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のどかな田園風景しか知らなかった主人公の目にはそれらの世界がきらきらと美しく輝いて見えたに違いない。それを僕は感じたままに描き上げていった。
なぜキラキラ輝く世界を原色で仕上げていったかと言うと、あの原色が放つ強烈なインパクトは主人公が知らない世界を初めて見た時の心に受ける衝撃に似ていると思ったからだ。それは決して柔らかい衝撃であったはずがない。ガツンと魂を揺さぶられるような衝撃だったに違いないのだ。
それに、赤ちゃんにも色が分かるようにしたかった。
赤ちゃんの目はまだ良く物が見えない。だけど、原色の赤とかオレンジとかは赤ちゃんの目でも捉えることが出来るのだ。
この絵本の対象年齢はもっと大きい子かもしれないし、ほたるさんの絵本は大人の女性に人気があるから実は大人向けなのかもしれない。だけど、お腹に赤ちゃんがいる身としては、やっぱり絵本は子供のために読んであげたい。
それで読んでるママも楽しめたら、それはすごくいいよね。
まだ言葉が分からない赤ちゃんは、読んでくれる優しいママの声を聞きながら目に飛び込んでくる鮮やかな色のシャワーを浴び、ママは愛しいわが子に読み聞かせながら、その絵本のストーリーと絵を楽しむことが出来るのだ。
そしてだんだん大きくなっていく赤ちゃんはママが読んでくれる言葉の意味が分かるようになり、次第に自分でも読めるようになっていく。
そうやって、この絵本が長く親しまれていってくれるといいな。
そんなことを思いながら感じるままに描いていったら、あっという間に全ての絵が仕上がってしまった。
楽しくてつい夢中になってしまった。
大分締切を残してはいたけど出来上がったので、それを木佐さんに渡すと早すぎる仕上がりに笑顔で怒られ、だけどそれをすぐにほたるさんに送ってくれた。
今回のこの仕事の怖いところは最初の打ち合わせがなかった上に、途中経過も一切見てくれなかったことだ。
どうしよう。
やっぱりイメージと違うって言われたら・・・。
一応僕のこの絵のコンセプトも添えたので、なんでこの色使いをしたのかは伝わると思うけど、やっぱり作者の中にはそれなりのイメージがあるわけだし、そもそもほたるさんは今まで自分で絵も描いていたわけだし、いくら僕の絵が好きだと言っても、全くイメージと違うものが来たら、そこはやっぱり受け入れられないのではないか・・・。
描く前は開き直って結構強気だったのに、いざ出来上がってほたるさんの反応を待っていると、どんどん不安になってくる。
挿絵の仕事の間はずっとこれ一本で在宅でやらせてもらっていたので、今日は久々の出社なんだけど、なんだかどきどきして自分の席にいても落ち着かない。
会社のみんなは僕が来た時に歓迎してくれて、近況を話したりしてたけど、今は完全に仕事モード。
それぞれがデスクに向かって仕事をしている。
僕もせっかく来たので何か仕事を・・・と思ったのだけど、顔が疲れてる、と言われて何も仕事がもらえなかった。
なので僕はいま、何もせずにただ自分のデスクに座っているんだけど・・・。
なんか合格発表を待つ受験生になった気分・・・。
何もしないで座ってても落ち着かないから、みんなにお茶でも淹れよう。
そう思って立ち上がったその時、会社のドアが開いて、誰かが勢いよく入ってきた。
その人は入ってくなり中を見回したかと思うと僕と目が合い、そのまま目を合わせたままこちらに向かってきた。
え?
そして何が起こってるのかよく分からずぽかんとしている僕の側まで来ると、その人はその勢いのまま僕に抱きついてきた。
「見つけた!さかなちゃん」
訳が分からず動けない僕を抱きしめたあと、その人は両手で僕の頬を挟み、信じられないくらいの至近距離で見つめてきた。
「すごい。想像したよりずっとかわいい」
語尾にハートマークでも付いていそうにそう言われたところで、僕達は誰かに引き離された。
「ケイ!」
見るといつもは穏やかな木佐さんが、見たこともないくらい険しい顔をしている。
「あ、優人いたの?」
そんな木佐さんに、その『ケイ』と呼ばれた人はケロリと言う。
「大丈夫かい?驚いただろう?」
半ば固まっている僕に声をかけると、木佐さんは僕とケイさんを来客用の部屋に促した。確かにあそこじゃ他の人の迷惑だけど、これはどういう状況?
