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魅了の術にかけられただけと言い張る婚約者を、捨てる事にした悪の令嬢。
後編
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「ご自分があの女に本気だった事が皆に知れ渡ったら、次期王の座が危ぶまれる。あなたはそう思ったんじゃないですか?このまま、他の殿方と同じように術にかけられて居た事にしてしまえばそれで済む、とも考えたのでしょう。でも……そんなあなたの浅はかな考えなど、私はお見通しです。」
「そ、それは……」
「何年、あなたのお傍に居たと思ってるの?あの女と一緒になり、あなたに投げかけられた言葉の数々……。私、全て覚えていますからね。」
『彼女を虐めるな、嫉妬に狂った醜い女め!』
『誰がお前のような悪女、愛してなどいない!さっさと婚約破棄したいくらいだ!』
『悪女のお前など、俺の婚約者にふさわしくない……だから、弟の第二王子にくれてやろう──!』
「あれは……その場の勢いで、冗談で──!」
「魅了の術の次は、冗談だと言い張る気ですか?あなたには、ほとほと呆れました。私……あなたに言われた事を、弟君の第二王子にお話ししました。すると彼は、もしそうなるなら喜んでと、仰って下さいました。」
「何だと!?」
「そして今回の事、全て王にお話ししました。更に、学園でのあなたと彼女の様子は、私のこの指輪……魔道具にすべて記録されて居ます。これを王に見せたら、王はあなたの言動に酷く落胆なさいました。あなたには王たる器は無い……そこまで仰っていましたよ。そして、あの女はいずれ大きな罰を与えられる。そんな女と関係を持ったあなたを、決して王には出来ないと──。」
彼は、私という婚約者が居ながら……彼女と、肉体関係を結んでいたのだ──。
そして私の言葉に、彼は真っ青になり震えた。
「次期王は、あなたの弟君に……。そう、王は考えておられます。その為、あなたは今後、城の外れにある屋敷で幽閉の身になる事が決まって居ます」
「そんな……!」
「そして、そこで大人しく過ごして貰う為に……私は、貴方から魔力を消し去るよう、王に言われました」
「ま、魔力がないなど……俺は、家畜や奴隷同然ではないか!」
そうね、この世界ではそういう設定だったわよね。
だからこそ、そんな価値ある魔力を分け与えたこの悪の令嬢と第一王子は、固い絆で結ばれ、愛を育む事になったのに……。
「私も、本当はこんな事になるとは思ってなかったのよ?でも、あの子を好きになった時点で……自分も魅了の術に掛けられただけだと言い張った時点で、あなたの運命は決まってしまったの。」
私は彼に手をかざし、魔力剥奪の為の呪文を唱えた。
さようなら、私の運命の相手だった人──。
そして婚約者だった第一王子は……あの女も、次期王の座も、魔力も、私も……何もかもを失ったのだ──。
「兄は先程、あの屋敷に入りました」
「そうですか」
「俺は……初めてお会いした時から、あなたに惹かれて居たのです。だから、まさかこうして、あなたを自身の婚約者にお迎えできるなんて……」
そう言って、照れたように笑う第二王子。
彼の存在は、この世界で初めて知った。
だって彼、ゲームの中には登場して居ない人物だったから。
そんな彼は、あの兄の第一王子とは違い、穏やかで優しい方だった。
そして私は、彼には出会った時から好印象を持って居た。
「あなたは、その強大な魔力もそうだが……どこか、不思議な雰囲気を纏った人だ。あなたには、全てを見透かすような力がある気がしてならない。今回の騒動で、誰よりも落ち着き……冷静に対処して居たのはあなただけだったから」
それは私が転生者で、このゲームの製作に関わっていたからという事もあるが……それは、私の心の中に留めておくわ──。
「それを見て、あなたならきっと立派な妃になれる。この国を、いい方向へ導いてくれると思ったのです」
「そう言って頂けて、とても光栄ですが……私、そんな完璧な人間ではないわ。ですから王子……この先は、私たち二人で手を取り合い、支え合い、この国を治めて行きましょう」
私の言葉に、第二王子は頷き……私に誓いのキスを贈った──。
転生したばかりの頃は、当然第一王子と結ばれるとばかり思ってたけれど……まさか、この彼と結ばれる事になるとは。
でも今思えば、結ばれたのがこの彼で本当に良かった。
魅了の術にかけられただけと言い張る愚かな婚約者は、捨てて正解だったわね──。
「そ、それは……」
「何年、あなたのお傍に居たと思ってるの?あの女と一緒になり、あなたに投げかけられた言葉の数々……。私、全て覚えていますからね。」
『彼女を虐めるな、嫉妬に狂った醜い女め!』
『誰がお前のような悪女、愛してなどいない!さっさと婚約破棄したいくらいだ!』
『悪女のお前など、俺の婚約者にふさわしくない……だから、弟の第二王子にくれてやろう──!』
「あれは……その場の勢いで、冗談で──!」
「魅了の術の次は、冗談だと言い張る気ですか?あなたには、ほとほと呆れました。私……あなたに言われた事を、弟君の第二王子にお話ししました。すると彼は、もしそうなるなら喜んでと、仰って下さいました。」
「何だと!?」
「そして今回の事、全て王にお話ししました。更に、学園でのあなたと彼女の様子は、私のこの指輪……魔道具にすべて記録されて居ます。これを王に見せたら、王はあなたの言動に酷く落胆なさいました。あなたには王たる器は無い……そこまで仰っていましたよ。そして、あの女はいずれ大きな罰を与えられる。そんな女と関係を持ったあなたを、決して王には出来ないと──。」
彼は、私という婚約者が居ながら……彼女と、肉体関係を結んでいたのだ──。
そして私の言葉に、彼は真っ青になり震えた。
「次期王は、あなたの弟君に……。そう、王は考えておられます。その為、あなたは今後、城の外れにある屋敷で幽閉の身になる事が決まって居ます」
「そんな……!」
「そして、そこで大人しく過ごして貰う為に……私は、貴方から魔力を消し去るよう、王に言われました」
「ま、魔力がないなど……俺は、家畜や奴隷同然ではないか!」
そうね、この世界ではそういう設定だったわよね。
だからこそ、そんな価値ある魔力を分け与えたこの悪の令嬢と第一王子は、固い絆で結ばれ、愛を育む事になったのに……。
「私も、本当はこんな事になるとは思ってなかったのよ?でも、あの子を好きになった時点で……自分も魅了の術に掛けられただけだと言い張った時点で、あなたの運命は決まってしまったの。」
私は彼に手をかざし、魔力剥奪の為の呪文を唱えた。
さようなら、私の運命の相手だった人──。
そして婚約者だった第一王子は……あの女も、次期王の座も、魔力も、私も……何もかもを失ったのだ──。
「兄は先程、あの屋敷に入りました」
「そうですか」
「俺は……初めてお会いした時から、あなたに惹かれて居たのです。だから、まさかこうして、あなたを自身の婚約者にお迎えできるなんて……」
そう言って、照れたように笑う第二王子。
彼の存在は、この世界で初めて知った。
だって彼、ゲームの中には登場して居ない人物だったから。
そんな彼は、あの兄の第一王子とは違い、穏やかで優しい方だった。
そして私は、彼には出会った時から好印象を持って居た。
「あなたは、その強大な魔力もそうだが……どこか、不思議な雰囲気を纏った人だ。あなたには、全てを見透かすような力がある気がしてならない。今回の騒動で、誰よりも落ち着き……冷静に対処して居たのはあなただけだったから」
それは私が転生者で、このゲームの製作に関わっていたからという事もあるが……それは、私の心の中に留めておくわ──。
「それを見て、あなたならきっと立派な妃になれる。この国を、いい方向へ導いてくれると思ったのです」
「そう言って頂けて、とても光栄ですが……私、そんな完璧な人間ではないわ。ですから王子……この先は、私たち二人で手を取り合い、支え合い、この国を治めて行きましょう」
私の言葉に、第二王子は頷き……私に誓いのキスを贈った──。
転生したばかりの頃は、当然第一王子と結ばれるとばかり思ってたけれど……まさか、この彼と結ばれる事になるとは。
でも今思えば、結ばれたのがこの彼で本当に良かった。
魅了の術にかけられただけと言い張る愚かな婚約者は、捨てて正解だったわね──。
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