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第三章…「始まりの一歩」
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担任のサクラノ・ディッツペルの挨拶も終わり、最初の授業として丸一時間を自己紹介と友達作りに充てられた。
ちなみに、レイトとユリィがいる教室は二つあるうちの一つ。Aクラスにいる。もう一つの教室は隣でBクラスだ。
新入生は男女合わせて100人。
それを二つのクラスに分けられ50人が教室一つの中にいる。
普通の教室の広さでは50人も教室に入れば狭すぎて移動も全くできなくなってしまう。そのため魔学園の教室一つ一つが広々としていて、一年生全員が同じ教室に入っても余裕がある。
二年生教室は一年生教室の真下。つまりは下の階にある。
一年教室と比べて違いを言うならば、教室の数に広さだ。一年教室は広々としているが、二年生教室はA、B、C、Dに別れて中の広さは30人が入れるか入れないかの広さが各クラスに配分されている。
更に下の階、三年教室からはSクラスが入り、代わりにDクラスが消えている。
SはAよりも優れた者が入るクラス。そして、Dクラスにいたものは強制的に退学となる。
そして最後の階は四年教室で、S、A、Bだけが残り、Cクラスが消えている。これも同じくCクラスにいたものは強制的に退学となるためだ。
そして四年間生き残った者は、卒業と共に魔王軍に入る仕組みとなっている。
話は自己紹介へと戻る。
最前列の席の近くのドアから横にずれていく感じに自己紹介が始まる。
「私の名前はユリノ・ドミニテルです…よろしくお願いします」
ユリノ・ドミニテルと名乗った少女は肩より少し下くらいまで伸びた水色の髪に青い瞳を持つ。
その隣に座る少女がユリノが座るのと同時に立ち上がる。
「私はリュカ・テルピアデノですわ、以後お見知りおきを」
偉く上品な言葉遣いのリュカ。
腰くらい伸ばされているだろうと思われる赤髪は、ツインテールで縛られている。
二人目まではきちんと聞いていたレイトだったが、飽きてしまい自分の髪をいじり始める。その隣に座るユリィも飽きていて、窓の外の雲一つない青い空をみて聞き流していた。
更にその二人の後ろに座るエリオとひなも興味がないといった表情をしており、目を瞑りレイトとユリィ同じく聞き流していた。
自己紹介が始まって、四十人目を迎えた頃に四十人目の男が立ち上り、自己紹介を始める前にと言い出してはレイトを指差す。
「サクラノ先生、なぜこの魔学園に異端者がいるのですか?」
その男の言葉に黙ったまま静かに耳を傾けるレイトは、髪をいじったままである。
「俺はあの異端者が同じ教室に一緒にいるのはできません!教室を変えてください」
「この魔学園はどんな方でも受け入れますよ。例え、異端者でも魔王でも移民でも庶民でもです。」
サクラノはそれだけを言うと再び誰もが見惚れる笑顔をする。
それでも受けいられない男は、レイトに向かってミニナイフを投げた。その隣に座るユリィに当たりかけるが、当たり前のようにかわし、お目当てな人物に向かっていく。レイトは見もせずにそのミニナイフを人差し指と中指で軽く挟んで止める。
そんなレイトの動きに教室中に動揺が走る。理由は簡単。早すぎて見えなかったからだ。ミニナイフを止めたレイトはそのまま投げ返し、男の頬を掠めていく。
「止めとけよ?人に刃物を投げるのは……あ、自己紹介をどうぞ?」
「____っ、俺の名前はダマテ・ミーハグイルグだ…」
ダマテと名乗る男は自己紹介を終えると、そのまま座り隣に座る男へとバトンがわたる。
「僕の名前はミエハネ・ロイバです…よろしくお願いします」
ミエハネと名乗った少年は、ダマテとは違い静かな子で首にはチョーカーをしている。
黄緑色の髪に鬼のような角が2つ額にある。瞳には鬼の特徴とも言える黄緑と緑の二種類の色が混じっていた。
鬼の判別には瞳が一番簡単である。稀にいるのは、角を隠す鬼。その事を知るものは多く、基本の判別の仕方が瞳となっている。鬼は何らかの二種類の色が混じった瞳を持っているためだ。
ミエハネの自己紹介が終わると、真ん中で座っていた女の人が立ち上がる。
彼女も見た目で種族が判断できる。ダークエルフだ。褐色肌に白い髪は後ろで小さく縛られたおだんごになっている。海を写したような澄んだ青い瞳は、クラスを見渡した後口を開いた。
「私はルイノギ・ノルギッシュです…基本的に用事がある人以外で話しかけないでください」
クラスが静まり返る。
いや、元から静かだったが、誰もが息をするのを忘れているのか?と聞きたくなるほどに静まる。
隣に座っていたメイド姿のダークエルフは、静かに立ち上がる。
首にはチョーカーが付いている。
「私はルイノギ・ノルギッシュ様の専属メイド、ルベルです」
それだけを言うと席に着く。
基本、ルイノギ・ノルギッシュとルベルは、クラスの連中とはよろしくしたくないようだった。
確かに、この魔学園のクラス分けを知れば誰もがよろしくしたくはないだろう。
重い空気のまま自己紹介の順番がユリィへと回ってくる。
ユリィはほぼ真顔で立ち上がって自己紹介を始めた。その様子をレイトは耳だけを傾けながらもつまらなさそうに外を見つめ、後ろにいるエリオはどんな自己紹介をしてくれるのか興味津々で隣に座るひなも興味津々であった。
「俺はユリィ・マルバデアだ、よろしく」
そう言うとユリィは座り、チラ見でレイトを見る。その事に気づいたレイトははぁとため息をしてから立ち上がった。
「俺はレイト・アルディアデだ…喧嘩を売るなら相手を選んでくれ」
一瞬だけミニナイフを投げてきたダマテを見る。
レイトはそれだけを伝えると席に着く。
後ろに座っていたエリオは、期待していたユリィとレイトの自己紹介だったが、他のクラスの人たちとたいして変わらなかった。それを残念に思いながらエリオは立ち上がる。
