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しおりを挟む一度投稿してしまえば、情報は残る。
彼女が前に使っていたSNSの写真や記事は、探せば魚拓として存在していた。いくら本人が気をつけていても、周りの人間が緩い場合も多分にあるのだ。
きっと知人程度の人物だろう、SNSに彼女と一緒の写真を載せて自己顕示欲を満たしていた。
誰かが撮った彼女は、あの頃の可愛さを内包したまま、美しさを増していた。この誰かの目には、彼女がこう見えているんだろう。
どうしようもなく、悔しかった。
ダメだと分かっていても、俺は得た情報を元に、彼女の過ごす大学へ時間を縫って足を運んだ。直接会わなくても、彼女の情報は学内中に転がっている。
「一回でいいから、ヤリてえよなあ」
「着痩せするタイプらしいから、胸も尻もあるってよ」
「この前、コイツ声かけて舌打ちされたって」
「うわ、勇気あるな」
「舌打ちされた時の顔が、嫌そうですごく良かった」
「そっちの趣味かよ」
下衆のような会話が多く、日々こんな視線に晒されているなんて、最低の気分だろう。舌打ちくらいで許されてしまっていいのか。
「そういえば、星野が天体観測に誘ったって言ってた」
「まじ?行こうかな」
「やめとけよ、お前じゃ絶対にお近づきにはなれない」
「星野ばっかり、ずるいよなー!顔が良いからって許されて」
「いや、許されてないだろ。毎回相手にされてないじゃん」
顔が良い星野…?
気付いたら声を掛けていた。
「ねえ、それっていつあるの?」
お前、誰?って顔をして三人の男子大学生が俺を見た。
「えっと…明日って言ってたけど」
「どこで?」
「場所までは…夕方に正門集合ってくらい」
「星野くん、今どこにいるかな?」
「サークル棟にいると思う…」
「そっか、ありがとう」
「お、おう」
満面の笑みで返すと、三人もヘラヘラと笑った。その場をさっさと立ち去る背中で、うっすらと会話が聞こえた。
「あいつ誰?」
「星野の友達じゃね?顔広いし」
「そうだろきっと」
良い感じに勘違いしてもらえれば、それでいい。俺は友達になんてなりたくないけど。
サークル棟へたどり着いたが、どれが該当の部屋なのか分からなかった。適当に声を掛けると、当人は広く名が知れているらしく、すぐに居場所が判明した。
廊下に立ちスマホを操作している体で、その男を観察する。
噂されるだけあって、確かに顔の造りは良かった。女子達に囲まれていて、なんだかんだと世話を焼かれたり、チヤホヤされているようにも見受けられる。
「光流、今日この後予定ある?もし暇ならカラオケ行こうよ」
「行こ行こー!」
周りを囲むのは、ヒエラルキーが高過ぎず低過ぎず、男子の言う手が届きそうな感じの女の子ばかりだ。
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