【R18】ハッピーラッキーユー 〜好きな気持ちを伝える前に、処女を捧げてしまいました！〜

番外編

疲れた心を癒すのは

仕事から帰ってきて、何故だか今日は上手くいかなくて、というかこのところ上手くいかなくて、なんだかモヤモヤしている。
一人でうずくまっていても仕方ないけど、やる気も出ないし疲れてるし、そうだ洗濯しなくちゃ…なんて、溜まっている家事を思い出して憂鬱になったりして。
「灘くんに会いたい。」
大きくため息をつく。
灘くんはいつも通りの出張中。
しかも今回は長くてまるっと２週間。土日も挟んで、取引先の社長とゴルフに行かなきゃいけないんだって。やったことないのに、ゴルフ！
どうすんの？って言ったら、道具はレンタル出来るらしいし、運動神経いいから何とかなるだろって、あっけらかんと笑ってた。
ああ、さすが灘くん。めちゃくちゃかっこいい。そういうところ、すごく好き。
土日潰れるのしんどいなーって言いつつ、頑張っちゃうところちょっと心配だけど。
灘くん、今何してるかな。
２週間って長くない？
こんなに会えないの久しぶりで、結構寂しい。
メッセージを送ると、すぐに既読になって、よく分からない写真が送られてきた。
お皿に乗ってるから、多分食べ物。
『これなに？』
『今日食べた、タチウオの炙り刺身。』
『うわー！絶対美味しいじゃん！いいなー！』
羨ましい！海の近くだもんね、出張先。美味しい海の幸がたくさんあるんだろうな。
『やばいくらい美味かった。』
灘くんが眉尻を下げてニコニコ美味しそうに食べている顔が思い浮かぶ。
ああ、可愛い。
美味しいものたくさん食べて欲しいし、お酒を飲んでいい気分になってるところが見たい。
灘くんの飲酒シーンは最高に可愛い。
『灘くんに会いたいよー！』
えーん、好き！今すぐ会いたい！
太い首根っこに引っ付いてぎゅうぎゅう抱きつきたいし、鳩胸に顔を埋めて擦り寄りたいし、ミントみたいな体臭を肺いっぱいに吸い込みたい。
ひんひん言いながら、洗濯機に服を放り込んで洗剤を入れて、スタートボタンを押す。
ドボボボと大きな音を立てて水が流れていく音と重なって、スマホがブーブー震えた。
「もしもし？！」
「ほとり、今平気？」
「うん！平気！どうしたの？」
まさか、電話をくれるなんて思わなかったから、嬉しくて舞い上がる。
「なんか、すごい音するね。部屋、破壊してんの？」
「ムシャクシャしてやりました。って、ちがわい！洗濯機回してんの！」
「ああ、俺に会えないストレスで頭がおかしくなったのかと思った。」
電話口で飄々とそんなこと言うから、つい笑ってしまう。
「そうっすね、灘くん欠乏症なのは間違いないので、タチウオのお刺身ください。」
「あ、すいやせん、売り切れやした。」
言い方が板前っぽい、想像上の。
こういう、訳の分からないノリで他愛もない話をする時間が、好き。
そのまま５分くらい、ずっとなんでもない話を続けていたら、さっきまで鬱々としていた気持ちがどこかへ消えてしまった。
「灘くんて、まじ天才。」
「あ、分かります？僕、どうもそうらしいんですよね。」
おかしくてケタケタ笑ってしまう。
「あー、楽しい。ありがとう、疲れてるのに電話くれて。」
「いや、タチウオ自慢しようと思っただけなんで。」
「うふふ、そうだね！あー、お刺身食べたい！美味しいやつ！」
「今度、築地行く？」
「行くー！朝イチだー！」
そのまましゃべり続けていたら、洗濯機がピーピー鳴った。
「あっ、洗濯終わった。ごめん、かなり長く話しちゃった。」
「ん、じゃあ切るか。」
「…うん、ありがとう。」
「おやすみ。」
「おやすみ、大好き！」
「…俺も。」
きゃああー！！好きー！
通話がプチっと切れて、余りの喜びに膝をついた。
何この人、かっこよすぎ、好き。
こうやって、私の心を惹きつけて離さないのよ…最高…一生愛してる。
心が元気になったので、洗濯物を干すのも楽しくなった。
灘くんて、本当すごい。