最後の断罪者

広畝 K

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 黒曜教会は『黒曜』と呼ばれる神を信仰する、ライル地域発祥の宗教である。
 ライルには信仰形態が百を数えるほどに存在しており、黒曜教会はその内の細々とした小さなコミュニティに過ぎなかった。
 極々僅かな人々の信仰対象でしかなかった黒曜が多くの人々から厚く信仰されるに至ったのは、突如として発生した人間の異形化が発端としてある。

 人間の異形化とはつまり、人間の肉体が劇的に変貌することを意味している。
 だけでなく、それらは理性と知性とを失い、相互理解に必要な言語をも失って、近くにいる家畜や人々を積極的に襲う災厄の怪物と化したのだ。

 怪物は日に日に増殖し、瞬く内に人々の脅威となった。
 その腕力は人間の肉体を易々と破壊できる程に強力で、外皮はライフルの弾すら通らぬほどに硬い。身のこなしは俊敏で、野生の獣にも劣らぬ俊敏性を持ち、過去に類を見ない強力な生命体だったのである。

 村や街の自警などでは数を集め束ねても敵わず、国家が抱える軍隊の動員が必要とされるほどであったといえば、その脅威の程度が分かるだろう。

 だが、討伐可能だとはいえ、いつでも軍隊の動員が許可されるわけではない。

 怪物による犠牲者は民間だけでなく軍隊においても常に存在していた。
 亡くなった者たちの親族に払う金銭や保障、破壊された場所の復興費、人件費、資材費、その他諸々の出費も多数あり、軍隊の出動による怪物討伐は次第に頻度を減らしていき、限り無く湧き出てくる怪物の出現に追いつかなくなっていった。

 ゆえに当然、怪物による被害は加速度的に増加していくこととなる。
 人々の安全と秩序ある穏やかな生活は底に落とされ、暗澹たるものとなってゆく――はずであった。

 というのは、軍隊に代わって怪物討伐を担う勢力が現れ始めたからである。
 この勢力というのが、黒曜教会であった。

 黒曜教会は人々に対して『黒曜』と呼ばれる神への信仰を説き、得られる恩恵を説き、理念から成る導きを説き、そして実践してみせたのだ。

 その実践とは、教会に属する武闘派聖職者による、怪物の捕獲・討伐である。

 軍隊ですら手を焼いた怪物討伐を聖職者が、それも寡数によって討伐する。
 その事実は村を、街を、そして国家を大いに揺るがした。
 良きにしろ悪しきにしろ、黒曜教会という組織は此度の件によって有名となり、正式とはいかなかったものの、国教に近しい高き地位と強き権威を手に入れることになったのである。

 また、黒曜教会は人間が怪物になる現象についても言及した。

 異形化現象は旧き神々が人間に課した血の呪縛によるものであり、生まれながらの罪業として負わされたものによると説いたのである。
 人々の体内に流れる白き血は獣にも同様に流れており、その血は重ねた罪業によって濁って腐敗し、人々の理知性を混濁させ、肉体を旧き獣に回顧させるものであるのだ、と。

 それゆえ黒曜教会は人間の体内に流れている白き血を、黒曜の神の加護によって黒く染め上げ、人間が生まれながらに背負わされた呪縛と罪業を浄化することで、異形の怪物となるのを防ぐことができると布告し、人間としての誇りを守護せねばならぬと宣告したのである。

 決して怪物にならぬように。
 人間としての生涯を全うできるように。

 そのように、黒曜教会に入ることを推奨したのである。
 黒曜たる神に信仰を捧げ、神の加護によって黒き血を、その身に受け入れるように説いたのである。

 その胡乱な宣告に、当初は国中が紛糾した。
 しかしそれも、異形化という手に負いきれない現実的な問題を前にしては議論の余地を持てなかった。
 多くの信仰者が黒曜を信仰して加護を賜り、獣とは異なる色の黒き血をその身に受け、決して怪物にはならないという安心を得ることを、秩序ある生活を取り戻すことを、選択したのである。

 尤も、黒曜の神を信仰することなく、獣と等しい白き血のまま生きてゆく。
 その様な生き方を選択した人々も、少なからずいたのではあるけれども。


 【セントルイス教区街・黒曜教会】


 農業都市セントルイスは中央大陸西部のライル地域において、主産業が農業に特化している唯一の街である。

 その成り立ちには幾十もの農村が合併してできたという経緯があり、文明・文化的に豊かとは言えないものの、近隣諸国に農産物を主として多く輸出しているため、『ライルの食料庫』と呼ばれて重宝されている。

