ウチのメイドがお嫁に出るので、没落貴族の俺が死にかけ奴隷を購入したら記憶喪失でなんだか様子がおかしくて…?

蔓巍ゆんた

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本編

9 贈り物

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「調子はどうだ?」
「はい、とてもよいです。…こんなにも手厚くして頂いて申し訳ないです」
「いい。気にするな。俺が購入したんだ。自分の持ち物は大事にしたい。もう少し動けるようになったら馬車馬のようにこき使うからな。覚悟しておけ」
「はい、…お役に立てるように頑張ります。ご主人様」

 そう言ってはにかんで笑う男の髪をアルヴィンは撫でた。

 男が目を覚ましてから数日が経っていた。死にかけていたとは思えないほど男の状態は素早く回復していた。
 流石に初日に「何か食べられそうな物はありますか?」とセレスが聞いた時に「肉…」と答えた事には驚いたが。
 そうしてアルヴィンが狩ってきた肉をモリモリ食べたおかげか、痩せ細っていた体躯はみるみるうちに張りを取り戻した。

「凄いな。治癒石のおかげかな?」
「ふふ、ポール様に沢山お礼をしなければいけませんね」

 当初は、ぼろ雑巾のような奴隷を買ってきた事に憤慨していたセレスも、男が回復していくにつれて考えを改めたらしい。

「存外、良い買い物だったかもしれませんね。彼、手先も器用ですし。力もありそうですし。なにより助けて下さったアルヴィン様を慕っていますから」
「そうか」
「性格も穏やかで…。まだまだ覚えて貰わないといけない事柄は沢山有りますけどね。でも、安心してお屋敷のことを任せられそうです。…あとは、左脚の問題だけですね」
「それならもう準備しているよ」

 そうしてアルヴィンは購入当初から作製していたを男の元に持ってきたのだった。

「…これは?」
「義足だ。簡単な物だけれど。もう少しマシな物は今鍛治師に頼んでいるから、しばらくは俺の手作りで我慢してくれ」
「え!?これはご主人様の手作りなのですか!?」

 そう言う奴隷の手元には皮袋に杖の先を取り付けたような形の義足があった。

「お前が寝ている時に作っていたんだ。紐である程度調整出来るようにしたから、少し着けてみてくれ」
「う、嬉しいです…!こんな素敵な物を頂けるなんて…。しかもご主人様の手作り!」
「いいから。装着して歩いてみてくれ」
「はいっ!」

 元気よく返事をした男は靴紐のようになっている義足を素早く締めて、立ち上がった。

「わっ…。これなら杖がなくても立ち上がれます…っ!ありがとうございますっご主人様!」
「ふふ、良かったな」

 カツカツと音を鳴らしながら歩き回る男にアルヴィンは微笑ましくなった。

「関節部分が残っていたのは不幸中の幸いだ。そこがあるかないかだけで随分と動きが変わるから」
「そうですね。飛び上がったりも出来ますよ!」

 ピョコピョコと飛び跳ねて近づいてきた頭一つ分背の高い男の頭をアルヴィンは手を伸ばして撫でてやった。

「あは」
「よしよし」
「…ご主人様、差し出がましいですが、俺にはもう一つ欲しいものがあるのです」
「なんだ?」

 すると男は跪き、その美しい金眼でアルヴィンを見上げた。

「…名前が、欲しいのです」
「名前?」
「はい、過去の物はどうやっても思い出せないので…。新しい、…俺だけの、名をつけて頂きたいのです。…ご主人様に。…アルヴィン様に」

 怪しく濡れ輝くその金眼に魅入られながら、アルヴィンは考える。

「そうだな…。赤い色を"レェドゥ"と呼ぶ。…お前の美しい髪色から"レェドゥ"…レド、なんてどうだろうか?」
「"レェドゥ"、レド。…それがご主人様がつけてくれた俺の名前…」

 奴隷…レドは感動で身を震わせた。

「ああ、とても素敵な響きです。レド、レド…。嬉しいです。ご主人様が俺に付けてくれた名前…。ありがとうございます…」

 アルヴィンは恍惚とした表情で見上げてくる可愛い奴隷の頭を撫でた。

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