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しおりを挟む「考え無しだから、あいつ」
「バカは無理。はじも気をつけるんだよ」
「俺は今、仕事が命」
「よく働いて偉いなあ、元要は」
本当にそれは同意する。私が履歴書を送ったけど、断っても良かったはずだ。でも未だに続けているし、グループにも所属してコンサートもしている。中々やりおる。
「ありがと。じゃ、そゆことで」
パタンとドアが閉まって足音が遠ざかる。
「倫音、その手紙ずっと来るの?」
「結構な頻度で来るね。マメだよマメ」
「ストーカーとかにならない?」
灯里の言葉に首を傾げる。
「さあ、分からんね」
「倫音こそ気をつけてね。あ、そうだ。彼氏作っちゃえばいいじゃん。倫音ならすぐできるよ」
「さっき私が言ったこと聞いてた?」
笑顔で首を振った灯里が両手ピースをした。
「それはほら、嘘も方便だよ」
「面白がってんな」
「付き合う付き合わないくらいの感じ、ワクワクドキドキして楽しいよ」
面倒くさそうにしか思えない。
「好きな人いないし」
「えー!光流くんは?」
「なぜ星野を推す?」
ニヤッと笑った灯里の顔が怖い。
「倫音に気があるから」
それは間違いない。
何度も食事に誘われたし、学食も同じテーブルに座ってくるし、講義も近くに座られるし、めちゃくちゃ話しかけてくる。
でも、それは他の男も一緒だ。
「それだと、星野を推す理由にはなってない」
「うちの学校内で一番顔が良いから!倫音と並んだら目の保養になる!」
これが面食いの言うことだよ!
「何回も言うけど、星野は普通レベル。顔で選べと言われたら選考外」
「もう!理想高すぎ!」
「顔で選べって言うからでしょ。私と並んだら霞むわ。なら、あの手紙のやつの方が顔は良い」
「確かに!じゃあ、何で選ぶの?」
そもそも人は顔じゃない。
「誠実さ、人としてちゃんとしてるか、あと私の家族に目が眩まないかどうかかな」
「え…斎藤くんのこと?」
灯里がわざとらしく両手で口を覆った。
「誠実だったら、えっちする前に付き合おうって言うわ」
「いいの!あれは私が誘導したようなものだから!」
誘導したんかい!
私の微妙な表情を見て笑うと、クッションの上に寝転がった。
「倫音はさー、ちっちゃい頃から見目麗しいちゃんとした大人に囲まれて育っちゃってるから、採点が厳しいんだよ」
「うん、人としてちゃんとしてる大人ばっかりだね。顔はみんな最高」
そんな大人達に愛されて育ったおかげで、世界最強の美少女になりました。
「それを同年代に求めるとなると難しいよね」
「そうなの、だから一度も同年代のこと良いなって思ったことがない」
みんなガキにしか見えない。
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