 毎年のように少なくない数の入植者や観光者が訪れるのは、治安が定まり、住んでいる人々の顔に温かな表情があり、過ごしやすい気風に満ちているためだろう。

 その気風の一端を担っている施設として、黒曜教会は無視できない存在だ。
 なぜならこの都市に散在している黒曜教会もまた、人々に仇為す怪物の討伐を引き受けているからである。

 そして貴方は、そんな幾つもある黒曜教会に属している聖職者の一人だ。

 それも一般の聖職者ではなく、怪物討伐を主務としている武闘派聖職者である。
 武闘派聖職者は一般的に『断罪者』と呼ばれており、罪業を重ねて異形化した者の身を、その身に染まった罪業を断ち切り、獣臭に澱んだ魂を救済するとされている。

 セントルイス教区における断罪者は貴方を含めて十指に満たず、いずれの断罪者も日々出没する怪物の討伐任務を負ってライル地域の彼方此方を飛び回っている。

 現在、セントルイスの黒曜教会に居る断罪者は貴方一人のみである。
 他の断罪者は討伐任務に出ていて不在であり、貴方は非常の事態に備え、街に一人残っているのだ。
 それゆえに、一般の聖職者と同じように日々の雑務をこなさなくてはならないが、貴方は異形と化した者を討伐するよりも、一般の聖職者としてこなす雑務の方が好きであった。

 早いうちから起き、身の回りと部屋を軽く清め、聖書を持って礼拝室へと赴く。
 礼拝室では既に司祭が女神像の前で膝をつき、一心に祈っていることが多い。
 完全に気配を秘め、その意識を奥の深みに至らしめ、精神を集中させている。

 貴方は司祭に軽く頭を下げ、そして女神像に頭を下げると、礼拝室を清め始める。
 礼拝室は然程に広くはない。五十人ほどが入れる程度の、こぢんまりとした造りの石部屋だ。

 貴方は水に濡らした布切れを巻きつけた箒を用い、塵と埃を掃いて纏め、使い捨ての塵取りで回収すると、それを外の定位置に置いておく。
 後で業者が荷車を引いて街を巡り、置かれた物を回収していくというシステムだ。

 塵取りを置いた後に礼拝室に戻った貴方は、箒に巻いた襤褸布とは別の濡れ雑巾で白い壁を丁寧に拭いてゆく。壁は白く乾いた石壁であり、拭いた先から水分を吸い、部屋に一定の湿度をもたらしてくれる。

 礼拝室の清めが終わると、貴方もまた司祭と同じように膝をつき、両の手を拳に握って胸の前に置き、女神像を通した先にいるとされる黒曜に祈りを捧げる。

 涼やかな静謐が部屋を満たしていることもあり、貴方の心身は落ち着いてゆく。

 祈りの際には目を閉じても良いし、閉じなくても良い。
 目を閉じて祈るときには闇の中に貴方一人が存在し、然れども、すぐ近くに暖かな存在がいると分かる。目を開けたときには、女神像から穏やかな視線を感じるときがある。

 教義に照らせば、その暖かな存在が黒曜の神なのだそうである。
 それが事実であるならば、貴方は黒曜の神から相当に目を掛けられているようにも思われる。が、貴方はそのことについてあまり気にしたことはない。貴方の周囲の人々もまた、その暖かみが当たり前であり、気にする素振りを見せないためだ。

 祈っている内に、司祭が不意に立ち上がる。
 貴方も次いで、立ち上がった。

 気がつけば、礼拝室内を満たすように多くの人々が集まっている。
 膝をついて拳を胸の前に置き、女神像に頭を下げて祈っている。

 黒曜の神を、信仰する者たちだ。

 この教会の近所に住む区民は、貴方が在籍しているこの教会に訪れる。
 人間が異形化になるより以前は珍しいことではなかったが、この習慣が復活したのも黒曜教会による功績が大きい。
 また、日中にも絶え間なく利用されるという理由から、黒曜教会は一種の避難所や託児所などとしての副次的な役割を果たす機会も多くなり、より多くの人たちが訪れるようにもなっている。

 ともあれ、人々が集まったところで祈りの時間は終わりとなる。
 司祭は信仰者たちの方に向き直ると、穏やかな口調で声を掛けた。
 それは、祈りの終わりを告げる声掛けであり、黒曜の教義を伝えるためのものでもある。

 人々は司祭の言葉に従い、無駄な声を発すること無く祈りを終えて頭を上げた。
 その顔にあるのは安堵の含まれた、植物のように穏やかな表情だ。
 強い感情は表に現れることなく、さりとて無感情というほどでもない。平穏な日々を過ごしているがゆえに、怒りに近しい激情が無く、また同時に、激しい喜びも無いのである。

