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しおりを挟む私の初恋は、小学生の時に終わった。
父に言わせれば「気が早い」、母から言わせれば「強火リア恋担」、双子の弟は「……」特に無し。
愛しの愛しの彼は、いつも無邪気に笑って楽しそうにしている素敵な紳士だった。
「ああー!かっこいいー!」
もう二十年以上前のアイドルの映像を見て、テーブルに突っ伏す。
「りーん、りんりんりーん!」
隣で私の頬を突くのは、友人の灯里だ。
「私の恋話をするのは、どうなった?」
「…そうだったわ、すまんな」
ついうっかり、忘れていた。BGMにお気に入りのコンサート映像を流すものではない。
一旦再生を止め、姿勢を戻して灯里を見ると、満面の笑みを浮かべている。
「めっちゃ笑ってるけど、良いことあったの?」
「うん、聞いて!」
待ってましたとばかりに両手をバタバタさせて、灯里はテンション高く話し出す。
「とうとう、斎藤くんとえっちしました!」
「えっ?!えっ?!」
衝撃的な報告に驚きを隠せない。
「マジで言ってる?だって、まだ付き合ってないよね?」
「うーん、付き合おうとは言われてないけど、もう付き合ってるも同然みたいな?お互いそういう雰囲気になったっていうか…」
信じられない。この前まで、少女漫画でキャーキャー騒いでいた灯里が、ちょっとえっちなシーンが出てきたら恥ずかしがってた灯里が、近くで盛り上がる男子の下ネタで嫌そうな顔をしていた灯里が、どうしてこうなった?
口を開けてポカンとしていると、灯里が笑った。
「待って、美少女がその顔ウケるんだけど」
「美少女でも驚いたら、こういう顔になるんだよ!っていうか、驚いた顔したって私は可愛いわい!」
「確かに」
全く、開いた口が塞がらない。
「えーなんで?なんで?灯里、処女だったじゃん!どうしてそんな爛れたことに?!」
「好きだったら、したいじゃん。斎藤くんが誰かに取られる前に、私が童貞奪いたいじゃん」
当たり前のように言う。
「っていうかさ、私達って大学生だよ。ウブな女子高生じゃないんだよ、倫音」
灯里の言葉が、心にグサリと突き刺さった。
「初恋引きずるのも悪くないけどさ、他にもかっこいいこいるじゃん。光流(みつる)くんとかさ」
「え、星野は別にかっこよくなくない?」
言われた男子の顔を思い出すが、そこまで話題に上るほどかっこよかっただろうか。
灯里が両掌を上に向けてアメリカンなポーズを取った。
「倫音の環境と比べたらいかん。一般人レベルだったら、光流くんかっこいいよ!学内でもアイドルみたいにキャーキャー言われてるし」
アイドルに関して一家言ある私には、到底認めることはできなかった。
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