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しおりを挟む「倫音さん、キラキラしてる」
「そう?」
「うん、いつもカッコいいけど、最近は充実してそう」
充実してそうっていうか、初めて彼氏が出来たからだと思いますけど。私が勉強を頑張ってる根本は、日晴くんに見合う人間になりたいからで。結論、日晴くん絡みなのだ。
彼の胸元をペシっと叩く。
「自覚せえよ」
「何の?!」
私のスイッチを入れたことだよ!
「さて、午後もいい時間になりましたが、どうします?水上ショー見ます?」
「どこで見られるの?」
「あそこ」
指差したのは、ショーを観るための丸く出っ張ったエリア。既に何人もの人が待機していた。
「え、あそこ?」
「うん、停留するんだよ。そしてキャラクターが降りてくる」
「へえ、もう行く?」
「一時間前だから行っておいた方がいいかも」
二人で階段を降り、空いているエリアを選んでシートを敷き、折り畳みのクッションを渡す。
「何これ」
「お尻が痛くなるから座って」
「ありがとう…用意がプロ」
「全然普通だよ」
自分の分も取り出して座る。
このエリアで流れている曲は、映画で使われていたり民謡だったりするからポピュラーな物が多い。鼻歌を歌いながら海を眺める。
「なんか、のんびりできていいね」
日晴くんが私の髪の毛を指先で絡めて遊んでいる。普段そんなことしないから、髪に神経が通っているみたいにゾワゾワする。
「そうだね、あんまりアクティブなコースじゃないし」
色違いのキャップを被り並んで座る私達は、どこからどう見ても恋人同士で、髪なんて弄ばれてるから、いちゃいちゃしてるバカップルになってるはずだ、客観的に。
でも、蓋を開けたらキスを何回かしただけの、清い関係なのだ。
泊まりの準備、して来てるんだけどな。このまま帰るのかな。私、明日誕生日なんだけどな。
半身にズシっと重みを感じた。
隣を見ると、まぶたを伏せた日晴くんが私にもたれかかっている。
「お眠さんかな…?」
朝から運転して歩き回って疲れたんだろう、寝かせてあげよう。
そんなに日差しが強い天気じゃなくて良かった。
元気の良い音楽が流れて、ラビ達が船で帰って行く。
結局、日晴くんはラストまでスヤスヤと眠っていた。
「ごめん、倫音さん!」
ひたすら謝る日晴くんに首を振る。
「気にしなくて良いよ!疲れてたんでしょ」
「本当ごめん!」
「また来ればいいじゃん。さっきの恒常ショーだし」
季節イベントじゃないから通年見られるのだ。
「それより、どうする?疲れてるならどっかで休む?」
「ううん、大分回復したから平気。倫音さんは?疲れてない?」
「私は問題なし!そしたら、混む前に灯里のお土産買おうかな」
「了解、お菓子のお店?」
私は頷いてお店が並ぶエリアへと向かう。日晴くんが自然に手を繋いで隣を歩く。
「んふふ」
「何?」
「ううん、なんでもなーい!」
嬉しくなって繋いだ手をブンブン振り回した。
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