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初夜を夫に拒否された瞬間、これが二回目の人生だと気付きました──。
後編
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「私は、もう一つ守護神に願った。私の命を身勝手に奪い……そしてまた再び、あなた達が私の命を奪おうとしているならば……それ相応の罰をお与え下さいと」
「何!?」
「ただの……出来心だったのよ!でも、まだ実行されて居ないんだし──」
「されたのよ!あの時、私は──」
私は、二人にあの鏡を突き付けた──。
そこには……一回目の私の人生が、そして彼らのやった事が、次々に映し出されて行く。
そしてそれを見た二人は、ハッと目を見開き……その顔は一気に血の気が失せ、そしてワナワナと体を震わせ……恐らく、この二人も今の自分が二回目の自分だと気付いたようだ。
でも、もう何もかもが遅い。
だって、あなたたちはもうすぐ──。
「その、鏡……私の、お兄様が磨いていた。魔石を、毎日磨いて作り上げ……あなたの、お墓に──」
そして女は、もうそれ以上何も口にしなくなり……それを見た男は、私に必死に手を伸ばしたが……私はその手を叩き落とした。
「私、あなたのような不誠実な夫は要らないの。二回目の人生は……私の事だけを思ってくれる、素敵な方と結ばれるわ──」
私の言葉に、彼は涙を流し……そして、静かに目を閉じた──。
その後、あの二人は謎の病に倒れ亡くなった事になった。
その直前、魔石がただの石ころに変わった事もあり、二人は神罰でああなったとも言われたが……真相は、私しか知らない。
いや……もう一人、居るか──。
「この鏡……ありがとうございました。」
私は、あの山の神殿を訪ねた。
やはり、そこに彼は居た。
「お礼など、俺は言って貰える立場じゃ……。俺の妹が、君に酷い事を──」
「あの子は、妹でも元は捨て子……あなたとは、血の繋がりもないじゃないですか。だから、ご自分が兄だからと気に病む必要はないんです」
「それだけじゃないんだ。俺は……一回目の人生の時、君の事が密かに好きだった。でも、気持ちを伝えられなくて……。そしたら、あの妹と君の夫により、君は命を落とす事になり……。それを知った俺は、どうか君が、今度は幸せな人生を歩めるようにと……この山の守護神に願ったんだ。すると、この石を使い鏡を作り、彼女の墓標に備えろと神託を受けた。そしてその通りにしたら、鏡から強い光が放たれ……そして俺は、一回目の人生の記憶を持ったまま、二回目の人生を歩んでいた」
そうか……私は彼のおかげで、今ここに居られるのか──。
「君が、あの男と出会わないよう、そうしてあげられれば良かったんだが──」
「いいえ……十分ですよ。あの時、思い出せただけでも良かったんです。これから先、私が幸せになれるかは……私自身が努力すべき事ですから」
私は、彼に近づき……あの要石の欠片を、その石の上に置いた。
「あの男との結婚式の際……私にこの石の欠片をくれたのは、ちゃんと意味があったんですね」
彼は、あの女と共に式に招待されていたが……その式が終わった後、私に駆け寄り、これを差し出した。
『これは、君を幸せにする石だから……どうか、持って居て欲しい──』
その真剣な眼差しに、私は断る事はせず……何か困り事が出来たらこの石にお願いしようと決め、クローゼットに隠していたのだ。
あの男が見たら、美しい石だと言って、売ってしまいそうな気がしたから──。
「思えば……その時から私は、あの人に不信感を抱いていたのかもね……」
「え……?」
「守護神様……この石はもうお返しします。私の願いを叶えて下さり、ありがとうございました。お陰様で、私の幸せは……もう、すぐ傍にありそうです」
私は、隣に立つ彼を見た。
「私は……この鏡で、これを作ったあなたの一回目の人生を見ました。あなたは私を思い、縁談を断り続けて居たのですね。そして、それは今でも──」
「俺は……昔も今も、君だけが好きなんだ。例え……三回目の人生があるとしても、俺はきっと君を愛するだろう」
彼の目は、私にあの石を渡した時と同じ、真剣な目をしていた。
この人の愛なら……私、信じられるわ。
いや……信じてみたい──。
「この鏡には、悲劇的な事ばかりしか映らなかったけれど……そうじゃなく、幸せな……輝かしい日々を映したいわ。だって……せっかくあなたが、私を想い作ってくれたのだから。だから、どうか私のこの願い、一緒に叶えて下さいませんか?」
そう言って、私は右手で鏡を抱き締め……左手を彼に伸ばした。
彼は一瞬驚いた顔をしたけれど……すぐに穏やかな笑みを浮かべ、私の左手を優しく取ると……その薬指にそっとキスを落とした──。
初夜にあの男に叩き落とされた、愛を乞うこの虚しい左手は……今は、こんなにも深い愛を与えられている。
私はその喜びに……ただうっとりと目を閉じた──。
「何!?」
「ただの……出来心だったのよ!でも、まだ実行されて居ないんだし──」
「されたのよ!あの時、私は──」
私は、二人にあの鏡を突き付けた──。
そこには……一回目の私の人生が、そして彼らのやった事が、次々に映し出されて行く。
そしてそれを見た二人は、ハッと目を見開き……その顔は一気に血の気が失せ、そしてワナワナと体を震わせ……恐らく、この二人も今の自分が二回目の自分だと気付いたようだ。
でも、もう何もかもが遅い。
だって、あなたたちはもうすぐ──。
「その、鏡……私の、お兄様が磨いていた。魔石を、毎日磨いて作り上げ……あなたの、お墓に──」
そして女は、もうそれ以上何も口にしなくなり……それを見た男は、私に必死に手を伸ばしたが……私はその手を叩き落とした。
「私、あなたのような不誠実な夫は要らないの。二回目の人生は……私の事だけを思ってくれる、素敵な方と結ばれるわ──」
私の言葉に、彼は涙を流し……そして、静かに目を閉じた──。
その後、あの二人は謎の病に倒れ亡くなった事になった。
その直前、魔石がただの石ころに変わった事もあり、二人は神罰でああなったとも言われたが……真相は、私しか知らない。
いや……もう一人、居るか──。
「この鏡……ありがとうございました。」
私は、あの山の神殿を訪ねた。
やはり、そこに彼は居た。
「お礼など、俺は言って貰える立場じゃ……。俺の妹が、君に酷い事を──」
「あの子は、妹でも元は捨て子……あなたとは、血の繋がりもないじゃないですか。だから、ご自分が兄だからと気に病む必要はないんです」
「それだけじゃないんだ。俺は……一回目の人生の時、君の事が密かに好きだった。でも、気持ちを伝えられなくて……。そしたら、あの妹と君の夫により、君は命を落とす事になり……。それを知った俺は、どうか君が、今度は幸せな人生を歩めるようにと……この山の守護神に願ったんだ。すると、この石を使い鏡を作り、彼女の墓標に備えろと神託を受けた。そしてその通りにしたら、鏡から強い光が放たれ……そして俺は、一回目の人生の記憶を持ったまま、二回目の人生を歩んでいた」
そうか……私は彼のおかげで、今ここに居られるのか──。
「君が、あの男と出会わないよう、そうしてあげられれば良かったんだが──」
「いいえ……十分ですよ。あの時、思い出せただけでも良かったんです。これから先、私が幸せになれるかは……私自身が努力すべき事ですから」
私は、彼に近づき……あの要石の欠片を、その石の上に置いた。
「あの男との結婚式の際……私にこの石の欠片をくれたのは、ちゃんと意味があったんですね」
彼は、あの女と共に式に招待されていたが……その式が終わった後、私に駆け寄り、これを差し出した。
『これは、君を幸せにする石だから……どうか、持って居て欲しい──』
その真剣な眼差しに、私は断る事はせず……何か困り事が出来たらこの石にお願いしようと決め、クローゼットに隠していたのだ。
あの男が見たら、美しい石だと言って、売ってしまいそうな気がしたから──。
「思えば……その時から私は、あの人に不信感を抱いていたのかもね……」
「え……?」
「守護神様……この石はもうお返しします。私の願いを叶えて下さり、ありがとうございました。お陰様で、私の幸せは……もう、すぐ傍にありそうです」
私は、隣に立つ彼を見た。
「私は……この鏡で、これを作ったあなたの一回目の人生を見ました。あなたは私を思い、縁談を断り続けて居たのですね。そして、それは今でも──」
「俺は……昔も今も、君だけが好きなんだ。例え……三回目の人生があるとしても、俺はきっと君を愛するだろう」
彼の目は、私にあの石を渡した時と同じ、真剣な目をしていた。
この人の愛なら……私、信じられるわ。
いや……信じてみたい──。
「この鏡には、悲劇的な事ばかりしか映らなかったけれど……そうじゃなく、幸せな……輝かしい日々を映したいわ。だって……せっかくあなたが、私を想い作ってくれたのだから。だから、どうか私のこの願い、一緒に叶えて下さいませんか?」
そう言って、私は右手で鏡を抱き締め……左手を彼に伸ばした。
彼は一瞬驚いた顔をしたけれど……すぐに穏やかな笑みを浮かべ、私の左手を優しく取ると……その薬指にそっとキスを落とした──。
初夜にあの男に叩き落とされた、愛を乞うこの虚しい左手は……今は、こんなにも深い愛を与えられている。
私はその喜びに……ただうっとりと目を閉じた──。
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