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しおりを挟む「すごい、今回も見事に酔った。天晴れ」
「いやいやいや、水飲む?」
「ううん、大丈夫。大体いつも十分くらいで回復するから」
「そんなに乗り慣れてるの?修行か何か?」
体調が悪くなるのに乗るなんて、修行だと思われても仕方ない。
「はじが好きなんだよね、これ。一人で乗るの嫌がるから付き合うんだけど、毎回酔う」
「弟さん想いなのはいいけど、元要くんいないし、今日は乗らなくて良かったんじゃ?」
「心頭滅却したかった」
折角のデートだし、日晴くんが下心見せないって怒ってるのもどうかと思って、自分を戒める為に乗ってみた。
「……その気持ち、理解はできるよ」
「へ?」
「ううん!トロピカルフルーツのアイスバーがあるけど、食べる?」
「冷たいのいいね…」
「ここにいて」
日晴くんがサッとアイスクリームワゴンへ移動して購入しているのを、グッタリしながら視線で追う。
弱い十九歳とは思えない配慮と落ち着き…そりゃあ、下心もお亡くなりになってますよね。
「お姉さん、一人?具合悪いの?」
あーまた来たよ。具合悪いんだから放っておいて欲しい。
声の主を見上げるのも面倒でそのまま無視をする。
「お姉さん、聞いてる?」
あえて無視してることに気づいて欲しい。
「Did you need me?」
その後ろから、結構強めの剣幕で日晴くんの英語が聞こえた。めっちゃネイティブで、日系なのかな?って感じ。
「You're late」
「げっ、外国人?ソーリーソーリー!」
いえ、日本人ですよ。
男はパッと逃げるように去って行くと、アイスを持った日晴くんが隣に座った。
「ごめんね、一人にして」
「全然、いつものことだし。アイスありがとう」
もらった包みを破き、酸味のあるトロピカルフルーツ味のアイスバーを齧ると、なんだかスッキリとしてくる。
「やっぱり、出来るだけ離れないようにしないと…」
「無理でしょ。それに、あれくらい私一人で大丈夫だし」
「でも…」
言い渋る日晴くんの口に、食べかけのアイスを突っ込んだ。ラビの耳が半分無くなる。
「さて、次はどうしようかな。初めての日晴くんの為に、案内コースでも歩こうかな」
残りのアイスを齧りつつベンチから立ち上がると、日晴くんの手を力一杯握った。
「いたた!」
「はーめっちゃ元気が有り余ってるから、困っちゃうなあー!」
「無理しないでね」
なだめるように笑った日晴くんは、全然年下って感じがしない。
「じゃあ、こっちね」
人の少ない小道のような歩道をずんず歩く。
「何でこんなに人が少ないの?」
「この辺りは、何のアトラクションもないただの道だからねー!移動しやすくて良い」
散歩するには持ってこいなのだ。
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