失恋した上に嫌われ、死んでしまった俺は…目が覚めたら彼に愛される世界に居た。

櫻坂 真紀

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「リョウとシンが恋人同士って……現実とは違うね。」

「ユキ……そんな顔するな。これはドラマなんだからさ。」

 打ち合わせの後、ユキは元気が無いようで……リョウがそれをなぐさめていた。

「あくまで仕事だ。シンはただの幼馴染だから……な?シン。」

「……うん。ユキも…リョウと付き合っても仕事に私情を挟むような事はしない、そう言ってただろう?」

「そう、だね。」

 ユキにそう言ったとはいえ……いざ撮影が始まれば、俺の心臓はドキドキしっぱなしだった。

 演技とはいえ、ユキに見せるような甘い笑顔を、リョウが俺に見せてくれる。
 俺から触れても、嫌がらずにその手を握り返してくれる。
 
 隣に居る事が当然で、求めて貰えるのも当然で……あぁ、何て幸せなんだろうか。

 どんな仕事も大事にしなきゃだけど……この仕事が、今までで一番幸せだった。

 でもそれも、ユキが登場してくるまでだったけどね──。

 リョウは一段と演技に身が入る様になり…それは製作者や視聴者にも、何となく伝わったのだろう。
 
 ドラマの撮影が中盤まで差し掛かる頃には、リョウとユキが結ばれて欲しいという声が六割、リョウと俺が結ばれて欲しいという声が四割……という結果となった。

「このまま行ったら、俺とリョウがくっつくね。現実と同じになりそう!」

「次の台本が上がったら、ハッキリ分かるだろうな。あ……これ、俺たちも投票できるみたいだな?」

「そんなの……勿論、リョウは俺を望むよね?」

 二人の会話をそこまで聞いていた俺は、リョウの答えを聞く事なく楽屋を出た。

 ユキを選ぶって分かってるけど……あえてその言葉を聞く程、俺は図太い神経を持ってない──。

※※※

 それからしばらくして、俺はユキに話があると呼び出された。

「シン……シンって、リョウの事が好きだよね?」

 突然の言葉に、俺は驚きで心臓が口から飛び出るかと思った。

「リョウは気付いて無いけど……俺は分かってるよ。それでね、シン。今度のドラマのラストに関して、不正をしてるでしょう?」

「俺が……?」

「自分のファンの子たちを使って、自分とリョウが恋人同士で最終回を迎えられるように投票して貰ってるんだって?それってズルくない?」

 ユキの言葉に、俺は頭が真っ白になった。

 勿論俺は、そんな事一切してない。

 SNSを使って呼びかけとか、握手会の時に話したりとか……そうお願い出来る機会はあっても、決してそんな事を実行した覚えはない。

「俺のファンの子が教えてくれたよ?シンは、途中加入した俺が嫌いで、嫌がらせの為にやってるんだって。」

 そうか……俺たちのファンの中には、ユキは好きだけど俺は嫌いだと言う子も居て……もしかしたら、そういうファンが俺をおとしいれる為にそう言った、とか──?

 俺は誤解だとユキに説明しようとしたが、それが出来なかった。

 なぜなら……怒った様子で近づいて来るリョウに気付いたからだ──。
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