立ち上がる際に揺れる胸に男達の視線が集まる。サキュバスであるエリオはふふと笑みを浮かべると、自分の腕で胸の下から支えると更に男達はお~と言いつつ鼻の下を伸ばす。そんな男達に女達は、悲鳴を上げはしなかったが冷徹な視線を男達に送る。
「_と、私はエリオ・メイビィアです……ひなに手を出す奴には容赦しません」
満面の笑み。
この時、レイトとユリィは内心で思う。
“ひなに手を出したら殺すよ”
って言ってるようにしか聞こえないと。
レイトに攻撃を仕掛けてきた氷柱の嵐は、回避不可の全体攻撃であり、レイトの様なことができれば話は別だが、それができない奴には氷柱の嵐が体を襲う。
運のいい奴は即死。運が悪ければ、体のあっちこっちが抉られ、吹き飛び、刺さった氷柱からは冷気が刺さった場所を中心的に体の自由を奪い死に至らしめる。
そんな恐ろしい技で攻撃されるとわかれば、誰も手は出さないだろう。
再び静まる教室だが、一人のビクビクとした声が響く。
「えっ……と……、わた…しは、ひな・ルーベと…言います……よろしく……お願いします!___っいたい」
お辞儀した勢いで机におでこを思いっきりぶつかる。
ぷるぷる震え、泣くのを堪える瞳には涙が溜まっていく、おでこは赤くなっていて見ていて可哀想になる。
そんなひなのおかげで教室の空気が和む。
だが、今のひなはそれどころではなく隣に座るエリオに抱きついていた。胸に埋もれるひなの頭を優しく撫でるエリオ。
そんな二人を見ていた男達は再びお~と声を漏らし、再び女達が冷徹な視線を向けるのであった。
そんなこんなでやっと終わる自己紹介は30分もかかり、サクラノは時間を確認してから笑顔で口を開く。
「はい、皆さんお疲れ様でした~
それでは、次に男女のパートナーを決めてください」
サクラノの言葉に女達が「えっ、嘘でしょ?」「ありえない」「こんな変態達は嫌よ!」と訴え、男達は「やった、女達と組める!」「ご褒美か?」「俺組むならエリオちゃんとひなちゃんとがいいな」なんて言う輩もいた。
騒ぎ始める生徒にサクラノは笑顔を絶やさずに一言告げる。
「黙れガキ、殺すわよ」
そんなことを言われれば誰でも黙る。
けれど、生徒が黙った理由にはもう一つ。笑顔のままでいつもの声のトーンだがしかし、殺気が混じった言葉に誰しもが飲まれかける。
「男女混合チームは、十二組で全て四人チームにしたけいれど二人余るの、だから一つのチームは六人チームになる。
そして、二人のパートナーもそうだけど、四人チームも成績が関係してきます。例えば、チームの中での役割や連携などね……余った時間でその四人チームたまは六人チームを作ってもらいます」
サクラノがそう言い終わると同時に、エリオとひなに群がる男達に前の席に座っていたレイトとユリィが追い出される形になる。
席を離れて黒板近くの窓から外を見つめるレイトにチームを作って行くクラスを見つけるユリィ。
二人は内心で同じことを考えていた。
“くだらない”と。
そんなことを考えるレイトとユリィに近寄って来たのは、エロい服装を着たエリオといまだにおでこが赤いひなだった。
そんな二人に気づいたレイトはユリィに視線だけ送るとそんな視線に気づいたユリィがはぁと軽くため息をついた後に、エリオとひなに向き合う。
「どうしたの?」
「……ねぇ、私とひなとチームを組んでくれる?」
「私……からも、お願い……します」
エリオが頭を下げた後に続くようにひなも頭を下げる。
そんな二人からの誘いを悔しがりながら見つめてくる男達の視線を無視してユリィは黙ってレイトを見つめる。
俺だけで決められないと言うような視線。
レイトは窓から少し離れてエリオとひなの姿を黙って見つめ、はぁと小さくため息をついてから軽く頬を指でかきながら口を開く。
「まぁ、よろしく」
それだけを告げるとレイトは逃げるように自分の席へと戻る。
そんなレイトを見ていた三人は軽く笑う。こうして作られたチーム。何が起こっても一蓮托生。
一人が転べば、皆が転ぶ。
その事に気づいているのは、五十人中ごく一部であった。
チームが出来てから二時間目が始まる。
サクラノは生徒五十人を連れて外に出る。外と言うのは、学園の敷地内ではなく本当の外、人間たちや言うことを聞かない魔物で溢れている場所。
そんな場所に連れてこられた生徒達は、ビビる者ややる気に満ちている者に何も感じない、思わない者で別れていた。
ちなみにレイトとユリィは何も感じず、ただ隣にいる者へと視線が横目で向けられる。隣にいる者、それはエリオだった。やる気は十分にあり、手に握られている杖として使えるし、槍として形状が変わる武器に自然と力が入っていく。ひなはいつものことながら、震えている。顔には不安になっていることがわかる。
サクラノは一通り辺りを見渡した後に生徒の方に振り向く。
「今から教えるのは、この辺を支配しているゴブリンどもの殺し方又は金になる奴やその剥ぎ取りの仕方を教えるね」
「……笑顔はいいのに言っていることが最悪だ」
ボソッと呟くレイトにサクラノは笑顔のまま見てくる。
「本当に最悪だ」
「はい、レイト・アルディアデくん…ゴブリンのどこを剥げば金になりますか?」
頭を抱えるてぼやくレイトに指名をしてくるサクラノ。
二人の間で生まれる空気の重みに他の生徒は無意識に唾を飲み込む。
しばらくサクラノを見ていたレイトだったが、はぁとため息をついた後にその辺を徘徊しているゴブリンに視線を向ける。転生する前と変わらないこと確認してから再びサクラノに視線を戻す。
「……ゴブリンから剥ぎ取るのは、まずは牙と身に付けている小職品。それから、体内にある魔物の心臓部である間玉を取ること…ですか?」
「はい、正解です。
ゴブリンから取れる牙は装備することにより、防御力が上がります。
その他にもおしゃとして使う人もいます。次にゴブリンが身に付けている小職品がどれくらいで売れるかと言うと、銀貨五枚が最低ラインと考えて物によっては金貨一枚貰えるほどなんです」
