22 / 52
本編
22 つまみ食い
しおりを挟む
早朝の澄んだ空気の中、アルヴィンとレドは共に駆ける。
同じ場所から同時に走り出し、目印の木までどちらが速いか競い合っていた。
レドの金属の義足は地を弾き、その身体を押し出していく。ハンデを感じさせないそのスピードにアルヴィンは舌を巻いた。
しかし、長年鍛え続け"黒い稲妻"などと言う二つ名を冠するだけに負けてなるものかとアルヴィンは意地になった。
2人の距離は殆ど拮抗している。
だが、ほんの僅かにアルヴィンが前に出た。
(いける!俺の勝ちだ!)
目前の大木に手を伸ばす。アルヴィンが勝利を確信した瞬間だった。
レドは義足側に大きく体重を乗せ、そのバネの力で飛び出した。
身長差からくるリーチの長さで指先1本分、僅差でレドが速く木に触れた。
「やっ…!…!?うわっ…!…ぐっ!いだっ…」
しかし、あまりにも勢いよく飛び出した為、立ち止まれずにレドはそのまま大木に顔面をぶつけた。痛みにしゃがみ込むレドを見てアルヴィンは悔しさよりも先に自然と笑ってしまった。
「ハハハ!何をしているんだ、レド。軽く触れるだけで良かったんだぞ?」
意地悪く揶揄うアルヴィンにそれでもレドは喜びを隠せない顔をして、主人に抱きついた。
「やりました!俺の勝ちですねっ、ご主人様!」
「ふふ…、分かったから…そうはしゃぐな」
最近のレドは異様に距離が近い。それもその筈で、同じ寝台で寝起きし、共に訓練を行い食事する。
アルヴィンが仕事で外出する以外のほとんどの時間をレドと過ごしていた。
主人と奴隷という身分差など関係なしに、隙あらば身を寄せ、抱きつき、そして…。
「ご主人様ぁ…」
「あっ…。こら、レド…」
ベロォ…と、レドの舌がアルヴィンの首筋の汗を舐め取った。滑るそれは動いた所為かとても熱かった。
「ご主人様…ご主人様……おいし…」
「ふっ…んっ…くっ………やめろ、レド」
「…………はい、申し訳ありません…」
レロ…ベロ…チュ…と好き勝手に舐め回していたレドが耳の裏側を舐め出した所でアルヴィンは静止した。
不思議なほど不快感はなく大型の獣に懐かれている感覚だったが、流石に快感の片鱗が見えるとレドの行動を止めるのだった。
レドはどんな時も「やめろ」と軽く静止するだけで行いを止めた。
それが良い事なのか、悪い事なのかアルヴィンには断言できなかった。
「…軽く水浴びをし、仕事に出かける」
「…はい、では朝食の準備をしてお待ちしております」
口の中の味の余韻を楽しんでいたレドはアルヴィンのその言葉に雰囲気を落とした。
少しでも主人の側から離れるのが嫌だったのだ。
そんなレドの様子を見てアルヴィンはふと思いついた事をポツリと呟いた。
「…いつか」
「?」
「…いつか使用人を増やして、一緒にギルド依頼に出掛けようか」
「良いのですか…?」
その言葉にレドは喜びつつも自分以外の人物が屋敷内を活歩することを想像して少し不愉快になった。
「お前の才能を此処で腐らせてしまうのは、勿体無いからな」
「あは!とっても楽しみです!」
それでも主人が自身の動きを認めている事を素直に喜んだ。
同じ場所から同時に走り出し、目印の木までどちらが速いか競い合っていた。
レドの金属の義足は地を弾き、その身体を押し出していく。ハンデを感じさせないそのスピードにアルヴィンは舌を巻いた。
しかし、長年鍛え続け"黒い稲妻"などと言う二つ名を冠するだけに負けてなるものかとアルヴィンは意地になった。
2人の距離は殆ど拮抗している。
だが、ほんの僅かにアルヴィンが前に出た。
(いける!俺の勝ちだ!)
