おっさんが願うもの 〜異世界行ったらイケメンに大切にされ、溺愛され、聖女と呼ばれ、陰謀に巻き込まれ。それでも幸せ目指して真面目に頑張ります〜

猫の手

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王位簒奪編 〜デート襲撃、決着〜

205.おっさん、甘え甘やかす

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 深い水底に沈んだ体がゆっくりと浮上するような感覚で自然に目が覚めた。
 薄目を開け何度か瞬きを繰り返すと、目の前にこちらを向いて眠っているロイの綺麗な顔が視界に入る。
「面が良い…」
 その長いまつ毛に通った鼻筋、形の良い唇に思わず呟いて頬を染める。
 じっとその顔を見つめ恥ずかしくなってしまい、寝返りを打ってわざと視界から外す。だが反対側を向いてもまた綺麗な顔が視界に入った。
「ぅ…」
 当然ディーの綺麗な寝顔で、その顔面力に圧倒されてますます赤くなった。
 見慣れているのに、間近で直視すると顔が熱くなってしまい、赤面しているのが自分でもわかる。
 ドキドキと心臓が高鳴り苦しさを感じるが、それがまた心地良いとも感じた。


 ずっと恋をしている。


 2人への恋心に気付いてから、もうずっとだ。
 仰向けになると、顔を左右に何度も傾けて、2人の寝顔を見ては、ヘラッと笑ったり、顔が赤くなったりを繰り返して顔を両手で覆った。
「起きたんか」
「1人で百面相してw」
 ほぼ同時に左右から声をかけられた。
「お…おはよぅ…」
 見られていたと気付いて耳まで赤く染めた。
 2人が息がかかるほど顔が近付くと、ロイの手が俺の顔に触れてじっと顔を覗き込む。
「うん。顔色は悪くない」
 下瞼を指で捲られ色を確認され、額に手を当てて体温もみられる。
 まるで病人にするような行動にクスッと笑いつつ、唇を指でなぞられてうっとりとロイを見つめた。
「キス、してもいいか?」
「ああ…」
 ゆっくりとロイとキスをする。
 触れた唇が熱くて、甘くて、ロイの吐息を直接感じて全身が熱くなった。
「ショーヘイ…」
 啄むようなキスを重ねていると、耳にディーの唇が触れ、いい声で囁かれた。それだけでゾクッと快感が走る。
 ロイと唇を離し、潤んだ瞳でディーの方を向くと、ディーともキスをした。
 腕を伸ばし、ディーの頬から耳、頭に手を回し、ねだるように自分から唇を寄せると、キスが深くなり舌が触れた。
「ぁ…」
 その舌がとても熱く気持ちがいい。
 つっと舌で唇を舐められた後、頬や額にチュッと軽めのキスを落とされた。

 仰向けになり、見覚えのある天蓋を見て、ここが王宮の以前与えられていた部屋だとわかった。
 朝7時を過ぎた所で、カーテンの隙間から朝日が部屋に入ってきている。
 上半身を起こして大きく欠伸をしながら伸びをしている間に2人ともベッドから降り、俺も名残惜しいが静かに降りた。
 気を失った後、キースがクリーンをかけ寝夜着を着せてくれたんだろう。
 体は綺麗になっているし、深い眠りのおかげで疲れは取れ、いつもの状態に戻っていた。

 ベッドから出たが、身支度を整えようにも俺の着替えはここにはなく、顔を洗ったり髪を整えるだけで済ませ、後は寝夜着にガウンという姿でソファに座って待つことにした。
 ロイとディーも着替えて来ると一度出て行き、1人になった。

