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第1獣
怪獣1-4
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北方領土国後島爺爺岳周辺
風を切る音と共に砂埃や草が舞い上がり、音の主、迷彩柄のカラーリングと共に機体後尾部に赤い星のラウンデルが特徴的な、ロシア航空宇宙軍のMi8中型輸送ヘリコプターが地面へと降り立った。付近には同じMi8ヘリコプターが複数駐機しており、簡単なヘリコプターの駐機場になっていた。着地と同時にスキット代わりの車輪が若干たわむが、すぐに戻る。
機体側面にある、搭乗口が開いて、ゴーグルを装着したケブラーヘルメットを被って、深緑色をした、デジタル模様の迷彩服を着て、エルボーパッドとニーパッドを装着し、黒を基調としたコンバットブーツを履いて、ロシア製のAK74Mアサルトライフルを肩に吊るしたロシア陸軍兵士が出迎えた。
「お待ちしておりました、チェフスキー博士、カシンリン博士!」
「まったく、モスクワの科学アカデミーで講演を行ったら、いきなり連行されたんだ。孫と一緒に、ボリショイサーカスを見る予定だったんだぞ」
ロシア陸軍兵士に出迎えられた、カシンリン博士は強張った体で、不満を漏らしながら、Mi8から降りる。それに同僚のチェフスキー博士が後に続く。チェフスキー博士は黒髪が美しい、年配の女性だ。
カシンリン博士の片腕として、何年も働いている。実用性を優先した服は長時間、Mi8に乗っていたせいで、しわだらけになっていた。
ロシア陸軍兵士に先導され、爺爺岳付近へと案内されると、そこは小さな軍事基地だった。
陸軍兵士が一定間隔で並び、AK74Mを体の前で斜め下に向ける、スタンバイガンと呼ばれる姿勢で保持して、警護に当たっていたり、忙しく動き回っていた。
多用途車のUAZ469や軍用トラックのウラル4320、歩兵機動車のGAZ2330ティーグルが停車しており、命令があればいつでも動き出す準備が整っていた。
その車両の列を縫いながら、二人は指揮官のいる天幕へ案内された。天幕の中に入ると、白い口髭を生やした大柄な指揮官が立っていた。
「カシンリン博士、チェフスキー博士来てもらえてよかったよ!」
「ミハイル少佐! それより状況を説明させてください。一体何なんです?」
二人は固い握手で挨拶をすますと、すぐ用件を切り出した。
ミハイル少佐は部下に何枚かの写真を持ってこさせる。それはロシア語でトップシークレットと書かれていた。
「今から約1か月前、日本で怪獣騒ぎがあった時だ。ロシア軍の偵察衛星が、クリル諸島にある、クナシリ島のチャチャ岳で謎のエネルギー反応を捉えた。それがこれだ」
「クリル諸島は、日本人が「千島列島」と呼んでいる地域じゃないか」
「そうです、その中にある活火山、チャチャ岳内部で謎のエネルギー反応を捉えたんです。火山噴火ではない、全く別の反応を」
ミハイル少佐はエネルギー反応を捉えた資料を、チェフスキー博士とカシンリン博士に見せた。
その資料は爺爺岳が、赤く染まっている写真だ。
「そしてこのことを察したロシア政府は、クリル諸島に配置されている部隊に出動を命じ、我々は秘密裏に部隊を展開した」
その言葉にミハイル少佐は胸を張って答える。純粋に祖国のために働けることが嬉しい、愛国心の塊を持っている軍人だ。
「それなら、火山学者の出番でしょう。いくらなんでも軍隊を動かすなんて……」
チェフスキー博士が疑問を呈する。爺爺岳は活火山であり、もし高エネルギーの反応があるのなら、調査のために火山学者を派遣するのが常である。
「そうだ、最初は火山学者と調査用の探査ロボットを爺爺岳へと送った。エネルギーが観測されているものの、噴火の兆候もマグマの動きも何も変わっていない……」
ミハイル少佐は説明しながら、もう一つの書類を取り出した。
「洞窟を発見し、その中にロボットを送り込んだ……。そして、洞窟の奥でこんな生物を発見した……」
カシンリン博士とチェフスキー博士の二人に書類を見せた。その書類を見た瞬間、二人の科学者は驚愕の余り、書類を落としそうになる。
洞窟の奥には地底湖がある、完全な円形でその壁には壁画がある。ここまでだったら、どこにでもありそうな発見だが、そうではなかった。
地底湖には生物がいた。蝙蝠に似た赤い羽根を体にまとい、巨大な鉤爪腕の一部であることが分かり、うずくまるようにして地底湖の中で浮いていた。
「これは……!」
「この生物は……、生きているのでしょうか?」
カシンリン博士はミハイル少佐に聞く。
「その通りだ、このエネルギー反応もこの生物が出所だと判明した。明日、準備が整い次第調査活動を始める」
