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魅了の術にかけられただけと言い張る婚約者を、捨てる事にした悪の令嬢。
前編
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いつからだろうか。
学園の殿方達が、揃って一人の女生徒に夢中になった。
彼女は平民出身だが……とても賢く、強い魔力を持って居た。
皆最初は、この学園には珍しいタイプだから殿方達の気を引いた、目に留まったのだろうと思って居たが……事態はもっと深刻だった事に、誰もが後から気付いたのだった──。
「あなたはその魔力を悪用し、彼らに魅了の術をかけていた。そして、自分の意のままに操っていたのでしょう──?」
私の追及に彼女は青ざめ、その場に崩れ落ちた。
それはそうだろう。
本来なら自分よりも魔力のない、そして皆から嫌われている悪の令嬢が、自分を断罪する立場になろうなど……そんな事、夢にも思って居なかっただろう。
「ここは、あのゲームの世界じゃないの?全て転生者のヒロインである私の、思い通りになるはずだったのに……どうして──!?」
彼女は、私にそう恨み言を言ったけれど……彼女を取り囲む兵たちは、頭のおかしい女としか思わなかったようで……彼女を取り押さえると、縄で縛り連れて行ってしまった。
魔力も奪っておいたし……もう、悪さは出来ないでしょう。
そんな事よりも──。
「本当に済まなかった……。まさか、第一王子の子の俺までもが、あんな女に魅了されてしまうとは──」
彼女に魅了の術をかけられていた男達は、皆、正気に返った。
そして、以前の生活へと戻ったのだ。
それは、私の婚約者である第一王子も同じだった──。
「君には本当に辛い思いをさせた。俺が彼女を好きだったのは、他の男同様、あくまで魅了の術に掛けられただけ。だから、君との婚約はこのまま継続しよう。君のような強い魔力を持った女性が俺の婚約者で、いずれ妃になってくれるなど、とても光栄──」
「王子……私達、婚約破棄しましょう?」
「……な、何を言い出すんだ!あれは、魅了の術のせいだと言ってるだろう!?悪女が消え、やっと俺たちの愛が取り戻せたと言うのに──」
「俺たちの、愛?そんなもの……あなたには、最初から無かったでしょう?」
私の言葉に、王子の頬にツウッと汗が伝った。
「そもそも……あなたは、彼女の魅了の術にかかるはずが無いんですよ」
「ど、どうしてそう言い切れる!」
「だってあなたには、私の強大な魔力を半分渡しているのだから。その強い魔力が、あの女の魔力を跳ね返す防護壁の役目を果たしていた。だから、あなたは彼女に魅了される事はないの」
「ど、どうしてお前が俺に魔力を……?」
「それはあなたが、王子でありながら一切の魔力を持って居なかったからです。すると王は、とてつもない魔力を持った私の存在を知り、その魔力をあなたに分け与え……そして、あなたの婚約者にあてがう事にしたのです。あなたは王によって記憶を改変されてますから、覚えてないでしょうが」
そしてこれは、悪の令嬢が唯一幸せになれるルートだった。
ここは、あの女が言って居たように、とある恋愛ゲームの世界だ。
そして私は、このゲームの製作に携わっていた。
そのゲームの中に出てくるいわゆる悪役令嬢が、余りに悲惨な末路ばかり迎えるので……ある時私は、彼女が婚約者である第一王子と結ばれるルートを考え出してみたのだ。
そしてそれを形にしていた途中で、私は事故で死んだ──。
そして目が覚めた時、私は自身が創り上げていたルートの悪役令嬢に転生をして居たのだ。
それは彼に、魔力を分け与えている時点で唐突に発覚したのだが──。
だから……あの女が言って居たゲームの世界というのは、あながち間違いではない。
ただ、まさかヒロインの彼女まで転生者だとは思わなかったけれど。
でも本当のヒロインなら、魔力を使って男どもを魅了したりしないわね……。
とまぁそういう事なので、ここは私と婚約者である第一王子が結ばれる世界だったんだけど……あの女の参戦で、それが狂ってしまったみたい。
しかしそれで良かったわね。
だって……本当は心からあの女を愛していた癖に、彼女が悪女だと発覚した途端、手のひらを返し私に靡いて来る男など……私は、とても信用できない。
