことは出来ません。もしかするとこれからもロマは誰にも話さないかもしれませんが、リアムを助けたいと思っていることだけは事実だと伝えておきますね」
やはりギルバートは理由を知っているのがわかった。
そしてそれを他人の口から言えないということは、よっぽどの事情があるのだろうと思い、ただ微笑んで頷いた。
その後、すぐに関係者全員に、明日の9時に王宮の会議室に招集をかけるべく隠密と隠蔽を重ねがけした伝達魔鳥を飛ばした。
それから4人で夜遅くまで話し合い、あらかたの計画を作り上げた。
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