ミハイル少佐の顔つきは変わり、軍人の表情になった。それは未開の地に部下を派遣させ、最悪死なせてしまう。そうなることを予想した表情であった。
風を切る音と共に砂埃や草が舞い上がり、音の主、迷彩柄のカラーリングと共に機体後尾部に赤い星のラウンデルが特徴的な、ロシア航空宇宙軍のMi8中型輸送ヘリコプターが地面へと降り立った。付近には同じMi8ヘリコプターが複数駐機しており、簡単なヘリコプターの駐機場になっていた。着地と同時にスキット代わりの車輪が若干たわむが、すぐに戻る。
機体側面にある、搭乗口が開いて、ゴーグルを装着したケブラーヘルメットを被って、深緑色をした、デジタル模様の迷彩服を着て、エルボーパッドとニーパッドを装着し、黒を基調としたコンバットブーツを履いて、ロシア製のAK74Mアサルトライフルを肩に吊るしたロシア陸軍兵士が出迎えた。
「お待ちしておりました、チェフスキー博士、カシンリン博士!」
「まったく、モスクワの科学アカデミーで講演を行ったら、いきなり連行されたんだ。孫と一緒に、ボリショイサーカスを見る予定だったんだぞ」
ロシア陸軍兵士に出迎えられた、カシンリン博士は強張った体で、不満を漏らしながら、Mi8から降りる。それに同僚のチェフスキー博士が後に続く。チェフスキー博士は黒髪が美しい、年配の女性だ。
カシンリン博士の片腕として、何年も働いている。実用性を優先した服は長時間、Mi8に乗っていたせいで、しわだらけになっていた。
ロシア陸軍兵士に先導され、爺爺岳付近へと案内されると、そこは小さな軍事基地だった。
陸軍兵士が一定間隔で並び、AK74Mを体の前で斜め下に向ける、スタンバイガンと呼ばれる姿勢で保持して、警護に当たっていたり、忙しく動き回っていた。
多用途車のUAZ469や軍用トラックのウラル4320、歩兵機動車のGAZ2330ティーグルが停車しており、命令があればいつでも動き出す準備が整っていた。
その車両の列を縫いながら、二人は指揮官のいる天幕へ案内された。天幕の中に入ると、白い口髭を生やした大柄な指揮官が立っていた。
「カシンリン博士、チェフスキー博士来てもらえてよかったよ!」
「ミハイル少佐! それより状況を説明させてください。一体何なんです?」
二人は固い握手で挨拶をすますと、すぐ用件を切り出した。
ミハイル少佐は部下に何枚かの写真を持ってこさせる。それはロシア語でトップシークレットと書かれていた。
「今から約1か月前、日本で怪獣騒ぎがあった時だ。ロシア軍の偵察衛星が、クリル諸島にある、クナシリ島のチャチャ岳で謎のエネルギー反応を捉えた。それがこれだ」
「クリル諸島は、日本人が「千島列島」と呼んでいる地域じゃないか」
「そうです、その中にある活火山、チャチャ岳内部で謎のエネルギー反応を捉えたんです。火山噴火ではない、全く別の反応を」
ミハイル少佐はエネルギー反応を捉えた資料を、チェフスキー博士とカシンリン博士に見せた。
その資料は爺爺岳が、赤く染まっている写真だ。
「そしてこのことを察したロシア政府は、クリル諸島に配置されている部隊に出動を命じ、我々は秘密裏に部隊を展開した」
その言葉にミハイル少佐は胸を張って答える。純粋に祖国のために働けることが嬉しい、愛国心の塊を持っている軍人だ。
「それなら、火山学者の出番でしょう。いくらなんでも軍隊を動かすなんて……」
チェフスキー博士が疑問を呈する。爺爺岳は活火山であり、もし高エネルギーの反応があるのなら、調査のために火山学者を派遣するのが常である。
「そうだ、最初は火山学者と調査用の探査ロボットを爺爺岳へと送った。エネルギーが観測されているものの、噴火の兆候もマグマの動きも何も変わっていない……」
ミハイル少佐は説明しながら、もう一つの書類を取り出した。
「洞窟を発見し、その中にロボットを送り込んだ……。そして、洞窟の奥でこんな生物を発見した……」
カシンリン博士とチェフスキー博士の二人に書類を見せた。その書類を見た瞬間、二人の科学者は驚愕の余り、書類を落としそうになる。
洞窟の奥には地底湖がある、完全な円形でその壁には壁画がある。ここまでだったら、どこにでもありそうな発見だが、そうではなかった。
地底湖には生物がいた。蝙蝠に似た赤い羽根を体にまとい、巨大な鉤爪腕の一部であることが分かり、うずくまるようにして地底湖の中で浮いていた。
「これは……!」
「この生物は……、生きているのでしょうか?」
カシンリン博士はミハイル少佐に聞く。
「その通りだ、このエネルギー反応もこの生物が出所だと判明した。明日、準備が整い次第調査活動を始める」
ミハイル少佐の顔つきは変わり、軍人の表情になった。それは未開の地に部下を派遣させ、最悪死なせてしまう。そうなることを予想した表情であった。
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