生徒の目が輝いた。
この世界で言う銀貨は百円相当で、金貨は一万円といった考えを持ってもらいたい。
ちなみに、人間をもし殺し場合については金貨五枚もらえる。その事を知れば、誰もが人間を殺しに行くだろう。
だから、魔王は決めた。
襲ってくる人間だけを殺せ…と。
大体のことを教え終わると、サクラノはゴブリンから剥ぎ取ったものを腰に付けていた小さな鞄の中にしまい込みながら生徒達へ声をかける。
「それじゃあ……先程も言った通りに、ここはゴブリンが支配してるから教えた通りに殺して、奪いなさい……集合するときには青い花火を打ち上げます」
サクラノのその言葉を待ってましたと言わんばかりに、それぞれチームが集まり散っていく。
最後までその場に残っていたのは、レイトとユリィそしてエリオとひなの四人だけだった。
四人が揃うとまず、自分が使えるものを紹介することから始める。
「まずは私からね、私は後衛・前衛両方行ける…どっちが得意かと聞かれたら前衛かな」
そう言って手にしていた武器を杖から槍へと形を変えて見せる。
それを見てユリィとレイトがなるほど、と呟きながら隣にいるひなを見る。
二人の視線に気づいたひなは、ビクッと反応示しながらゆっくりと口開き始める。
「私……は、後……衛です。皆さんの…サポートや、植物……を使ったり……します」
言いたいことを言い終えたひなは、ホッと胸を撫で下ろしながらも実際に足元にある植物を操る。
それを見て再びなるほど、と呟く。
そして続くようにエリオとひながひなの隣にいるユリィを見つめた。
その二人の視線を受け取ったユリィはレイトとアイコンタクトを取る。
その理由は、少し前に遡る。
__移動しているときのこと__
サクラノに連れられて外に来た生徒達。
その最後尾にユリィとレイトは歩いていた。辺りを見回した後に、レイトは小声でユリィに話しかける。
話しかけられたユリィは、藪から棒に嫌そうではあったが耳を傾ける。
「お前どうせ光魔法しか後衛だと使えないだろ?」
「そうだけど」
きょとんとした言葉にはぁとため息をついた後に少し聞きたいことを聞いてみることにするが、答えは何となくわかっていた。
「教えてもらわなかったか?魔族は光魔法を使えないって」
「…………………あ」
やっぱりかとじと目でユリィを見つめる。そんなレイトの視線から逃げるように別の方向を見る。
だが、答えがわかっていたレイトは話を続ける。
「どうせさっき作ったチームでゴブリンを狩れとか言われたらお前は前衛へ行け……光魔法を使ったらめんどくさいことになるからな」
「…………お前に従うのは癪だがここは従ってやる」
__現在__
と言った会話をしていたからだ。
状況を理解していただいたので、話は進む。
「俺は後衛・前衛両方できるが、前衛にしてもらいたい」
ユリィの言葉にエリオとひなが「大丈夫」と言いながらレイトに視線を向ける。当然、指示したレイトは目を伏せたまま何も言わないことから同意したと判断したエリオは、そのままレイトに視線を送り続ける。
そんな視線がうざくなったレイトは、軽くエリオを睨みながら呟くように口を開いた。
「俺は後衛・前衛両方できる……前衛が二人いるなら俺は後衛にいく、それでいいだろ」
レイトがそう言うと反対をする人はおらず、とりあえずチームをより強くまとめるためにリーダーを決めることになった。が、リーダーはすでに決まっていたのかたまたま意見が一致したのかレイトがすることに決まった。
嫌がっていたレイトだったが、サクラノが見ていることに気づき仕方がなく了承した。
一通りのことを決め終わった、レイトチームはゴブリン狩りを始めることにするが、まずはエリオとひなの実力を確認するためにメインを二人に補助にユリィで狩ることにする。
「じゃあひな、サポートよろしく」
「……うん!」
そう掛け合った後、素早くゴブリンとの距離を詰めて首を愛用の槍で切り落とす。
ふらつくゴブリンの足を蔦で固定し、エリオの攻撃にビビり逃げようとする奴等にも同様に蔦で固定する。
動けない隙を狙い残りのゴブリンをエリオが片付ける。
その動きを見ていたレイトとユリィは、表面は冷静を保ち、内心では驚いていた。理由は、エリオの動きは今の年だとできる奴がごく一部であり、戦場に出ていないと捉えるのが難しいほどの素早い動きをしていたからだ。
ひなの場合は素早く動くエリオが次にどう動くかを予測し、実行する。普段のひなを知っている者からすると驚きと同時に感心する。
戦闘してから数回に渡り、この範囲に他にいないかを確認している。
初心者は、目の前に現れた敵に集中が行ってしまい、回りの警戒を怠り、死ぬケースが多い。ちなみに、エリオが最初にレイト達を攻撃をしたときに打ち消されたのは、先程までひながしていたことの応用で、攻撃で使われた魔力を瞬時に計算しては同じ良の魔力を余波に乗せて相殺する。
レイトはそれを簡単にして見せたが、それをするには魔力の線密操作が高度でなければならいし、普通はできないのだ。
ユリィもやろうとすれば、簡単にできる。
まぁそんなことはさておき、ゴブリンを殺し終わり、牙や小職品などを剥ぎ取りレイトの元へ戻ってくる。
「ふぅ~、動いた~」
「そうか、なら…次に行くぞ」
そっけなく呟くレイトにエリオは悪戯を仕掛けることにするが、邪魔が入る。
邪魔と言っても、お金のことを考えればどんなことがあっても優先するのが基本的に当たり前であるから、ゴブリンの姿をとらえた瞬間にエリオの顔付きが変わるのは仕方がないのだ。
エリオやる気を削ぐわけではないが、一応ユリィの実力を知ってもらうことにする。まぁユリィもわかっているのか、本気を出すわけもなく、ましては魔法を使うわけではなく、手に握られた短剣の双剣を構えれば一瞬だった。
恐らく、ユリィの動きを追えたのはレイト以外この場にはいないだろう。
あまりの早さにエリオとひなは、呆然としていたが我に帰るとえっえっと呟いてはユリィを見つめていた。