「なんでいきなり来るんだ。来るなら来るで連絡の一つも入れられないのか?」
「連絡入れるのも惜しいくらい早く会いたかったんだよ。いいじゃん別に」
なぜキラキラ輝く世界を原色で仕上げていったかと言うと、あの原色が放つ強烈なインパクトは主人公が知らない世界を初めて見た時の心に受ける衝撃に似ていると思ったからだ。それは決して柔らかい衝撃であったはずがない。ガツンと魂を揺さぶられるような衝撃だったに違いないのだ。
それに、赤ちゃんにも色が分かるようにしたかった。
赤ちゃんの目はまだ良く物が見えない。だけど、原色の赤とかオレンジとかは赤ちゃんの目でも捉えることが出来るのだ。
この絵本の対象年齢はもっと大きい子かもしれないし、ほたるさんの絵本は大人の女性に人気があるから実は大人向けなのかもしれない。だけど、お腹に赤ちゃんがいる身としては、やっぱり絵本は子供のために読んであげたい。
それで読んでるママも楽しめたら、それはすごくいいよね。
まだ言葉が分からない赤ちゃんは、読んでくれる優しいママの声を聞きながら目に飛び込んでくる鮮やかな色のシャワーを浴び、ママは愛しいわが子に読み聞かせながら、その絵本のストーリーと絵を楽しむことが出来るのだ。
そしてだんだん大きくなっていく赤ちゃんはママが読んでくれる言葉の意味が分かるようになり、次第に自分でも読めるようになっていく。
そうやって、この絵本が長く親しまれていってくれるといいな。
そんなことを思いながら感じるままに描いていったら、あっという間に全ての絵が仕上がってしまった。
楽しくてつい夢中になってしまった。
大分締切を残してはいたけど出来上がったので、それを木佐さんに渡すと早すぎる仕上がりに笑顔で怒られ、だけどそれをすぐにほたるさんに送ってくれた。
今回のこの仕事の怖いところは最初の打ち合わせがなかった上に、途中経過も一切見てくれなかったことだ。
どうしよう。
やっぱりイメージと違うって言われたら・・・。
一応僕のこの絵のコンセプトも添えたので、なんでこの色使いをしたのかは伝わると思うけど、やっぱり作者の中にはそれなりのイメージがあるわけだし、そもそもほたるさんは今まで自分で絵も描いていたわけだし、いくら僕の絵が好きだと言っても、全くイメージと違うものが来たら、そこはやっぱり受け入れられないのではないか・・・。
描く前は開き直って結構強気だったのに、いざ出来上がってほたるさんの反応を待っていると、どんどん不安になってくる。
挿絵の仕事の間はずっとこれ一本で在宅でやらせてもらっていたので、今日は久々の出社なんだけど、なんだかどきどきして自分の席にいても落ち着かない。
会社のみんなは僕が来た時に歓迎してくれて、近況を話したりしてたけど、今は完全に仕事モード。
それぞれがデスクに向かって仕事をしている。
僕もせっかく来たので何か仕事を・・・と思ったのだけど、顔が疲れてる、と言われて何も仕事がもらえなかった。
なので僕はいま、何もせずにただ自分のデスクに座っているんだけど・・・。
なんか合格発表を待つ受験生になった気分・・・。
何もしないで座ってても落ち着かないから、みんなにお茶でも淹れよう。
そう思って立ち上がったその時、会社のドアが開いて、誰かが勢いよく入ってきた。
その人は入ってくなり中を見回したかと思うと僕と目が合い、そのまま目を合わせたままこちらに向かってきた。
え?
そして何が起こってるのかよく分からずぽかんとしている僕の側まで来ると、その人はその勢いのまま僕に抱きついてきた。
「見つけた!さかなちゃん」
訳が分からず動けない僕を抱きしめたあと、その人は両手で僕の頬を挟み、信じられないくらいの至近距離で見つめてきた。
「すごい。想像したよりずっとかわいい」
語尾にハートマークでも付いていそうにそう言われたところで、僕達は誰かに引き離された。
「ケイ!」
見るといつもは穏やかな木佐さんが、見たこともないくらい険しい顔をしている。
「あ、優人いたの?」
そんな木佐さんに、その『ケイ』と呼ばれた人はケロリと言う。
「大丈夫かい?驚いただろう?」
半ば固まっている僕に声をかけると、木佐さんは僕とケイさんを来客用の部屋に促した。確かにあそこじゃ他の人の迷惑だけど、これはどういう状況?
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「連絡入れるのも惜しいくらい早く会いたかったんだよ。いいじゃん別に」
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