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麗らかな陽だまり5-1
しおりを挟む卒業旅行はいつものメンバーで、散々遊び尽くした。グループDMにはアルバムがパンパンになるほど写真が投稿され、たくさん撮った動画には、うららがはしゃいでいるものもあった。俺はそれを大切に保存し、クラウドにバックアップしている。ちょっと元気がない時や、疲れた時にはそれを眺めるし、うらら用のフォルダも作っているので、スマホを見られたら完全にアウトである。
そんな俺たちは、就職に伴い大学のそばからそれぞれ沿線沿いに引っ越した。もう、毎夜集まって飲むことも遊ぶこともない。
酔い潰れたうららを家まで送り届けることは、もうできなくなった。
人とコミュニケーションを取るのは比較的上手い方だと思っている。相手の顔を見て、話を聞き、どんな言葉が欲しいのか、どう対応したら喜ぶのか、予想して合致した時は面白いし、案外人が好きなのだと思う。だから、企画営業は俺にとって面白い仕事だ。
「森崎、明日の外回りだけど」
先輩に呼ばれて、スケジュール確認と相手先の情報共有をしてもらう。
新入社員の研修期間も終え、スーツも通気性の良いものに切り替わっている。外回りがない今日は、カジュアルな半袖ワイシャツで出勤していた。
「て感じだから、よろしく」
「はい、明日よろしくお願いします」
先輩の同行をさせてもらうにあたり、資料を読み込んでいると、スマートウォッチが反応した。チラリと表示を確認すると、ひかるからのDMだった。
ソワソワと落ち着かなくなる。業務中なのだからと自分に言い聞かせるが、気になって仕方がない。トイレに行く体で、個室に入って内容を確認した。
『私も萌波も連絡取れてない。拒否されてる訳じゃないから、返事できないのかも』
最近、うららと連絡が取れない。知らない間に、うららの地雷を踏んで嫌われたのかと大変焦ったが、女子達も同じらしい。メッセージも返ってこないし、電話をしても出ない。
俺は心配で心配で、どうして彼氏じゃないんだろう、と過去の自分を詰った。こんな時、恋人だったら、何かあった時に頼られただろうし、もっといけば同棲して面倒も見れるし、変な輩に絡まれないように飲み会の迎えにだって行けた訳だ。
「本当、俺ってダセぇわ」
ダメ元で、うららにメッセージを送る。
『メシ行かない?』
うららの好きな町中華、俺の家の近くに美味しいところ見つけたんだよ。絶対好きだから行こうぜ。餃子がパリパリの羽根つきで、炒飯のチャーシューがゴロゴロしてて美味いんだ。
そんなことも、伝えられない。ただの大学の同窓生、俺はそんなレベルになっているのかもしれない。
翌日、外回りが終わったのが終業時間に近かったため、先輩と直帰することになった。
「日が伸びたなあ」
「そうですね、全然明るいですよね、暑いし」
湿気を伴う熱気は、そろそろ梅雨明けを予感させた。
「一杯やってくか?」
先輩の誘いに頷こうとした瞬間、スマートウォッチが光り、今一番の心配事が表示された。思わず、息を呑む。
「どうした?」
「すみません!今日ちょっと予定がありまして、次回ぜひよろしくお願いします!」
「おう、了解。じゃ、お疲れ様」
「お疲れ様です!」
歩き去る先輩を見送り、著しい動悸に指先が定まらぬまま、スマホの画面をタップする。
『ごめんね』
その一言だけ、返って来ていた。断りの言葉だと分かっていても、胸が震える。
俺は、気がついたら駆け出していた。会わなきゃいけない、そう思った。
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