 これこそまさに黒曜が望んだ人々の態度であった。
 争いや諍いの起こりを止めることはできない。しかしそれは極々小さな規模のものに限られるべきで、隣人を深く傷つけることは許されるべきでない。秩序と安寧ある日々保つ努力が必要不可欠である、というのが黒曜の教義であったからだ。

 その人々の態度は貴方にとっても望まれるべき平和の象徴に他ならないものだ。が、それと同時に貴方は不意に思うことがある。

 黒曜の神を信仰している人々は本当に、人間として正しい道のりを、歩めていると言えるのだろうか、と。

「――さて」

 司祭の発した言葉を耳にしながら、貴方は思考を深めていく。

 現在の状況は人々にとって、貴方においても、理想に近しいものと言える。
 人間が異形の怪物となり、そして同胞たる人々を襲うという悪夢のような状況下に置かれてこそいる。が、その一方で黒曜の神を信仰している者たちは秩序のある生活を保てているためだ。

 人々が皆、連綿と伝わる確執と我意を忘却したのなら。
 黒曜の神を信仰して、浄化を受け入れられるのなら。
 異形と化する最悪の状況は根絶されるに違いない。

 無論、幼子の考えるような理想の夢物語ではある。
 だが、少なくとも可能性はある筈だ、と貴方は密かに願っている。

 願う中、司祭は聖書を開き、聖句を宙に刻んでいく。

「――黒曜の神は慈悲深きことこの上なく、太古の蛇神による白き罪業に苛まれる人の子を、決して見捨てることはありませんでした。黒曜の神は我ら哀れなる人の子のために、黒き涙を流され、人の子が生まれながらに背負わされた白き罪業を、確かに浄化して下さっているのです。人の子を見捨てぬ黒曜の神は我らの寝静まる夜にこそ注意を払い、我らが罪業の深淵に溺れ落ちぬよう、常に見守って下さっています……」

 朗々とだが厳かに吟じる司祭の声音は老いた者が出せるとは思えぬ程の雄々しさを感じさせ、同時に静謐でさえあり、それでいて瑞々しい自信に溢れている。

 信仰者の中には黒曜の神だけではなく、聖句を詠う司祭をも、信仰の対象として祈っている者もあると言われる。

 信仰の在り様は、本当に人それぞれだ。
 貴方としては人々が幸福に過ごせるのならそれで良いと思っているし、その信条に踏み込むような真似もしない。

 黒曜の神もまた貴方と同様の考えであるのだろう。
 自身を信仰してさえいるなら良いと言い伝え、信仰対象が他にあったとしても、その加護を与えないということはなかった。

「――これにて、今日の話は終わりとなります。皆様に、黒曜の神の加護とお導きがありますように……」

 司祭による閉会の宣言によって、信仰者たちは教会から歩み去ってゆく。
 中には礼拝室に残って仲の良い者同士で集まり、世間話をしていく者たちもあるが、それについては自由である。
 教会の門扉は誰にでも開いており、信仰や人生に迷った者がいつでも訪れることができるように、というのが黒曜の掲げている理念であるからだ。

「では、君、下で報告を聞こうか」

 司祭の言葉に従い、貴方は司祭の後ろについて礼拝室から奥へと向かう。

 石畳の廊下を進み、地下への階段を下りてゆく。
 階段を下りた先は、少し広めの空間となっている。
 そこは怪物の襲撃から近隣の人々を護るためのシェルターにもなっていて、保存の利く食料や水、武器などが保管されている。

 その空間の一部に懺悔室と呼ばれる隔離された小さな部屋がある。
 そこは一般の人々の些細な愚痴や深刻な悩みなど、他人には話せない事柄を話せるように用意されたものだ。
 使用するには事前予約が必要で、その予約の把握は黒曜の神と話者本人だけが知るものだとされている。
 話者および話の情報は黒曜の神によって秘匿され、小部屋の使用時刻だけが司祭に告げられるとのことである。が、詳しいことは貴方も知ってはいない。

 小部屋は格子状の衝立によって二分されており、片側には司祭が、一方には話者が入るようになっている。壁は多層からなる構造によって防音性を保てるようになっており、外にいる者が耳を澄ませていたとしても内容が聞かれる心配は無い。

 貴方は小部屋に入って椅子に座り、格子を挟んで司祭と向き合った。
 司祭は貴方に話があるとき、そして話を聞くときに、どんな些細な話題であっても、必ずこの懺悔室を用いている。

 ゆえに貴方も外界から隔離されているこの小さな空間に慣れ、静かな心境で司祭に対して向き合うことができている。
 自身の為した惨き断罪に対して、向き合うことができている。

「では、話して下さい」

 落着きのある声音に導かれ、貴方は静かに昨日の討伐報告を述べていった。


 【回想:セントルイス郊外・東端の開拓村】


 農業都市セントルイスの防壁外には、幾つかの開拓村が点在している。
 それらは農業都市内において育てられない作物や、より多くの実りを得られるよう品種の改良を施した栽培物の実験場としての意味合いが強い。開拓村の開拓とは土地を獲得して拓いていくだけではない。農作物の品種改良において特に、その意味合いが強いのだ。

 貴方が要請を受けたのも、そうした開拓村の一つであった。

 セントルイスから東に向かって約二十キロメートルの位置に、その開拓村はある。
 麦の穂波が方形状に広がった畑が並び、その合間にぽつぽつと木組みの家が建っている。畑に分け入って農作業をしている人々の気配を馬上から見守りつつ、貴方は家々の建つ村の中へと進んでゆく。

 村を囲む木柵の中では鶏や豚といった家畜が放し飼いにされていて、牧歌的な光景を作り出している。村人は全員が畑作業に出ているためか、気配が無くて閑散としている印象だ。

 馬を入口に待たせた貴方は、迷う素振りも見せずに村長の家へと歩みを進める。

 周りの家々より一回り大きな家が村長の住む宅であろうと見込んでのことだ。
 違っていたら違っていたでも良い。他の家々を回っていけばそのうち当たりがつくだろうとの判断もあった。

「――怪物は、大きな狼のような形をしておりました」

 出されたお茶に口を付けながら、貴方は村長の話を聞く。
 体長二メートルほどもある怪物は少し前、開拓村の東から現れたとのことらしい。

 血走った眼を爛々と輝かせ、麦畑の一つを荒らし回ったのだという。
 作業を休憩していたときの出来事であったため、村人が襲われなかったことだけが不幸中の幸いだったとは村長の言だ。

 下手に手を出しては怒りを買って殺される可能性が高いと判断し、そのまま動向を村の矢倉から見張っていたものの、怪物は特に畑を荒らす以外のことはせず、やがて北部にある小さな森へ去ったという。

「そして、森に棲みついたのでしょう。昨夜もまた現れ、畑の麦を喰い荒らした後、森へと戻っていきました」

 人を襲う意思や素振りは見えなかったものの、しかし作物を荒らされるのは困る。
 困った顔で語る村長に、貴方は怪物の討伐をその場で受諾した。
 相手が群れでなく一匹であるならば、取り逃がす心配はないと判断してのことだ。

 怪物が出没する夜になるまで、貴方は討伐の準備を念入りに行っていた。

 短銃を部分ごとに分解し、油を差して潤滑を保ち、差した油を拭い取ってしまわぬよう慎重に、丁寧に組み上げていく。弾の数は六発、黒曜の神の加護を受けた黒色の洗礼弾だ。

 黒曜の神の加護を受けたものは一部の例外もなく黒へと染め上げられ、その威力や性能を爆発的に高めることが確認されている。

 つまるところ、手軽に扱える短銃ではあるが、その銃弾は通常のライフル弾よりもずっと強力な殺傷能力を有するということである。

 貴方はそれを腰のベルトに収めると、主要武器の整備に取り掛かった。
 貴方の愛用している主要武器は、二本の刃物から成り立っている。

 刃身の横幅が広く、そして縦に長い、大型の鉈がその一つだ。
 その重量は通常の鉈よりも十分に加重されているが、黒曜の神の加護を受けている断罪者にとっては片手で振るうに適当な程度である。刃身は縦に約一メートル、横に約十五センチの、厚みのある鋼鉄で出来ており、その刃部は艶消しを意図とした漆黒の色に染まった業物だ。

 もう一つは、鋸剣と呼ばれる奇剣の一種がそうである。
 その剣は鋸という文字が冠されている通りに、小型の刃が片身にびっしりと生え渡っている。しかも刃並びは二層構造になっていて、上下に交互に鋭利な刃が並び、断ち切るのではなく引いて刻んで削り取るといった用途を意図としている。
 この鋸剣は、鉈で一息に断ち切れないほど丈夫で弾力を有するものに対し、裂傷を刻みつけることを主目的とした補助装置としての側面が大きい。ほんの僅かでも傷を刻むことができれば、その傷をさらに拡大させることが可能となるからだ。

 それら二種の刃物は対の武装となっている。
 貴方は普段その二本を分解して組み上げ、両武器の長所を兼ね備えた一本の武器として常用している。
 鋸鉈と称されるそれは、対怪物を意図とした武器として汎用性に優れており、昔話や童話、英雄の伝記にも登場する由緒正しき狩り道具の一つである。

 唯一の欠点としては、重量があるという一点に尽きる。
 それゆえに、一定以上の筋力を必要とする武装であるが、黒曜の神の加護を受けた断罪者にとって鋸鉈の重量は労苦に値せず、むしろ軽いと評して使わぬ者が多い。

