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翌日韓媛は小屋の中で目を覚ました。布を複数枚まとっていたとは言っても、この季節の朝は少し冷え込んでいる。
とりあえず小屋から出てみると、大泊瀬皇子は既に起きているようで、川から水を汲んできていた。どうもこの小屋に水を汲めれそうな入れ物があったみたいだ。
「あぁ、韓媛起きたか」
大泊瀬皇子は小屋から出てきた韓媛に声をかけた。
「大泊瀬皇子、おはようございます。ずっと外で大丈夫でしたか?」
「あぁ、昨日お前が眠ったのち、小屋からそっと布を持ってきた。それから、焚き火の前でその布にくるまって休んでいた」
そう言って彼は韓媛に水を渡した。
皇子から水を受け取ると、その水を一気に飲み干した。水はとても冷えていたが、とてもすっきりとした飲み心地だ。
(皇子をずっと外にいさせる形になってしまって、本当に申し訳なかったわ……)
「大泊瀬皇子、本当に済みません。皇子を外で寝させるはめになってしまって」
大泊瀬皇子は、自身も冷たい水を飲みながら、特に気にするふうにでもなくして言った。
「別に外で夜を明かす事にも慣れている。そこまで困る事もない」
韓媛もそれを聞いてそう言うものかと思い、とりあえず納得する事にした。
その後2人は、皆のいる所まで戻る事にした。大泊瀬皇子曰く、この小屋から離宮までの道のりは何となく覚えているとの事だったので、2人は歩いて戻る事にした。
ただ山道で、所々危ない所もあるため、皇子は韓媛の手をしっかり握って進んで行く。彼女もそれには特に抵抗する事なく、素直にしたがった。
そしてひたすら歩いていると、遠くに離宮らしきものが見えてきた。
「韓媛、あそこを見ろ。 離宮が見えてきた」
韓媛も遠くにある離宮を見つけて、思わず安堵した。今回は散々な目にあったが、これで何とかなりそうだ。
そして、離宮が近付いて来ると、馬の走ってくる音が聞こえて来た。
2人がその先を見ると、彼らと一緒に来ていた従者の者達のようである。
そんな彼らも、大泊瀬皇子と韓媛を見つけたようで、馬に乗ったままやってきた。
「大泊瀬皇子、韓媛、ご無事でしたか!!」
「あぁ、大丈夫だ。心配かけて悪い」
大泊瀬皇子は従者達にそう言った。きっと彼らも今まで2人を必死で探していたのであろう。
そうしていると、また別の馬がこちらに向かって走ってくる。よく見るとそれは葛城円だった。
(お父様も、一緒に探されてたのだわ)
葛城円は皇子と韓媛の前まで来ると、そのまま馬から降りてきた。
彼の表情は少しやつれているように見える。きっと娘と皇子が突然いなくなったので、今まで気が気でなかったのであろう。
「大泊瀬皇子、韓媛無事だったか」
「あぁ、円本当に迷惑をかけて済まなかった」
葛城円は大泊瀬皇子からそう言われると、今度は韓媛の方を見た。
「お父様! 本当に心配をかけてごめんなさい!!」
韓媛も頭を下げて謝った。
すると円は彼女の肩をつかんで、顔を上げさせた。
(駄目、叩かれる……)
彼女はそう思って、一瞬身構える。
だが彼はそのまま彼女を突然に抱き締めると、その場で声を張り上げて言った。
「韓媛! お前は何て心配を私にさせるんだ!! 危うく妻だけでなく、娘まで失ってしまうかと思ったんだぞ!!」
それを聞いた韓媛は思わずぼろぼろと泣き出してしまった。
「お、お父様……本当にごめんなさい」
葛城円はそんな彼女の頭を優しく何度も撫でてやった。そんな彼も目にうっすらと涙を浮かべている。
そんな韓媛と円のやり取りを大泊瀬皇子も横で見ていた。
何はともあれ、無事に彼女と戻ってこられて本当に良かったと彼は思う。
その後、彼らは一端離宮に戻る事にした。
離宮に戻る道中、大泊瀬皇子は葛城円に、これまでの経緯を馬を走らせながら説明した。
彼もその話しを聞き、本当に驚いたようで、その後大泊瀬皇子にひたすら感謝を述べていた。彼は娘の命の恩人である。
韓媛も円と同じ馬に乗っており、ふと横を走っている大泊瀬皇子を見つめた。
(そう言えば私、皇子が好きな事に気付いてしまったのよね……)
だが彼はいずれ別の姫を正妃に娶り、またその姫とは別に本命の女性がいる。とても自分が想いを打ち明けられる相手ではない。
そのため、韓媛はこの想いは内に秘めるしかないと思った。
(もう彼の事は、時間をかけて忘れるしかない)