目前の大木に手を伸ばす。アルヴィンが勝利を確信した瞬間だった。
レドは義足側に大きく体重を乗せ、そのバネの力で飛び出した。
身長差からくるリーチの長さで指先1本分、僅差でレドが速く木に触れた。
「やっ…!…!?うわっ…!…ぐっ!いだっ…」
しかし、あまりにも勢いよく飛び出した為、立ち止まれずにレドはそのまま大木に顔面をぶつけた。痛みにしゃがみ込むレドを見てアルヴィンは悔しさよりも先に自然と笑ってしまった。
「ハハハ!何をしているんだ、レド。軽く触れるだけで良かったんだぞ?」
意地悪く揶揄うアルヴィンにそれでもレドは喜びを隠せない顔をして、主人に抱きついた。
「やりました!俺の勝ちですねっ、ご主人様!」
「ふふ…、分かったから…そうはしゃぐな」
最近のレドは異様に距離が近い。それもその筈で、同じ寝台で寝起きし、共に訓練を行い食事する。
アルヴィンが仕事で外出する以外のほとんどの時間をレドと過ごしていた。
主人と奴隷という身分差など関係なしに、隙あらば身を寄せ、抱きつき、そして…。
「ご主人様ぁ…」
「あっ…。こら、レド…」
ベロォ…と、レドの舌がアルヴィンの首筋の汗を舐め取った。滑るそれは動いた所為かとても熱かった。
「ご主人様…ご主人様……おいし…」
「ふっ…んっ…くっ………やめろ、レド」
「…………はい、申し訳ありません…」
レロ…ベロ…チュ…と好き勝手に舐め回していたレドが耳の裏側を舐め出した所でアルヴィンは静止した。
不思議なほど不快感はなく大型の獣に懐かれている感覚だったが、流石に快感の片鱗が見えるとレドの行動を止めるのだった。
レドはどんな時も「やめろ」と軽く静止するだけで行いを止めた。
それが良い事なのか、悪い事なのかアルヴィンには断言できなかった。
「…軽く水浴びをし、仕事に出かける」
「…はい、では朝食の準備をしてお待ちしております」
口の中の味の余韻を楽しんでいたレドはアルヴィンのその言葉に雰囲気を落とした。
少しでも主人の側から離れるのが嫌だったのだ。
そんなレドの様子を見てアルヴィンはふと思いついた事をポツリと呟いた。
「…いつか」
「?」
「…いつか使用人を増やして、一緒にギルド依頼に出掛けようか」
「良いのですか…?」
その言葉にレドは喜びつつも自分以外の人物が屋敷内を活歩することを想像して少し不愉快になった。
「お前の才能を此処で腐らせてしまうのは、勿体無いからな」
「あは!とっても楽しみです!」
それでも主人が自身の動きを認めている事を素直に喜んだ。
10
あなたにおすすめの小説
【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった
cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。
一途なシオンと、皇帝のお話。
※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
悪役令嬢の兄、閨の講義をする。
猫宮乾
BL
ある日前世の記憶がよみがえり、自分が悪役令嬢の兄だと気づいた僕(フェルナ)。断罪してくる王太子にはなるべく近づかないで過ごすと決め、万が一に備えて語学の勉強に励んでいたら、ある日閨の講義を頼まれる。
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
悪役神官の俺が騎士団長に囚われるまで
二三@冷酷公爵発売中
BL
国教会の主教であるイヴォンは、ここが前世のBLゲームの世界だと気づいた。ゲームの内容は、浄化の力を持つ主人公が騎士団と共に国を旅し、魔物討伐をしながら攻略対象者と愛を深めていくというもの。自分は悪役神官であり、主人公が誰とも結ばれないノーマルルートを辿る場合に限り、破滅の道を逃れられる。そのためイヴォンは旅に同行し、主人公の恋路の邪魔を画策をする。以前からイヴォンを嫌っている団長も攻略対象者であり、気が進まないものの団長とも関わっていくうちに…。
【Amazonベストセラー入りしました】僕の処刑はいつですか?欲しがり義弟に王位を追われ身代わりの花嫁になったら溺愛王が待っていました。
美咲アリス
BL
「国王陛下!僕は偽者の花嫁です!どうぞ、どうぞ僕を、処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(笑)」意地悪な義母の策略で義弟の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王子のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯?(Amazonベストセラー入りしました。1位。1/24,2024)
異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる
ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。
アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。
異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。
【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。
αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。
負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。
「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。
庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。
※Rシーンには♡マークをつけます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる