8 / 24
王族の娘に見初められた事で、聖女の私を捨ててしまった婚約者の憐れな末路──。
1話完結
しおりを挟む
ある日突然、婚約者から別れを切り出された私。
その理由を問いただせば、ある王族の娘に見初められたからだと彼は言う。
「この前のパーティーで、俺は彼女と運命的な出会いを果たしたんだ」
確かに、彼は一人の娘とやけに親しげに話をしていたわね……。
「彼女と一緒になれば、俺も王族の仲間入りだ。王族になればさぞやいい暮らしができるだろう。聖女のお前も悪くないが……王族と結婚できるとなったらお前などもう要らない!」
「……分かりました。あなたがそこまで言うなら、別れを受け入れます」
欲に目が眩んで……愚かな男ね。
だってあの娘は、私がこの前──。
「私たち、これで一緒になれますね!」
「ああ、あいつがあっさり別れてくれて良かったよ」
あれから俺は、すぐに彼女の屋敷に向かい……そこで、一緒に暮らしている。
しかし……彼女が今住む屋敷は、王族の屋敷とはとても呼べない小さなものだ。
いくら彼女が末の第三王女とはいえ、こんな屋敷に住まわされるのは不憫だ。
何より俺自身が、もっと豪華な屋敷に住みたいと言うのが本音だ。
正式に婚約が決まったら、もっと豪華な屋敷に移る事が出来る、そう彼女は言ってくれたが──。
「君と結ばれる前に、一度君のお父上……国王様にもお目通りしなければならないな。いつ城へ招待してくれるんだ?」
「父は……もうすぐこの屋敷を訪ねて来て下さいますので、その時に」
何だ、城には行けないのか。
まぁ、この屋敷でも構わないが……少し残念だな。
そして、国王と会う約束の日がやって来たのだが──。
「な、何でお前まで居るんだ!?ここは俺と彼女が住む王族の屋敷だ、王族でもない者が入って来るな!」
国王の隣には、俺が捨てた元婚約者の聖女が居た。
「この者には、私が頼み付いて来て貰ったのだ。それで……第三王女が愛した男というのはお前か」
「は、はい!あるパーティー会場で、俺たちは出会い──」
すると俺の言葉に、王は溜息をついた。
な、何だ……?
「お前は……この屋敷に幽閉されている身分でありながら、呑気にパーティーに参加したのか?」
「ゆ、幽閉って……!?」
「彼女は隣国の姫の美貌に嫉妬し、その姫を呪い殺そうとした恐ろしい姫です。そのせいで罰を受け、この屋敷に幽閉の身となって居た。でも、見張りの目を盗みパーティーに参加し……そこであなたを見初めたのよ。あの時、加護の無い怪しい娘がパーティーに居るのを不審に思ったのですが……まさか姫様だったとは」
「加護が無い?この国の者は、皆加護があって当然じゃ……?」
「国王様に頼まれ、私が外したのです。」
「罪人に加護は必要ないからな。そして……罪人の相手となったお前にも加護は必要ない。お前はこの先この姫と共に、一生この屋敷で幽閉されるのだから。姫が言ったんだ……お前が傍に居てくれるなら、もう二度とここから出ないと」
「えぇ!?」
「私が連れて来られたのは、あなたの加護を外す為です」
「ちょっと待て!俺は彼女に騙されたようなもので……だから加護を外すのは──」
「あなたはそうされて当然の人物よ。この姫だけじゃなくて、あなたはパーティーに参加する度、自分の好みの娘と熱い一夜を過ごしてきた。私は聖女ですから何もかもお見通しなのです。実は私は、近くあなたと婚約破棄する予定でした。その前にあなたがこの姫と関係を持ち、私の元から去って行きましたが」
「さて、私は王の仕事が忙しいから早く城に戻らねば。そろそろ、この者の加護を外してくれ」
「や、辞めてくれ──!」
必死の抵抗虚しく、彼は加護を外された。
この国では、加護の無い者は人にあらず。
奴隷や家畜以下の扱い使いを受けるから……ある意味、その屋敷でその姫と共に閉じ込められていた方が今のあなたには幸せよ?