 1人になると、どうしても色々と考えてしまう。
 ジョンとシアのこと、襲撃のこと、襲ってきた奴らが何者なのか。ソファに深く座って腕を組み、う~んと唸りつつ昨日の事を思い出しながら考えた。
 だが、あまりにも一気に事が起き過ぎて頭の中だけでは追いつかない。
 紙とペンはないかと探そうと立ち上がった時、ドアがノックされた。
「どうぞ」
 返事をすると、キースが俺の着替えを持って笑顔で中に入ってくる。
「おはようございます」
「おはよう」
 着替えをソファに置くと、キースが俺のそばにより、じっと俺の顔を見て、手を取って脈を確認したり、両手で顔や首に触れて状態を見る。
「大丈夫ですか?体に違和感は?」
「ん、大丈夫。眠って疲れも取れたよ」
「心配しましたよ…。ロイ様もディーゼル様も、つきっきりで…」
 キースが俺の手を握り苦笑する。
「あの時は…本当に…どうしようかと…」
 そしてその顔が歪むとポロッと涙が落ちた。
「怖くて…。貴方を失うかと、本当に怖くて…」
「キース…」
 俺が心停止した時の事を思い出し、キースは青ざめて小さく震え出した。
 そんなキースの肩に触れると、そっと抱きしめる。
「大丈夫。俺はこうして生きてる」
 ポンポンとその背中を優しく叩き、撫でる。無意識に俺の魔力が溢れ、癒すように光と金色の粒が俺たちを包み込んだ。
 そうしていると、キースの体の震えが収まっていくのがわかった。
「あれから何か進展はあった?」
 泣き止んだキースを離すと、眠りについた後の事を聞いた。
 とはいえ、まだ数時間しか経っていない。ジョンもシアもまだ回復には至っていないだろうと思っていた。
「わかったことはいくつか。
 ジョン様は起きられませんが意識を取り戻しましたし、シア様は昨日のうちに起きられるようになりました」
「そっか。良かった」
 その報告を聞いて笑顔になったが、ん?昨日のうちに?と首を捻る。
「俺、どのくらい寝てた…?」
 てっきり次の日の朝だと思っていたのだが…。
「今日は21日です。ショーヘイさんはずっと眠ってらしたんですよ」
「え」
 デートと襲撃が19日だったから、それから2日後の朝だと気付いた。
「あー…そっか…そうなのか」
 乾いた笑いを漏らし、あれだけ魔力を爆発させればそうなるか、と納得もした。それなら、俺抜きで話は進んでいるはずだ。
「まずは朝食にしましょう。話はそれからです」
 キースが笑顔で俺に着替えを手渡し、俺も微笑み返した。


 自分の部屋で着替えて戻ってきた2人と朝食を摂った後、議会が始まる前にレイブン、サイファー、アラン、ダリアに挨拶しに行った。
 9時から今日の議会が始まるためあまり時間もなかったが、それでも俺のために時間を作ってくれていた。
 それぞれが俺をハグし、良かった、頑張った、と声をかけてくれた。
「今夜、改めて話をしよう。まずはキースにこれまでのことを聞いておいてくれ」
 サイファーに言われ頷く。
「ディーゼルとロイを護衛に戻したぞ。夜までゆっくりするといい」
 アランに微笑まれ、左右の2人を見るととても嬉しそうに表情がデレていた。


 レイブン達と別れ、そのまま瑠璃宮へ戻る。
「今日は私たちが担当です」
「明日までずっと一緒だ」
 王宮を出てから2人がウキウキしながらピッタリと俺に寄り添う。
「昼過ぎにオスカー様達がいらっしゃいますので、それまでゆっくりしていてください。
 色々と話したいこともあるでしょう?」
 瑠璃宮の自室に戻ると、共有リヴィングではなく、自室リヴィングで3人でゆっくり積もる話をと言われ、キースは出て行った。
 そんな気を利かせてくれたキースに苦笑しつつ感謝する。
 きちんと、今回のアレックスの件の決着をつけなくてはと、俺も思っていた。