そして問題が新たに生まれたことにも気づいたのレイトだけだった。
問題を生んだ等の本人は、あれと呟いてはレイトを見ていた。
それを見た後に頭を抱えたレイトは、エリオとひなには伝えておくべきだと判断し、後で部屋に来てもらうことになる。
「と……まぁ、呼ばれるまではゴブリンを狩るか」
少し疲れた声でレイトがそう告げると、他の奴等も頷いた。
笛がなったのはそれからしばらくのことだった。
太陽がちょうど真上にあるときに呼ばれて、皆が集合する。きちんと全員いるかをサクラノが確認のために高いところに登り数える。サクラノが数えている間は、じっと立って指示を待つ。
全員がいることを確認し終わり、高いところから降りてきたサクラノは学園へと戻る。教室に着くと、教卓の上に立ち座るのを待つ。
ぞろぞろと席が埋まり、全員が着席するのを確認したサクラノは、笑顔で口を開く。
「これから皆さんには、チームごとにこのガーテンの中にいる人にゴブリンから剥ぎ取った物を鑑定してもらい、お金にしてもらいます。
鑑定し終わったチームは今日は解散なので、帰ってもらっても構いません。
では、まずこちらのチームの方から行きましょう」
そう言ってサクラノは、ドアのすぐ近くに座っていた男のチームを集めると、教卓のすぐ真横にあるガーテンの中に入っていく。
空中に浮遊するカーテン。
恐らく魔法だろうと見た瞬間に理解するクラスの奴等。
少しビビりながらもカーテンの中に入っていくのを見届けたクラスの奴等は、静かな空間で唾を飲む音が微かに聞こえてくる。不思議なことに、浮遊するカーテンの中の声は一切聞こえてこずに五分くらいで入ったチームが出てくる。
リーダーらしき男の手にはズタ袋が握られていた。サクラノは、休憩を入れずに次々と浮遊するカーテンの中にチームを入れていく。鑑定が終わったチームは皆、残ることなく帰っていく。鑑定を待ち始めてから約二十分くらいにレイトのチームが呼ばれて浮遊するカーテンの中に入る。
浮遊するカーテンの中は、外から見ていては理解できなかったが、こうして中に入って完全に理解する。声がしなかった理由が。
声がしなかった理由、それは浮遊するカーテン自体が別の空間と繋がっており、一種の転移装置となって起動していたのだ。浮遊するカーテンの中は広々とした空間に灯りは光魔法で作られた玉が二個しかなかった。
そんな微妙な灯りの中を真っ直ぐと歩いていくと一つの机に座っていた老人が姿を表す。その老人は、生きているのかわからないくらいにしわくちゃで辺りを見ても食事やトイレなどしばらくは行っていないと言えるほどに何もなかった。
「えっと……すみません、鑑定をお願いします」
レイトがそう訪ねると、ピクリと反応して固めを開いては確認するかの様にレイトが握っていたズタ袋を見る。
それから少しした後、レイトが握っていたズタ袋が突然消えたと思ったら、今度は老人とレイト達の間にあった机の上からジャラと音がし、誰もが音がした方へと視線を向けると、お金の入ったズタ袋が置かれていた。
レイトはお金の入ったズタ袋を握る際に老人を見たが、来たときと同様に生きているのかわからなくなっていた。
お金を受け取り、浮遊するカーテンから出ると教室にはサクラノ以外誰もいなかった。どうやらクラスの奴等は疲れて寮にそれぞれ帰ったらしい。
戻ってきたレイトチームに気づいたサクラノは、笑顔で出迎える。
「お帰りなさい、君達が最後だね」
「そうですね……僕らは帰ります」
「はい、疲れましたし」
「早くシャワー浴びたいね、ひな」
「……う……ん、浴びたいね」
それぞれ呟きながらサクラノの横を通りすぎる。サクラノは、それを見届けた。
学園を出て、寮に向かって歩いていた四人のうち一人が足を止める。
その行動を不思議がり、他の三人も足を止めてその一人に視線を向ける。
「エリオとひな…この後、男子寮に来てくれ」
「?何で?」
「話があるからだ」
「……わかった、シャワー浴びたらそっちに向かうね」
エリオはそう返すとひなと共に分かれ道のうち一つの方へ歩みを再開する。
そんな二人を見たユリィは、二人を送ってくると言い出して二人の後を追っていく。一人残されたレイトは、一人男子寮に戻った。
二人を送り届けたユリィは、男子寮に着いていたが自動販売機の前で飲み物を選んでいた。
ガコン
ジュースが落ちる音が静かな空間に響く。ユリィはそのジュースを拾い上げ、カシュッと開けてグビッと飲む。
「エリオとひなに話……それって、やっぱり話しといた方がいいってことか」
ぼそりと呟きながら、飲み干した缶をゴミ箱に捨てて自分の部屋に向かって歩いていく。
自分の部屋の前に着いたときに、レイトにエリオとひなに話すのかを確認しようと思いつつドアを開ける。
「おい、レイ………ト……」
「………………あ」
沈黙が訪れる。
ユリィは、目の前のレイトの姿を見て固まり、レイトはユリィを見て固まる。
理由は、いつも真面目でいたレイトが部屋の中でビーズクッションの上で仰向けで寝転がりだらしない格好をしてあっちこっちに着ていた服を脱ぎすてていたからだ。それを見られたレイトは、すでにやけくそなのか直すことなく同じポーズをとる。
「レイト……お前」
「んだよ、これが本当の俺だ……文句あるのか?」
「ある」
レイトがいつもより少しすねたような口調で聞くと、ユリィは即答する。
「お前、何て格好をしてるんだ!服を脱ぎ散らかしやがって!」
「めんどくさいだよ…パジャマは着れたけど、それ以外めんどくさくなったんだ」
「実は元魔王は、とてもめんどくさがり屋でしたってか」
少しムカつきながらも、脱ぎ捨てられた服を回収して洗濯機の中に放り込む。
文句を言いながらも行動するユリィをビーズクッションの上で寝転がりながら見ていてはふと思う。
「オカンだな……」
「誰がオカンだ!」
半ギレのユリィがレイトを睨む。
そんな視線から逃げるようにレイトは、少し体を横にしてビーズクッションの形を変えてユリィの視線を回避する。