 この鋸鉈を使いやすいと言って使う断罪者は貴方くらいのものであり、他の者はもっと別の、重量の大きな特別製の大型武器を使用するのが常であった。

 そんな力自慢の断罪者たちを、村長も近くで見てきたのだろう。貴方の手入れしている小型の武装を見て、頼りないと言いたげな表情をしている。

 だが、貴方は村長の心配など気にも留めない。
 なぜなら貴方はこの鋸鉈によって多くの怪物の罪業と命脈を断ち切ってきたからだ。日々、訓練にて弛まずに鍛え上げてきた技術があり、討伐によって獲得してきた戦闘経験があるからだ。

 狩れる自信を持ってはいるが、しかし決して慢心するつもりはない。

 村長の話を聞く限りでは、それほど苦も無く倒せるだろう。
 これまでの経験則から貴方はそのように判断してはいるが、油断をすれば殺されるのは自分であることも十分に承知している。

 ゆえに今宵も、貴方は鉈の刃をもって怪物の強靭な毛皮を断ち切り、血肉を裂き、命脈を絶ち、その先にある罪業をも断って、怪物と化した者の纏う罪業を、その積み重ねを阻止することを自身に誓った。

 たとえ人を襲わずといえども、人々の畑を襲うことは十分な罪業である。
 また、怪物と化してまで深い罪業を重ねゆくことは黒曜教会の教義として、貴方自身の考えとしても、許容できるものではない。

 なぜなら怪物として罪業を重ねてゆくことは、怪物と化すより前の、人間としての生を穢すことに繋がってゆくからだ。
 自覚無く重ねられるその罪業は、他者が断ち切ってやらねばならない。
 それゆえに貴方は自身の信念、そして断罪者としての使命をもって、怪物の討伐を心に誓う。

 武器の手入れを一通り終えた貴方は、戦闘服を着込んでゆく。
 貴方の着込んだ服は黒一色の断罪装束と呼ばれる代物で、これもまた、黒曜の神による加護が全体に渡って張り巡らされていて並の服よりも防御力が高い。

 履いている黒革のブーツは靴底に黒染めの鉄板を仕込んだ特別製で、これもまた断罪者たちが好んで用いる武器の一つである。

 忘れ物や落とし物がないかを確認し、マントを羽織って外へと出る。
 時間を掛けすぎたきらいはあるが、しかし準備は万全で、陽も沈みつつある。
 昏い罪業を断ち切るには、丁度の良い頃合いだろう。

 貴方は間借りしていた倉庫の扉をゆっくりと開いて外へと出た。
 辺りは既に薄闇が降りており、立ち込める灰雲も相まってなおさら暗く思える。

 闇夜を照らす白い月は雲に阻まれ、その光を朧気に淡く飛散させており、小さな星々の輝きにおいては光の欠片すら窺うことはできない。

 討伐には向かず、怪物にとって動きやすい状況だと貴方は判断する。
 しかし貴方の辞書に撤退の文字は無い。この程度の悪状況で討伐を延期するような弱い思考は、怪物討伐の専門家として見られる断罪者には求められていないからだ。

 如何なる状況に置かれようとも、周囲の環境と事物を観察して利用し、最も有効と思われる手段を用いて一刻も早く怪物を完全に断罪する。

 それのみが、断罪者たる貴方に求められている唯一の使命であり、そして貴方の持っている偽らざる感情でもある。

 夜目に切り替えて辺りを見遣ると、村の門は既に閉じられ、見張りの村人が矢倉に立ち、外へと神経を張っているのが視て取れる。

 貴方は村人にわざわざ門を開けさせる必要も無いとし、近くの木柵に手足を掛け、腕と足の力を合わせて柵を一気に飛び越えた。

 気配も音も立てずに為したため、村人が気付いた様子は無い。

 恐らくは、漂っている空気の重さの所為もあるだろう。
 雨が近いのか空気に含まれる湿度が高く、身体に掛かる負担が意識に障らぬ程度に増し、眠気を誘い、集中を妨げるのだ。

 貴方は手早く怪物を倒すことを決め、村長から聞いた畑の跡へと向かう。

 そこは、北の森のすぐ側にある畑の一つであった。
 今や見事な麦穂の見る影もなく、荒れた耕地が土を剥き出しにし、倒され踏まれて喰われた麦の残骸がぼろぼろに散乱している有様だ。

 怪物が来るということで、村人は掃除にも来られないのだろう。
 無事な麦穂は一つたりとも無く、他の麦畑が襲われないか心配するのも無理からぬ話だと貴方は思う。

 貴方としてはここで気配を消して待ち構え、怪物が森から現れ出るのを見計らい、不意を打って即座に断罪を執り行うつもりだ。
 村長からの話によれば襲来の無い日もあるとのことであったから、貴方はこれから怪物が姿を現わすまでこの場に潜んで待ち続けるつもりでもあった。

