【R18】新入社員ヤンデレエルフの、教育係になりました!

はこスミレ

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第4話

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 午後からのオンボーディングは、沙彩にとって気まずいものとなった。
「アプリの使用方法ですが……」
 ティルがずっとこちらを見続けている。しかも、すこぶる笑顔で。
 たまにチラチラとこちらを伺う、集中力のない女性社員に、熱っぽさが含まれている。
 このダークエルフは、魅了スキルでも持っているのだろうか。しかし、沙彩にそんなものは感じられない。
 ティルの視線を感じながら、共有しているパソコンの画面を操作する。
「このような感じで着信が入ります。では、私が一度かけますので、出てみて下さい」
「はい」
 マイク付きのイヤホンを装着し、ティルのパソコンに電話をかけると、すぐに声が聞こえた。
「もしもし」
「はい、もしもし」
 近い音域の電子音に変換されているにも関わらず、ティルの声は透き通っていて聞き取りやすく、安定感がある。声優にでもなった方がいいんじゃなかろうか。
 ダークエルフ声優…見た目だけで人気が出そうだが、エルフがエルフ役をしたら盛り上がりそうだ。朗読イベントなどを開催したら、チケットは即完売、出待ち入り待ちのファンもできそうだ。
「大丈夫そうですね」
 通話を切ってイヤホンを外す。
 それにしても、どうしてこんなにも自分を見てくるのだろうか。
 沙彩は、変な汗をかきつづけている。
 こういった反応に慣れていない為、とても居心地が悪い。
「一通りの使用法はこれで全部になります。一度休憩を挟んで、10分後に簡単な業務をいくつか説明します」
「はい、ありがとうございました」
 沙彩が席を立つと、ティル席を立ち、後ろをついて来る。沙彩が進む方向にはお手洗いもあるため、そちらに行くのかもしれない。
 営業部フロアを出て、お手洗いの前を通り過ぎた。だが、ティルは沙彩の後をついて来る。
「えっと……ティルさん、お手洗いに行くんじゃないんですか」
 振り返って問いかけると、にこりと笑ってティルが答えた。
「サーヤがどこへ行くのか知りたいのです」
 意味が分からなかった。
「飲み物を買いに行くだけですけど」
「では、私もお供します」
 なぜ。
「あ、はい」
 無言でついて来なくても、単純にどこへ行くか聞くだけでいいのではないか。
 ティルはさりげなく沙彩の隣へと移動し、自動販売機までくっついて来た。
 沙彩は温かい紅茶を買い、ティルの方へ向いた。
「ティルさんは……」
 ダークエルフですよね?と聞きたかったが、言葉を飲み込んだ。
「なんでしょう」
「いえ、なんでもありません」
 いくらなんでも、不躾過ぎる。
「サーヤに声をかけていただけるだけで、嬉しいです」
「あ、はい……そうですか」
 初めからオープンな好意が、とても欧米感を出している。
 エルフって、こんな好意的だっけ。チェンジリングで人間として育ったとか…?
 沙彩はまた妄想へ行きそうな思考をストップさせ、無言でついて来るティルを従えるようにフロアへ戻った。

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