【R18】新入社員ヤンデレエルフの、教育係になりました!

はこスミレ

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第12話

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 褐色肌に濃灰のスリーピースを着ているから、明るい髪色が美しく際立っている。
 公園を通る人々に、微笑む彼はどう映っているのだろうか。
「いやー……エルフだと思ってましたよ。でも周りが何も言わないし、人の見た目にとやかく言うのは違うし……もしかしたら、なりきりの路線も捨て切れず」
「それは若いうちに通っておくべき道ですね」
 やはり当のダークエルフでさえ、そういう認識なのか。
 ティルはポットからコップにお茶を注いで、沙彩に手渡した。湯気と共に爽やかな紅茶の香りがする。
「この姿は、サーヤにしか見えていませんよ。周りの人達には、ただの人間に見えています。正確には、人間だと認識させているんです」
「はあ…?」
 沙彩は返事をしながら、さっき詰め込まれて途中までしか食べていなかったサンドを、改めてゆっくりと頬張った。
 こんな時、自分の神経の図太さを感じる。
「私には二つ力がありまして、そのうちの一つを使っているのです」
「へー」
 ダークエルフだから、そういう力もあるだろうも思っていたが。
 現実で見ると本当に不可思議だ。
「なりきりじゃなかったか」
「本物ですよ。だから、サーヤが私を他人と平等に扱うことがとても嬉しく、そして切ないです」
 サンドをお茶で流し込み、ゴクリと飲み込んだ。
「サーヤ……愛してます」
 とろけそうな表情で言われても、沙彩はどうしていいか分からない。
「えー……いや、それはちょっと引くっていうか……無理があると思うんですよ」
「どういうことですか」
 変わらぬティルの笑顔に威圧を感じた。
 昨日の帰り際も同じようだったな、と沙彩は思い出した。
「ちゃんと話したのは昨日が初めてですし、万が一に一目惚れだとしても、愛してるは違うっていうか」
 好きや恋なら理解できても、愛は納得がいかない。時間をかけて築き上げるものではないのだろうか。
 一朝一夕で愛を語られても、沙彩は受け止めることができない。
「サーヤ……分かりました。エルフの名にかけて誓いましょう、私の愛を証明すると」
 沙彩は脱力した。
「いや、全然話を聞いてないですね」
「聞いていますよ、サーヤの言葉は一語一句逃さず」
 聞いていても、理解していなければ同じことなのではないか。
 沙彩は気が遠くなった。
「では、今夜も腕によりをかけて愛の手料理をご馳走します」
「あー……」
 今夜も約束してしまっていたのだった。
 奮起しているティルに、今更断るのも難しいだろう。
 面倒なことになったなあ、と沙彩は思った。

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