それに罪人の姫の結婚相手とはいえ、王族の歴史に名を刻む事が出来たんだから光栄に思わないと。
そして私はというと……王の前で聖女としての力を披露した事で、その力が改めて認められ、城付きの聖女に任命された。
すると、城を護る騎士団の団長と深い仲になり……近く婚約する事に──。
彼はとても真面目で一途な方で、私だけを愛してくれる。
あの男が、悪の姫に見初められ本当に良かった。
だってそうじゃなかったら、私は彼と出会う事は無かったもの……。
もう二度と会う事もない男に、私は心の中で感謝した──。
その理由を問いただせば、ある王族の娘に見初められたからだと彼は言う。
「この前のパーティーで、俺は彼女と運命的な出会いを果たしたんだ」
確かに、彼は一人の娘とやけに親しげに話をしていたわね……。
「彼女と一緒になれば、俺も王族の仲間入りだ。王族になればさぞやいい暮らしができるだろう。聖女のお前も悪くないが……王族と結婚できるとなったらお前などもう要らない!」
「……分かりました。あなたがそこまで言うなら、別れを受け入れます」
欲に目が眩んで……愚かな男ね。
だってあの娘は、私がこの前──。
「私たち、これで一緒になれますね!」
「ああ、あいつがあっさり別れてくれて良かったよ」
あれから俺は、すぐに彼女の屋敷に向かい……そこで、一緒に暮らしている。
しかし……彼女が今住む屋敷は、王族の屋敷とはとても呼べない小さなものだ。
いくら彼女が末の第三王女とはいえ、こんな屋敷に住まわされるのは不憫だ。
何より俺自身が、もっと豪華な屋敷に住みたいと言うのが本音だ。
正式に婚約が決まったら、もっと豪華な屋敷に移る事が出来る、そう彼女は言ってくれたが──。
「君と結ばれる前に、一度君のお父上……国王様にもお目通りしなければならないな。いつ城へ招待してくれるんだ?」
「父は……もうすぐこの屋敷を訪ねて来て下さいますので、その時に」
何だ、城には行けないのか。
まぁ、この屋敷でも構わないが……少し残念だな。
そして、国王と会う約束の日がやって来たのだが──。
「な、何でお前まで居るんだ!?ここは俺と彼女が住む王族の屋敷だ、王族でもない者が入って来るな!」
国王の隣には、俺が捨てた元婚約者の聖女が居た。
「この者には、私が頼み付いて来て貰ったのだ。それで……第三王女が愛した男というのはお前か」
「は、はい!あるパーティー会場で、俺たちは出会い──」
すると俺の言葉に、王は溜息をついた。
な、何だ……?
「お前は……この屋敷に幽閉されている身分でありながら、呑気にパーティーに参加したのか?」
「ゆ、幽閉って……!?」
「彼女は隣国の姫の美貌に嫉妬し、その姫を呪い殺そうとした恐ろしい姫です。そのせいで罰を受け、この屋敷に幽閉の身となって居た。でも、見張りの目を盗みパーティーに参加し……そこであなたを見初めたのよ。あの時、加護の無い怪しい娘がパーティーに居るのを不審に思ったのですが……まさか姫様だったとは」
「加護が無い?この国の者は、皆加護があって当然じゃ……?」
「国王様に頼まれ、私が外したのです。」
「罪人に加護は必要ないからな。そして……罪人の相手となったお前にも加護は必要ない。お前はこの先この姫と共に、一生この屋敷で幽閉されるのだから。姫が言ったんだ……お前が傍に居てくれるなら、もう二度とここから出ないと」
「えぇ!?」
「私が連れて来られたのは、あなたの加護を外す為です」
「ちょっと待て!俺は彼女に騙されたようなもので……だから加護を外すのは──」
「あなたはそうされて当然の人物よ。この姫だけじゃなくて、あなたはパーティーに参加する度、自分の好みの娘と熱い一夜を過ごしてきた。私は聖女ですから何もかもお見通しなのです。実は私は、近くあなたと婚約破棄する予定でした。その前にあなたがこの姫と関係を持ち、私の元から去って行きましたが」
「さて、私は王の仕事が忙しいから早く城に戻らねば。そろそろ、この者の加護を外してくれ」
「や、辞めてくれ──!」
必死の抵抗虚しく、彼は加護を外された。
この国では、加護の無い者は人にあらず。
奴隷や家畜以下の扱い使いを受けるから……ある意味、その屋敷でその姫と共に閉じ込められていた方が今のあなたには幸せよ?
それに罪人の姫の結婚相手とはいえ、王族の歴史に名を刻む事が出来たんだから光栄に思わないと。
そして私はというと……王の前で聖女としての力を披露した事で、その力が改めて認められ、城付きの聖女に任命された。
すると、城を護る騎士団の団長と深い仲になり……近く婚約する事に──。
彼はとても真面目で一途な方で、私だけを愛してくれる。
あの男が、悪の姫に見初められ本当に良かった。
だってそうじゃなかったら、私は彼と出会う事は無かったもの……。
もう二度と会う事もない男に、私は心の中で感謝した──。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
65
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる