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41《大泊瀬皇子の復讐》
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眉輪が穴穂大王を暗殺し葛城円の元にやってきてから2日が経過した。今は丁度夕方から夜に差しかかろうとしている。
葛城円の住居にいる者達は、これから一体自分達はどうなってしまうのだろうかと、皆不安の色を隠せないでいる。
それは葛城円の娘である韓媛も同様だった。今眉輪は父親の円しか会えないようになってる。そのため幼い眉輪が今どのような心境にいるのか、彼女にも全く分からない。
「大王を殺したとなると、いくら眉輪様がまだ子供といっても、そう簡単に許されるものではないわ」
韓媛は眉輪が葛城にきてから自身の短剣に祈ってみた。だがどういう訳だか今回は全く何も起こらなかった。
(あの剣でも駄目となると、一体どうすれば良いの)
彼女もその被害がここ葛城にまで及ばないかと不安で仕方ない。とりあえず今は大和と父親の対応に任せるほかないであろう。
韓媛がふとそんなふうに思ってる時だ。
誰かが急に彼女の部屋にやってきた。そしてよほど慌てていたのか、外から声もかけずに部屋の中まで入ってくる。
彼女が驚いて相手を見ると、それは父親の葛城円だった。
「お、お父様?」
葛城円は少し息を荒くしており、落ち着きがないように見える。こんな状態の彼はとても珍しい。
「韓媛、大変なことになってしまった。眉輪様が大王を殺したことで、今大和より兵がこちらに向かっているようだ」
「ま、まさか! お父様それは本当なのですか」
韓媛はそれを聞いてとても信じられないと思った。まさか大和から兵が送られるとは彼女も全く予想してなかった。
「そして今回その指示を出したのが大泊瀬皇子らしい。穴穂大王が殺されたことで彼はかなり激怒しているようだ。
しかもその件で皇子は2人の兄と討論になり、その後2人の兄を殺してしまわれた」
それを聞いた韓媛は余りのことに恐ろしくなり、その場に座り込んでしまった。
そして彼女はぶるぶると体を震わせる。
(そんな、あの大泊瀬皇子が……)
「まぁ、2人の兄が先に大泊瀬皇子に剣を向けたそうだが」
つまり大泊瀬皇子は自身の身を守るため、2人の兄を殺してしまったということだ。だがそれでも人を殺してしまうとなると、本当に恐ろしくなる。
「大泊瀬皇子はここ葛城を攻撃するつもりなのですか?」
大泊瀬皇子がここに兵を向かわせているとなると、当然攻撃する意思もあるということだ。
「いや、それはまだ分からない。とりあえず兵がここにきたら、私が大泊瀬皇子と話しをさせてもらえるよう願い出るつもりだ」
だが大泊瀬皇子がかなり激怒しているとなると、彼がどう出てくるか全く予想ができない。
「とりあえず、お前は一旦この住居から離れなさい。そして他の葛城の元に逃げるんだ」
「そ、そんな。お父様をおいて逃げるなんて私は嫌です!!」
韓媛は涙目になりながら父親にそういう。自身は葛城の姫だ、こんな状況で自分だけ逃げるなんてことはしたくなかった。
それに父親にもしものことがあったらと不安で仕方ない。
「韓媛、もう近くまで兵がきているかもしれない。とにかく私のいうことを聞かないか!」
すると外が何だか騒がしくなってきた。そして使用人の男が1人韓媛達のいる部屋に飛び込んできた。
「円様、大変です! 家の外にたくさんの兵がやってきています!!」
円と韓媛は思わず息を飲んだ。恐らく大泊瀬皇子が率いる兵がやってきてしまったようだ。
(そ、そんな……本当に大泊瀬皇子が兵を連れてきてしまったの)
「そうか、分かった。恐らく大泊瀬皇子が連れてきた兵達だろう。では私が皇子と話しがしたいという旨を伝えてほしい」
それを聞いた使用人の男も一瞬戸惑ったが、すぐに「分かりました!」といってそのまま急いで部屋を出ていった。
使用人の男がいなくなると円は改めて韓媛に話しかけてくる。彼はとても真剣な表情だ。
「私は葛城をまとめている者としての責任がある。そしてわざわざ私を頼ってこられた眉輪様も、何とかお許しもらえないか話しをしてみるつもりだ」
(お、お父様。そのようなことが本当にできるの?)
