【R18】みだりに近づかないでください!

はこスミレ

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「ありがとうございます」
 ぺこっと頭を下げて通り過ぎる。
「伴さん、今の人カッコよくなかった?」
「あーまあ、そこそこ。うちの弟の方が顔は良い」
「いや、伴さんの弟さんでしょ…どう考えても美男子じゃん。比べちゃダメだよ」
「私と系統違うけどね」
 父方の血も感じるが、どちらかと言うと母方の叔母に似ている。母によれば「私に似なくて良かった!」らしい。
「どれだけ美形家族なの?!なんなの?!見たい!」
「んー、機会があったらね」
 元要はデビューしていないし、そんなに有名じゃないから会っても分からないとは思うが。念には念を入れておいて間違うことはない。
「写真ないの?」
「ないね、見る?」
 私のスマホの画像データフォルダは、道端の猫と、灯里と、20年以上前のアイドルの写真しかない。
「え、誰これ?芸能人?」
「うん、そう」
 これが初恋の人、とは教えない。
「伴さんって、芸能人に興味あるんだね。俗世のものには興味ないと思ってた」
「アイドル好きだよ」
「本当に?!私はアジア系のアイドルグループが好きなの!」
 国は違えどアイドルヲタクは共感できるものだ。そのままキャッキャと盛り上がりながら、観測場所に戻った。

 それからしばらくそれぞれで星空を楽しんだ後、時間になったので片付けをして車に乗り込み、大学内で解散となった。
「倫音、どうだった?」
 帰りの車は別で、斎藤と一緒に乗っていた灯里が私のそばへやって来た。
「灯里、斎藤と帰るんじゃないの?」
「斎藤くんは、これから深夜バイトです!」
「あー…お疲れ様」
「で、どうだった?!」
 ワクワクした顔で見つめられても、女子三人のところに混ざっただけだ。
「普通に星見ただけだから」
「なんだよお、何にもなかったの?」
 あってたまるか。
「ないです」
 そこへ、ふらりと星野がやってきた。
「お二人さん、お家まで送りましょうか」
 手の中の鍵をちゃらりと見せられた。
 まだ電車がある時間帯だし、格下ゼウスに送ってもらいたくない。そもそも実家バレしたくない。
「結構です。星野、女子に振られたの?」
「やだなあ、俺が好きなのは誰だか知ってるでしょ」
 ニコニコと笑っているが、露骨である。好きと言うより、下心しか感じない。
「じゃ、お疲れ」
「灯里ちゃん、倫音ちゃん全然相手にしてくれないんだけど」
「そこまでは責任持てないわ、頑張れ」
 二人で適当に星野へ手を振って大学を後にした。
「灯里、どうすんの?うち来るん?」
「んー、今日は帰ろっかなあ」
「了解」
 駅まで一緒に行き改札内で別れると、母親にメッセージを送った。すぐに既読がついて返事が来る。
『気をつけてね!』
 はいはい、と心の中で返事をした。

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