銀髪美少女JKの清楚で無口な昼と変態で囁く夜

黒兎しろ

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6話 日直の仕事と屋上にて

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 日直の当番が、最後の2人、つまり、雪本と渡辺になった。

 早いのか遅いのか、浅村高等学校での生活は1ヶ月程が過ぎようとしていた。クラスでは、ある程度交友関係のグループが固まってくる頃だった。

「えーっと、今日の日直は、、雪本さん、、、た、頼めるかしら?」

 担任が、そう雪本に遠慮がちに言った。

 佐々木先生!別に生徒に、許可はいらないと思います!

 俺はそう、心の中で突っ込んだ。

 担任の教師でさえ、雪本のオーラに屈してしまうのだ。

 やはり、雪本のオーラは他人を寄せつけない、もしくは畏れさせるものがあるらしい。

「おい、充」

 渡辺が話しかけに来た。

「どうした?渡辺」

「やべぇよやべぇよ」

 お前は出○か。

「今度は何がやばいの?」

「雪本さんと、一緒に日直だぞ!やばスンギだろ!」

「あっそう」

「おい!素っ気ねぇな!これはある意味、俺と雪本さんの初の共同作業と言ってもいいんだぞ!初体験だぞ!やばいって!」

「あーはいはい」
 俺は適当にあしらうように返事をした。

「俺、緊張で、お腹下しそうだわ……」

「大丈夫か?今のうちに大きいのだしとけよ」

「お、おう。もしかしたら、今回はやべぇかもしんねい」

 そう言って腹を抱えながら、渡辺は自分の席に戻って行った。

 何が言いたかったんだアイツは。

 ◇

 数学の授業が終わり、チョークで汚れた黒板を、日直である雪本が消していた。

 が、雪本は背が低く、一番上の方のチョーク跡を消せないでいた。もう一人の日直である渡辺はというと、黒板の仕事を放棄していた。

『悪い!俺ちょっと腹いてえ!充、お前代わりに黒板頼む!』

 さっきそう言って俺に仕事を押付け、トイレへ駆け込んでいったのだ。

 せっかくの雪本とお近付きになれる、渡辺の表現で言えば、初の共同作業を出来るチャンスをアイツ自ら逃していた。

 渡辺……もし、これがパワ○ロの彼女攻略イベントなら、チャンス‪✕‬が着くぞ。

「はぁ、、仕方ないやるか」

 そう言って俺は、重い腰を上げ、席を立った。

 背伸びしてぴょんぴょんと跳ねて、一生懸命頑張って消そうとしている雪本の方へ向かう。

 黒板消しを取り、背伸びもせず簡単に俺はさりげなくチョーク跡を消した。

「あっ……」

「ありがとうございます」

 雪本は、ボソッと簡素に普段の声でそう言った。

「渡辺のやつがお前に緊張してるらしくて押し付けられたわ」

「私のせいですね……申し訳ないです」

「いや別にそんなに謝らんでも」

「いや、貴方ではなく、私のせいで渡辺くんがお腹下した事についてです」

「あーそっち?それはお前が悪いと言うより渡辺が悪いから大丈夫」

「そうなんですか?それならいいですけど」

「じゃ、あとはお前が消しとけよ」

 俺は黒板の上の方を消し終えて、そう言って席に戻った。雪本はうなづいて、黒板を消し続けていた。

 ◇

 授業が終わり、放課後になった。

 俺は、帰り支度をしていると、、渡辺が話しかけに来た。
「さっきはありがとうな、俺の代わりに」

「ああ、いいよあれくらい」

「んじゃ、今日俺用事あるから、充またな」

「あれ?学級日誌提出しなくていいのか?」

「あー、あれ雪本さんに任せた」

「おい、いいのか?任せっきりじゃないか」

「いや、役割交換したんだよ。黒板とか雑用は全部俺がやって、雪本さんは学級日誌。黒板やりづらそうにしてたんだろ?」

「ああ、そうだけど。まぁいいか、じゃあな渡辺」

「おう?またな」

 そう言って渡辺は教室を出た。他の生徒も続々と教室を後にした。

 俺も、その流れに乗ろうとしたが、少し雪本が気になって、雪本の席の方を見た。

 雪本は、どんどんと生徒が帰っていく中、席に座っていて俯いていた。まだ日誌を書いているようだった。

 しかし、その書く手は止まっていた。

 日誌を深く覗き込んで、髪を垂らし、考え込んでいた。

 クラスで浮いている雪本に話しかけようとする人は誰もいない。浮いているとは言ってもいい意味で浮いているのであって、決して嫌われている訳では無いので、話しかけようと思えば話しかけられる人もいるのだろうが。あんな感じだと話しかけづらくはある。