韓媛はこんな真剣な表情をした父親を見るのは初めてだった。彼はここ葛城のことを他の誰よりも考えている。
「韓媛、家の前には兵がたくさんいる。なので裏からそっと外に出て、一旦ここを離れるんだ。これはお願いではなく命令だ。
お前も葛城の娘なら大人しく私に従え!」
韓媛もそこまで彼にいわれてしまうと、よういい返すことができない。
「分かりました、お父様。お父様の指示に従います」
そして韓媛は立ち上がると、涙を必死で堪えながらその場を後することにする。
そして彼女は「お父様、どうかご無事で」と言って、彼女は急いでこの場所を離れて行った。
それから葛城円は、大泊瀬皇子達の動向を確認すべく部屋を後にした。
葛城円の住居にいる者達は、これから一体自分達はどうなってしまうのだろうかと、皆不安の色を隠せないでいる。
それは葛城円の娘である韓媛も同様だった。今眉輪は父親の円しか会えないようになってる。そのため幼い眉輪が今どのような心境にいるのか、彼女にも全く分からない。
「大王を殺したとなると、いくら眉輪様がまだ子供といっても、そう簡単に許されるものではないわ」
韓媛は眉輪が葛城にきてから自身の短剣に祈ってみた。だがどういう訳だか今回は全く何も起こらなかった。
(あの剣でも駄目となると、一体どうすれば良いの)
彼女もその被害がここ葛城にまで及ばないかと不安で仕方ない。とりあえず今は大和と父親の対応に任せるほかないであろう。
韓媛がふとそんなふうに思ってる時だ。
誰かが急に彼女の部屋にやってきた。そしてよほど慌てていたのか、外から声もかけずに部屋の中まで入ってくる。
彼女が驚いて相手を見ると、それは父親の葛城円だった。
「お、お父様?」
葛城円は少し息を荒くしており、落ち着きがないように見える。こんな状態の彼はとても珍しい。
「韓媛、大変なことになってしまった。眉輪様が大王を殺したことで、今大和より兵がこちらに向かっているようだ」
「ま、まさか! お父様それは本当なのですか」
韓媛はそれを聞いてとても信じられないと思った。まさか大和から兵が送られるとは彼女も全く予想してなかった。
「そして今回その指示を出したのが大泊瀬皇子らしい。穴穂大王が殺されたことで彼はかなり激怒しているようだ。
しかもその件で皇子は2人の兄と討論になり、その後2人の兄を殺してしまわれた」
それを聞いた韓媛は余りのことに恐ろしくなり、その場に座り込んでしまった。
そして彼女はぶるぶると体を震わせる。
(そんな、あの大泊瀬皇子が……)
「まぁ、2人の兄が先に大泊瀬皇子に剣を向けたそうだが」
つまり大泊瀬皇子は自身の身を守るため、2人の兄を殺してしまったということだ。だがそれでも人を殺してしまうとなると、本当に恐ろしくなる。
「大泊瀬皇子はここ葛城を攻撃するつもりなのですか?」
大泊瀬皇子がここに兵を向かわせているとなると、当然攻撃する意思もあるということだ。
「いや、それはまだ分からない。とりあえず兵がここにきたら、私が大泊瀬皇子と話しをさせてもらえるよう願い出るつもりだ」
だが大泊瀬皇子がかなり激怒しているとなると、彼がどう出てくるか全く予想ができない。
「とりあえず、お前は一旦この住居から離れなさい。そして他の葛城の元に逃げるんだ」
「そ、そんな。お父様をおいて逃げるなんて私は嫌です!!」
韓媛は涙目になりながら父親にそういう。自身は葛城の姫だ、こんな状況で自分だけ逃げるなんてことはしたくなかった。
それに父親にもしものことがあったらと不安で仕方ない。
「韓媛、もう近くまで兵がきているかもしれない。とにかく私のいうことを聞かないか!」
すると外が何だか騒がしくなってきた。そして使用人の男が1人韓媛達のいる部屋に飛び込んできた。
「円様、大変です! 家の外にたくさんの兵がやってきています!!」
円と韓媛は思わず息を飲んだ。恐らく大泊瀬皇子が率いる兵がやってきてしまったようだ。
(そ、そんな……本当に大泊瀬皇子が兵を連れてきてしまったの)
「そうか、分かった。恐らく大泊瀬皇子が連れてきた兵達だろう。では私が皇子と話しがしたいという旨を伝えてほしい」
それを聞いた使用人の男も一瞬戸惑ったが、すぐに「分かりました!」といってそのまま急いで部屋を出ていった。
使用人の男がいなくなると円は改めて韓媛に話しかけてくる。彼はとても真剣な表情だ。
「私は葛城をまとめている者としての責任がある。そしてわざわざ私を頼ってこられた眉輪様も、何とかお許しもらえないか話しをしてみるつもりだ」
(お、お父様。そのようなことが本当にできるの?)
韓媛はこんな真剣な表情をした父親を見るのは初めてだった。彼はここ葛城のことを他の誰よりも考えている。
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お前も葛城の娘なら大人しく私に従え!」
韓媛もそこまで彼にいわれてしまうと、よういい返すことができない。
「分かりました、お父様。お父様の指示に従います」
そして韓媛は立ち上がると、涙を必死で堪えながらその場を後することにする。
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