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第41話
しおりを挟むまりあは髪をサラリと揺らして、首を傾げる。
「本当ですか?」
「本当、本当ですのよ。だだの同期で、仕事が一緒だっただけ。私はあいつのことこれっぽっちも好きじゃないし、あいつも私のこと別に好きじゃないですわよ。」
動揺して、語尾が変になった。
「そうですか。」
—八潮さん、郷田のこと好きなんだ。
まりあが嬉しそうに笑うので、胸の奥がズキンと痛んだのは、気づかないことにした。
それから、四葉は何か不明な点がある時は、自分ではなく志信に確認するよう、まりあに伝えた。まりあは大きな目をパチパチしていたが、やがて破顔して頷いた。
四葉はデスクも別のフロアに移動した。社内はフリーアドレスだし、志信が強制したからそばにいただけで、元々は毎日違う場所で仕事をしていたのだ。
志信はヤリチン営業マンで普通の男だから、いつまでも自分の性癖に付き合わせるべきじゃない。
まりあの笑顔を見て、確信した。
志信は、普通の可愛い女の子と幸せになるべきなのだ。
退勤後に落ち合ったホテルで、いつも通りに肌を重ねた。
今夜は四葉が挿入される番だった。
志信の手のひらは四葉の体を慈しむように撫で、多数のキスを落として跡をつける。四葉がねだるせいで、噛み跡をつけるのも定番になっていた。
怒張するお互いの陰茎を口に含み、夢中で舐め回す。普通は拒絶するだろうに、初回から志信は嫌がることなく四葉の陰茎を愛した。
割り入ってくる志信は熱く硬く、四葉の中で暴れる。いつもどんな時も気持ち良くて、この男は性の権化なのではないかと思った。
挿入中も四葉の陰茎を忘れずに刺激したり、自分でも知らなかった快感を見つけたり、四葉はその快楽に溺れているだけで良かった。
一度では足りなくて、二度、三度、志信が音を上げるまでねだった。
「…四葉、何かあった?」
最近、苗字で呼ばれるのは社内にいる時だけだ。
最後まで搾り取られた志信が、ぐったりと四葉の上に倒れこむ。重くて身動きがとれず、志信の腕を叩いた。
「重い。」
「仕方ねえな。」
四葉を抱き込んで転がると、体勢が逆転した。
優しく背中を撫でられて、ついばむようにキスをされる。
まるで恋人のような仕草に、胸が苦しくなった。
—部活仲間だから、コイツとは。
自分達の間に、愛や恋は存在しない。ただ、快楽を共有する関係だ。だから、全然問題ない。
グレーの髪をすく指に、身が震えるのは気のせいだ。
「今日で、セックスするの終わりにしよう。」
志信は目を見開いて、じっと四葉を見つめる。
視線の強さに、四葉は身動いだ。
「…やっぱ、何かあったろ。先輩のことか。」
逃さないとでもいうように、志信の腕はきつく締まる。
「そのことなら、俺が何とかするから気にすんな。」
目の奥がギュウッと痛くなり、四葉は慌ててまぶたを閉じた。
「…違うの、もう決めたの。」
「何を?」
「色々よ、色々考えて自分で決めたの。だから、今日で終わり。卒業おめでとうございます。」
「意味わかんねえ。」
その後も志信は何のかんのと話しかけて来たが、四葉は全て無視して寝ることにした。
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