【R18】みだりに近づかないでください!

はこスミレ

文字の大きさ
1 / 108

1-1

しおりを挟む


 私の初恋は、小学生の時に終わった。
 父に言わせれば「気が早い」、母から言わせれば「強火リア恋担」、双子の弟は「……」特に無し。
 愛しの愛しの彼は、いつも無邪気に笑って楽しそうにしている素敵な紳士だった。
「ああー!かっこいいー!」
 もう二十年以上前のアイドルの映像を見て、テーブルに突っ伏す。
「りーん、りんりんりーん!」
 隣で私の頬を突くのは、友人の灯里だ。
「私の恋話をするのは、どうなった?」
「…そうだったわ、すまんな」
 ついうっかり、忘れていた。BGMにお気に入りのコンサート映像を流すものではない。
 一旦再生を止め、姿勢を戻して灯里を見ると、満面の笑みを浮かべている。
「めっちゃ笑ってるけど、良いことあったの?」
「うん、聞いて!」
 待ってましたとばかりに両手をバタバタさせて、灯里はテンション高く話し出す。
「とうとう、斎藤くんとえっちしました!」
「えっ?!えっ?!」
 衝撃的な報告に驚きを隠せない。
「マジで言ってる?だって、まだ付き合ってないよね?」
「うーん、付き合おうとは言われてないけど、もう付き合ってるも同然みたいな?お互いそういう雰囲気になったっていうか…」
 信じられない。この前まで、少女漫画でキャーキャー騒いでいた灯里が、ちょっとえっちなシーンが出てきたら恥ずかしがってた灯里が、近くで盛り上がる男子の下ネタで嫌そうな顔をしていた灯里が、どうしてこうなった?
 口を開けてポカンとしていると、灯里が笑った。
「待って、美少女がその顔ウケるんだけど」
「美少女でも驚いたら、こういう顔になるんだよ!っていうか、驚いた顔したって私は可愛いわい!」
「確かに」
 全く、開いた口が塞がらない。
「えーなんで?なんで?灯里、処女だったじゃん!どうしてそんな爛れたことに?!」
「好きだったら、したいじゃん。斎藤くんが誰かに取られる前に、私が童貞奪いたいじゃん」
 当たり前のように言う。
「っていうかさ、私達って大学生だよ。ウブな女子高生じゃないんだよ、倫音」
 灯里の言葉が、心にグサリと突き刺さった。
「初恋引きずるのも悪くないけどさ、他にもかっこいいこいるじゃん。光流(みつる)くんとかさ」
「え、星野は別にかっこよくなくない?」
 言われた男子の顔を思い出すが、そこまで話題に上るほどかっこよかっただろうか。
 灯里が両掌を上に向けてアメリカンなポーズを取った。
「倫音の環境と比べたらいかん。一般人レベルだったら、光流くんかっこいいよ!学内でもアイドルみたいにキャーキャー言われてるし」
 アイドルに関して一家言ある私には、到底認めることはできなかった。

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて

アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。 二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――

【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!

satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。 働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。 早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。 そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。 大丈夫なのかなぁ?

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

処理中です...