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夏の合宿編
合宿1日目ー犬も歩けば棒に当たる
しおりを挟む昼ごはんを食べ終えた私達は再び先程の部屋へと行き午後の授業を受ける。
お腹が満たされ、暖かい日射しが差し込む部屋は眠たくなりそうだった。
そして眠気と戦いながら時間が過ぎ………。
「よし、授業はここまでだなっ。」
先生の授業終了の合図と共にみんなが元気になる。
「やったー、終わったー。」
さっきまでウトウトしてたはずの吹雪も元気になっていた。
勉強が終われば後は楽しみなことしか残っていない。
合宿のメインである明日が待ち遠しい。
私達はまた自室へと戻ることにした。
戻ってる最中に吹雪がワクワクした様子で話す
「明日から楽しみだね。」
「えぇ、すごい楽しみですわ。」
星宮ちゃんも明日のことを楽しみにしているようだ。
「うん、すごい待ち遠しいよ。」
私も勿論すごい楽しみだ。
いざ、勉強が終わるとやっぱりドキドキするものだ。
私は明日のことをいろいろと想像していた。
……ただ私は頭の中が明日の事でいっぱいで足元の段差に気づいてなかった。
そして次の瞬間派手にこける。
「桜さんっ」
星宮ちゃんが心配して駆け寄る。
「桜!大丈夫?」
吹雪もすごい心配してくれている。
「だ、大丈夫。ありがとう。」
(は、恥ずかしい)
ちょっとうかれ過ぎていた。
怪我などはなかったが、持っていた筆箱やノートを四方八方に散乱させてしまっていた。
吹雪と星宮ちゃんが手伝ってくれたおかげで、何とかすぐに拾い集めることができた。
「二人ともありがとう。」
「いいって、いいって。」
「そうです、気にしないでください!」
私達は再び自室へと向かうことにした。
しかし部屋へと向かっている途中で私はあることに気づく。
「ごめん、二人とも先に戻ってて。」
私は吹雪と星宮ちゃんに、そう伝えた後さっきのこけた場所へ戻った。
筆箱のキーホルダーが無くなっていたのである。
「どこにもないなぁ。」
床を見渡すがキーホルダーは落ちてなかった。
決して良い品物というわけではないが、小学生の頃から筆箱は変わってもずっと着けていたキーホルダーなのである。
無かったら寂しいものだ。
私はこけたときのことを思い返してみる。
(そういえば、筆箱をこけた勢いですごく飛ばしていたっけ。)
私はふと、上を見上げる。
「あ、あった。」
壁の装飾が施されている部分に、引っ掛かって切れていたのである。
しかし、場所が悪かった。
少し高い位置だったので私では取ることはできなかった。
ホテルのスタッフに頼んで取ってもらうにしても、次の集合までそんなに時間は無いのだ。
(さて、どうするか。)
周りに椅子みたいな物も無いし、長い棒みたいなものも無いしなぁ。
私は一人立ち往生していた。
すると私は後ろから誰かに声をかけられる。
「………何してんの?」
私は後ろを振り返った。
そこには同じ桜海の制服をきた人が立っていた。
「え、あぁちょっと壁にキーホルダーが引っ掛かっちゃってさ。」
「ふーん。」
(そうだ!)
恥を忍んで彼に肩車してもらおう。
もしかしたらギリギリ届くかもしれない。
私は声をかけることにした。
すると声をかけようとした時、彼は引っ掛かっている壁から二歩、三歩と距離をとり始めた。
壁を蹴って衝撃で落とすのだろうか?
何をするんだろうと考えながら私は彼を見守ることしかできなかった。
そして五歩ほど下がった彼は、再度キーホルダーの位置を確認し壁に向かって走り出す。
そして次の瞬間……。
(え!?たっか。)
走り出した彼は壁の直前で飛び、軽々とキーホルダーを取ったのだ。
「はい、これ。」
驚いてる私にキーホルダーを差し出す。
「あ、ありがとう。」
「それじゃ。」
彼は帰っていこうとする。
「あ、あと、これ貸しにしとくね。」
「え、え?」
最後そういって彼は去っていった。
貸しってことは何か頼まれるのだろうか。
「あっ、私も早く戻らなきゃ。」
私も急いで戻ることにした。
今度からはうかれ過ぎには気をつけなくては……。
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