そんな少し空気の悪い空間があるとも知らずに、エリオとひなが三十分後に訪れるのだった。
ちなみに、レイトとユリィがいる教室は二つあるうちの一つ。Aクラスにいる。もう一つの教室は隣でBクラスだ。
新入生は男女合わせて100人。
それを二つのクラスに分けられ50人が教室一つの中にいる。
普通の教室の広さでは50人も教室に入れば狭すぎて移動も全くできなくなってしまう。そのため魔学園の教室一つ一つが広々としていて、一年生全員が同じ教室に入っても余裕がある。
二年生教室は一年生教室の真下。つまりは下の階にある。
一年教室と比べて違いを言うならば、教室の数に広さだ。一年教室は広々としているが、二年生教室はA、B、C、Dに別れて中の広さは30人が入れるか入れないかの広さが各クラスに配分されている。
更に下の階、三年教室からはSクラスが入り、代わりにDクラスが消えている。
SはAよりも優れた者が入るクラス。そして、Dクラスにいたものは強制的に退学となる。
そして最後の階は四年教室で、S、A、Bだけが残り、Cクラスが消えている。これも同じくCクラスにいたものは強制的に退学となるためだ。
そして四年間生き残った者は、卒業と共に魔王軍に入る仕組みとなっている。
話は自己紹介へと戻る。
最前列の席の近くのドアから横にずれていく感じに自己紹介が始まる。
「私の名前はユリノ・ドミニテルです…よろしくお願いします」
ユリノ・ドミニテルと名乗った少女は肩より少し下くらいまで伸びた水色の髪に青い瞳を持つ。
その隣に座る少女がユリノが座るのと同時に立ち上がる。
「私はリュカ・テルピアデノですわ、以後お見知りおきを」
偉く上品な言葉遣いのリュカ。
腰くらい伸ばされているだろうと思われる赤髪は、ツインテールで縛られている。
二人目まではきちんと聞いていたレイトだったが、飽きてしまい自分の髪をいじり始める。その隣に座るユリィも飽きていて、窓の外の雲一つない青い空をみて聞き流していた。
更にその二人の後ろに座るエリオとひなも興味がないといった表情をしており、目を瞑りレイトとユリィ同じく聞き流していた。
自己紹介が始まって、四十人目を迎えた頃に四十人目の男が立ち上り、自己紹介を始める前にと言い出してはレイトを指差す。
「サクラノ先生、なぜこの魔学園に異端者がいるのですか?」
その男の言葉に黙ったまま静かに耳を傾けるレイトは、髪をいじったままである。
「俺はあの異端者が同じ教室に一緒にいるのはできません!教室を変えてください」
「この魔学園はどんな方でも受け入れますよ。例え、異端者でも魔王でも移民でも庶民でもです。」
サクラノはそれだけを言うと再び誰もが見惚れる笑顔をする。
それでも受けいられない男は、レイトに向かってミニナイフを投げた。その隣に座るユリィに当たりかけるが、当たり前のようにかわし、お目当てな人物に向かっていく。レイトは見もせずにそのミニナイフを人差し指と中指で軽く挟んで止める。
そんなレイトの動きに教室中に動揺が走る。理由は簡単。早すぎて見えなかったからだ。ミニナイフを止めたレイトはそのまま投げ返し、男の頬を掠めていく。
「止めとけよ?人に刃物を投げるのは……あ、自己紹介をどうぞ?」
「____っ、俺の名前はダマテ・ミーハグイルグだ…」
ダマテと名乗る男は自己紹介を終えると、そのまま座り隣に座る男へとバトンがわたる。
「僕の名前はミエハネ・ロイバです…よろしくお願いします」
ミエハネと名乗った少年は、ダマテとは違い静かな子で首にはチョーカーをしている。
黄緑色の髪に鬼のような角が2つ額にある。瞳には鬼の特徴とも言える黄緑と緑の二種類の色が混じっていた。
鬼の判別には瞳が一番簡単である。稀にいるのは、角を隠す鬼。その事を知るものは多く、基本の判別の仕方が瞳となっている。鬼は何らかの二種類の色が混じった瞳を持っているためだ。
ミエハネの自己紹介が終わると、真ん中で座っていた女の人が立ち上がる。
彼女も見た目で種族が判断できる。ダークエルフだ。褐色肌に白い髪は後ろで小さく縛られたおだんごになっている。海を写したような澄んだ青い瞳は、クラスを見渡した後口を開いた。
「私はルイノギ・ノルギッシュです…基本的に用事がある人以外で話しかけないでください」
クラスが静まり返る。
いや、元から静かだったが、誰もが息をするのを忘れているのか?と聞きたくなるほどに静まる。
隣に座っていたメイド姿のダークエルフは、静かに立ち上がる。
首にはチョーカーが付いている。
「私はルイノギ・ノルギッシュ様の専属メイド、ルベルです」
それだけを言うと席に着く。
基本、ルイノギ・ノルギッシュとルベルは、クラスの連中とはよろしくしたくないようだった。
確かに、この魔学園のクラス分けを知れば誰もがよろしくしたくはないだろう。
重い空気のまま自己紹介の順番がユリィへと回ってくる。
ユリィはほぼ真顔で立ち上がって自己紹介を始めた。その様子をレイトは耳だけを傾けながらもつまらなさそうに外を見つめ、後ろにいるエリオはどんな自己紹介をしてくれるのか興味津々で隣に座るひなも興味津々であった。
「俺はユリィ・マルバデアだ、よろしく」
そう言うとユリィは座り、チラ見でレイトを見る。その事に気づいたレイトははぁとため息をしてから立ち上がった。
「俺はレイト・アルディアデだ…喧嘩を売るなら相手を選んでくれ」
一瞬だけミニナイフを投げてきたダマテを見る。
レイトはそれだけを伝えると席に着く。
後ろに座っていたエリオは、期待していたユリィとレイトの自己紹介だったが、他のクラスの人たちとたいして変わらなかった。それを残念に思いながらエリオは立ち上がる。
立ち上がる際に揺れる胸に男達の視線が集まる。サキュバスであるエリオはふふと笑みを浮かべると、自分の腕で胸の下から支えると更に男達はお~と言いつつ鼻の下を伸ばす。そんな男達に女達は、悲鳴を上げはしなかったが冷徹な視線を男達に送る。
