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初夜を夫に拒否された瞬間、これが二回目の人生だと気付きました──。

中編

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「前の私だったら……夫であるあなたを必死で慰め、そして事業の協力者であるあなたに、今後も彼を助けてくれるよう頭を下げたけれど……今は、ねぇ。あなた達より、あなた達に裏切られ陰で馬鹿にされて居る私の方が、余程可哀相だもの。」

 その言葉に、男は目を見開き……女は、ヒュッと息を飲んだ。



「あなた達が、私に隠れコソコソ付き合っているのは知ってるの。夜の街に出て一緒にお酒を楽しむだけでなく……もっと深い関係にある事も。あなた……初夜の事、覚えてる?私を拒否して、そのまま部屋を出て行ったじゃない」

「そ、そうだったか……?」

「そうよ。それであなた、こっそり家を抜け出し……外でこの女と密会して居た。そして、私の代わりにこの女を抱いたのよ。いえ……この女の代わりが、私だったのよね?」

「あなた、どこまで知って──」

「全部よ。あなた達は、本当は将来一緒になりたいと思ってたけれど……互いの家柄や、彼女の金遣いの荒さから、結婚は反対されてしまった。そして彼は、両親から勧められたこの私を妻に迎えたけれど……私は彼女のように美人でもなく、豊満な体でもなかった。だから、あなたは私を抱く気にもなれなかった。私の良い所は……何でも俺の言う事を素直に聞く、奴隷のような所だと、そうこの女に話してたじゃない」

 初夜の密会時に、彼がそう話し、彼女がそれを嘲笑う姿を……あの鏡はちゃんと教えてくれた。



「お、お前……変な言いがかりはよせ!」

「そうよ……彼は、とても優しい人なのに!」

 本当に優しい人が、あなたと手を組み、私を殺す訳がないじゃないの──。

 一回目の私は、あなた達に殺されたのよ。

 何が、体を元気にする御守りよ。
 あんな石、呪いじゃないの──。



「ところで……今日、魔石がただの石ころになってしまったと仰いましたよね?」

「え!?えぇ……」

「それは当然です。私が……あの地の守護神に、魔石は要らないと願いましたので──」



「ど、どういう事だ!?」

「あの山で採れる魔石は、あの地を守る守護神の神気の欠片のようなものです。守護神が、私達人間におすそ分けしてくれた貴重なそれを、不貞を働く者達の金儲けの道具にするのは忍びない……だから、もうこれ以上は必要ないと、そう願ったのです。」

「ど、どうしてあなたにそんな事出来るのよ!?」

「それは──ある方に、あの山にある守護神を祀る神殿の……要石の欠片を貰って居たから」

「何ですって!?」

「あの要石が、全ての魔石の親とも言われているのですよね?だから私は、その欠片に強く願った。そしてそれを、守護神は聞き入れて下さったという訳よ」

「全ては、お前の仕業だったのか!夫を苦しめて、一体何がしたいんだ、お前は……!」

「そうよ、この人でなし──!」

 その瞬間……二人の身体は、ガクリとその場に崩れ落ちた──。



「やっぱり……また私を殺そうとしてたんだ、あなた達は」

「また、って……?」

「一回目も、呪術師に魔石に呪いをかけて貰い……それを元気になるお守りだと言って、私に身に付けさせたじゃない。そして……最期の時には、その石を細かくした物を薬に混ぜ込み、私に飲ませ──。そして二回目も、あなた達はそれをもう用意してたのね。だから今、そんな目に遭って居るのよ──」

「用意って……俺には、何の事だか──」

 どこまでもシラを切るつもりか、この男は──。
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