 助けるべきだろうか。

 しかし、雪本はそれを望んでいないだろう。

 絶対に声のことは秘密にすると、あの時、雪本と約束をしていたからだ。

 ここで助け舟を出そうものなら秘密がクラスにバレることに繋がるかもしれない。

 俺は雪本に関して深く知っている訳でもない。だが、俺の大好きな星霜 冷の中の人であり、それを守るためだけに約束を守っているのだ。

 なのに姿

 俺はどうかしていた。

 これをすることで、どちらにも何の得にもなり得ないはずなのに、そう思ってしまった。

 これは、俺の単なるエゴだった。俺に見せている姿が雪本の本性、素であるかなんて分からないのに。それをすれば雪本との約束を破り、嫌われてしまうのに。

 だけど、俺は自分を抑えきれなかった。単純に雪本を助けたいという想いだったのか、やはり100%自分のエゴなのか分からない。

 俺は、雪本に話しかけていた。

「なんか困ったことあるのか?」

 雪本は、驚いた表情を見せて、固まった。

 そして、何も言わずに、、俯いた。

「やっぱり無口だね……雪本さん」

「よく話しかけに行ったな、並木。あいつ意外とやるじゃん」

「雪本さん何にも答えない。やっぱりクールかっこいい!でもちょっと怖い……」

 周りにいた女子たちの口からそんなコソコソとした陰口が聞こえた。

「日誌、分からないなら俺が書いて出しとくよ」

 雪本はコクリと頷いて、俺は学級日誌を雪本の手元から取った。

 そして自分の席について、俺は日誌を書き始めた。

 周りのクラスの女子達からざわざわとした声が聞こえた。

 俺と雪本の関係に関することや、雪本自身に関すること、その一つ一つに気を取られて、俺はやはり、まずいことをしてしまったなと深く後悔した。

 きっと、雪本もこの声を聞いている。雪本は、こういう声が嫌いで、自分の声を出せなくなったのかもしれない。

 俺はそんなことを考えながら、絶望に浸り、職員室ヘ向かい、学級日誌を提出した。

「これ日誌です。じゃあ、俺はこれで」

「あら?並木くん?ご苦労さま。今日の日直は雪本さんと渡辺くんよね」

 佐々木囁子先生は少し驚いた声でそう言った。

「ああ、そうなんですけど、雪本さんが何やら困っていたみたいで代わりに書きました」

「あらそうなの。凄いわね!並木くん。君、冷めてるようで意外と男らしいじゃない」

「はは、そうですかね、さようなら」

「あら、さようなら」

 俺はささしょうの言葉をテキトーに促して、そうフラフラと職員室を出た。

 廊下や階段から夕日が差し込んできた。

 もう、春の夕焼けの時間か。

 俺は、下駄箱で、靴を履き替えて、校舎を出ようとした時、校舎の入口に雪本が居た。

「ちょっと付き合える?」

 雪本は、低い声で、そう言って、俺を屋上まで呼び出した。

 終わったと思った。

 ◇

 屋上に着くと、真っ赤な夕日が、差し込み、雪本の顔を赤く染めあげていた。

 雪本は夕日を見つめながら、地声で口を開いた。その時、より一層、夕日の光で雪本の顔が赤くなった気がした。

「その、、今日はありがとう」

 雪本はこちらに向き直ってそう言った。

 俺を待っていたのは雪本の感謝という意外な言葉だった。

「え?」

「黒板とか、学級日誌のこととか、ちゃんとお礼言えてなかったので」

「いや、、いいけど。よかったのか?」

「え?何がですか?」

「俺が、、話かけて」

「まぁ正直、驚きました。でも、、助けてくれたんですよね?」

 俺はその純粋な問いに心を痛める。俺は、本当に雪本を助けるために行動したのだろうか。

「あなたは、認めたくないかもしれませんが、何となく分かります」

 雪本はもう一度夕陽の方を見て、そう言った。

「何がだよ?」

「あなたが、困ってる人を放っておけない。助けてしまう人だって」

「そんなこと、、なんで分かるんだ」

「何となく、ですけど。私、人にそこまでされたことあんまり無いので、人の好意に敏感なんです」

「ふぅん。でも、俺のせいで女子達に色々言われただろ。大丈夫だったか?」

「まぁいい思いはしませんでしたけど、あれくらいなら」

「そうか、それは良かった」

 俺はそう言って。軽いため息を吐いた。

「なんか、急にいい人みたいで調子狂いますね。いつもならもっと毒吐きませんか?」

「あー?人を蛇みたいに言いやがって。今日はなんかそういう気分じゃないんだよ」

「気分ならやっぱりやるんですね……」

「ま、まぁとにかく……今日は今日でお礼は言っておきますが、あなたの私へのからかいは度が過ぎるのでそこは嫌いです。なのでやめてくださいね」

「あぁ、それは善処するよ、じゃあまたな」

 俺はそう言って、その場を後にしようとした。

「あ、ちょっと待ってください!」

 しかし雪本は呼び止めた。

「ん?」

「わざわざ、屋上に来るように呼び掛け合うのめんどくさくないですか?RISE交換しましょう」

 と言って雪本はスカートのポケットからスマホを取り出していた。

「あー、おけおけ。RISEね」

 こうして俺と雪本はRISEを交換した。

「ありがとうございます。じゃあ、また、明日」

「ああ、明日」

 そう言って俺たちは別れた。

 とりあえず雪本が傷ついてないみたいでよかったと俺は思った。もちろん、雪本が傷つくことによって、星霜 冷の配信が無くなってしまったら嫌だからという理由だが。

 だけど、俺は雪本に感謝されてどこか優越感に似た感覚を覚えるのだった。

 俺は雪本とこうして、数回二人きりで話しただけで、やはり、雪本のことを深くは理解してない。でもそれでいいんだ。俺は星霜 冷が好きで、その雪本の声が好きなのだ。それを周りにも知ってもらいたいと思ったが、結局、彼女の声を聞けば、自己満足で許容できたのだ。

 俺は、帰り道、クラスの女子の陰口を思い出していた。

 雪本のことを無口とかクールとかかっこいいとか言っていたな……

 無口でクールな、清楚系お嬢様のイメージを抱いているだろうだが、それは昼の仮の姿。

 夜、星霜 冷として見せる顔は、真反対で、変態で、饒舌で、声はとても女の子らしい。

 それを彼女たちは知らない。知る由もない。俺しか知らない。

「ふふ、まあ、おかしな話だけど、こういう状況も悪くないか」

 俺は一人で小さくそう呟いて、夕陽を見上げながら帰るのだった。
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