「_と、私はエリオ・メイビィアです……ひなに手を出す奴には容赦しません」
満面の笑み。
この時、レイトとユリィは内心で思う。
“ひなに手を出したら殺すよ”
って言ってるようにしか聞こえないと。
レイトに攻撃を仕掛けてきた氷柱の嵐は、回避不可の全体攻撃であり、レイトの様なことができれば話は別だが、それができない奴には氷柱の嵐が体を襲う。
運のいい奴は即死。運が悪ければ、体のあっちこっちが抉られ、吹き飛び、刺さった氷柱からは冷気が刺さった場所を中心的に体の自由を奪い死に至らしめる。
そんな恐ろしい技で攻撃されるとわかれば、誰も手は出さないだろう。
再び静まる教室だが、一人のビクビクとした声が響く。
「えっ……と……、わた…しは、ひな・ルーベと…言います……よろしく……お願いします!___っいたい」
お辞儀した勢いで机におでこを思いっきりぶつかる。
ぷるぷる震え、泣くのを堪える瞳には涙が溜まっていく、おでこは赤くなっていて見ていて可哀想になる。
そんなひなのおかげで教室の空気が和む。
だが、今のひなはそれどころではなく隣に座るエリオに抱きついていた。胸に埋もれるひなの頭を優しく撫でるエリオ。
そんな二人を見ていた男達は再びお~と声を漏らし、再び女達が冷徹な視線を向けるのであった。
そんなこんなでやっと終わる自己紹介は30分もかかり、サクラノは時間を確認してから笑顔で口を開く。
「はい、皆さんお疲れ様でした~
それでは、次に男女のパートナーを決めてください」
サクラノの言葉に女達が「えっ、嘘でしょ?」「ありえない」「こんな変態達は嫌よ!」と訴え、男達は「やった、女達と組める!」「ご褒美か?」「俺組むならエリオちゃんとひなちゃんとがいいな」なんて言う輩もいた。
騒ぎ始める生徒にサクラノは笑顔を絶やさずに一言告げる。
「黙れガキ、殺すわよ」
そんなことを言われれば誰でも黙る。
けれど、生徒が黙った理由にはもう一つ。笑顔のままでいつもの声のトーンだがしかし、殺気が混じった言葉に誰しもが飲まれかける。
「男女混合チームは、十二組で全て四人チームにしたけいれど二人余るの、だから一つのチームは六人チームになる。
そして、二人のパートナーもそうだけど、四人チームも成績が関係してきます。例えば、チームの中での役割や連携などね……余った時間でその四人チームたまは六人チームを作ってもらいます」
サクラノがそう言い終わると同時に、エリオとひなに群がる男達に前の席に座っていたレイトとユリィが追い出される形になる。
席を離れて黒板近くの窓から外を見つめるレイトにチームを作って行くクラスを見つけるユリィ。
二人は内心で同じことを考えていた。
“くだらない”と。
そんなことを考えるレイトとユリィに近寄って来たのは、エロい服装を着たエリオといまだにおでこが赤いひなだった。
そんな二人に気づいたレイトはユリィに視線だけ送るとそんな視線に気づいたユリィがはぁと軽くため息をついた後に、エリオとひなに向き合う。
「どうしたの?」
「……ねぇ、私とひなとチームを組んでくれる?」
「私……からも、お願い……します」
エリオが頭を下げた後に続くようにひなも頭を下げる。
そんな二人からの誘いを悔しがりながら見つめてくる男達の視線を無視してユリィは黙ってレイトを見つめる。
俺だけで決められないと言うような視線。
レイトは窓から少し離れてエリオとひなの姿を黙って見つめ、はぁと小さくため息をついてから軽く頬を指でかきながら口を開く。
「まぁ、よろしく」
それだけを告げるとレイトは逃げるように自分の席へと戻る。
そんなレイトを見ていた三人は軽く笑う。こうして作られたチーム。何が起こっても一蓮托生。
一人が転べば、皆が転ぶ。
その事に気づいているのは、五十人中ごく一部であった。
チームが出来てから二時間目が始まる。
サクラノは生徒五十人を連れて外に出る。外と言うのは、学園の敷地内ではなく本当の外、人間たちや言うことを聞かない魔物で溢れている場所。
そんな場所に連れてこられた生徒達は、ビビる者ややる気に満ちている者に何も感じない、思わない者で別れていた。
ちなみにレイトとユリィは何も感じず、ただ隣にいる者へと視線が横目で向けられる。隣にいる者、それはエリオだった。やる気は十分にあり、手に握られている杖として使えるし、槍として形状が変わる武器に自然と力が入っていく。ひなはいつものことながら、震えている。顔には不安になっていることがわかる。
サクラノは一通り辺りを見渡した後に生徒の方に振り向く。
「今から教えるのは、この辺を支配しているゴブリンどもの殺し方又は金になる奴やその剥ぎ取りの仕方を教えるね」
「……笑顔はいいのに言っていることが最悪だ」
ボソッと呟くレイトにサクラノは笑顔のまま見てくる。
「本当に最悪だ」
「はい、レイト・アルディアデくん…ゴブリンのどこを剥げば金になりますか?」
頭を抱えるてぼやくレイトに指名をしてくるサクラノ。
二人の間で生まれる空気の重みに他の生徒は無意識に唾を飲み込む。
しばらくサクラノを見ていたレイトだったが、はぁとため息をついた後にその辺を徘徊しているゴブリンに視線を向ける。転生する前と変わらないこと確認してから再びサクラノに視線を戻す。
「……ゴブリンから剥ぎ取るのは、まずは牙と身に付けている小職品。それから、体内にある魔物の心臓部である間玉を取ること…ですか?」
「はい、正解です。
ゴブリンから取れる牙は装備することにより、防御力が上がります。
その他にもおしゃとして使う人もいます。次にゴブリンが身に付けている小職品がどれくらいで売れるかと言うと、銀貨五枚が最低ラインと考えて物によっては金貨一枚貰えるほどなんです」
生徒の目が輝いた。
この世界で言う銀貨は百円相当で、金貨は一万円といった考えを持ってもらいたい。
ちなみに、人間をもし殺し場合については金貨五枚もらえる。その事を知れば、誰もが人間を殺しに行くだろう。