 が、機会はそれほどの間もなく訪れた。

 完全に漆黒の闇で塗り潰されている森の口から、四つ足の獣が現れたのである。
 それはまさしく、大きな狼そのものであった。
 体長にして二メートルを優に超え、全身の毛が白色に抜けている。
 大白狼と呼ばれる種の動物に似ているが、その大きさは比較にならない。

 貴方はその白狼の瞳に宿った狂気と罪業の濁りを見た。
 野生の動物が決して持ち得ぬ、執念じみた怨念をその瞳から感じ取ったのである。

 その個体が恐らく、村長の言っていた怪物なのだろう。
 風は無く、光も無く、ゆえに白狼は貴方のことになど気付く素振りも見せない。
 のっそりとした足取りでもって、貴方の正面から左手側、畑の方へと歩いてゆく。

 貴方の潜んでいる位置は風下でもあり、白狼の嗅覚が反応する万一もない。
 この辺りには敵がいないのだと、安心しきっている様子であった。

 そのように晒し出されている隙に漬け込まない理由は、貴方に無い。

 短銃を腰元から抜き出し、安全装置を外して狙いを定める。
 狙うは胴体ではなく、それよりやや下の位置にある、後ろ足の付け根だ。
 胴体に次いで狙いを定めやすい上に、怪物の優れた身体能力を殺ぐことができる。

 獣の形をした怪物は得てして生命力が高く、そして機動性も優れている。
 胴体を撃った程度ではその機動性を鈍らせることはできないため、多少の狙い難さはあるが、脚部を狙って撃った方が後々になって有利に働いてくるのである。

 集中し、呼吸を殺し、狙いを一点に絞り上げ、貴方は短銃の引き金を引いた。
 音よりも早く黒き銃弾が飛翔し、狙い違わず白狼の後ろ足の付け根に当たる。
 鋭く抉り込むように回転しながら皮膜と脂肉を破って体内へと捩じ入った銃弾は、その身体に流れている白き血に触れた瞬間、黒い火花を散らして炸裂した。

 一拍遅れて銃声と、白狼の悲鳴が辺りに響く。

 銃弾の命中した白狼の後ろ足は、その付け根から白い血液を噴出させ、肉が抉れて千切れかけながらも、しかし貴方が見ている内に傷口周辺の肉が膨れ上がっていき、傷口を覆うようにして回復し始めている。

 軍隊でも手を焼くという怪物の厄介なところは、その並外れた治癒能力にある。
 致命の傷を一撃で与えられるのなら問題ないが、そうでない場合にはすぐに傷口が修復されるのだ。
 傷を刻み、多少の血液は流せることができようとも、その不死性とも称される高い継戦能力は討伐者の戦意をこれ以上無く挫く。加えて、少なくない焦りと惑いを生み出すことにも繋がっている。そうして生じたその隙を、怪物は逃さず利用するのだ。

 貴方の場合においては、隙が生じる筈もない。
 なにしろ、怪物討伐の専門家たる断罪者であるがゆえに。

 貴方は即座に立ち上がって鋸鉈を右手に携えると、止めを刺さんと疾駆する。
 しかし怪物たる白狼も然る者で、足を撃たれた瞬間に敵がいると素早く認識したのだろう。悲鳴を上げると同時に後退し、森へと逃げ込むように駆け出したのだ。

 白狼の行動に貴方は微かな驚きを持ちながらも、しかし駆ける足を緩めない。
 大抵の怪物は攻撃を受けると同時に殺意と敵意を周囲に振り撒き、在する凶暴性を大いに発揮することが多いのだ。

 が、此度の討伐対象は少しばかり違うようだ、と貴方は思う。

 とはいえ、行動に多少の違いが見られようとも、討伐することに変わりはない。
 思考の隅にこれまでとは違う行動を取る可能性を考慮しつつ、貴方は逃げる白狼を追跡し、闇を抱く森へと踏み入ってゆく。


 【回想:深き闇を抱く森】


 森に三歩ほど踏み入った時点で、貴方は白狼の考えを知った。
 黒曜の神たる加護を受けた断罪者であるならば、多少の暗さがあろうとも、視界に映るものを鮮明に捉えられるのだ。が、この森はどうしたことか、断罪者である貴方であっても視界がほとんど利かないのである。
 ゆえに貴方は白狼の姿を見失い、その場に立ち尽くすこととなった。