とても、好きになどなれないわ──。
学園の殿方達が、揃って一人の女生徒に夢中になった。
彼女は平民出身だが……とても賢く、強い魔力を持って居た。
皆最初は、この学園には珍しいタイプだから殿方達の気を引いた、目に留まったのだろうと思って居たが……事態はもっと深刻だった事に、誰もが後から気付いたのだった──。
「あなたはその魔力を悪用し、彼らに魅了の術をかけていた。そして、自分の意のままに操っていたのでしょう──?」
私の追及に彼女は青ざめ、その場に崩れ落ちた。
それはそうだろう。
本来なら自分よりも魔力のない、そして皆から嫌われている悪の令嬢が、自分を断罪する立場になろうなど……そんな事、夢にも思って居なかっただろう。
「ここは、あのゲームの世界じゃないの?全て転生者のヒロインである私の、思い通りになるはずだったのに……どうして──!?」
彼女は、私にそう恨み言を言ったけれど……彼女を取り囲む兵たちは、頭のおかしい女としか思わなかったようで……彼女を取り押さえると、縄で縛り連れて行ってしまった。
魔力も奪っておいたし……もう、悪さは出来ないでしょう。
そんな事よりも──。
「本当に済まなかった……。まさか、第一王子の子の俺までもが、あんな女に魅了されてしまうとは──」
彼女に魅了の術をかけられていた男達は、皆、正気に返った。
そして、以前の生活へと戻ったのだ。
それは、私の婚約者である第一王子も同じだった──。
「君には本当に辛い思いをさせた。俺が彼女を好きだったのは、他の男同様、あくまで魅了の術に掛けられただけ。だから、君との婚約はこのまま継続しよう。君のような強い魔力を持った女性が俺の婚約者で、いずれ妃になってくれるなど、とても光栄──」
「王子……私達、婚約破棄しましょう?」
「……な、何を言い出すんだ!あれは、魅了の術のせいだと言ってるだろう!?悪女が消え、やっと俺たちの愛が取り戻せたと言うのに──」
「俺たちの、愛?そんなもの……あなたには、最初から無かったでしょう?」
私の言葉に、王子の頬にツウッと汗が伝った。
「そもそも……あなたは、彼女の魅了の術にかかるはずが無いんですよ」
「ど、どうしてそう言い切れる!」
「だってあなたには、私の強大な魔力を半分渡しているのだから。その強い魔力が、あの女の魔力を跳ね返す防護壁の役目を果たしていた。だから、あなたは彼女に魅了される事はないの」
「ど、どうしてお前が俺に魔力を……?」
「それはあなたが、王子でありながら一切の魔力を持って居なかったからです。すると王は、とてつもない魔力を持った私の存在を知り、その魔力をあなたに分け与え……そして、あなたの婚約者にあてがう事にしたのです。あなたは王によって記憶を改変されてますから、覚えてないでしょうが」
そしてこれは、悪の令嬢が唯一幸せになれるルートだった。
ここは、あの女が言って居たように、とある恋愛ゲームの世界だ。
そして私は、このゲームの製作に携わっていた。
そのゲームの中に出てくるいわゆる悪役令嬢が、余りに悲惨な末路ばかり迎えるので……ある時私は、彼女が婚約者である第一王子と結ばれるルートを考え出してみたのだ。
そしてそれを形にしていた途中で、私は事故で死んだ──。
そして目が覚めた時、私は自身が創り上げていたルートの悪役令嬢に転生をして居たのだ。
それは彼に、魔力を分け与えている時点で唐突に発覚したのだが──。
だから……あの女が言って居たゲームの世界というのは、あながち間違いではない。
ただ、まさかヒロインの彼女まで転生者だとは思わなかったけれど。
でも本当のヒロインなら、魔力を使って男どもを魅了したりしないわね……。
とまぁそういう事なので、ここは私と婚約者である第一王子が結ばれる世界だったんだけど……あの女の参戦で、それが狂ってしまったみたい。
しかしそれで良かったわね。
だって……本当は心からあの女を愛していた癖に、彼女が悪女だと発覚した途端、手のひらを返し私に靡いて来る男など……私は、とても信用できない。
とても、好きになどなれないわ──。
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