【R18】みだりに近づかないでください!

はこスミレ

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「うちの元要(はじめ)を超えてから言ってくれ」
「いや、元要は現役じゃんよ、一般人じゃないからね」
「じゃあ、私の男装を超えてから言ってくれ」
「もっと無理だわ」
「おいおい、こちとら一般ピーポーですぞ」
 テーブルに置いていた麦茶を飲んで、話題を戻す。
「そんなことより!ちゃんと斎藤は付き合うんでしょうね?!灯里のこと大切にしなかったらぶっ殺す」
「やだ、倫音…嬉しいじゃん」
 灯里も麦茶を飲んで照れ隠しをした。
「あと、セーフセックスね!体を大切に!」
「うんうん、任せといて」
 灯里は自分のバッグをぽんぽんと叩いた。
「えっ、持ち歩いてんの?」
 ギョッとすると、灯里はこくりと頷いた。
「当たり前じゃん、いつ何時ことが起こるか分かんないんだから。倫音も持っておきな!」
 バッグから一つビリっと取り出して渡された。
「ひえっ、私は予定ないんで大丈夫ですう」
「お守り代わりに持ってなさい!」
 無理やり手のひらに握らされ、仕方なく汎用バッグのジッパー付き内ポケットに忍ばせておいた。
 いや、本当に使う予定はない。マジでない。
「めちゃくちゃかっこよくて優しい王子様に出会うかもしれないじゃん」
「えー、ゆうくん超える人はいないから。めちゃくちゃかっこいいから」
 画面で静止している姿を指差す。
「今の西山さん、かっこいいっていうより…面白いおじさんじゃん」
 現代の若者は、バラエティ番組に出ている彼しか知らないのだ。
「こっちのゆうくんだよ!」
 見た目は!
「私、倫音パパの方が好き」
「それ、私の顔が好きってことじゃん」
「うん、倫音の顔が一番好き!世界で一番可愛いー!」
 きゃー!と言って、灯里が抱きついてきた。それを、よしよしと背中を撫でてあやす。
「斎藤は?」
「斎藤くんは、顔じゃないから。中身が最高だから」
 ハッキリ言いすぎて、ちょっと斎藤が可哀想になった。
「灯里も面食いだなあ」
「倫音が可愛いのが悪い」
「そいつはどうも」

 灯里と出会ったのは、高校生の時だ。
 私は幼い頃から絶世の美少女で、学校中の男子は全員一度は私を好きになっていたし、毎日誰かから告白される。失恋を引きずっていた私は、全て断っていた。というか同じ年頃の男子ってガキだから無理。あと調子に乗っててキモい。鏡を見て出直して来い。私の隣に立てると思うなよ。
 とまあ、罵詈雑言はこの辺にしておいて。
 使っていたSNSは、やたらといいねをされ、拡散されまくって、恐ろしいほどのフォロワー数になり、アカウントを消してからは、表立ってSNSはやってない。鍵アカウントでこっそり見ているだけだ。  
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