 とはいえ、追跡が不可能というわけでもない。

 貴方の視線は足下へと移り、そこに残っている微かな痕跡を目に映す。
 それは、白狼の足から伝って落ちたのであろう白き血による血痕だ。
 並外れた回復力といえども、黒曜の神の加護による武器の一撃は早々に治らぬものであるらしい。血痕は確実に森の奥へと続き、白狼の逃げ先を教えてくれている。

 貴方は僅かに目を細め、気配と足音を殺しつつ、白き血の跡を追ってゆく。
 少し歩いて追ううちに、貴方は血痕以外にも痕跡が残されていることを知る。

 なにしろ相手は大きな肉体を持つ動物だ。
 それも完全に野生の動物というわけではなく、元は人間であったものだ。
 ゆえにこそ、なのだろう。野生の動物なら残さぬ筈の気配や感情・意思の残滓が、淀んだ罪業の残り香が、貴方の行く手を導いてくれるのである。

 視界が利かぬ場所といえども、白狼の残した濃密な気配が臭い立ち、貴方を迷わすことなく歩かせる。

 そのまま十分ほど、貴方が闇の中を歩いていた頃のことだ。
 貴方の感覚に白狼の気配が掛かり、その気配が止まっていると感じられたのは。

 血痕はもはや残っておらず、どうやらほぼ完治してのけたらしい。
 だからであろうか。白狼は振り払えぬ貴方のことを疎ましいと感じて敵意を露わにし、この先にて待ち構えているのである。

 貴方は鋸鉈を握る手の感覚を確かめながら、一歩一歩を慎重に進めてゆく。
 いつ白狼が襲い掛かってこようとも、対応できるように。
 しかし白狼は少しも動く気配を見せず、貴方の歩みを止めることはしなかった。

 待ち受ける白狼を目に留め、貴方は歩みを止めた。

 そこは、灰雲によって覆われた空の映る、開けた森の広場だ。
 深緑の草花が萌え、淡い空の光を返し、場における幻想を、そして厳かさを、静かに彩っているのだ。あたかも、白狼と貴方の対決を讃えるかのように。

 視界が利いた貴方の目に、白狼の姿が確かに映る。
 しかしその姿は、先ほどまで貴方が見ていたものとは全く異なっている。
 というのも、貴方の先ほどまで追っていた白狼の毛皮は、対峙している者の足元に落ちているからだ。恐らく、それは脱皮という言葉が最も相応しいに違いない。

 白狼は今や四つ足の獣ではなく、二本足で立つ怪物と成っていた。
 上半身の筋肉が肥大化し、下半身もまた肥大化した上半身を支えるに十分な筋肉を持ち得ている。白き毛皮がなお健在なその怪物は、人狼という呼称が適していることだろう。

 人狼は大きく吠え猛ると、貴方に向かって殺意の圧を押し付けた。
 無抵抗の怪物を討伐することを良しとは思わぬ貴方は、人狼が露わにした闘争心を密かに称賛していた。戦闘の甲斐がある敵と看做し、敬意をもって断罪すると改めて覚悟したのだ。

 【異形の怪物――白き人狼】

 殺意の圧を飛ばした人狼は貴方が少しも身動ぎしないことを認識すると、上半身を屈めて両の腕を足元に置き、腿の筋肉を肥大化させて力を溜めていく。膨れ上がった大腿筋は人狼の肉体を容易に、そして即座に貴方の元へと運ぶだろう。

 そうと察した貴方は左手で短銃を掴むと同時に、狙いも定めず即座に撃った。
 二発、ほぼ同時に飛翔した弾丸は狙いを定めていないにも関わらず、人狼の大腿筋へと吸い込まれるように命中する。

 かに見えたが――。

 貴方が動いた瞬間、大腿に人狼は溜めていた力を解放し、銃弾が自身に届くよりも早くその場から横へと跳躍していた。

 爆発にも似た粉塵を巻き上げ、人狼はその場から姿を消す。
 広場から外れ、左右の闇に姿を紛れさせ、貴方へと接近するつもりなのだろう。
 左手側に跳躍した人狼を視認した貴方は、その気配が依然として近くにあることを知覚できている。慌てることなく広場の中央へと移動し、そして辺りを睥睨する。

 人狼は止まることなく周囲の木々を踏み場として、跳躍を用いた移動を繰り返している。広場の中央にいる貴方の背後を取るかのようであり、隙を見出すかのようでもある。

 人狼に逃げる気が無いことを改めて認識した貴方は辺りへの睥睨を辞め、いつでも鋸鉈を振るえるように構えて止まり、視線を自身の足元へと向け、敵が襲い掛かってくるのを待った。

 貴方の視線が外れたことを認識したのだろう。
 その瞬間、人狼は即座に戦意と殺意を漲らせると、貴方の後方へと回り込み、強い脚力から生み出される跳躍によって貴方の背後を取っていた。
 両拳を握り合わせ、振り下ろすことによって貴方の頭を叩き潰す構図である。

