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しおりを挟むどうして、この人、こんなにかっこいいんだろう。
お肉を切り分け、咀嚼する様子も優雅だし、何も気負ったところがなくて、泰然自若だ。日晴くんが焦ったところなんて、私が嘘ついて呼び出した時と、無理やりキスして帰ろうとした時くらいしかない。
わお、どっちも私のせいじゃん。
元要も慌てないタイプだけど、あれはボンヤリしてるって言うのが合ってて、日晴くんは経験と思考と性格で培ってますって感じ。
そうだよね、人間て年齢じゃないよね。日晴くんが人として素敵なのは、日晴くんの努力があってこそなんだよ。
「美味しいね?」
細波みたいに微笑む日晴くんに、うっかり見惚れていたから慌ててうなずく。
「初めて食べたけど、美味しい」
「そっか、良かった」
ただの水を飲んでいるだけなのに、シャンパンを嗜んでるように見える。
「予約してくれて、ありがとう」
「ううん、俺も気になってたから来てみたかったんだ。店内写真が素敵だったから」
「うん、いいよね、ここ」
落ち着いた空間に、満たされたような気持ちになる。
おっと、忘れてはいけない。まだ私には試練があるのだ。さっき確認したらホテルの空室はまだあったし、当日予約も取れる。あとは、押すしかない。
「日晴くん」
「なに?」
コースを食べ終わってのんびりしている彼に、直球勝負を挑む。
「私、帰りたくない」
「え?」
「帰りたくない」
ぽかんとした表情の日晴くんは初めてで、うっかり笑いそうになるのを堪える。
いや本当、想像してもいなかったのかな?
「えっと…泊まりたいってこと?」
「そう!」
おおー!理解できてる!
「明日の予定は?ご家族と過ごしたりしないの?」
「何で?」
私の返事に、困った顔で首を傾げている。これは、ダメなやつ?
「倫音さん…明日二十歳の誕生日でしょ。双子なんだし、家族でお祝いしないの?」
配慮ー!!配慮がありすぎるー!!人としてー!!
「あー!パパがいっぱい夕飯作るって言ってたから、日晴くんも来れば?」
「家族水入らずじゃないの?そういうの?」
「ううん、親戚とパパの友達も来るよ!日晴くんも来たら、きっとみんな喜ぶ」
いいじゃん!名案じゃん!私、天才じゃない?!
「俺、行っていいの?」
やった!来る気がある!
「もちろん!嬉しい!」
「差し入れ持って行かなきゃ」
「いらないよお!きっと大人が持ってきすぎるから余る」
どうせ、みんなで分けて持って帰るんだから、増やす必要もない。
「分かった」
「じゃあ、お泊りしてもいいよね!」
話の流れで持っていけるかと思ったが、日晴くんが固まった。
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