だから、魔王は決めた。
襲ってくる人間だけを殺せ…と。
大体のことを教え終わると、サクラノはゴブリンから剥ぎ取ったものを腰に付けていた小さな鞄の中にしまい込みながら生徒達へ声をかける。
「それじゃあ……先程も言った通りに、ここはゴブリンが支配してるから教えた通りに殺して、奪いなさい……集合するときには青い花火を打ち上げます」
サクラノのその言葉を待ってましたと言わんばかりに、それぞれチームが集まり散っていく。
最後までその場に残っていたのは、レイトとユリィそしてエリオとひなの四人だけだった。
四人が揃うとまず、自分が使えるものを紹介することから始める。
「まずは私からね、私は後衛・前衛両方行ける…どっちが得意かと聞かれたら前衛かな」
そう言って手にしていた武器を杖から槍へと形を変えて見せる。
それを見てユリィとレイトがなるほど、と呟きながら隣にいるひなを見る。
二人の視線に気づいたひなは、ビクッと反応示しながらゆっくりと口開き始める。
「私……は、後……衛です。皆さんの…サポートや、植物……を使ったり……します」
言いたいことを言い終えたひなは、ホッと胸を撫で下ろしながらも実際に足元にある植物を操る。
それを見て再びなるほど、と呟く。
そして続くようにエリオとひながひなの隣にいるユリィを見つめた。
その二人の視線を受け取ったユリィはレイトとアイコンタクトを取る。
その理由は、少し前に遡る。
__移動しているときのこと__
サクラノに連れられて外に来た生徒達。
その最後尾にユリィとレイトは歩いていた。辺りを見回した後に、レイトは小声でユリィに話しかける。
話しかけられたユリィは、藪から棒に嫌そうではあったが耳を傾ける。
「お前どうせ光魔法しか後衛だと使えないだろ?」
「そうだけど」
きょとんとした言葉にはぁとため息をついた後に少し聞きたいことを聞いてみることにするが、答えは何となくわかっていた。
「教えてもらわなかったか?魔族は光魔法を使えないって」
「…………………あ」
やっぱりかとじと目でユリィを見つめる。そんなレイトの視線から逃げるように別の方向を見る。
だが、答えがわかっていたレイトは話を続ける。
「どうせさっき作ったチームでゴブリンを狩れとか言われたらお前は前衛へ行け……光魔法を使ったらめんどくさいことになるからな」
「…………お前に従うのは癪だがここは従ってやる」
__現在__
と言った会話をしていたからだ。
状況を理解していただいたので、話は進む。
「俺は後衛・前衛両方できるが、前衛にしてもらいたい」
ユリィの言葉にエリオとひなが「大丈夫」と言いながらレイトに視線を向ける。当然、指示したレイトは目を伏せたまま何も言わないことから同意したと判断したエリオは、そのままレイトに視線を送り続ける。
そんな視線がうざくなったレイトは、軽くエリオを睨みながら呟くように口を開いた。
「俺は後衛・前衛両方できる……前衛が二人いるなら俺は後衛にいく、それでいいだろ」
レイトがそう言うと反対をする人はおらず、とりあえずチームをより強くまとめるためにリーダーを決めることになった。が、リーダーはすでに決まっていたのかたまたま意見が一致したのかレイトがすることに決まった。
嫌がっていたレイトだったが、サクラノが見ていることに気づき仕方がなく了承した。
一通りのことを決め終わった、レイトチームはゴブリン狩りを始めることにするが、まずはエリオとひなの実力を確認するためにメインを二人に補助にユリィで狩ることにする。
「じゃあひな、サポートよろしく」
「……うん!」
そう掛け合った後、素早くゴブリンとの距離を詰めて首を愛用の槍で切り落とす。
ふらつくゴブリンの足を蔦で固定し、エリオの攻撃にビビり逃げようとする奴等にも同様に蔦で固定する。
動けない隙を狙い残りのゴブリンをエリオが片付ける。
その動きを見ていたレイトとユリィは、表面は冷静を保ち、内心では驚いていた。理由は、エリオの動きは今の年だとできる奴がごく一部であり、戦場に出ていないと捉えるのが難しいほどの素早い動きをしていたからだ。
ひなの場合は素早く動くエリオが次にどう動くかを予測し、実行する。普段のひなを知っている者からすると驚きと同時に感心する。
戦闘してから数回に渡り、この範囲に他にいないかを確認している。
初心者は、目の前に現れた敵に集中が行ってしまい、回りの警戒を怠り、死ぬケースが多い。ちなみに、エリオが最初にレイト達を攻撃をしたときに打ち消されたのは、先程までひながしていたことの応用で、攻撃で使われた魔力を瞬時に計算しては同じ良の魔力を余波に乗せて相殺する。
レイトはそれを簡単にして見せたが、それをするには魔力の線密操作が高度でなければならいし、普通はできないのだ。
ユリィもやろうとすれば、簡単にできる。
まぁそんなことはさておき、ゴブリンを殺し終わり、牙や小職品などを剥ぎ取りレイトの元へ戻ってくる。
「ふぅ~、動いた~」
「そうか、なら…次に行くぞ」
そっけなく呟くレイトにエリオは悪戯を仕掛けることにするが、邪魔が入る。
邪魔と言っても、お金のことを考えればどんなことがあっても優先するのが基本的に当たり前であるから、ゴブリンの姿をとらえた瞬間にエリオの顔付きが変わるのは仕方がないのだ。
エリオやる気を削ぐわけではないが、一応ユリィの実力を知ってもらうことにする。まぁユリィもわかっているのか、本気を出すわけもなく、ましては魔法を使うわけではなく、手に握られた短剣の双剣を構えれば一瞬だった。
恐らく、ユリィの動きを追えたのはレイト以外この場にはいないだろう。
あまりの早さにエリオとひなは、呆然としていたが我に帰るとえっえっと呟いてはユリィを見つめていた。
そして問題が新たに生まれたことにも気づいたのレイトだけだった。
問題を生んだ等の本人は、あれと呟いてはレイトを見ていた。
それを見た後に頭を抱えたレイトは、エリオとひなには伝えておくべきだと判断し、後で部屋に来てもらうことになる。
