9 / 52
本編
9 贈り物
しおりを挟む「調子はどうだ?」
「はい、とてもよいです。…こんなにも手厚くして頂いて申し訳ないです」
「いい。気にするな。俺が購入したんだ。自分の持ち物は大事にしたい。もう少し動けるようになったら馬車馬のようにこき使うからな。覚悟しておけ」
「はい、…お役に立てるように頑張ります。ご主人様」
そう言ってはにかんで笑う男の髪をアルヴィンは撫でた。
男が目を覚ましてから数日が経っていた。死にかけていたとは思えないほど男の状態は素早く回復していた。
流石に初日に「何か食べられそうな物はありますか?」とセレスが聞いた時に「肉…」と答えた事には驚いたが。
そうしてアルヴィンが狩ってきた肉をモリモリ食べたおかげか、痩せ細っていた体躯はみるみるうちに張りを取り戻した。
「凄いな。治癒石のおかげかな?」
「ふふ、ポール様に沢山お礼をしなければいけませんね」
当初は、ぼろ雑巾のような奴隷を買ってきた事に憤慨していたセレスも、男が回復していくにつれて考えを改めたらしい。
「存外、良い買い物だったかもしれませんね。彼、手先も器用ですし。力もありそうですし。なにより助けて下さったアルヴィン様を慕っていますから」
「そうか」
「性格も穏やかで…。まだまだ覚えて貰わないといけない事柄は沢山有りますけどね。でも、安心してお屋敷のことを任せられそうです。…あとは、左脚の問題だけですね」
「それならもう準備しているよ」
そうしてアルヴィンは購入当初から作製していたそれを男の元に持ってきたのだった。
「…これは?」
「義足だ。簡単な物だけれど。もう少しマシな物は今鍛治師に頼んでいるから、しばらくは俺の手作りで我慢してくれ」
「え!?これはご主人様の手作りなのですか!?」
そう言う奴隷の手元には皮袋に杖の先を取り付けたような形の義足があった。
「お前が寝ている時に作っていたんだ。紐である程度調整出来るようにしたから、少し着けてみてくれ」
「う、嬉しいです…!こんな素敵な物を頂けるなんて…。しかもご主人様の手作り!」
「いいから。装着して歩いてみてくれ」
「はいっ!」
元気よく返事をした男は靴紐のようになっている義足を素早く締めて、立ち上がった。
「わっ…。これなら杖がなくても立ち上がれます…っ!ありがとうございますっご主人様!」
「ふふ、良かったな」
カツカツと音を鳴らしながら歩き回る男にアルヴィンは微笑ましくなった。
「関節部分が残っていたのは不幸中の幸いだ。そこがあるかないかだけで随分と動きが変わるから」
「そうですね。飛び上がったりも出来ますよ!」
ピョコピョコと飛び跳ねて近づいてきた頭一つ分背の高い男の頭をアルヴィンは手を伸ばして撫でてやった。
「あは」
「よしよし」
「…ご主人様、差し出がましいですが、俺にはもう一つ欲しいものがあるのです」
「なんだ?」
すると男は跪き、その美しい金眼でアルヴィンを見上げた。
「…名前が、欲しいのです」
「名前?」
「はい、過去の物はどうやっても思い出せないので…。新しい、…俺だけの、名をつけて頂きたいのです。…ご主人様に。…アルヴィン様に」
怪しく濡れ輝くその金眼に魅入られながら、アルヴィンは考える。
「そうだな…。赤い色を"レェドゥ"と呼ぶ。…お前の美しい髪色から"レェドゥ"…レド、なんてどうだろうか?」
「"レェドゥ"、レド。…それがご主人様がつけてくれた俺の名前…」
奴隷…レドは感動で身を震わせた。
「ああ、とても素敵な響きです。レド、レド…。嬉しいです。ご主人様が俺に付けてくれた名前…。ありがとうございます…」
アルヴィンは恍惚とした表情で見上げてくる可愛い奴隷の頭を撫でた。
20
あなたにおすすめの小説
【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった
cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。
一途なシオンと、皇帝のお話。
※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
悪役令嬢の兄、閨の講義をする。
猫宮乾
BL
ある日前世の記憶がよみがえり、自分が悪役令嬢の兄だと気づいた僕(フェルナ)。断罪してくる王太子にはなるべく近づかないで過ごすと決め、万が一に備えて語学の勉強に励んでいたら、ある日閨の講義を頼まれる。
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
悪役神官の俺が騎士団長に囚われるまで
二三@冷酷公爵発売中
BL
国教会の主教であるイヴォンは、ここが前世のBLゲームの世界だと気づいた。ゲームの内容は、浄化の力を持つ主人公が騎士団と共に国を旅し、魔物討伐をしながら攻略対象者と愛を深めていくというもの。自分は悪役神官であり、主人公が誰とも結ばれないノーマルルートを辿る場合に限り、破滅の道を逃れられる。そのためイヴォンは旅に同行し、主人公の恋路の邪魔を画策をする。以前からイヴォンを嫌っている団長も攻略対象者であり、気が進まないものの団長とも関わっていくうちに…。
【Amazonベストセラー入りしました】僕の処刑はいつですか?欲しがり義弟に王位を追われ身代わりの花嫁になったら溺愛王が待っていました。
美咲アリス
BL
「国王陛下!僕は偽者の花嫁です!どうぞ、どうぞ僕を、処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(笑)」意地悪な義母の策略で義弟の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王子のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯?(Amazonベストセラー入りしました。1位。1/24,2024)
異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる
ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。
アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。
異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。
【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。
αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。
負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。
「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。
庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。
※Rシーンには♡マークをつけます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる