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本編
7 目覚め
しおりを挟む残されたアルヴィンは再び奴隷に視線を戻した。鮮血の様な髪に指を絡める。
治癒石は髪にまで影響したのか絹糸のような滑らかな感触がアルヴィンに伝わった。赤い発色も艶かしく、より輝かしくなったようだった。
そうやって自身が手に入れた奴隷の感触を楽しんでいると、閉ざされたままだった目蓋が震え出した。
「あ…」
「ん…ぅ…」
何度か瞬きをして、ゆっくりと目蓋が上がっていく。アルヴィンがもう一度見たいと望んだ黄金の瞳がどこかぼんやりと見上げてきた。
そのあまりの美しさにアルヴィンの口から溜息が出た。
魅入られたように固まるアルヴィンに、男が口を開いて声を発した。
「ああ、なんて…」
長い時間声を発してなかったせいか掠れた声は何を言っているのか聞き取れず、アルヴィンは近くに膝をついた。
「…どうした?何を言った?」
「………なんて、…おいしそうなんだ」
「へ?」
予想外の言葉に驚いていると奴隷の腕が伸びてきて素早くアルヴィンの手を掴んだ。先程まで死にかけていたとは思えない程の力だった。
「な!?あっ!?」
そのまま強く腕を引かれて男の口が大きく開き、犬歯がアルヴィンの腕に突き刺さろうとした瞬間。
バチンッ!と大きな音が響き、男の顔面が弾かれた。
「がぁっ!?」
「くっ…わ!?」
男は顔を押さえて苦しみもがいている。アルヴィンには何が起きたのかまったく理解できなかった。
噛みつかれそうだった腕を身体に引き寄せ男と距離を取る。今更ながら恐怖と困惑が湧いてきていた。
「うっ…ぐぅっ!がっはっ…!…なんだ?…何かに守られている…?それに首の後ろが…?これは、隷属紋か…。あは、あははっ!……二重に守られているとは随分と…。あははははは、はは…は…あ……。あ?……!?……う、うわあぁぁぁぁっ!?…お、俺は…!?どうして…!?」
楽しそうに笑っていたかと思うと男の顔は急に強張り、顔色を青褪めさせている。
「……なんなんだ…?」
あまりの様変わりに呆然とアルヴィンは見守るしかなかった。男は上体をぎこちなく起こし、キョロキョロと辺りを見回し、何かに怯え出した。
「お、俺はなんで生きて…?いや…、オレは…おれは…誰だ?…な、なんだ?ここはどこだ?…あ、あなたは…誰、ですか?」
「……お前を購入した、主人だよ」
「こうにゅう?しゅじん?…は、あ、ご、ご主人様…?」
「そうだ。お前のご主人様だ」
「は….、…。では、おれは誰で…なんなんでしょうか?」
アルヴィンは、それはこっちが聞きたい。と思った。
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