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第40話
しおりを挟む通されたティールームは格式高く、華やかだが落ち着きのある雰囲気だった。
「わあ…素敵」
ゴージャスなソファに座り、サーヤがキラキラと目を輝かせている。
「サーヤさんは、普段どんなお茶を飲まれてますか」
「えっと…ティルが入れてくれるやつなんですけど。ふわっと甘い匂いがするハーブティーで」
「ああ、あれですか。昔からずっとうちで買ってるハーブティーですね」
「あ、ここのお店のだったんですか」
エランドとニコニコと話すサーヤを、ティルはぐいっと自分の方へ近づけた。
「え、なに?」
サーヤが驚いていると、エランドが笑い出す。
「嫉妬深いやつが相手だと大変ですねえ」
「うるさい。お茶は何でもいいですから、あなたはさっさと仕事に戻りなさい」
ティルがしっしと手を振ると、エランドが納得したように頷く。
「ずっとサーヤさんを私に紹介しなかったのは、こういうことだったんですねえ」
「え、どういう?」
サーヤがティルを見るけれど、ティルは何も答えない。
「ほら、お店が忙しいんだから、ここにいなくて良いのですよ」
「オーナーは別に働かなくてもいいんですけどねえ」
「いいえ、働いてきなさい」
エランドは肩を震わせながらティールームを出て行った。
「仲良いんだね、二人は」
「そうでもないです。そんなことより、サーヤ!あんな人物に気を許してはいけませんよ」
「プレイボーイだから?」
それもあるが、商魂たくましいから、サーヤを見せ物にされる危険性がある。
「とにかく、あれはだめです」
サーヤの腰に手を回し引き寄せ、ぴたりと体が着く距離まで詰める。
「ち、近いんだけど。ここで声かけたりされないから!」
あたふたと慌てるサーヤの反応が、ティルの気分を高揚させる。
「さっき、約束を破ったのでダメです」
サーヤは頬を真っ赤にしてティルを睨んだ。
「そんな可愛い顔で睨んでも、ダメなものはダメですから」
「なんか、今日のティル変だよお」
暑くなったらしく、手扇で顔に風を送る。
「用心に越したことはないのです」
そうこうしているうちに、ティールームのスタッフがお茶とお菓子を運んできた。
「わあ、可愛い」
透明なポットの中に花が咲いている。
「普段飲んでるハーブティーのランクが高いやつですね」
「こんなお花なんだ」
ティルがポットからサーヤと自分のカップへお茶を注ぐ。
「ありがとう、いただきます」
お茶を口に含むと、いつもよりももっと芳醇な香りが鼻から抜けていく。
「うふふ、美味しい」
嬉しそうに笑うサーヤが愛らしく、すこしでも喜ばせたいと思った。
「……帰りに買って行きましょうか」
「本当?!やったあ」
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