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しおりを挟む日も落ち夜が更けた頃合いで、それぞれが双眼鏡を持ち出して来た。
「伴さん、こっちこっち」
呼ばれてレジャーシートの上に腰を下ろす。
周りでは少し距離を空けて、サークルメンバーがぽつぽつと観測地を決めている。
「やっぱり、曇ってるから隙間からちょっとしか見えないね」
「梅雨だからね!」
「なんで今日見ることにしたんだよ」
「夏の大三角になぞらえて?」
ガーディアン達の間に挟まれて会話を聞く。
「あー、七夕か」
「七月七日じゃないけどね」
「七夕と関係があるの?」
星に興味がなかった私には、何の関係があるのか分からない。
「夏の大三角のベガが織姫で、アルタイルが彦星なの。今夜は全然見えないけどね!」
「そうなんだ!知らなかった」
「うん、みんな気にしてないと思うよ」
「バーベキューしに来てるだけだしね」
「好きな人とどうにかなりたいとかね」
女子達が某人物のいる方へ目線をやると、当人は他の女子メンバーの隣で話をしていた。
「懲りないな」
「伴さん誘ったの自分なのに、誠実さと頑張りが足りない」
「私達以外からの女子人気はあるからねえ、モテたいんでしょ」
このメンバーからはそう評価されているようだ。
「伴さん、よく来たね」
「何で来たの?」
「断れない流れになって」
「あー、光流そういう雰囲気作るの上手いんだよね」
あれは灯里のせいな気がするけど、言わないでおく。
「あ、ちょっとだけ見えた!伴さん、はい!」
渡された双眼鏡を除くと、指差された方向にキラリと輝く星が見えた。
「あれは何?」
「ポラリスだよ!」
急に耳馴染みのある単語が出て来たから動揺した。
「あ、夏の大三角じゃなくて、北極星」
それだけは知ってる。元要の所属してるグループの名前は、それが元ネタになってるから。
「あれがそうなんだ」
実際に見るのは初めてだ。
「こぐま座って名前が可愛いよね」
「神話はえぐいけどね」
「ゼウスのヤリチンがやばい」
「光流ってこと?」
「光流じゃ貫禄が足りない」
散々な言われようだ。
しばらく双眼鏡で星を眺めながら、ぼんやりと女子達の話を聞いていた。
「あ、トイレ行きたい」
急な催しに立ち上がると、一人が一緒について来てくれることになった。
「私じゃ役に立たないけど、一人にさせるよりマシかと思う!」
「優しいな…ありがとう」
トイレくらい一人で行けるけれど、夜、しかも大きな公園のトイレともなると、何があるか分からない。
二人で連れ立って、さっさと用を足し表へ出る。辺りは暗く、入り口は一つで中で左右に分かれているため、人とぶつかりそうになった。
「わっ、ごめんなさい」
自分より背が高いから男性だろう。
「いえ、こちらこそ」
スッと避けて道を空けた辺りがスマートだ。街頭に照らされた顔立ちは清涼で、元要のいるグループにいてもおかしくなさそうだった。
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