ウチのメイドがお嫁に出るので、没落貴族の俺が死にかけ奴隷を購入したら記憶喪失でなんだか様子がおかしくて…?

蔓巍ゆんた

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本編

22 つまみ食い

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 早朝の澄んだ空気の中、アルヴィンとレドは共に駆ける。

 同じ場所から同時に走り出し、目印の木までどちらが速いか競い合っていた。
 レドの金属の義足は地を弾き、その身体を押し出していく。ハンデを感じさせないそのスピードにアルヴィンは舌を巻いた。
 しかし、長年鍛え続け"黒い稲妻イナズマ"などと言う二つ名を冠するだけに負けてなるものかとアルヴィンは意地になった。

 2人の距離は殆ど拮抗きっこうしている。

 だが、ほんの僅かにアルヴィンが前に出た。

(いける!俺の勝ちだ!)

 目前の大木に手を伸ばす。アルヴィンが勝利を確信した瞬間だった。

 レドは義足側に大きく体重を乗せ、そのバネの力で飛び出した。
 身長差からくるリーチの長さで指先1本分、僅差でレドが速く木に触れた。

「やっ…!…!?うわっ…!…ぐっ!いだっ…」

 しかし、あまりにも勢いよく飛び出した為、立ち止まれずにレドはそのまま大木に顔面をぶつけた。痛みにしゃがみ込むレドを見てアルヴィンは悔しさよりも先に自然と笑ってしまった。

「ハハハ!何をしているんだ、レド。軽く触れるだけで良かったんだぞ?」

 意地悪く揶揄うアルヴィンにそれでもレドは喜びを隠せない顔をして、主人に抱きついた。

「やりました!俺の勝ちですねっ、ご主人様!」
「ふふ…、分かったから…そうはしゃぐな」

 最近のレドは異様に距離が近い。それもその筈で、同じ寝台で寝起きし、共に訓練を行い食事する。
 アルヴィンが仕事で外出する以外のほとんどの時間をレドと過ごしていた。
 主人と奴隷という身分差など関係なしに、隙あらば身を寄せ、抱きつき、そして…。


「ご主人様ぁ…」
「あっ…。こら、レド…」


 ベロォ…と、レドの舌がアルヴィンの首筋の汗を舐め取った。滑るそれは動いた所為かとても熱かった。

「ご主人様…ご主人様……おいし…」
「ふっ…んっ…くっ………やめろ、レド」
「…………はい、申し訳ありません…」

 レロ…ベロ…チュ…と好き勝手に舐め回していたレドが耳の裏側を舐め出した所でアルヴィンは静止した。
 不思議なほど不快感はなく大型の獣に懐かれている感覚だったが、流石に快感の片鱗が見えるとレドの行動を止めるのだった。
 レドはどんな時も「やめろ」と軽く静止するだけでおこないを止めた。
 それが良い事なのか、悪い事なのかアルヴィンには断言できなかった。
 
「…軽く水浴びをし、仕事に出かける」
「…はい、では朝食の準備をしてお待ちしております」

 口の中の味の余韻を楽しんでいたレドはアルヴィンのその言葉に雰囲気を落とした。
 少しでも主人の側から離れるのが嫌だったのだ。
 そんなレドの様子を見てアルヴィンはふと思いついた事をポツリと呟いた。

「…いつか」
「?」
「…いつか使用人を増やして、一緒にギルド依頼に出掛けようか」
「良いのですか…?」

 その言葉にレドは喜びつつも自分以外の人物が屋敷内を活歩することを想像して少し不愉快になった。

「お前の才能を此処で腐らせてしまうのは、勿体無いからな」
「あは!とっても楽しみです!」

 それでも主人が自身の動きを認めている事を素直に喜んだ。

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