こうしてしばらく馬を走らせた後、韓媛達は無事に離宮に戻る事が出来た。
とりあえず小屋から出てみると、大泊瀬皇子は既に起きているようで、川から水を汲んできていた。どうもこの小屋に水を汲めれそうな入れ物があったみたいだ。
「あぁ、韓媛起きたか」
大泊瀬皇子は小屋から出てきた韓媛に声をかけた。
「大泊瀬皇子、おはようございます。ずっと外で大丈夫でしたか?」
「あぁ、昨日お前が眠ったのち、小屋からそっと布を持ってきた。それから、焚き火の前でその布にくるまって休んでいた」
そう言って彼は韓媛に水を渡した。
皇子から水を受け取ると、その水を一気に飲み干した。水はとても冷えていたが、とてもすっきりとした飲み心地だ。
(皇子をずっと外にいさせる形になってしまって、本当に申し訳なかったわ……)
「大泊瀬皇子、本当に済みません。皇子を外で寝させるはめになってしまって」
大泊瀬皇子は、自身も冷たい水を飲みながら、特に気にするふうにでもなくして言った。
「別に外で夜を明かす事にも慣れている。そこまで困る事もない」
韓媛もそれを聞いてそう言うものかと思い、とりあえず納得する事にした。
その後2人は、皆のいる所まで戻る事にした。大泊瀬皇子曰く、この小屋から離宮までの道のりは何となく覚えているとの事だったので、2人は歩いて戻る事にした。
ただ山道で、所々危ない所もあるため、皇子は韓媛の手をしっかり握って進んで行く。彼女もそれには特に抵抗する事なく、素直にしたがった。
そしてひたすら歩いていると、遠くに離宮らしきものが見えてきた。
「韓媛、あそこを見ろ。 離宮が見えてきた」
韓媛も遠くにある離宮を見つけて、思わず安堵した。今回は散々な目にあったが、これで何とかなりそうだ。
そして、離宮が近付いて来ると、馬の走ってくる音が聞こえて来た。
2人がその先を見ると、彼らと一緒に来ていた従者の者達のようである。
そんな彼らも、大泊瀬皇子と韓媛を見つけたようで、馬に乗ったままやってきた。
「大泊瀬皇子、韓媛、ご無事でしたか!!」
「あぁ、大丈夫だ。心配かけて悪い」
大泊瀬皇子は従者達にそう言った。きっと彼らも今まで2人を必死で探していたのであろう。
そうしていると、また別の馬がこちらに向かって走ってくる。よく見るとそれは葛城円だった。
(お父様も、一緒に探されてたのだわ)
葛城円は皇子と韓媛の前まで来ると、そのまま馬から降りてきた。
彼の表情は少しやつれているように見える。きっと娘と皇子が突然いなくなったので、今まで気が気でなかったのであろう。
「大泊瀬皇子、韓媛無事だったか」
「あぁ、円本当に迷惑をかけて済まなかった」
葛城円は大泊瀬皇子からそう言われると、今度は韓媛の方を見た。
「お父様! 本当に心配をかけてごめんなさい!!」
韓媛も頭を下げて謝った。
すると円は彼女の肩をつかんで、顔を上げさせた。
(駄目、叩かれる……)
彼女はそう思って、一瞬身構える。
だが彼はそのまま彼女を突然に抱き締めると、その場で声を張り上げて言った。
「韓媛! お前は何て心配を私にさせるんだ!! 危うく妻だけでなく、娘まで失ってしまうかと思ったんだぞ!!」
それを聞いた韓媛は思わずぼろぼろと泣き出してしまった。
「お、お父様……本当にごめんなさい」
葛城円はそんな彼女の頭を優しく何度も撫でてやった。そんな彼も目にうっすらと涙を浮かべている。
そんな韓媛と円のやり取りを大泊瀬皇子も横で見ていた。
何はともあれ、無事に彼女と戻ってこられて本当に良かったと彼は思う。
その後、彼らは一端離宮に戻る事にした。
離宮に戻る道中、大泊瀬皇子は葛城円に、これまでの経緯を馬を走らせながら説明した。
彼もその話しを聞き、本当に驚いたようで、その後大泊瀬皇子にひたすら感謝を述べていた。彼は娘の命の恩人である。
韓媛も円と同じ馬に乗っており、ふと横を走っている大泊瀬皇子を見つめた。
(そう言えば私、皇子が好きな事に気付いてしまったのよね……)
だが彼はいずれ別の姫を正妃に娶り、またその姫とは別に本命の女性がいる。とても自分が想いを打ち明けられる相手ではない。
そのため、韓媛はこの想いは内に秘めるしかないと思った。
(もう彼の事は、時間をかけて忘れるしかない)
こうしてしばらく馬を走らせた後、韓媛達は無事に離宮に戻る事が出来た。
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