ウチのメイドがお嫁に出るので、没落貴族の俺が死にかけ奴隷を購入したら記憶喪失でなんだか様子がおかしくて…?

蔓巍ゆんた

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本編

21 待ち侘びていた事

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 大きな事件もなく日々は過ぎ去っていく。

 新しい義足を手に入れたレドだったが、普段使いはアルヴィンが作った物を履いて過ごしている。
 木製の義足をコツ、コツと鳴らしながらレドが執務室に入ってきた。

「ご主人様、こちらが届いておりました」
「ん…ああ、セレスからか」

 表情にこそ出さないがアルヴィンが乳姉弟ちきょうだいからの手紙をとても喜んでいるのが分かった。
 さっそく封を切ると手紙を開いた。

「ハハ、レド。無事に出産が終わったそうだ。男の子だとさ。…祝いの品を考えなくては」
「あは。おめでとうございます。ご主人様。ひと安心ですね」
「そうだな。母子共に健康だそうだ」

 いそいそとアルヴィンはセレスからの手紙を大事そうに仕舞うと、返信をしたためるために用紙を取り出した。
 その時に指先が紙の縁に擦れ、小さな切り傷をつくった。

「…っ!……紙で指を切った…」
「………」

 意外と傷が深かったのか、指先に血が盛り上がり、下へと伝っていく。
 それをどうしようかアルヴィンが悩んでいると隣からレドの腕が伸びてきて掴まれた。
 腕を掴まれた事に驚いて、思わずその顔を見上げると興奮し輝きを増す瞳がアルヴィンの指先を凝視していた。

「…レド?」
「あは…。…はぁはぁ…い、いい匂い…おいしそう…あぁ、もったいないです…」

 レドはアルヴィンの傍に座り込むと躊躇いもせず指先を咥えた。

「レ、レド!?」
「ん、ふふ…おいひぃ…おいしい、です…ごしゅじんさまぁ」

 ヌルヌルと熱く湿った感触がアルヴィンの指先に伝わる。傷口から溢れる血液をこそげ取るように舌が絡み、もっともっと、と吸い付いた。
 その感触はアルヴィンに何か怪しい物を感じさせた。背筋にゾクリッとしたものが走る。

「んっ…あっ…!レ、レド!コラ!やめろっ」

 アルヴィンはレドの赤毛を掴み、無理矢理指を引き抜いた。

「…んあ…もう出なくなっちゃいました…もっと、欲しいです…」

「………」

「………は!?…ご、ご主人様!?とんだ無礼を申し訳ありませんっ!」

 恍惚とした表情だったレドは我に返り平謝りをした。
 アルヴィンは指先に感じた怪しい気分を拭うようにレドの服で指をふいた。

「…いい。仕事に戻りなさい」
「はい、ご主人様…」

 反省の色を見せながらレドは静かに執務室を後にした。

 扉を閉めてレドは喜びを隠せなくなった。

「あは。聖女の加護が完全に消えました。…ああ、美味しかったなぁ…。もっと…もっと欲しい…。ご主人様ぁ…」

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