 両腕が振り下ろされる前のコンマ数秒の刹那、人狼は自身の行動が、歯痒いほどに遅くなっている感覚を得ていた。時の流れが緩やかに思える感覚の中、人狼は驚異をもって現実の推移を視認する。

 足元を見ている貴方の右手が振り翳され、人狼の振り下ろす両腕よりも早く動き、拳を握る両手首を抵抗もさせずに切断したのだ。

 怪物の毛皮も強靭ではあるが、筋肉や骨に至ってはそれよりもなお強い。
 密度がこの上なく高く、並々ならぬ強度を誇る。
 にも関わらず、貴方の武器はそれらを容易に切断せしめた。

 ゆえに、己の身体強度を自覚し、武器としていた人狼の驚きは思考の停止を生むに足るものであった。停止による空白は人狼の認識における現実との断絶を生じさせ、貴方の攻撃を無防備に受けざるを得ない隙へと繋がらせる。

 人狼が驚き、硬直しているうちに、貴方は膝を曲げて後ろへと跳び退る。
 襲い掛かってきた人狼と前後を入れ替わるように、その位置を逆転させる。

 人狼が現実に認識を戻したときには、既に貴方は鋸鉈の攻撃行動を終えていた。
 得物を振るい、人狼の両足首と膝裏の筋肉を断裂させて神経を断ち、二度と立てぬように引き裂いていたのである。

 白き血液を勢いよく噴き出しながら、人狼は襲い掛かった体勢のまま大地に倒れ、受け身も取れずに転がった。

 立とうと思えど足には力が入らず、両手首は欠損している。
 怪物足り得る驚異の回復能力といえども、欠損の修復には多くの時間を要するようで、その傷口周辺から肉筋が隆起し、血管と神経を伸ばし始めるも、肉に血が通わぬままで動けぬ様子を見せている。

 喉奥から漏れる悲鳴と激情を持て余しながらも、人狼はなんとか体勢を整えようと苦心する。が、それは同時に、貴方という天敵の存在を一時的にでも忘却するという愚行であった。

 貴方は人狼を見下ろす瞳に何の感情も乗せぬまま、両足首を鋸鉈で切り落とす。
 白き血が更に噴き出し、肉が隆起し始めるも、しかし怪物の肉体とて限界があるのだろう。
 両手首の修復に、膝裏における筋肉と神経の修復、それに加えて両足首の修復だ。流石に治癒の限界を迎えていると見え、それぞれの部位における筋肉の隆起が遅滞し、傷口の修復ができないでいる。

 それを視認した貴方は、人狼の上半身を蹴り上げて転がし、仰向けになった人狼の顔へと、手に持つ鋸鉈を突きつけた。

 ――罪に侵されたお前の生は、これにて仕舞いとなる。

 貴方の思考を、その思いを、人狼は直感したのだろう。
 反撃手段が無く、手も足も出ないという状況も、彼に味方したのかも知れない。

 人狼は見下ろしてくる貴方の目を無感動に見つめた後、呻き叫ぶことを止めると、呼吸を整えて痛みを耐えてみせた。姿勢を正して動きを止め、両の目を閉じ、自身の死を受け入れる覚悟を見せたのである。

 それは人狼に残された、人間性たる最後の誇りであったか。
 死ぬ際に見苦しきを良しとせず、穏やかな心境を以て死後の旅路へ赴いたのだ。

 ――断罪執行《HUNTED》――

 貴方の断ち斬った人狼の首は、怪物とは思えぬほどに安らかなる表情であった。
 白き返り血に塗れながら、貴方は断罪した人狼の消滅を見届ける。

 罪業を断ち、命脈を絶ち、人間としての生を誇りあるものにする。
 そのために、異形たる怪物は速やかに消滅させなければならない。
 心で諳んずる一方で、貴方の表情は安らかとは程遠い、悲痛の極まるものだ。

 無意識に頭上を見遣るも、そこに白き月は見えない。
 貴方は心がざわめく音を聞き流しながら、討伐完了の報告をすべく、村へと静かに戻るのであった。


 『白き血』


 全ての獣には白き血液が流れている。
 白色の血は痴愚の証だ。
 白は何色にも染まる純粋を示し、そして同時に、あらゆるものを受け入れる。
 全てをあるがままに受け入れるがゆえ、疑問に思う知恵が無い。
 より良い環境を作り上げようという向上性も無く、それゆえ獣に進歩は無い。
 人の肉体にもまた、白き血が流れている。
 つまるところ、所詮は人も、理知無き獣に過ぎないということを示唆している。
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