32 / 124
夏の合宿編
合宿2日目ービーチフラッグス⑥
しおりを挟む会場は二人の決着がつき、大きく盛り上がる。
「「せいやく~ん、優勝おめでとう。」」
「「松白くん、ナイスファイト~。」」
『パチパチパチパチ。』
止むことのない声援と拍手。
それは二人の試合がそれほどまで凄かったということだ。
「うおーーー!!先生は感動したぞっ。」
山口先生は感動して泣いていた。
そしてビーチフラッグスも終わりビーチは多くの人混みで雑踏する。
「あーー、松白君惜しかったね。」
「うん、あと少しだったね。」
私にも悔しい気持ちがあったが、きっと本人はもっと悔しいだろうと思った。
(そういえば……………。)
当の松白君本人はどこに行ったのだろうか。
試合が終わり、多くの人々が行き来しているのでこの場所からは見つけるのが難しかった。
「ごめん、ちょっと散歩してくる。」
「え!なに急に、どうしたの!?」
私の発言に驚いている吹雪達をよそに松白君を探しにいった。
私なんかが励ますとか大層なことができるわけではないけど……。
それでも気づけば体が動いていた。
それに………。
探すこと数分……。
「やっと、見つけた!」
ビーチの片隅の古いベンチに松白君は座っていた。
「さくら?どうしたこんな所まで来……。」
「ちょっと足見せて。」
「いや、なんで……。」
「いいから、見せて。」
私は松白君の足を強引に掴んだ。
「ほら、足怪我してるじゃん。」
「いや、大した怪我じゃないから。」
不自然に崩れた決勝戦でのスタート、まさかとは思っていたけどやっぱり怪我していた。
私はバッグの中から、絆創膏と消毒セットを取り出した。
「ふふっ、何でそんな物もってるの?」
松白君は笑いながら言う。
「私自身昔っからよく怪我してるから、いつも持ち歩いてるんだ。」
「……へぇ、そっか。」
そこから沈黙が続く。
私は黙々と応急処置をしていた。
松白君は何を考えているのだろう。
別に気まずいという訳ではないがそんな中、時間だけが過ぎていく。
「よしっ、終わり。」
幸い大きい怪我ではなかったので、すぐに治るだろう。
「ありがとう、さくら。」
「よし、じゃあ戻ろうか。」
私が戻る準備をしていると、松白君はうつむきながら話し始めた。
「……ごめんな、負けちゃった。」
やっぱり、決勝のこと気にしていたのか。
「謝らなくていいって。それに、怪我なかったら松白君が勝ってたでしょ。」
実際、スタートの時の怪我が無かったら勝負の行方は変わっていただろう。
「それに、あんな良い勝負で怒る人いないって。」
「………ありがとう。」
こういうイベントの時とかは何でもこなせる松白君だからこそ、余計に悔しいんだろうな。
それに私には分からない『男の勝負』っていうのもあるんだろう。
(…………あっ。)
私は、ある言葉を思い出した。
「あのね、勝負は負けを認めるまで負けじゃないから。」
「え?」
「『負けても負けを認めず、挑み続けて最終的に勝てば勝ちだ。』ってお父さんが言ってた。」
「あはは、何だよそれ。」
お父さんが昔言ってた言葉を思い出した。
あきらめの悪いお父さんらしい言葉だ。
「ありがとう、さくら。……よしっ、戻るか。」
「うん、戻ろう。」
良かった、いつもの松白君に戻ったようだ。
そして、私達は元の場所へと戻っていった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
診察室の午後<菜の花の丘編>その1
スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。
そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。
「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。
時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。
多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。
この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。
※医学描写はすべて架空です。
春に狂(くる)う
転生新語
恋愛
先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/
カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる