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第7話
しおりを挟むアラームの音で、四葉の意識は覚醒した。
「ううう…」
手を伸ばしても、いつもの場所にスマホがない。というか、手がそれ以上伸ばせない。
「お、重い。」
目を開けて横を見ると、半裸の志信に抱き込まれていた。
「っ?!」
驚き過ぎて声も出ず、変な所に空気が入って咳き込んだ。
昨日のことは覚えている。酔って絡んで同僚とセックスして、また酒を飲んで自慰行為をさせられて…
あまりに良くて、絶頂と共に気を失ったんだ。
ーそうだ、童貞卒業してないじゃん!
筋肉がついているからなのか、見た目より重い志信の腕を揺する。
「おいこら、起きろ!郷田ー!おーきーろー!」
「うー…眠い。」
両手で顔を覆い唸ったかと思えば、そのまま静かに動かなくなった。
「こら、二度寝するな!起きろー!」
「もうちょっと…」
相当、寝起きが悪いらしい。
四葉は諦めて志信を乗り越えると、テーブルの上に置かれたバイブを見つけた。
そういえば、パジャマもちゃんと着ているし、避妊具もオナホールも外れている。
顔を覆ったまま静かに眠る志信を見て、なんとなく手を合わせておいた。
四葉はシャワーを浴びてから、朝のルーティーンを済ませた。
「さて、どうするか。」
志信は起きる気配がなく、今は休日の午前9時。
普段だったら男子高生のような性欲を昇華させる為に、ジョギングをしているのだが…
ー郷田とセックスしたから、めっちゃスッキリしてるんだよねえ。
四葉は垂らしていた髪を縛り、冷蔵庫を開けた。
トントントン、というリズミカルな音で目が覚めた。
のそりと体を起こすと、キッチンに立っている四葉が見える。
ーなにこれ、同性カップルの朝?
ベッドから降りて、背を向けている四葉に声をかける。
「おはよう。」
「やっと起きたか。」
振り向きもせずに返事をする四葉の後頭部に顔をつける。シャンプーと頭皮の香りがした。
「ちょっと、彼氏ヅラすんのやめてくれる!?」
「いやこれ、そういう感じでしょうや。」
「あんたとそういうことする気ない。」
サックリと切られて、志信は少し傷ついた。
ーなんで俺、ちょっと残念な気持ちになってんだ?
「邪魔だから座ってて。」
「へーへー、分かりましたよ。」
畳んでおいたスーツを着なおして、四葉が見える位置に陣取る。
あのツンツンといつも喧嘩腰の四葉が、酔うとど淫乱になるなんて、改めて思い返すと顔がニヤけた。しかもアレで処女だというから尚更。
後ろ姿を見つめていると、普段履かないパンツスタイルなことに気がついた。健康的な尻がキュッと上がっているのが分かる。
ーもしかして…
「東雲、普段フレアスカートとかロングスカートなのって、体型を分かりにくくする為?」
四葉は沸かしたお湯をマグカップに注いで、料理を載せたトレーを運んできた。
「そうだけど、それが何?」
まずい事を聞いたのだろうか、少し怒り気味の表情だった。
「いや、聞いただけ。」
「お腹空いてたら、どうぞ。」
出されたのは、大皿に山盛りのサラダとソーセージ、目玉焼き、トーストされた食パンと、カップスープだった。
「すげえ、ホテルの朝食みたいじゃん。いただきます。」
「いや、全然大したことないけど。召し上がれ。」
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