【R18】みだりに近づかないでください!

はこスミレ

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「倫音さん、改めて誕生日おめでとう」
 バッグから細長い箱を取り出し渡された。
「えっ…ありがとう」
 箱の中には、ゴールドの細いチェーンにパールが一粒飾られたネックレスが入っていた。
「これ、本物では…」
「つけようか?」
 否定せずニコリと笑う日晴くんに、そういえばこの人は仕事をしてるんだったと思い出した。最近は普通の大学生っぽかったから忘れていた。
 抱きしめるようにネックレスをつけられると、もう一度今度は耳元にキスをされた。
「似合ってるよ」
「……ありがとう」
 なんていうか、全身から発熱してる。
 満足そうな日晴くんは、私の手を握ると立ち上がった。
「俺、すっごいところ知ってるんだけど見に行かない?」
 嬉しそうにニコニコしているから、私もつられて笑う。
「なにそれ!いいよ!」
 二人で歩く頭上では、真っ青な空の真ん中、一筋の飛行機雲が線を描いていった。


 夕方、二人で帰宅すると、両親がリビングでパーティーの準備をしていた。声を掛けてから、荷物を片付ける為に自室へ戻る。
「おかえり、りん、日晴くん」
 後ろから声を掛けてきた元要が欠伸をする。
「ただいま。これからみんな来るんでしょ」
「うん、ねねが早めに来て準備手伝うって」
「ねねが来るなら、百音と音恩も来るんでしょ」
「多分」
「ちょう久しぶりじゃん?」
「だね」
 会話を聞いていた日晴くんが首を傾げる。
「親戚?」
「そうそう、ねねはママの妹だから叔母」
「百音と音恩は従姉妹。二人は女子高生」
「そうなんだ、あと誰が来るの?」
 元要と顔を見合わせて、指を折って数える。
「パパの友達とその家族だから…全部で」
「ねね達も入れて九人くらい?」
「結構多いんだね」
「年に一回くらいだしねー!」
「本当に、俺もいて大丈夫?」
 遠慮がちな日晴くんに、私も元要も軽く頷く。
「どうせ大人は飲んだくれてるしね」
「俺らも飲まされんのかな」
「あ、そっか…まあ一口付き合えばよくない?」
 日晴くんが、ハッとしてバッグから何かを取り出した。
「元要くんも、誕生日おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「はじにも誕生日プレゼント用意してたの?!」
 よくよく気がつく人だ。
「大したものじゃないけど」
「見ていい?」
「どうぞ」
 やっぱり長細い箱で、入っていたのはちゃんとしたタイプのボールペンだった。なんと、元要の名前入りだ。
「かっこいい…」
「こう、契約書にサインする時とか…使うかなって」
「ありがとう、事務所の契約更新の時に使う」
「はじ、良かったねー!日晴くんも、本当ありがとう」
「いえいえ」
 三人でわいわいしていると、階段下から呼ぶ声がした。
「りーん、はじー!来たよー!」
「あ、百音と音恩だ」
「日晴くん見たらびっくりするんじゃない?」
「そう?」
 日晴くんが怪訝そうにしているので、元要が強く頷いた。
「だって、今までりんには男の影が微塵もなかったから!百音と音恩の方が彼氏できるの早かった」
「それは…マジの話だぜ…」
 悲しいが、一切否定できない。
「そっか、じゃあいっぱいアピールした方がいいのかな」
 真剣な顔をして言うから吹き出した。
「何アピール?!」
「えっ…彼氏です…みたいな」
「このネックレスしてる時点で、百音と音恩のオモチャにされると思う」
「容赦ないからなぁ、あの二人」
「ねねの子どもだからね」
 階下から、また声がする。
「まだー?!」
「今行くー!」
 大きめの声で返事をすると、三人で部屋を出た。

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