「と……まぁ、呼ばれるまではゴブリンを狩るか」
少し疲れた声でレイトがそう告げると、他の奴等も頷いた。
笛がなったのはそれからしばらくのことだった。
太陽がちょうど真上にあるときに呼ばれて、皆が集合する。きちんと全員いるかをサクラノが確認のために高いところに登り数える。サクラノが数えている間は、じっと立って指示を待つ。
全員がいることを確認し終わり、高いところから降りてきたサクラノは学園へと戻る。教室に着くと、教卓の上に立ち座るのを待つ。
ぞろぞろと席が埋まり、全員が着席するのを確認したサクラノは、笑顔で口を開く。
「これから皆さんには、チームごとにこのガーテンの中にいる人にゴブリンから剥ぎ取った物を鑑定してもらい、お金にしてもらいます。
鑑定し終わったチームは今日は解散なので、帰ってもらっても構いません。
では、まずこちらのチームの方から行きましょう」
そう言ってサクラノは、ドアのすぐ近くに座っていた男のチームを集めると、教卓のすぐ真横にあるガーテンの中に入っていく。
空中に浮遊するカーテン。
恐らく魔法だろうと見た瞬間に理解するクラスの奴等。
少しビビりながらもカーテンの中に入っていくのを見届けたクラスの奴等は、静かな空間で唾を飲む音が微かに聞こえてくる。不思議なことに、浮遊するカーテンの中の声は一切聞こえてこずに五分くらいで入ったチームが出てくる。
リーダーらしき男の手にはズタ袋が握られていた。サクラノは、休憩を入れずに次々と浮遊するカーテンの中にチームを入れていく。鑑定が終わったチームは皆、残ることなく帰っていく。鑑定を待ち始めてから約二十分くらいにレイトのチームが呼ばれて浮遊するカーテンの中に入る。
浮遊するカーテンの中は、外から見ていては理解できなかったが、こうして中に入って完全に理解する。声がしなかった理由が。
声がしなかった理由、それは浮遊するカーテン自体が別の空間と繋がっており、一種の転移装置となって起動していたのだ。浮遊するカーテンの中は広々とした空間に灯りは光魔法で作られた玉が二個しかなかった。
そんな微妙な灯りの中を真っ直ぐと歩いていくと一つの机に座っていた老人が姿を表す。その老人は、生きているのかわからないくらいにしわくちゃで辺りを見ても食事やトイレなどしばらくは行っていないと言えるほどに何もなかった。
「えっと……すみません、鑑定をお願いします」
レイトがそう訪ねると、ピクリと反応して固めを開いては確認するかの様にレイトが握っていたズタ袋を見る。
それから少しした後、レイトが握っていたズタ袋が突然消えたと思ったら、今度は老人とレイト達の間にあった机の上からジャラと音がし、誰もが音がした方へと視線を向けると、お金の入ったズタ袋が置かれていた。
レイトはお金の入ったズタ袋を握る際に老人を見たが、来たときと同様に生きているのかわからなくなっていた。
お金を受け取り、浮遊するカーテンから出ると教室にはサクラノ以外誰もいなかった。どうやらクラスの奴等は疲れて寮にそれぞれ帰ったらしい。
戻ってきたレイトチームに気づいたサクラノは、笑顔で出迎える。
「お帰りなさい、君達が最後だね」
「そうですね……僕らは帰ります」
「はい、疲れましたし」
「早くシャワー浴びたいね、ひな」
「……う……ん、浴びたいね」
それぞれ呟きながらサクラノの横を通りすぎる。サクラノは、それを見届けた。
学園を出て、寮に向かって歩いていた四人のうち一人が足を止める。
その行動を不思議がり、他の三人も足を止めてその一人に視線を向ける。
「エリオとひな…この後、男子寮に来てくれ」
「?何で?」
「話があるからだ」
「……わかった、シャワー浴びたらそっちに向かうね」
エリオはそう返すとひなと共に分かれ道のうち一つの方へ歩みを再開する。
そんな二人を見たユリィは、二人を送ってくると言い出して二人の後を追っていく。一人残されたレイトは、一人男子寮に戻った。
二人を送り届けたユリィは、男子寮に着いていたが自動販売機の前で飲み物を選んでいた。
ガコン
ジュースが落ちる音が静かな空間に響く。ユリィはそのジュースを拾い上げ、カシュッと開けてグビッと飲む。
「エリオとひなに話……それって、やっぱり話しといた方がいいってことか」
ぼそりと呟きながら、飲み干した缶をゴミ箱に捨てて自分の部屋に向かって歩いていく。
自分の部屋の前に着いたときに、レイトにエリオとひなに話すのかを確認しようと思いつつドアを開ける。
「おい、レイ………ト……」
「………………あ」
沈黙が訪れる。
ユリィは、目の前のレイトの姿を見て固まり、レイトはユリィを見て固まる。
理由は、いつも真面目でいたレイトが部屋の中でビーズクッションの上で仰向けで寝転がりだらしない格好をしてあっちこっちに着ていた服を脱ぎすてていたからだ。それを見られたレイトは、すでにやけくそなのか直すことなく同じポーズをとる。
「レイト……お前」
「んだよ、これが本当の俺だ……文句あるのか?」
「ある」
レイトがいつもより少しすねたような口調で聞くと、ユリィは即答する。
「お前、何て格好をしてるんだ!服を脱ぎ散らかしやがって!」
「めんどくさいだよ…パジャマは着れたけど、それ以外めんどくさくなったんだ」
「実は元魔王は、とてもめんどくさがり屋でしたってか」
少しムカつきながらも、脱ぎ捨てられた服を回収して洗濯機の中に放り込む。
文句を言いながらも行動するユリィをビーズクッションの上で寝転がりながら見ていてはふと思う。
「オカンだな……」
「誰がオカンだ!」
半ギレのユリィがレイトを睨む。
そんな視線から逃げるようにレイトは、少し体を横にしてビーズクッションの形を変えてユリィの視線を回避する。
そんな少し空気の悪い空間があるとも知らずに、エリオとひなが三十分後に訪れるのだった。
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