 いつものように2人に挟まれてソファに座る。
「長かった…」
「ほんと拷問でしたよ」
 肩に腰に手を回してくる。
 ロイは顔を近づけてスンスンと俺の匂いを嗅いでうっとりし、ディーは肩に顔を押し付けてすりすりしている。
 2人を護衛から外した日から指折り数え、そうか、もう6日も経つのかと改めて思った。
「たった6日だろ?」
「6日もだよ」
「そうですよ。どれだけ辛かったか」
 俺を抱きしめる2人の腕に力がこもった。
「確認なんだけど…」
 アレックスとの件は、俺の懸念だったとキースから聞いてはいる。
 平地でも、アレックス本人が2人に俺を大切にしろと、俺たちの関係を祝福するような言葉を口にし、それを聞いて関係が終わったとは思った。
 だが、ロイとディーの口から聞きたかった。
「アレックスとは…もう?」
 聞きにくそうに言うと、ロイがさらにギュッと俺を強く抱きしめてくる。
「ああ。終わった。綺麗にさっぱりと」
「アレックスも納得したのか?」
「してる。俺たちに愛はない。そもそも見合い自体も父親の侯爵が勝手にやったことで、アレックスも侯爵に不成立だと話すって」
「そっか…」
 話を聞き薄く笑うと、ロイが不安気に俺の顔を覗き込む。
「信用…出来ないか…?」
 信用するかしないかと言われれば、まだ100%ではない。甘く見積もっても99%だ。残りの1%がまだ俺を不安にさせている。
「無理もないですね…」
 ディーが俺の手をキュッと握ると、悲しそうな表情を浮かべる。
「今までの私達のやってきたことを考えれば、すぐに信用なんて取り戻せませんよ」
 ディーが自虐的に笑った。
「そうだな…」
 ロイも過去の自分にため息をついたが、俺の腰に回していた手を離すと立ち上がった。
 そのロイの行動を見たディーもまた立ち上がる。
「…?」
 そんな2人の行動に首を傾げた。
 立ち上がった2人がクルッと俺を振り向き、背筋をピッと伸ばすとじっと俺を見下ろし、そのまま俺の前に跪いた。
 片膝をつき俺に頭を下げた姿に呆然とし、2人を見つめる。
「ショーへー。本当にすまなかった」
「申し訳ありません」
 2人が謝罪する。
 その声が真剣そのもので、ドキッと心臓が跳ねる。
「今すぐ貴方の信用を取り戻せるとは思いません。ですが」
 ディーが言い、
「これからの俺たちを見ていてくれ」
 ロイが続ける。
「俺達は」
「私達は」
 2人の言葉が重なり、同時に顔を上げて俺を見た。
「もう二度と貴方に嘘はつきません」
「隠し事もしません」
 真剣な目で俺を見上げ、交互に言葉を紡ぐ。
「ショーへーに永遠の愛を誓います」
「未来永劫貴方だけを愛すると誓います」
 そして2人の手が俺に向かって差し出される。

 胸が熱くなる。
 2人の真剣な眼差しが、本心であると語っていた。
 どんな熱烈な愛の告白にも勝るとも劣らない言葉に、2人とも今回の件を真摯に受け止め考えた結果が、この行為だと受け止めた。

 じわっと目に涙が浮かぶ。
 
 ここは俺がいた世界と違う。
 俺の価値観とは全く違う世界。
 ロイもディーも、自分達がしてきた過去の行いが俺を傷付けると理解してくれている。理解し、俺の価値観に合わせようとしてくれている。
 こっちの世界の価値観を俺に押し付けるのではなくて、俺のために。
 俺を愛してくれているから。

 目を潤ませながら、2人の手を取った。
「ロイ、ディーゼル」
 2人の手をギュッと握りしめる。
「ずっと見てる。お前達だけをずっと…」
 2人の目を見て微笑んだ。
「愛してる」
 満面の笑顔で愛を告げると、2人の顔が赤く染まり、嬉しそうに破顔した。 
「俺も愛してる!」
「愛してます!」
 途端に2人とも立ち上がると、ガバッと抱きつかれ、額に頬に唇に、キスの雨が降った。
 ぎゅうぎゅうと押しつぶされるようにソファに押し倒され、何度もキスを繰り返した。



 ディーに肩を抱かれてもたれかかるように寄り添う。時折りディーが俺の頭や頬を撫で、顔を擦り寄せ啄むようなキスを繰り返す。
 そんな俺の膝にロイが頭を乗せソファに寝そべり、俺の手を握ったり擦ったり、時折り手にキスをし、俺もロイの頭を撫でていた。
 昼食までの時間、離れていた6日間を取り戻すかのように、互いに甘え甘やかし、たっぷりと3人で甘ったるい時間を過ごした。







