【R18】新入社員ヤンデレエルフの、教育係になりました!

はこスミレ

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第11話

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「いやいや、大丈夫ですよ」
 丁重にお断りをしても、ティルも譲らない。
「いえ、用意したいのです」
「いや、大丈夫です本当」
「私の作る料理は美味しくないですか」
 悲しそうに眉を下げ、心なしか尖ったエルフ耳までしゅんとしているように見える。
「いや、美味しいですけど」
「では良いですね!」
「よくないです。材料費もかかりますし」
 より一層悲しそうな表情をするダークエルフに、心が痛まないはずがない。
 なんて小狡いのだ。
「では、材料費を半分出していただくということで、いかがしょう」
 キラキラの瞳でじっと見つめられ、ずいっと顔が近づく。
 綺麗な明るい色の瞳に、自分が映っているのが分かるくらい近い。これ以上近づかれたら、自分の身が持たない。
「う……は……い……」
 押し負けた。
「ありがとうございます!」
 途端ニコニコと笑い出し、見た目のイメージよりも表情豊かで驚く。
「あの……どうして私に食べ物を与えたいんですか」
 昨日からずっと餌付けされている。
 今夜も食べに行く約束になっているし、まだ知り合ったばかりなのに、好意的なのも少し怖い。
 今までの人生で、沙彩はこんなに好意を持たれたことがなかった。
 花が綻ぶように、ティルが笑う。
「愛しいからです」
 これは、危ない人だ。
 沙彩はそう認識した。
「サーヤは、私の女神なのですから」
 どうやら完全に逝ってしまっている。
「いや、怖いです」
「いいえ、サーヤはそんな風に思っていません。現に、私を拒絶していないでしょう」
 しています、とは言い難い状況である。
 何を持ってして、他人の気持ちをそう言い切れるのか。沙彩には謎だ。
 ティルは徐に、お手製のサンドを沙彩の口に突っ込んだ。
「んぐっ?!」
 どんどん奥へと詰めようとしてくるため、慌てて咀嚼する。
「サーヤは、私をエルフだと分かっていても、他の人間と同じように接しています。初めからそうだと分かっていても、やはり昨日は緊張しました。いつ拒絶されてもおかしくなかったのですから」
 勝手に語り出したティルの手を押し、沙彩はなんとかサンド詰め込み地獄から逃れた。
 口の中の物を飲み込んで、ティルを睨んだ。
「窒息するのでやめてください」
「頬が膨らんで愛らしかったですよ」
 やっと息をついて、ハッとする。
 先程、ティルは自分からエルフだと明かさなかっただろうか。
「ティルさん……エルフなんですか」
 胡乱な視線で見上げると、ティルが穏やかに頷いた。
「そうですよ、分かりませんでしたか。私自身、とても分かりやすい見た目のエルフだと、自負しているのですが」
 本当に、ダークエルフだった。
 沙彩は自分の感覚がおかしくなったのではないことに、安堵した。
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