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しおりを挟む「倫音さん、誕生日おめでとう」
疲れ果てて眠りにつき、目が覚めると同時に抱きしめられて、耳元で囁かれた。
「ありがとう」
二十歳の誕生日がこんなに幸せだと思いませんでした。
しばらくベッドでいちゃいちゃした後、着替えて帰りの支度をする。のんびり起床したから、少ししたらお昼ご飯になりそうだ。
「倫音さん、行きたいところある?」
ホテルをチェックアウトし、車に乗り込むと日晴くんが微笑んだ。
今日もかっこいいですね。
そして、私はこの人と身も心も一つになったのです…!
「日晴くんと一緒にいられたら、どこでもいい」
「じゃあ、俺の行きたいところでもいい?」
「いいよー!」
どこだろう、とワクワクしながらドライブをした。
降り立ったのは、都内にあるシティホテルだった。
え、二回戦目をしたいってこと?!日晴くん、急にオープンになった?
ソワソワしながらついて行けば、ロビーを抜けて廊下を渡り、庭園に出た。
「勝手に入っていいの?」
「うん、大丈夫だよ。ほら、みんな散歩してるでしょ」
辺りを見回せば、広い庭園の植物を見ながら人々が歩いている。
なんだ、二回戦目じゃなかったのか。
「はー…綺麗だねえ」
季節の花が咲き誇り、池には小さな橋もかかっている。
「こっち来て」
「うん」
彼に手を引かれて歩いて行くと、濃いピンクの花が咲き誇る小道を抜け、バラ園を通り過ぎたところで、開けた場所に出た。
「あそこに座ろうか」
「おっけー」
ベンチはキレイに掃除されており、そのまま座っても問題なさそうだった。
日晴くんは私を見て、眩しそうに目を細める。
「倫音さん、ここがね、俺と倫音さんが初めて会った場所なんだ」
「えっ?!そうなの?!」
「ベンチは新しくなってるけどね」
うん、このベンチ新しいなと思った。
「そうなんだ…」
本当、全く何も思い出せない。記憶が微塵もない。申し訳ない。
「気にしなくていいよ、俺が倫音さんと一緒に来たかっただけだから」
手をギュッと握られて彼を見ると、何もない場所をじっと見つめていた。記憶の中の私でも登場しているのだろうか。
「なんか、不思議」
「ん?」
「こうして日晴くんと一緒にいるのが、昔の自分が日晴くんを引っ張り回したからってこと」
彼がケラケラと笑う。
「あの日は本当に楽しくて、ずっと終わらなきゃいいのにって思ったんだ。今も、そうだけど」
「日晴くんが私のこと嫌にならなければ、ずっと続くよ」
愛想を尽かされないか心配になるのは、こっちの方だもん。
「じゃあ…ずっとだね」
目を細めて、私の額に唇を落とした。
「口じゃないんだ?」
「…今したら止まらなくなりそうだなって思って」
「いいのに」
「外だからダメ」
ここはアメリカナイズドされてないんだよなあ。
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