 会議室にオスカー、ジャニス、アビゲイル、フィッシャーが揃う。
 全員が俺を心配して声をかけてくれる。
「全くお前は。加減ってものを知らんな」
 オスカーが心停止を起こした俺に呆れたように言い苦笑する。
「あの時は必死でさ」
「無事だったから良かったけど、ほんと冷や冷やしたわよ」
 ジャニスが思い出したのか、自分の両腕を抱きしめてブルブルッと身を震わせるような動作をした。
 キースがお茶を淹れ、全員に行き渡ると、早速説明が開始された。

「まずは時系列で私たちが把握していることを説明します」
 キースがまとめた資料を手に俺に説明してくれる。

 その報告は俺からの連絡を受けた午後7時から平地でのオーギュスト撃破の午後10時30分ごろまでの2時間半の内容だった。

「襲撃の内容に間違いありませんか?」
 キースから資料を渡されて、ロイ達が部屋に駆けつける前、ジョンが狙撃されてから以降の内容を聞かれた。
 口頭で説明を受けたよりも、より詳細なことが書かれていた。
 俺が使ったヒールや防御・攻撃魔法について、さらに男達が持っていた魔力を吸引する何かまで、シアが襲撃で見聞きしたことを全て話しているとわかった。
 
「うん。間違いないよ」
 ざっと詳細に目を通して言うが、書類から目を上げるとみんなを見渡した。
「ただ、流れは間違いないけど、漏れていることもある」
 書いていないということは、シアが話していないんだと思い、口にする。
 すると、シア嘘をついた、もしくは何かを隠したと思ったのか、キースが顔を顰めて何があったのか聞いてきた。
「ジョンにヒールをかけた後、俺は体を動かせなかった。
 その時部屋に乱入してきた奴らに拉致されそうになったんだよ」
 自分の顎をさすり、その時の状況を思い出しながら話す。
「あの時、あいつらは聖女が黒髪で細身の男っていう情報しか持っていなくて、俺とシア、どっちが聖女かはわかっていなかったんだ。
 だからシアは自分が聖女だと言って、俺の身代わりになろうとしてくれた。
 でも結局は2人とも拉致される所だったんだけどね」
 苦笑いを浮かべ、その出来事が防御・攻撃魔法を展開する前にあったと、資料を指差しながら言った。
「身代わりに…」
 キースが驚き、シアを疑ったことを反省したようだった。
「確かに、シアなら同じ黒髪細身で雰囲気も似てる。身代わりになろうと思えばなれるな…」
 実際に似ていると言っていたオスカーが呟く。

「そういえば、オスカー」
 シアに情報を探りに行ったオスカーを見て、ニヤニヤと口元を歪める。
「シアは、オスカーが騎士で、探りにきたってことも全部見抜いてたよ」
 俺に笑顔で言われ、オスカーが固まる。そしてみるみるうちに鳩が豆鉄砲を喰らったような表情になった。
「はぁ!?バレてたってか!?」
「うん。バレてたw」
 ワハハと声に出して笑うと、オスカーが顔を赤くした。
 それを聞いたジャニスやアビゲイルが冷やかしのような眼差しを向ける。
「あれぇ?俺の魅力で情報を引き出したとか言ってなかったっけぇ?」
 ここぞとばかりにアビゲイルがオスカーを揶揄い、ジャニスもニヤついた。
「シアは頭のいい人だよ。きっとジョンが俺と見合いすると聞いた時点で、身辺調査が入ると予測してたんだ」
「オスカーは目立つからな。きっともっと地味な奴ならバレなかったかもしれん」
 フィッシャーもクックッと笑いを含ませて話す。
「んだよ…」
 オスカーが不貞腐れたように腕を組むと口を尖らせた。
「じゃぁ、オスカーが仕入れた情報も嘘ってこと?」
「いや、全部嘘ということはない。あの後事実確認を行って、シアの出自などは確認が取れている」
 フィッシャーが答える。
「シアはショーへーちゃんを助けようとしたのね」
「ああ。万が一の時は自分が身代わりになるつもりで、俺をあの場所に呼んだ」
「それだよ。なんでシアに会うことになったんだ。
 根本的にそこだろ」
 ロイが隣で腕を組み、顔を顰めた。
 ロイを見てニコリと笑う。


 ジョンとのデートの内容、シアとの会合で俺が知ったことを、順を追って説明を始めた。



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